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『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて行く』  作者: カワカン
黒田の台頭 1

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第八話 鉄と米

宍粟から、一人の国衆が松姫の元を訪れていた。

松の前に通されると、国衆は一礼する。


「松姫様」

「遠いところをご苦労さま。今日は何かしら?」


国衆は、少し言いにくそうに口を開いた。


「鉄のことでございます」

「先日、頼家から黒田様が鉄を仕入れてたいと伺いまして」


松は頷く。


「ええ。これからも必要になるでしょうね」


国衆は、少し間を置いて尋ねた。


「……本当に、銭ではなく米で交換してくださるので?」

「ええ」


松は頷いた。


「銭でもいいし、米でもいいわ」


国衆は少し驚いた顔をする。


「どちらでも、ですか?」

「ええ。こちらは鉄が欲しい。そちらは銭か米が欲しい。それだけの話でしょう」

「しかし、米では……」

「構わないわ」


松はそう言って、国衆を見る。


「ただ――」


少しだけ表情を変えた。


「根本を晴らさなければ、領民はまた飢えると思いますよ」


国衆は黙った。


「……根本、でございますか」


松は国衆を見る。

国衆は聞く

「黒田を討てば、米が増えるのですか?」

「では、黒田がいなくなれば、来年から飢えなくなる?」


国衆は答えられない。

松は静かに続けた。


「それでは、また同じことになります」

「……」

「すなわち――」


国衆は意を決したように尋ねた。


「黒田を討て、と?」


松は少し笑った。


「それも根本かもね」


そして、首を横に振る。


「でも、もう一つ根本があるでしょう?」

「……?」


松は淡々と言った。


「政秀様に従わなければいい」


国衆は、言葉を失った。


「……すなわち、 義祐様派に下れと?」


松は首を横に振る。


「別に、そうしろとは言っていないわ」

「では……」

「小寺でもいいし」


松は微笑む。


「黒田でもいいわよ」


国衆は、松の顔を見つめた。

松は、どこにつけとも言わない。

ただ、政秀に従い続けることだけが道ではないと告げている。


「……」


国衆は深く頭を下げた。


「よく考えてみます」


国衆は頭を下げた。

そして、ふと思い出したように尋ねる。


「もう一つ、お願いがございます」

「なに?」

「宍粟のほかの者にも、米を売っていただけないでしょうか」


松は少し考える。


「いいけど」


国衆の顔が明るくなる。


「ありがとうございます」

「ただ――」


松は念を押す。


「そこまで多くないから、気をつけてね」

「承知しました」


国衆は再び頭を下げた。


姫路を出る。

馬上で、先ほどの松の言葉を思い返していた。


政秀様に従わなければいい。


次の徴収が来れば、また米を出さねばならない。

領民の手元から、また米が消える。


「……拒むか」


国衆は呟いた。

それとも――。


米を隠すか


まだ、決められない。

だが今まで考えもしなかった選択肢が、頭から離れなくなっていた。




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