十六話 想いの根源
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
魔素解体全書、第三章、第一節
――魔素に感情はあるのか
かねてより長い歴史の間、多くの学者や腕のある冒険者達が一度は考えた事があるわけだが、それは魔素の根源が生命から成り立つものであるからに他ならない。
魔力とは魔素を練り上げ扱い具現化したものを指す。
ならば己の心身を高めれば高めるほど魔素はより高品質な魂へと昇華する。
魔素の在処……それは魂が存在する限り有り続けるということ。
だが、永久ではない――
ナブラ=ダラム=マイン 著
空間に大量の土埃が舞う中、撃音が絶え間なく鳴り続けていた。
満身創痍だった身体が癒えた訳では無い。
それは、極度の緊張と極限に限りなく近い何かがそうさせていた。
「うし、そろそろ俺も混ぜてもらうとするか。」
「なら……私もだ。」
「やめとけ、今のお前じゃ二秒も保ちやしねぇ。それじゃモータルセンも哀しむ。」
「しかし……!」
「粘れ。」
ガヴィの言葉足らずな性格にグリンダは安堵を感じた。
それはいつもの口調、グリンダが知るガヴィであったからだ。
「〝三真〟の一つだ。解るだろ?」
「あぁ……。」
会話を終えて立ち上がるガヴィにグリンダは一言だけ伝える。
「父さんを頼む、ガヴィ。」
その言葉に犬狼族の体毛が逆立つ。
そしてその返答を背中で示し、一瞬のうちに乱戦へと消えていった。
土埃で視界が狭まるもお構いなしにガヴィは正確に敵の急所を突き続け、生まれる刹那の隙をモータルセンは逃さない。
拮抗していた戦況は次第に冒険者側有利な形勢へと傾き始める。
息つく暇も無いという言葉をまるで体現するかの如く、連打連撃は確実に敵を削ってゆく。
▲▲▲
「負に呑まれるな!ガヴィ!」
屈強な体格の男がそう叫ぶと、幼いガヴィは体毛を逆立て、吠える。
「そうだ!それでいい!何か在れば俺が代わって敵をなぶり殺してやる!そら、行けッ!!」
雄叫びをあげながら傷だらけの少年は自身の何倍もの大きさの魔物に喰らいつく。
全身に浴びた返り血すらも気にすることなく、ひたすら滾る魔力を解き放ち、敵の血肉を貪り尽くす。
拳や脚だけに留まらず、爪や牙にすら魔力を纏わせて。
「その姿勢は紛れもなく我が一族の証、良くやった、息子よ。」
ガヴィの父はかつて犬狼族でも指折りの冒険者であった。
『強者に抗い強者を制す』
この教えはガヴィの一族に伝わる家訓であるが、その真意は終わりなき修練の果ての果て、真の強者となった己との闘争である。
当初、怠惰に打ち勝つという意味であったが、世代を重ねる内にいつしか〝最強〟に取り憑かれた先祖達が行き過ぎたがゆえにそう先祖代々教わってきた。
ガヴィの父もまたそうであるものの、本質は初代に近い思想の持ち主であった。
「どうしたら父さんみたいに強くなれるのかな……」
ガヴィがそう呟くと、父は立派な牙を剥き出しては笑顔でガヴィの頭を撫でては笑った。
「負に呑まれない強さをお前は既に持っている。きっとお前は初代以外、誰も辿り着けなかった境地に至れるかも知れんな、なぜならばお前は――」
▲▲▲
「ガヴィ君!」
モータルセンの呼び掛けに我を取り戻したガヴィは格上の敵を見事に蹴り飛ばしていた。
「良かった、我に返ったんだね。」
気付けば、両手は擦り傷を幾つも作っていて全身の服装も所々破れ裂けていた。
「俺は……なんであんな……」
(あぁ……そうだよな、夢か……。)
「狂戦士化だろうね。犬狼族の特権とも言えるかな。毎度その力を見る度にその血が羨ましく思えるよ。」
