十話 国境都市
いつも読んで頂きありがとうございます♪
ストレス発散目的と本格的に書き始めました。
それでも拙い文章力ですが最期までお付き合い下さい。
この作品は完結まで書く!
ミストラル大平原内の北部に位置する大きな国境都市、〝ウィンブリー〟。
難攻不落の城塞都市とも呼ばれ〝ワールロー〟よりも都市の規模は広く、生活水準も高い。
というのも、そもそも国境都市として繁栄してきた経緯は遠い昔、ミストラル大平原やガルバスとパノラの国境線に位置する山脈や森林に跋扈する迷宮や魔物との防衛戦線の為に両国が資材を投入して出来た、世にも珍しい都市。
ゆえにこの都市はガルバス領内都市でありながらも様々なパノラ大国文化も入り交じる多様な背景を持つ。
遡る事大陸暦前に誕生した城塞都市なのだが当時小国で発展途上国であったパノラ国。
維持管理能力や防衛力の規模で大いに勝るガルバスに大半の都市運営を任せていたが、時代が進むにつれ徐々に力をつけたパノラが半分負担を担うようになり、ガルバスはすんなりとそれに応じた。
そもそも元を辿れば、ミストラル大平原はパノラ人が切り拓いた開拓地であったのだが、大陸暦前、その長い時代、その地域に蔓延った迷宮群の脅威に晒されていた時代、大陸王と後に崇められる英雄的な冒険者ピート・フォン・グラーフが、ガルバスに誕生してからパノラ人と協力して周辺地域を平定したのが始まり。
その英雄は、土地に眠る魂や土地神といった類の声はパノラの先人達と位置づけ、時がかかろうとも、いずれはミストラル大平原をパノラ国へ返還する条約を交わしたが、時代の流れでパノラ大国は両国の管理地として位置づけた。
そこにはパノラが大国と成し得たのはガルバス自由国の存在が大いにあったことも然ることながら、自国の隣国の脅威も入り混じる複雑な国交情勢が存在していたからで、五百年以上も力を貸し続けてくれてきたガルバスに半ば遠慮していたが、ガルバスもまた初代王の誓いに背く事に難を示し、折衷案、いわゆる落とし所を探った結果、二国間統制という複雑怪奇な都市として、また、数多くの脅威を阻んできた歴史的に大変な価値のある都市として存在する。
そんな背景から、〝ウィンブリー〟も冒険者稼業が盛んであり、日夜問わず迷宮や野戦が活発なわけだが、〝ワールロー〟と明らかに違うのは、異種族の冒険者がとにかく多い。
犬狼族、猫虎族、といった人族と容姿は大差ない種族もいれば、竜人族や精霊族といった明らかに容姿に特徴のある種族も存在し、互いに尊重し合って暮らしている。
その種族数はゆうに百は越える。
そこでは人族は主に種族間のまとめ役として位置しているがそれは、多種族混成の文化にある。
――ウィンブリーはパノラの母である――
その一小節は何よりも大陸王、ピート・フォン・グラーフの存在がそう根付かせた。
過去に失われていた人族と多種族の溝を埋めるだけでなく後世にまでその〝和〟を繋げられるようにと当時の人並み外れた知能と魅力で彩られた大いなる功績をかの英雄が残した。
それでも全てが納得されているわけではないが、世の誓いとされた為にほぼ大陸全土に認知されている。
ゆえにその血を引く者、人族は中立の象徴として位置づけられた事が理由である。
世界各地にパノラ人の血は点在するが、国境都市ウィンブリー以上の文化や拠点は無い。
言い換えれば、それは世界各地の多種族にとってウィンブリーは聖地であり、故郷である。
「君達は改めて認識せねばならない、このパノラに産まれて育ってきた事がどれほどの幸運かを。」
そう声を張り上げて教鞭を揮う男に何百もの若い芽が静かに耳を傾ける。
そこは、【ノヴィス・ラ・ヴォロンテ】という名のウィンブリーの冒険者の卵達の学舎。
「本日より三日間に及ぶ卒学試験を行う。各隊、持ち場へ集合しなさい。担当教官の指示に従い、速やかに、かつ、丁寧に試験に臨むのデス!」
快活な声色に学徒達は各々活気づくと其々持ち場へと向かう。
意気揚々に声を張り上げる者、緊張に塗れながらも圧し殺す者も居れば、欠伸を見せながら気怠そうにする者も一人残らず全てはこの日の為に培ってきた力を遺憾無く発揮させようと臨んでいく。
