十七話 狭間での奮闘
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
「ふふ、やはり貴方は我が家の宝ねアグラミーア。貴方もそう思うでしょう!?」
「あぁ!勿論だとも!冒険者になると言って家を出ようとした時ばかりは父さんも流石に怒鳴ってしまったが……大したもんだ!お前は我がラインヤール家の誇りだ、アグ。」
「だから言ったじゃないか〜俺は必ずアグの奴なら巧妙くやれるって!父さんも母さんももっとアグを信じてやらなきゃね。」
「一族の恥さらしだなんて言ってごめんねお兄ちゃん。」
「無事に帰ってきたんだ、今日は宴だね父さん、母さん。それと、何を突っ立ってんだよ、アグラミーア。こっち来て座れよ。」
「……あぁ、ようやく皆認めてくれたんだ。俺は嬉しいよ」
ラインヤールはそう言葉にすると、自然と頬を伝う冷めた感覚を感じていた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん!副主席って凄いんだよね!?外の世界の事、話してよ!聞きたい!」
「レブリア……そうだな、何から話そうか……」
実に七年ぶりとなる家族との団欒にラインヤールはこの七年間の想い出を語る。
ラインヤール家には両親と二名の兄、そして一名の妹がいる。
【ノヴィス・ラ・ヴォロンテ】に入校以前では家族全員の反対があり、それを押し切って彼は冒険者の道を選んだ事で家族と軋轢が生まれ疎遠になっていた。
だが、実家からの手紙により報告を兼ねて帰郷したわけだが、正直なところ、ずっと心の底で引っかかっていた棘が落ちた気がして、温かな一時を迎える。
「へぇ~、しかし何処かで聞いた覚えがあるな……ユカ……!?ってララノア様のご令嬢じゃないか!」
「ララノア様?女王様の?」
父は激しく動揺し、母は手を口に当てつつも大層喜び、二人の兄は卓上にある手料理を食べ損ない、妹のレブリアは驚きのあまりラインヤールの両肩を掴み激しく前後に揺さぶる。
一人事態を呑み込めずなラインヤールをよそに、家族全員が騒ぎ出すと家のドアノッカーが鳴った。
父が出迎えに行くと暫くしてから一名の遣いが顔を覗かせ、ラインヤールを見つめている。
ラインヤールは玄関扉の奥で脱帽している紳士に見覚えがあった。
それは、入校初日に気品のある何処かの貴族令嬢なのだろうと思ったものだがそれがユカだった事を思い出すとその側仕え、侍従の紳士。
その紳士が何故ラインヤール家に突如として訪れたのか分からないでいると、紳士は律儀に一礼をするとラインヤール家を王宮へと招く為に遣わされてきたと聞かされて一家は慌ただしく支度を整え始めた。
「アグラミーア!ボサッとしていないで、早く着替えて来なさい!」
普段ならおっとりした性格の母が珍しく慌てふためいてはラインヤールの自室へと背中を押しては急かす。
その反応ぶりにラインヤールは戸惑うのだが、無理もない。
今しがた実家に帰省した筈でまだ母の手料理を一口も手につけていないのに、何が楽しくてユカやその身内に会わなきゃいけないのかと思うと、酷く腰が重くなる。
「馬鹿いわないで、アグラミーア。王宮へ行くのよこれから!」
(はぁ……あのお転婆……王族だって?学長の孫だよな……そんな話聞いてないぞ一度も。)
そう思いながら自室にて着替えを終えたラインヤールが外にある王族専用馬車の前に着くと、家族から遅いと叱咤される。
大きく華やかな馬車に揺られる間、侍従のクルゴンと両親は話し込み、兄のグリマー、ルヒアは緊張しているのかずっと外の景色を眺めてはグラスに入っている水を何度も飲み気を紛らわせようとしていて、妹のレブリアは頻りに自身のドレスの確認をラインヤールにせがんで来る始末。
「レブリア、よく似合っているよ。だからそんなに緊張しなくていいって」
ラインヤールの言葉に三名の兄妹は落ち着き払う彼に詰め寄っては笑い暮れる。
暫くして馬車が止まるとクルゴンが先に客車から降りては手を差し伸べながら一人一人をエスコートする。
降り立った目の前には紛れもなく王宮が存在しており、クルゴンや出迎える騎士達に先導されながら後をついて行くのだが、見渡す限り、何処を見ても紛れもない王宮そのもの。
幼き日に何度か気になってはいたが、まさか自身の目で拝む日が来ようとは思いもしなかったラインヤールは落ち着き払うも根底では驚き一色となる。
陽の光が反射して、より眩く映える純白の柱や壁、水晶製の床等、次元が違いすぎる光景にラインヤールは静かに目を配る。
思えばこの七年、ユカと共に行動していたが、何処か違和感があったのは理解していた。
だが、ここが本当にユカの実家で在るならば数え切れないほどの不敬を働いていたと思うと冷や汗しか流れ出てこない。
「女王陛下、ラインヤール家の皆様をお連れいたしました。」
クルゴンの声に気付いたと同時に、応接間の扉が開くと、そこにはララノア女王陛下とユカが正装で待ち構えており、側仕えとして精霊騎士達も並び立っていた。
一気に青ざめるラインヤールをよそに一家は緊張しながらも礼儀作法を遵守するが、ララノア女王はその異様な雰囲気に引き締まっていた表情を綻ばせては椅子へかけるよう促すと、ラインヤール家は即座に座る。
