十四話 宿怨と恩愛
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
「お前、なんで冒険者なんかに成った?」
唐突なガヴィの質問にグリンダは頭を打たれたような衝撃を覚えた。
ガヴィとは冒険者としても臨時雇用教官としても幾度と任務を熟してきた仲ではあるがそういう話題からはいつも遠ざかっていたガヴィだけにグリンダは戸惑う。
「聞いてんのか、おい。」
「あぁ……父を目指して……だ。」
「憧れってやつか。俺もそうだ。」
グリンダは目を丸める。
それは、ガヴィをよく知る分、これから挑む出来事は間違いなく死の匂いを放つ出来事に他ならないと思えたのは、彼の覚悟が滲み出た顔を見たからだ。
「憧れってのは誰にでも在る。どんだけ歳食っても心のどこかに生きてるからな……良いもんだよな。」
「何が言いたい。あんたの言葉は遠回しすぎて分かりかねる。」
グリンダはそう言うと自身の帯刀する二本の短刀に視線を落とす。
「一つ忠告しといてやる。靄が晴れたら何も考えずに迷わず斬れ。そこには愛なんて糞ほど役に立たねぇ。」
グリンダは意味不明といった感情を抱きながら視線をガヴィに向けたがそこに彼は居なかった。
「おい、ガヴィ!」
周囲はただただ白く、音もない。
既に靄に呑まれたと気付くまでそう時間を要さなかったのは事前にガヴィから聞いていた話のお陰で目を閉じて心を落ち着かせて、微かな振動を感じ取ると目を開けると眼前に蜃気楼が上っている事を確認すると、グリンダはそれを迷わず斬りつける。
蜃気楼から絶叫ともとれる雑音が木霊すると、それは確かに弾け飛びながら眩く、そして瞬く間に景色を変えてゆく。
余りの眩しさに目を閉じていたが、見開くとそこでは既にガヴィがモータルセンと共に何かと交戦している姿が現れて、状況を飲み込もうと視線を配った。
「グリンダ、遅ぇぞ!」
いつもの口調より強目の語気が込められた言葉は、その現実を強烈に印象つける。
かれこれ一時間は闘い続けていたであろうモータルセンを視認すると、彼は既に満身創痍に近い状態なのは言葉にしなくとも理解できていた。
ガヴィとそれが激しい攻防を繰り広げる中で、後れを取るモータルセンにグリンダは駆け寄って肩を貸すと、モータルセンは声も絶え絶えに謝意を口にする。
「あれはなんだ?」
「灰色宝珠……だ。」
疲労困憊な彼を横にして思わず口をついた言葉がモータルセンの心を刺激するのか、彼は細々とした口調でグリンダに伝える。
思い返すは卒学試験前のツァイードラ達との会話。
セアイル霊堂の話の中心にあった魂や霊魂の素になるモノ。
それはこの世界で【魔素】と呼ばれる存在であり、生きとし生けるもの全てが持つと云われる。
八つの魂の内、怒り、憎しみ、痛み、怖れ、嘆きによって生み出される魔素の結晶体は幾年もの歳月をかけ、じっくりと地に染み込み根を張り、やがてその器から溢れ漏れ出してしまうと表面に具現化する。
そうして世に生まれるは迷宮となりて、そこから更に溢れ続けると五つの魔素は魔物の姿へと変貌してゆく。
その質量の加減や配合により迷宮の規模や魔物の強度など決まるのだが、極稀に灰色の宝珠が生まれ落ちる事が在る。
迷宮の〝特異点〟とそれは呼ばれる。
気の遠くなるような時をかけ、積もり積もった魔素が混じり合い、拗れた証。
いわゆる時の負の遺産。
それが暴走すると妖かしとして生ける魂を喰らわんとする。
期待や真心や感動を餌食とするそれは、世の不条理とも言え何人も否定できぬ世の真理である。
いつ、どこで、どのような仕組みでそれが生み出されるかは解っていないのだが、それは確実に存在する。
そして、今まさにグリンダ達の前にそれは在り、ガヴィは抗う。
「ボサッとしてんじゃねぇ!温くねぇンだよ!眼前の敵はなァッ!」
刹那の隙を見事に打ち抜くガヴィの渾身の一蹴に敵はのけぞり、距離を置くと動きは膠着した。
「ガヴィ!其奴は何なのだ!?」
「迷宮の特異点、〝五負〟だ!」
「……イレギュラー……。」