担当教官から手渡されていた通信魔道具から課題が出題されると、一斉に各迷宮へと姿を消してゆく。
「今年もついにこの日を無事に迎えましたね。」
「えぇ、学長。今年は中々粒揃いですからね。期待出来るでしょう。」
長く綺麗な緑色髪、それより少し明るい色味の瞳の精霊族の女と猛々しい体躯はさながら鋼の鎧かと思わせるほどの筋肉質な竜人族の男はそう言葉を交わしながら、学徒らを見送る。
「中でも学長の御孫さんは心配要りませんね。この程度の卒学試験なんぞ、屁の河童でしょう。」
「ゼラークス、あまり私の孫に肩入れせぬようにと申しておりましょう。気持ちはまぁ……解らなくもないですが。」
「ハハハ。良いではありませぬか。なんたってあの、〝泣きやんぼ〟なのですから……本当逞しくなったものです。」
ゼラークスがそう言うと、学長はしんみりとしつつ懐かしさに心を委ねた。
★★★
「ラインヤール!今だ、やれ!」
「よっしゃ!」
意思の疎通がしっかりととれた掛け声が迷宮に轟くと、ラインヤールの重い弓槍は唸りを上げながら敵を貫く。
途端、魔物は魔石を落としてその醜い姿を粉微塵も残さず消え去った。
「余裕だったな、ユカ。」
ラインヤールがそう言うと、ユカと呼ばれた短い緑色髪の女は油断大敵といった様子で自分が率いる隊員達に目を配らせる。
その反応にラインヤールは余裕綽々といった様子で水を差すが、それをユカは制する。
――冒険者よ、驕ることなかれ。それすなわち堕ちること痴れ――
かの英雄が遺したとされる一文に深く感銘を受けてきたユカにとって、その言葉は最早座右の銘である。
迷宮に油断は必要皆無。
例えそれがどんなに低級であろうとも。
「高級冒険者を目指してる奴の台詞とはとても思えないぜ?」
「その高級冒険者が遺した言葉だよ。」
ラインヤールの吐いた言葉にユカは即座に言い返し、隊を引き締めると更に迷宮奥へと歩み始め、しばらく経過した頃ユカはラインヤールに問う。
「ラインヤール、君はこの卒学試験どう感じている?」
「ん?味の無い不味い飯を食わされている気分だ。」
実のところユカにもそれと似た感情が犇々と心の隅で蠢いていた。
慣れた場でも入学直後は相応の苦労があったが、それから七年も経てば、目を瞑っていても魔物を払える場で一体何を得られるというのか。
そう口に出したかったが、呑み込んでいた。
――きっと教官たちの目論見が何かあると信じて突き進む――
「やぁ、お疲れ様。Aブロックはやはり君達の隊が一番乗りか……。」
幾つか区分けされて配置された迷宮ルートには教官達が罠や魔術を道中に仕掛けていたが、難なく乗り越えてきたユカ隊は魔物の不可侵結界領域内、〝セーフポイント〟に辿り着いていた。
「お疲れ様です。ナイル教官。」
ラインヤールはナイルに挨拶すると、ナイルは自信作の魔術罠に引っかからなかった悔しさをほんの少し滲ませながら、挨拶し彼等を労う。
「じゃあここまでの迷宮成績を拝見するよ。」
ナイルがユカ隊の持つ通信魔道具を受け取り記録された成績情報を試験本部に通知し終える。
「流石……と言うしかないな。初日で大台の数字とは恐れ入るよ。」
試験開始から第一地点までの踏破に要した時間や魔物の討伐数、回収した魔石の量など幾つもの項目の査定が完了すると、初日における課題は文句無い達成といえた。
「ナイル教官、少しよろしいでしょうか?」
他の隊が来ない内に道中、隊の中で話題に上がっていた卒学試験についての詳細や狙いを聞くためユカは切り出すが、ナイルはそれを察して……というよりも毎年必ず誰かしらが聞き出そうとするためにユカのように優秀な逸材はやはりかと彼は読んでいた。
「聞きたいのは卒学試験の真の狙いについて……だよね?」
ナイルの返答にユカだけでなくユカ隊の五名全員の表情筋が一瞬動いたのを見逃さずにいたナイルは笑いながら話す。