だが、やはり解せない。
――何故自分はここにいるのだろう――
――何故ユカはそこにいるのだろう――
「女王陛下の前だぞ、質問に応えないかアグラミーア。」
父の声に我に返ると、女王陛下の視線を感じて慌てて不敬を謝罪するが、ララノア女王陛下は露ほども気にしてはいない様子で優しい微笑みを浮かべ不問とした。
「そなたの存在が娘にとって何よりもの宝だと聞き及んでいます。謝るべきはこちらの方ですね。」
ララノア女王陛下はこの国の姫にして息女であるユカの奔放な性格について語り始めたが、ラインヤールはそれを耳にしては納得する事ばかりで、寧ろ頭が痛くなったが、傍らで静かに佇むユカを一度見ると、彼女は顔を俯いているものの、しっかりと視線はラインヤールに向いていた。
諦めに似た感情を露わにしつつ。
★★★
ユカとラインヤールは王宮の城壁上にて城下を見下ろしながら風にあたってようやく言葉を交えていた。
女王陛下との謁見は非公式な場として扱われていたとそこで知る事になったラインヤールは落ち着きを取り戻すと改めてユカが精霊族の王族という身分を隠していた理由を尋ねるが、ユカの曇る表情に無理強いする気になれなかったラインヤールは気遣い話題を替えようとしたが、彼女は思いの丈を口にする。
「ありがとう、ラインヤール。私ね、誰かに守られてばかりじゃ嫌なの。そこに救いは無い事を知ってるから。」
「まぁ〜立場が違うからな、ユカにはユカなりの苦労が在るんだろな。」
「まぁ、ね。」
「それにしてもだ、俺達には王族だってことくらいは教えてくれても良かっただろ。それとも何か?知らなかったのは俺だけか?」
「えっ?俺達?」
「ん?」
二人の間に沈黙が生まれると、ユカは突然頭を抱え座り込み苦しむ。
無尽蔵の体力と形容詞が似合う彼女が額に汗を浮かべる事なんて見たことが無かったはずのラインヤールはその尋常じゃ無い苦痛姿に普段の彼女からは想像すら出来ない程、奇妙で不気味な感情を抱く。
「お、おい!しっかりしろ、ユカ!」
「痛いッ……頭が割れそう!」
ラインヤールは直ぐ近くにいた衛兵に声をかけようとした矢先、ユカの握る手の圧力に異常を感じた。
「違……違うよ、ラインヤール……」
「違う?何が違うんだ?おい、ユカ!」
「私達はなんで……ここに居るの……ペイングリッシュ達は……どこ……」
ラインヤールもその言葉を切っ掛けに何かが頭の中で弾けると猛烈な痛みが襲ってきては膝から崩れ落ちては言葉を発する事さえ困難になる。
「いけません、姫様。それ以上はお身体に障りますゆえ、寝室へお連れします。ラインヤール殿も寝室を御用意致しますのでそこでお休みになられたら良いかと。」
クルゴンがゆっくりと近づいてくると、近くにいた衛兵も心配気に近寄るのだが、そこから微かに感じ取れた不気味さに吐き気を感じるラインヤールは必死に頭の中に巣食う何かに抗う。
徐々に距離が詰められる度にラインヤールの脳内は激しく揺れ、気付けば餌付いて催す。
(なんだこれ……ペイン……グリッシュ達……誰だ……ペイン……ペイングリッシュ!そうだ、俺達は〝靄〟と……!)
「ユカ!立てるか!?ナイル教官の言葉を思い出せ!」
「ナイル……?あぁぁぁぁぁッ!」
「ここはまやかし……〝靄〟の中だ!まがい物の世界なんだ!思い出せ!」
「まがい物……とは随分な物言いですね……たかが冒険者風情が。」
クルゴンの目が妖しく光ると危険を察知しラインヤールはさきがけて魔力を放ち、風を巻き起こす。
無論、その魔法は数秒で瓦解するのだが、ユカを抱きかかえて逃げ出すには充分な時間であった。
「そもそも所々、可笑しいと思ったんだ……俺の集落は外界に出た同族を決して許さないし、俺にはもう家族なんてない!冷静に考えれば判ったはずだ、こんな気持ち良い世界が現実だなんて俺は断じて認めねぇ!」
――踏み躙られた――
真っ先にその言葉が脳裏を埋め尽くすが同時に〝ノヴィス〟の意味が理解出来た。
胸の底で痛感がラインヤールを襲う。
あり得ない現実、それは最早幻影。
〝靄〟突入前にナイルから聞いていた蜃気楼を断ち切らなかった自業自得。
在りもしない現実に対して、僅かな望みを抱いてしまった不徳の極み。
その事実を受け止めてしまった愚かさに気付けたのは幸か不幸かさえ曖昧であった。
「とにかく今は逃げるぞ、ユカ。」
壮絶な苦痛があったであろうユカは気を失っていて脱力してその声は届かない。
とはいえ、ユカを抱きかかえながら逃げるのでは速度は出せないうえに見つかる危険度が高い。
仕方なくラインヤールは魔力を制御しながら慎重に隠密行動をとる。
(グリンダ教官の教えがこんな形で役立つなんてな……)
気配を消す魔法は隠密科の教官達も唸らせる程精度が高い。
追手の衛兵達の脇をすり抜け王宮を出ようとしたが、正門は異様な魔素を纏う精霊騎士達に塞がれていて裏門や城壁上も衛兵や精霊騎士達が徘徊している。
(アレさえあれば……いや、ここは王宮なんだし必ず在るはずだ……幻影の世界でも実体として在るのか分からないが何もしないよりは遥かにマシなはずだ!)
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




