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『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて行く』  作者: カワカン
黒田の台頭 1

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第七話 ずっと動く黒田

龍野。

政秀は、届いた報告を聞いていた。


「黒田が、また動いております」


政秀は眉をひそめる。


「……またか」


高岡で戦った。

室津へも横やりを出してきた。

小寺とも睨み合った。


それだというのに――


「黒田は、ずっと動いてくるな」


大軍ではない。

だが、山間へ兵を出すことを止めない。

政秀は、地図へ目を落とした。


「兵は、そう多くはありません」

「分かっている」


だが、その少ない兵が山へ入り、出ていく。

一日だけではない。


翌日も、その翌日も。


「こちらが兵を休ませれば、黒田は動く」


政秀は苛立たしげに呟いた。


「いったい、何をしている?」


そこへ、砦からの報告が届いた。


「申し上げます。山間の砦への補給が、滞っております」


政秀の眉が動く。


「……補給が?またか」

「はい。荷を運ぶ者が、黒田の兵を恐れて山道を避けております」


政秀は地図へ目を落とした。

黒田は砦を攻めているわけではない。

ただ、山を動き回っている。


それだけなのに――兵糧が届かなくなっていた


政秀はしばらく黙っていた。


「砦の兵を増やせ」

「はっ」

「籠もっていれば、黒田もそう簡単には手を出せまい」


家臣が頷く。

だが、政秀はすぐに続けた。


「それだけではない」


地図へ指を置く。


「山道を巡回させろ」

「黒田がどこにいるか探せ。荷を通せる道を確保するのだ」


砦から兵を出し、山道を見回らせる。

黒田が現れれば追う。

補給の道を開ける。


「承知しました」


家臣が下がる。

政秀は地図を見つめた。

砦を守る兵を増やし、そのうえで山へ巡回を出す。

黒田を追い払うためには、それしかなかった。


政秀は、しばらく地図を眺めていた。


「……だが、砦から巡回を増やせば、その分だけ砦の兵が減るぞ」

「黒田は、それを狙っているのかもしれぬな」


家臣は答えなかった。

砦を強くするために兵を置く。

だが、砦から出なければ補給路を守れない。


補給路を守るために兵を出せば、今度は砦が手薄になる。


「厄介なことをする」


政秀は苦々しく呟いた。


「こちらが動けば、また黒田が動く」

「ならば、こちらも巡回を増やすしかない」


政秀は決めた。


「砦には兵を残せ。外へ出す兵も惜しむな」


黒田を山から追い払わなければ、砦はじわじわと弱っていく。


「……小勢のくせに、面倒な奴らだ」


政秀は、そう吐き捨てた。

政秀は地図を見つめた。

黒田は、まだ動いている。


少数の兵を山へ出し続けているだけだ。

それなのに、こちらは砦を守る兵を増やし、さらに巡回の兵まで出さねばならない。


「……こちらから攻めることもできぬ」


室津で兵を失ったばかりだ。

小寺とも睨み合った。

今、大きく兵を動かせば、内側が崩れる。


政秀は息を吐いた。


「ならば、砦を固めるしかあるまい」


黒田が山を駆ける。

こちらは砦を守る。

そのために兵を増やす。


巡回も増やす。


そして――補給を通す。


「黒田め……」


政秀は地図から目を離した。


「小勢で、こちらの兵を縛りおる」


まだ、決定的な戦ではない。

だが、黒田が動くたびに、政秀の側は対応を迫られる。

そのことだけは、はっきりしていた。





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