「そもそも、僕だってここの卒学者だし、当時の教官に聞いたもんさ。『こんなにも簡単で退屈な試験が最終試験なのか』ってね。当時の教官は『卒業してから判る事だ。』って一言くれただけだったけど、迷宮攻略においてこの試験はどれくらい基本中の基本を守れているかを確認する場さ。後はそうだね……うん、今は全部教えない方が今後の君達の為になると思う。特にユカ隊は稀に見る優秀な隊だけにね。」
「ナイル教官、それでは答えになってないッス。」
「なら、ラインヤール君に問うが、足を踏みいれる度、迷宮は魔物の数や罠などについて逐一語ってくれるかい?」
そう問い返されてはラインヤールは、はっとするも、構わずナイルは話を続ける。
「君達に限らず、卒学者は皆、迷宮慣れすると気が緩んだり、経験上から来る固定概念によって視野は狭くなるものさ。相手が格下の魔物であろうとも一つの油断で生命を落とす事さえ日常茶飯事。巣立ち直前に低級迷宮でそれを改めて認識させるのは、この卒学試験の本題、驕れば堕ちるという格言を忘れていないかどうか何だけど……そこから先は自身の目と心で知るべきさ。気休めだけど、僕が知る限り、この隊の面子は着実に成長すれば皆数年後には【七ツ星級】の高級冒険者に成り得る可能性が高いと思っている。だから君達が壁にぶつかる事はあっても、堕ちる事はないと信じている。焦って深読みはしなくて良い、この数年間の培った力を発揮してくれ。」
そう言い切ったナイルの微笑みは普段、魔道具や魔術の講義では見ることの無かった程に優しさに満ちていた。
それから幾度も普段知り得なかった話題に転じてゆくと、ユカ隊は教官の意外な一面を次々と知ってゆくのだが、そのどれもが実に新鮮に感じ、ユカは幼き日の想い出を重ねながら話に興じた。
★★★
「ナイルめ、相変わらず甘い奴だ。」
「そうかい?僕は彼が適任者だと思うんだけどなぁ〜。」
「ナイルは良い奴、出来る奴。」
「学舎の本分は学徒を導くことだけに非ず。ゆえに巣立つ雛の為を思えばこそ……彼に非があるとは思えんがな。」
「馬鹿を言え、教官として毅然とした接し方を守れていない。冒険者としてどう有るべきかを説くのは無事に冒険者になってからすればいいだけの事。ナイルはそれを自覚すべきだ。」
「お前等、良くナイルさんを責めれるな。大先輩なのによ。」
「確かに、一理有るがこれはナイルさんを思えばこその議論なのですよ。」
卒学試験では、携帯した魔道具に映像記録が残る。
複製されたその記録を本部の職員たちや臨時雇用の冒険者達がその是非を判定する仕組みだ。
ゆえに数人の職員や臨時雇用の現役冒険者達は今回の期待の新星達の担当教官に対して口々に好き勝手判定していた。
それを観て古参の学舎職員はその渦に指を差しては何故、学徒ではなく高級冒険者であるナイルの判定をしているのかと隣にいる副官に尋ねるが副官は、さらり、と答える。
「何だかんだ皆ナイル君が好きなのですよ、ブランディー様。何より、初日の映像を観て下馬評通り、指摘する部分というのが極端に少ないユカ隊です。隊長が役割をしっかりと果たせていたので大きな問題もなく当然なので、矛先が弄りやすい同僚に向いてしまうのも頷けましょう。」
「ふむ……。まぁユカ君の所だからな、ザウバースよ、他はどうなっとる?」
「はっ。現在各ブロック概ねに初日を終えて翌日準備に余念がない……と言えます。各教官たちからも評価が届いてきおります。」
本部の監視代表、ザウバースはブランディーの下へと歩み寄り、抱えていた資料を差し出すと、ブランディーはそれを受け取り、目を通す。
「やはり、豊作……であるな。実りが多くて結構!ガハハ!」
特徴的な豪胆な笑い方は、その図体によく似合う壮年の牛人族ブランディー。
自身もまた冒険者上がりとあり、謂わば学徒達の大先輩である。
可愛い後輩達の巣立つ場面を今年も総責任者としてその役目を全うするのだが、最後にそっと呟いた一言は隣に立つ副官すら聞き取れない程の声量であった。
「これなら、精霊族の生き字引めの計略にも納得せざるを得んな……。」
ここまで読んで頂きありがとうございました♪
極力サボらず毎日マイペースで少しずつ書き出してますが
一身上の都合により不定期更新となります。
また次話読んで下されば嬉しいです♪
書き溜め… …_φ(・_・