寸前までの烈しさは鳴りを潜めると、双方の殺意は混じり合わない距離で静かに蠢く。
「この迷宮で散ったあらゆる無念が溢れ固まった存在!眼前の敵の実体はそういう類の幻影が妖に成って襲ってきやがる!さっき言ったろ!?それに、コイツに呑まれたらお前もガガタの鉱夫の様になるからな!」
ようやく点と点が結びついたグリンダは共に退いていたモータルセンに少し休む様伝えると、腹を括って両手に握り締める短刀に力を込めた。
そしてガヴィの横に立つ。
「倒せるのか?あの化物。」
「ハッ、誰に物言ってやがる。倒せるじゃねぇ、倒すンだ。さっき言った言葉覚えてるか?」
「あぁ……|〝三真の仰〟の事だな。」
「……覚えてるならそれでいい。呑まれそうになれば唱えろ。お前の愛を。」
ガヴィが最後にそう言い放つと二人は妖と交戦に入る。
その速度と強度は最早人間離れの所業であったが、相手はそれより更に一段上の粘りを見せつける。
隙の少ない機敏で鋭く繰り出される一手一手は【七ツ星級】の体術士と隠密士の二人といえど苦戦を強いられる。
二人は冷静にも卓越した力みの無い柔らかで素早い流動攻撃を繰り出すも、それらを全ていなされては辛うじて防ぐが敵の強烈な反撃に好機を見出せず、確実にじわりじわりと疲弊は蓄積してゆく。
そんな状況下において、グリンダはとある事に意識を集中させていた。
――愛とはなんぞ?――
単純で複雑怪奇にも思えるそれの正体の実体を掴めずにいるからこそガヴィに確かめたかったのだが、その余裕は塵一つも無いに等しい。
時が経つにつれ、自身もガヴィも動きに陰りが見え始めると、妖の勢いに押され始め、ついにはグリンダもガヴィも壁面へと吹き飛ばされ、浅くはない傷を負う。
「糞ったれ……変化前でこれかよ……。」
ガヴィが不意に呟いた言葉にグリンダは底知れぬ違和感を抱いたのだが、徐々に感じ取れる迫る死の足音にそれは掻き消されたのか、言葉を吐けない状態となる。
容赦なく突き付けられる現実に意識を保つのがやっとだ。
(身体が……言う事を効かないッ……)
痺れは手足だけでなく、脳の中まで支配している為に敵の振り下ろす影が何重にも視える。
死を覚悟した寸前、離れた位置にいるモータルセンを見たが彼の姿はそこに無かったと気付いたと同時に頭上で鋼鉄の弾ける甲高い音が聞こえ視線を向ける。
「死なせやしないさ。生きて帰るぞ、グリンダ。」
モータルセンが渾身の躍動とも呼べる姿で敵の一撃を防ぎ対峙している。
「ウラァッ!!」
その瞬間にガヴィが敵の背後から強烈な一撃を脇腹辺りに叩き込むと、妖の影は猛烈に壁面へと突き刺さった。
ガヴィもまた渾身の躍動か。
直ぐ様にその場に片膝をつき、呼吸を激しく乱していたが、戦意は鋭さを増していた。
かたやモータルセンというと、少し休めていたお陰でしっかりと士気を取り戻した様子で二人に話しかけ、グリンダは耳を傾ける事しか出来なかった。
「君達が居てくれたお陰で僕は〝三真の仰〟を取り戻せたよ、ありがとう。」
殺伐とした空間にそれは突如として現れた。
一筋の光。
希望、期待を含ませた笑顔にグリンダとガヴィは驚く顔をしたが、モータルセンは何処か嬉しそうに喜んだ。
「おっさん、何か掴みやがったな……。」
「そうかもしれないね、全く……ここが墓場かと腹を括ったんだが二人のお蔭だね……それにガヴィ君、君には言葉だけでは言い表せきれない程の感謝しかないよ、娘を庇いながら良く耐えてくれた。今度は僕が気張る番だ。そこで休んでいてくれないか?」
モータルセンがそう言うとガヴィは気の抜けたように座り込み、グリンダは揺れる視界の中、小さく〝父さん〟とだけ呟いた。
「うん、悪くない……親として子を護るのもまた喜びなのだから……漲るよ、グリンダ。」
そう言い切るモータルセンの身体から淡く光る魔素の波が彼の身体に纏わりつき、状況の変化を告げると、グリンダは力なく微笑み、ガヴィは幾分の羨望を含んだ嫉妬を滲ませていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




