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ネメシスト  作者: ユキ サワネ
一章 ワールローの亡霊
4/20

四話 海上戦Ⅱ

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的と本格的に書き始めました。

それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。


この作品は完結まで書く!

 甲板に打ち上がる大真蛸の大きすぎる触手は船体を巻き付けようかと思ったが、何やら様子がおかしい。


 近くに居た乗組員達はヴァニラの号令によりその場を退避する。


 が、ケビンは触手が降り注いできた衝撃時に破壊された船体の鉄柵片で全身を強打、両腿以下に装着していた義足も損傷してしまい、その場で尻餅をつく。


 他の乗組員達にも怪我人が出ていた影響で其々助け合いながら退避してゆくなかケビンは混乱状況の中で誰もの視界から消えていた。


 (畜生……声も出ねぇ……。)


 海水の雨が甲板を激しく打ちつけては轟音を響かせケビンの全身をも激しく叩き付けるが、ケビンは至って冷静でいる。


 かつて一度だけオクトロンに呑まれた経験を持つ彼にとっては最悪腹の中にさえ入ってしまえばまだ助かる見込みがあると思えるのはテルギース達がその際に助けてくれた経験がある分、なんら怖さを感じないからだ。


 だが、そうならなかった場合、つまりは触手によって踏み潰されたり船外の海中に弾き飛ばされたりする方が余程怖く思えていた。


 全身の震えを抑えてはいるものの、眼前の威圧感に負けたからこそ冒険者業を辞めただけに己の力不足を痛感しては悔やむ上に義足が壊れた以上腕の力だけで逃げなければならない過酷すぎる現実は絶望という言葉さえ生温く感じる。


 そんな折、危惧していた現実が彼を襲う。


 触手の痙攣じみた動きが不規則かつ不気味に突如として死角から現れた瞬間ケビンは死を覚悟した。


 自身に向かって薙ぎ払うように勢い良く迫りくる大壁のような影が途端に真っ二つに割れ視界が急に明るくなるとそこには紫黒鎧の戦士が大剣を振り抜いた格好で立っていた。


 「あ……あんた、何故ここに……?」


 無言の戦士はケビンに背中を向けたまま甲板にのさばる触手を次々と斬り下ろしてゆく。


 その動きはまさに鬼神の如く。


 何かに取り憑かれているようにさえ思える咆哮と大剣の速度はケビンが知るそれらとは次元が違いすぎていた。


 まるで魔物が魔物を襲っているとさえ表現出来る。


 その動きに呆気にとられるケビンに何人かの乗組員達は気が付き大声で呼び掛けるがケビンの視線は紫黒鎧の戦士に釘付けで、微動だにしない彼を見かねてか乗組員達はケビンの両腕を掴むと船内へ引き入れようと必死に動く。


 その間、紫黒鎧の戦士は別の位置から乗り出してくる触手までもたちまちに切り刻むのだが、切り落とした一部の触手が、甲板上で飛び跳ねて乗組員達に当たると、ただでさえ海面の激しさにより移動が困難な上、不可抗力に抗い切れず、ついケビンの腕や服を握る手を離してしまい案の定なす術ないケビンは片側に傾く甲板を転がる。


 その勢いで甲板上の鉄柵にぶつかると海面に放り出されそうになり、今度こそ駄目かと思った矢先、紫黒鎧の戦士の手がそれを掴み引き戻す。


 ケビンはこの時初めて紫黒鎧の戦士の声を聞いた。


 その声は野太い重低音な声質であったが、人や魔物とは明らかに違う違和感を覚えた。


 ケビンは引き上げられながら戦士の叱咤に気を保ち直すとその場から決死の逃走を謀った矢先、再び大真蛸の魔の手がケビンを狙う。


 咄嗟の判断というよりは腐っても元冒険者の気質が、転がり落ちてきた鉄柵片を両手に握らせ絶妙な頃合いを見計らっては強襲してくる触手の先端を真上から甲板に向かって突き刺させた。


 すると意外にも容易く風穴を空けてみせる。


 「見たか、糞蛸!俺の名はケビン・レジスだ!そう安々とこの命狩れると思うなよ!」


 大真蛸からすればその一撃はまさに鼠に咬まれた様なもの。


 ケビンの刹那に魅せた命の輝きは名乗りと共に多くの者を惹きつけ、焚き付けた。


 この世界の理は強者が弱者を喰らう連鎖である。


 ゆえに大番狂わせという言葉の意味も非常に価値がある。


 狙った獲物に咬(・)み(・)突(・)か(・)れ(・)た(・)大真蛸の一瞬の怯みを紫黒鎧の戦士は見逃すこと無く文字通り釘付けになって身動き取れない触手を微塵に斬り刻むと海洋にいる本体は叫喚する。


 それは果てしなく耳障りな音であり、ある種の魔法の様に瞬く間に海上を伝播するとそれを受けた全ての者は耳を塞ぐ事しか出来ず、その場に座り込む者や伏せる者達もいた程苛烈であった。


 塞いだ耳の奥から耳鳴りがする感覚に蝕まれる中、事はそれでも動きを止めない。


 ――荒れ狂う海面、大きく揺らぐ戦艦、気付けば天候すらどす黒く戦況を見下ろす――


 真っ先に動いたのは大真蛸であるが、すでに半数以上の触手を失っても尚、折れない気概は魔物の未知なる執念深さを物語る。


 『来るぞ!』


 ヴァニラの声が大戦艦の通信器から弾け飛ぶと、大真蛸の触手が是迄とは比じゃない数で【銀夜叉】に迫る。


 三方向からの同時攻撃を捌くのは紫黒鎧の戦士にとっても至難の業であり、総てを防ぐのは最早不可能。


 「痛いが耐えろ。」


 咄嗟にとった行動は巻き添えを喰らわぬようケビンをその場から船室方向に蹴り飛ばす。


 吸い付かれたが最後である触手の吸盤を避けさせる為でもあった。


 そして紫黒鎧の戦士は過程は狂えど狙い通りに本体の腹の中で最終決戦を仕掛ける事に目論み通りに成功する。


 ――触手に巻き付かれながらケビンの悲痛な眼差しをしかと見届けながら――


 『全艦退避ッ!!作戦通りに動けッ!!』


 ヴァニラの声は大真蛸の喉奥まで届いたが、紫黒鎧の戦士を常闇が包む頃には嘘のような静けさしか無かった。

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが

一身上の都合により不定期更新となります。


また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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