十九話 ピーチク、パーチク
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
慌ただしい王宮内で気配を消しながら静かに長らく彷徨っていたラインヤールは困惑しきっていた。
総ての扉を少し開けては閉めて、開けては閉めて、開けては閉めてをひたすら繰り返しついには閉めた扉に向かって入れないとボヤくと、ペイングリッシュ達を思い出してはその特性が伝染ってしまったと嘆く。
くすくすと失笑するユカに気付かずに。
「なんだ、漸く目が覚めたのか。」
「うん……でもボケるなら大声じゃなきゃセシルに叩かれちゃうよ?」
「こんな状況で大声なんて出せるかよ。」
互いに密かな声量で話す傍らを衛兵達が忙しなく駆け抜けるのを見届けると、ラインヤールは再び気配を処理する。
「今、どんな状況?」
「クルゴン達から逃げてる最中、目覚めたなら立てるか?いい加減、疲れが……。」
もう何時間経つか分からないほど抱えていた為にラインヤールの腕の疲労感は限界に近かった。
ユカは見え透いた嘘をつくが、ラインヤールは脱力し、ユカは床におちる。
物音がした事で別の衛兵達が駆け寄ってきたが、二人は静かなることと動かざることに終始する。
やがて衛兵達が離れると、ユカはラインヤールの責任とまくし立てるが、彼は耳穴を小指で穿りながら聞く耳を保たない。
「あぁ、もう……ユカ、君には色々言いたいことが山積みだぞ。だけど今は〝靄〟から抜け出す方が先決、武器が欲しい。宝物庫はどこだ、実家なんだから判るのだろう?」
ユカは腰付近に手を近づけては何度か握り損ね、自身の手を眺めた。
「今、ここに綺麗な点線が視えたよ、ラインヤール。」
「はぁ……君までペイングリッシュ病とは七年という時間は怖いものだな。」
互いに一つの微かな笑いを交わすと、気を反転し宝物庫へと駆け出す。
暫くして地下へと辿り着くと、一際大きな扉が並ぶ通路に出た。
「ここよ、宝物庫。」
ユカはその扉を静かにゆっくりと開けると、人一人分通れる位の隙間に身体を滑らせるように入室し、ラインヤールも後に続くと、幾つもの武器がそこで眠るように並んでいた。
「おっ、この槍は……!弱そう……。」
ラインヤールが手に取った槍を見てユカは呆れる。
「それ一応、宝槍だけどね。」
ラインヤールは嘘だろうと言いたげに固まる。
「性能は?」
「身体強化と技能向上の付与持ち、あとは滅茶苦茶軽くて頑丈、弓槍とは雲泥の差かな。」
ラインヤールは何も言い返さずに視線をユカから外すこと無くその宝槍を身体に擦り寄せるが、ユカはそれを放置して自身の求める杖を探す。
「あ、あった。」
「よし、あとは防具だな。」
「そうね、付いてきて、こっちよ。」
宝物庫の武器部屋の奥にある扉を開けるとラインヤールは圧巻な光景に驚いた。
どれもこれも並んでいるのは精霊族ならではの仕上がり、綺羅びやかに負けず劣らずの性能ばかりの防具。
左右を確認しながら歩くラインヤールがふと視線を前へと落とすと、ユカが目の前であられもない産まれたままの姿を晒していた。
慌てたラインヤールは即座に反転してユカを叱るが、ここは宝物庫であって更衣室ではないと気丈な返答にラインヤールは顔を赤らめながら声に詰まる。
「ほら、ラインヤールも着替えて。」
歳頃の男の性を振り切る様にラインヤールは其々の性能を確認するが、集中を欠く。
「ねぇ、モタモタしてないで早く着替える!」
意を決して手に取った防具に着替えようとしたが、視線に気づいてラインヤールは恥ずかし気に声を張る。
「こ、こっちを見るなよ。」
「なんで?そっちは見た癖に。」
「ち、違う!あれは不可抗力だ!そもそも着替えるなら着替えると宣言してからだな……」
「はいはい解りましたぁ〜、ほら、後ろ向いたからさっさと着替えて、終わったら言って。」
ユカの後ろ姿を確認すると、ラインヤールは着ていた服を脱ぎ、防具に着替え、そして終わるとユカに伝えようと振り向くと、そこには仁王立ちで腕を組みながら微笑むユカの姿があった。
「お、おお、お前……!」
「これで平等ね。」
ラインヤールが声を出しかけた瞬間、宝物庫の扉が開く音が聞こえた気がして、慌てて二人は物陰に身を潜める。
奥から擦れる金属音が奏でる足音が聞こえてきたかと思えば、次第にその音は大きくなり、着実に近づいてくる。
通路両脇に互いに隠れた二人は目で合図を送ると、飛び出す覚悟を持つべく無心に還る。
徐々に距離が詰められて飛びかかるには充分な距離まで待つユカとラインヤール。
