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ネメシスト  作者: ユキ サワネ
一章 ワールローの亡霊
12/20

十二話 静かなる歩み

いつも読んで頂きありがとうございます♪

ストレス発散目的と本格的に書き始めました。

それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。


この作品は完結まで書く!

 爆音と爆風が一面を支配すると、ベルラ・マルゼーは踏ん張りを効かせ、一間半の距離に留まると、にんまりとしながらテルギースに視線を戻す。


 「流石は【八ツ星級(オクテット・クラス)】半端ないですね……いやはや、世界はやはり広い……ガルバス自由国、ハッハッハ!」

 「……その胸の白い鼠徽章(きしょう)が示す通りの実力は、やはりパノラ最強の呼び声。だが……何故三馬鹿(バカトリオ)の肩を持つ?」


 マルゼーはワールローの道案内役を三兄弟に頼んだつもりだったが、それが次兄エスバルの悪巧みで担当教官のテルギースを打ち負かせば道案内を買って出ると戯言を吐いたことが理由だが、そうなった主な発端はマルゼーはその教官というのが幾度か耳にした名であった事からその戯言を呑み込んでしまう。


 「これ程の手合わせが出来るのは武人の誉れ!何故貴殿らはこの御人から逃げておるのか皆目理解不能です!」


 マルゼーの感情剥き出しの嬉々とした表情にエスバルは青ざめていたが、サイラスは覚悟を決め直した様に歩みだし、ノランは足下に転がっている木剣を片手で拾い上げ、ただ握りしめていた。


 ただただ打ち込みに駆け出すサイラスは木剣を振り回してはテルギースに向かって行くのだが、テルギースはそれらを全て捌き、木剣の柄をサイラスの胸当てに当て身してはその場を一歩も動かない。


 それどころか傍から見れば片腕一本で相手しているように視える。


 「フム……冷めた視線に舐めた態度、とても訓練とは言い難く、指導とも呼べず……双方のっぴきならない理由があるんでしょうね、見た処御三方とも貴族でしょう、それもかなり高潔の。」

 「……えぇ。」

 「いやさ、ウチの親父が突然、あの化物に教えを乞えとだけ言って押しつけやがったんだ。こっちは剣どころか体力事なんて無縁で良いって散々教えられてきたのに、何を今更ってさ!何が楽しくて剣なんて泥臭いモノ握らなきゃならないんだ。」

 「……ふむ、貴族なら私兵団を囲えば良し、金に物言わせてやりたい放題出来る合法たる愚の極み。強(あなが)ち間違いではない教育方針、納得です。」


 エスバルの歯に衣着せぬ物言いに負けじとマルゼーも歯に衣着せぬ。


 そうはあれどマルゼーはノランに視線を向けずとも気配はしっかりと向けていた。


 エスバルを気にかけているように魅せる視線とは別に。


 「ノランとエスバルと言いましたね?弟君がその化物にボコボコにされているが加勢しないのかい?」

 「冗談キツイぜ、マルちゃん。俺なんかが加勢した所でボコボコになるやつが一人から二人になるだけ。この美顔が醜くなるのは御免だ!」

 「……。」


 マルゼーは武人以外の扱いは苦手な一面があり、それは自覚している。


 だが、この時だけはいつも通りのように知らぬ顔をしてはならないような気に駆られた。


 その理由を探るのだが、今はまだ見つかりそうにない。


 「そうだな……。先ずはその白く薄っぺらい腕を鍛えねばなりませんね!」

 「聞いてた!?俺は剣も体力事も興味ねぇって言ってんの!」


★★★


 宵闇に浮かぶ蒼白い壁を背にマルゼーは一杯の盃を差し出しながら、テルギースに手渡し、自身の持つ盃を豪快に平らげる。


 それを見てテルギースもまた、一口で呑み干すと、空になった盃を傍らに置く。


 「おっ、いける口ですねテルギース殿。」


 そういうと間髪入れず二杯目を注ぐマルゼーは妙に嬉しそうである。


 結局、三兄弟からしてみればマルゼーに裏切られるという予期せぬ形で二名の化物に扱(しご)かれる羽目となって、そんな三兄弟を宿舎に戻してからも訓練場にその化物二名は相対して話に興じている。