(でも、まだ若い。制御が未熟……だがそれだけ伸び代があるというのもまた事実。本当に末恐ろしいことだよ。)
「だいぶ敵の魔素は削り落とせた、もう一踏ん張りだ。」
「あぁ!」
壁面で項垂れる敵は、ゆらゆらと魔素を全身から放ちつつ立ち上がると、奇怪な動きをその場で見せ始めた。
「あの動き……まさか!?」
「ハッ……漸く面白くなってきやがったな強者を制す事こそ俺の生き甲斐。かかってこいよ、半端野郎。」
雑音にしか聞こえない咆哮が聞こえると次第にその声色が低く、不気味な発音に変わり、魔素の量も膨れる。
「はは……あれじゃまるで真書伝説じゃないか。」
「いいじゃねぇか、より強い相手を殴り飛ばせるンだぞ。」
「ははは、君は……いや、何よりも心強いよ!」
敵の泣き声が絶えず続く中、ガヴィとモータルセンは更に自身の魔力を強烈に練り上げ次手に備える。
この戦闘においてモータルセンはいわば非公式であれど事実上【八ツ星級】の実力へと昇華し、そんなモータルセンが目で追うのがやっとの事だった狂戦士化のガヴィは差し詰め【九ツ星級】だ。
それでも相手の膨大な魔素に圧される感覚は同格かあるいはそれより上。
「おっさん、娘の方を頼まれてくれねぇか?」
敵の進化途中に幾分の時間があるうちにガヴィはグリンダの回復を求めた。
それは、ガヴィが再び狂戦士化して時間を稼ぐつもりと説いたが、満身創痍の上に戦闘が長引いて疲れの色が濃いモータルセンを気遣っての事でもあった。
「俺だけじゃ奴は倒せねぇ、一人でも動ける奴がいた方がいい。ほらよ、これ飲ませてやってくれ。」
「……心得た。ガヴィ君、恩に着る。」
そう言葉を交わしモータルセンはグリンダの傍まで向かい、ガヴィは五負と対峙している間、天井を見上げながら先程の夢に想いを馳せる。
(あぁ……そうだよな、きっとそうなんだよな、あの時の親父や村の戦士達もこんな気持ちだったんだろな。想いのまま好きにさせてもらうぜ。)
「ハッ、負ける気がしねぇわ……見ててくれや、皆。」
ガヴィを取り巻く魔素の色味が紅から深い紅へと変わる。
▲▲▲
『初代犬狼王は黒紅の魔素を纏っていた』
「その頂きに辿り着くにはまず、魔素の色を翠色から碧へと昇華せねばならない、この変化は犬狼族の大人ならば誰でも出来るようになるもんさ。肝心なのはその先、碧い魔素を紫、紅、深い紅へと昇華させねばならない。そしてようやくその先に黒紅の魔素がある。」
「じゃあ、初代以外辿り着けていないってことは……」
「あぁ、父さんは紅が限界でな。だがガヴィ、お前はまだ幼い内に紫に変わりそうだ……お前の年くらいの頃の父さんは碧すら変えられなかった。お前の何事にも喰らいつく根性や魂の質は、俺以上、何がそうさせるのかが解ればガヴィの限界はまだまだ先にあるんだ、忘れるんじゃないぞ?」
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五負の纏う魔素が灰色から黒ずみはじめガヴィの魔素は深い紅へと変色を果たすと、モータルセンに介抱されるグリンダはそれを目の当たりにしては息を呑んだ。
「今は彼を信じていようじゃないか、グリンダ。僕の知る限りあそこまで強烈な魔素を迸らせる犬狼族は見たことが無い。良き戦友を得たね。」
優しく微笑むモータルセンにそう諭され、グリンダは全身に電撃が走る感覚を憶え、ただその場に座り込む。
ふと気付くと父親の支えてくれている手が僅かに震えていると気付いたが、何を言うこともなく彼女は父親の上着の裾をそっと握り締めていた。
次元の違いにただただ静寂と畏れを抱いて。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