再び視線を交わしてユカが攻撃範囲に相手が立ち入るまでの時間を指を折りながら静かに数え掲げ、総ての指が折れると同時に飛びかかった……はずだったのだが、そこに居た甲冑三人組は慌てて両手を突き出して、訛り言葉を張り上げる。
「ちょぉぉい、待ちッ!」
甲冑を着こなす一人が兜を脱ぐと、それはブルオだった事でユカもラインヤールも深く息を吐いてから喜んだ。
当然のことながら、セシルもマロンも再会に喜び、互いに飛び跳ねるようにユカに抱きついた。
「ね!言うたやんか、ラインヤールの匂いしたって!」
「は?匂い?」
次元の狭間を越えてでも嗅ぎ取るマロンの信じられない嗅覚にラインヤールは自身の身体に鼻を近づけては確認するが、ブルオがすかさず付け加えた。
「足の裏の匂いらしいでラインヤール、お前どんだけ足臭いん?」
そして、即座にセシルがツッコむと、笑いが起き、ラインヤールは揶揄われたと気付いたのだが、願ってもいなかった再会ゆえに笑いが勝った。
「ほな、皆揃うた事やし、とっとと〝靄〟からおさらばしようや。」
「なんでアンタが仕切っとんねん隊長ちゃうやろ。」
「その隊長見てみぃ、そんな体調で仕切れる訳あらへんやろ、隊長だけに。」
全員がユカを見ると彼女は乙女座りで力なく座り込んでいた。
「気が、抜けちゃったかな。」
ユカは照れくさそうに言い訳をするが、ラインヤールには理解出来た。
苦痛で気を失うまで悶絶していた姿を見ていたからだ。
「全員に隠蔽魔法をかけるから少し休もう。」
ラインヤールの一言に四人は振り返ったが、ブルオが真っ先に賛同すると休息を取ることにした。
その間、女子達はこれまでの経緯を愉しげに語り合っていて、ブルオはラインヤールに確認していた。
「なぁ、〝靄〟って幻影世界なんよな?てことは幻影世界やから魔素塗れっちゅーことやんな、せやからこんなにもすぐ身体が癒えるんか?魔力の回復がいつもより断然早い気がする。」
「推測だが、ナイル教官の話ならそういうことなんだろうぜ。僕等はまだ立場としては〝ノヴィス〟なわけだし、高級冒険者達と比べても魔素に充てられ易いのだろうから、より影響を感じやすいのかも知れないな。」
「せやろな、〝ノヴィス〟の意義、嫌っちゅうほど味わったからなぁ……ホンマ、しんどかったわ。」
ブルオがそう言うと、ラインヤールも顔を伏せて同意する。
「ブルオはどんな幻影を経験してきたんだ?」
「あぁ、それな。ありったけのお菓子世界がそこにあってな、食べ放題してたら、訓練サボるなって両親に追いかけ回されてわ。」
ラインヤールの目が点になる。
すると、女子勢から避難の嵐を受ける羽目になるブルオだが、ユカ隊で一番の歳上である彼は皆の知らない記憶を語った。
「僕な、妹達と違うて二歳の時から英才教育や言うて魔法撃ち込まれながら追いかけ回されてたクチやねん。あり得へんやろ、現実世界の話やで、嘘ちゃうで?んで、巧妙く避けれへんかったら親父が回復魔法で治してくれんねんけど、治ったら治ったでエンドレスや。」
「あぁ、ママ確かに言うてたわ。それが原因で逃げ足が異様に速なって一撃離脱型の異端の魔導士が育ってしもたって。」
「この幻影世界って各々の心の傷跡っちゅうか、一種の呪縛化した何かに漬け込んで具現化しとるんや思うねん。僕お菓子大好きやし、両親に追いかけ回されてた記憶は黒歴史やし……ユカもラインヤールもそうなんちゃうか?」
名指しされた二名は静かに頷く。
ラインヤールは家族との断絶に希望を視て、ユカはこの世で最も気が重くなる世界に身を投じている。
マロンは犬狼族の中でも特に小柄であり、劣等感しかなくセシルに限っては冒険者を目指す切っ掛けとなった魔銃士への憧れが強く反映した世界に身を投じた。
〝靄〟は其々の〝傷口〟に塩をたっぷり塗りたくる性分なのは間違いなく、五負と教わっただけに他人の不幸は蜜の味なのか嫌がらせの執念や怨念がやたらねちっこい。
だからこそ、そこに打ち勝てば冒険者の格も上がる。
五人はそう結論づけた。
「まぁ、何はともあれこうして〝靄〟に呑まれる事無く五人揃ったんや、ナイル教官が言うてはった通り、精神的にも肉体的にもキツい経験したわけやしさ、もう少しゆっくりしようや……こうして真剣な話出来る内にしとかなアカン思うねん、せやからさ……」
何かを言いかけたブルオはそこからやけに間を置きつつラインヤールを見つめ問いただす。
「ユカの素裸見たってホンマなん?」
そこから暫く五名の雛達の明るい声が交錯し合い、暫しの休息を楽しんでいた。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