 「これはパノラでも最高級品の蜜酒でしてね。これを口にすれば他の酒は呑めなくなるほど美味なんですよ。まぁ、貴方には大した効果は有りそうもないですけど。」

 「いや、そんな事はない。程良い酸味に果実を思わせる二種の甘い蜜……花朱雀(ハナスザク)の蜜だな。これを醸造した造り手の情熱は恐れ入る。」

 「正解です!いやはや、【八ツ星級(オクテット・クラス)】ともなると冒険者の腕だけでなく舌も肥えるものですね。そうです花朱雀の蜜なんですが、これを口にした残念な貴族は皆、蜜月華(ヒメバナ)の蜜だと言い張るのです。全くもって話にならなくて。そんな相手との話なんて右から左に流しちゃうんです、僕。」


 花朱雀は別名【闇祓い】とも呼ばれ、厄災を祓う花として、とても稀少価値が高い。


 「それで、俺に何を語れと?この酒を出したのはそういうことなんだろ?」

 「ふふ。もう一つの意味をご存じでしたか……いやね、貴方が彼等の親に頼まれたとは言え、どうしてあれらを手解きしているのか興味が湧きまして……。」

 「腐れ縁だな。」


 呆気なく本音を曝け出したテルギースからは嘘の気配は微塵もなく、まさかと思い酒瓶を覗くマルゼー。


 それも、二度見に留まらず三度見する。


 「何を驚く必要がある?答えに嘘はないぞ。」

 「えっ……あぁ、そうですか。やはり、貴方は只者じゃ無いですね。」

 「ふっ。酒が古くなっていたのではないか?酸化が進めば、やたら甘ったるくなって本来の持ち味である自白剤変わりには不向きだと聞いた覚えがあるぞ。」

 「う〜ん……確かに甘ったるいですね。僕もうっかりしていましたよ。」

 「そうだろ。ところでマルゼーは何故またワールローへ?パノラの重鎮らが手放しで〝首席〟を外へ出すとは余程のことじゃ無い限りあり得ない。最初にあの三馬鹿が連れてきて名乗りを聞いた瞬間、耳を疑った。」

 「う〜〜ん……聞きたいです?」


 擁壁上に腰を掛け、片脚を伸ばすテルギースの横に胡座をかきながらマルゼーが構えると、視線をテルギースから夜空に散らばる星々へと移す。


 知人から頼まれて人捜しに来たが、端からワールロー一択しか選択肢が無かった事や、その知人の旧い知り合いを捜す旅。目的の期限は恐らくベルラ・マルゼーという男の生命が尽きるまで。


 「それは、粋な知人だな。パノラでは首席になれば、その生涯は華やかで隠居しても死ぬ迄豪勢な生活が約束されているのだろう?それを捨てさせても旅をさせるのは……果たしてどっちの意味だろうな。」

 「ふふ、テルギースさんは意地悪な人ですね。……そうですね、この決断はパノラのためでもあるのですよ。僕が居座り続ける意味はもう無くなりました。なので、僕が空けてきた席には今後、一体誰が座るのか実は楽しみなんです。一生安泰が欲しくて冒険者になったわけじゃ在りませんからね。〝首席〟はそういった志の者が座ればいい。腐っていても首席ですし、引きずり下ろしたければ実力で引きずり下ろせばいい。それがパノラなのですから。そんな事よりも僕はこの逆懲罰を楽しみたくって……」


 そう言いながら徐に帯刀していた黒鋼の大剣を鞘から抜いて刃先を天に掲げながら、それを片目で眺める。


 「この相棒を更にもう一段向こうの世界に連れて行くほうが、よっぽど楽しいですよ。」

 「名剣によく似合う名言だな。」


 テルギースはそっと互いが相当鍛え上げられてきた経緯とその険しさを悟り、そして讃えながら微笑むと、マルゼーは堰を切ったかのように溢れてきた得体のしれぬ感情を指で押さえつけては不思議に感じていた。


 剣を交えてたかだか一日も足らぬ出逢いであるにも関わらず、どこか懐かしくも恥ずかしくもあるからか、はたまた同じ大剣使いで上には上が居ると知れたからなのか、見透かしたかのような視線に気付いてしまったからか、よく分からぬ感傷が酷く懐かしく感じた。


 「ならば、こうして会った縁だ。三馬鹿の手伝いをしてくれるようだし、俺はその旅の手伝いをしようじゃないか。ましてやワールロー内での長い活動ならばというのなら、尚の事。」

 「えぇ、よろしくお願いします。」


 静寂の宵闇の下でそれは静かに歩み始めた。


 「あ、気にするな。お代は三馬鹿にきっちり支払わせるから。」

ここまで読んで頂きありがとうございました♪

極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが

一身上の都合により不定期更新となります。


また次話読んで下されば嬉しいです♪


書き溜め… …_φ(・_・

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