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ネメシスト  作者: ユキ サワネ
一章 ワールローの亡霊
13/20

十三話 靄

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的と本格的に書き始めました。

それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。


この作品は完結まで書く!

 そこは、ただ白く自身の足音すらも聞こえない。


 いくら走ろうとも、いくら呼べど、反響すら無い。


 「これは、あれだな。道に迷い込んだというより未知に遭遇した感じだな。グリンダ達は無事かな?」


 もうどのくらい彷徨っているか分からなくなってきたモータルセンは歩みを止め思考へと移る。


 記憶にあるのは卒学試験二日目の終了直前、大事に至らず順調に〝日程〟を終えた全隊の報告後、翌日に向け隠密科の正規職員であるモータルセンはルート確認の為にグリンダ達に先駆けていた。


 気付けば周囲を靄(もや)で埋め尽くされそうになり、急ぎ通ってきた通路の壁や床に暗号化した魔道具を幾つか落としてきた。


 出立前、避難・警戒用の魔道具の整備をしていた折、グリンダ達と話していたそれを仕掛けた。


 靄の様子から察するに感じた魔素は常軌を逸する。


 そして事前にナイルらの話を聞いていた分、モータルセンは状況を飲み込めており緊張はあれど混乱は無い。


 「さてさて……聞いてた通りの話なら僕の命日は今日になるのだろうね。」


 誰も居ない場で誰に語りかける訳でもなく一人モータルセンは腹を括りつつ、その場に座り込む。


 すると微かな振動が身体を伝って、その感触に暫く充てられていたが次第に心地良さに負けてしまう。


 いつから眠りこけていたのか気が付けばモータルセンは靄が晴れていた事に驚くがそれよりも自身が眠りについていたことに驚きを隠せない。


 今ではパノラで冒険者、特に斥候の卵達を育てる最高級教官なのだが、冒険者としても現役時代は腕が立った部類。


 やわな鍛え方はしていなかった上に、職業柄、習慣として身に付けた眠り耐性も今回役に立たなかった事は一目瞭然なのも理解できていた。


 寝起きのその場より真っ直ぐに、距離にして約五歩分の場に揺らめく蜃気楼が立ち込めていたからだ。


 いよいよもって、モータルセンは逃れらない現実を受け止めると冷や汗を流しつつも薄ら笑いを浮かべ自身の宿命と向き合いゆっくりと立ち上がると即座に仕込み刀を素早く抜刀した。


★★★


 「卒学試験は中止して引き返すべきです!彼は元とはいえ【十一足(リッチオ)】なのですよ!」


 グリンダ達隠密科教官はモータルセンの定時連絡が無いことで跡を追い、見つけた魔道具を手にセーフポイントにて本部と連絡を交わしていた。


 隠密科の掟の一つ、要警戒事案が発生したら色別の印を暗号化して必ず仕掛ける事。


 翠、黄、赤、黒の四色に分け、その危険度を表す。


 翠や黄なら日常茶飯事、赤なら高級迷宮でない限り見ることは無く、黒はそれ以上の厄介事という意味合いなのだが、見つけて解読した暗号の色は〝黒〟であった。


 これには本部の監視組も動揺を見せる。


 ザウバースとブランディーの意見は真っ向から二つに分かれ、雰囲気は至極劣悪。


 卒学試験を即刻中止し、モータルセンの救援に向かうべきと吠えるザウバースを頭ごなしに否定し卒学試験を強行しようとするブランディーの衝突は思わぬ形で代償を払う事となる。


 本部で対立意見が熱を帯びてゆく最中、グリンダは異変の元凶となった場に向かうべく装備を整え始める。


 その異様な雰囲気から緊急連絡を受け別働隊として分かれていた其々の高級冒険者達が駆けつけてきては、彼女を冷静にするよう説得を試みる。


 しかし、彼女は一切話を聞こうとせず場はより緊張が走ると、一本の柏手が鳴った。


 「はーい、注目!」


 その声の主は意外にもガヴィだった。


 普段の彼なら煩いと血気盛んに叫ぶ所なのだが、やけに妙に落ち着いていた。


 「そうだな……まず、お前等落ち着けよ。それでも高級冒険者か?学徒らがすっかり尻込みしてるじゃねぇか。それからグリンダ。お前の気持ちは理解してる、俺も手伝ってやるからそう急くな。」


 やはりいつものガヴィではないと彼を知る冒険者一同は思うも、ガヴィは淡々と語りながら歩み寄るとナイルを始め数人の冒険者に指示を出す。


 「ガヴィ……お前熱でもあるのか?」

 「煩え、シバくぞナイル。黙って言う通り動け、阿呆共。おい、グリンダ。確か……モータルセンって斥候初の【七ツ星級(セプテット・クラス)】だったよな?」


 ガヴィがそう言うと、一つ返事でグリンダは返す。


 「そうか、姿を見なくなってどのくらい経つんだ?」

 「定時連絡は二十分刻みだ。そこから捜索して本部に連絡してからだから……もう小一時間は経つ。」

 「そうか、ならまだまだ猶予はある。いいかお前等、今の俺達が出来ることは少ない。より被害を小さくするならばナイル、お前等の活躍の出来次第だ。」

 「ガヴィ……あんたやっぱり何か知ってんだね。」


 グリンダが問いかけると少々不機嫌な顔をしながらガヴィは何か言おうとしたが、ほくそ笑みながら少しを間を置いて語る。


 「……俺でもまだ謎はある……が、それを確かめる。俺の知る限りじゃ、モータルセンはそうそう死にゃあしない。心配すんな。」


 それでも、状況が良くない方に動いていることは間違いないと冒険者の勘が教えてくる全員はガヴィの豹変ぶりに改めて驚くが一番驚いていたのはグリンダだった。


 何故、普段は粗野な蛮族という言葉がぴったりな目の前の男はここまで未知なる事態に落ち着き払っているのか、それよりもナイル達に出した指示があまりにも的を得ていて、実は腹芸が出来る性だったのかと感心さえした。


 「とりあえずこの場は俺とグリンダだけで捌く。全員生きて帰りたきゃ、言う通りにしろ。説明なら生きて帰れたらしてやる。だからお前等死ぬんじゃねぇぞ……」


 D(デルタ)ブロックから二人を残して全員撤退した後、人差し指を天に向け二度折り曲げたガヴィはグリンダに耳打ちをすると、グリンダは驚き慄(おのの)く。


★★★


 「何を勝手しとるんだ!馬鹿者共!これだから高級冒険者というのは!」


 本部の熱を割くようにブランディーが激昂するとザウバースですら静かに耳を傾ける。


 「いえ……D(デルタ)セーフポイントにて靄が発生した影響で各部隊の緊急退避……事前に察知したガヴィが指示を出したらしく……。」


 ブランディーが胸ぐらをつかんでいた監視職員がそう言うとザウバースがようやく口を開く。


 「何か知ってるんですね?ブランディー殿。」


 だが、ブランディーの反応はまるでない。


 「答えろ!ブランディー!」


 温厚な性格で知られるザウバースの豹変ぶりに周囲は驚き、鎮まるが、業を煮やしたザウバースは他の監視職員達に増援と救援の指示を出す。


 「覚悟はお有りと見受けますので、事が終われば査問会にてお聞きします。」


 暫くその場は妙な重苦しい空気を纏っては誰もがその状況から逃げたくなる想いに駆られていた。

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが

一身上の都合により不定期更新となります。


また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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