↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて行く』  作者: カワカン
黒田の台頭 1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/116

第六話 政秀、龍野

龍野。

政秀は、室津から戻ってきていた。

室津の襲撃そのものは、成功した。

奪うことはできた。


高岡で負った損害を埋めるための兵糧も、銭も、ある程度は手に入った。

これで兵を養い、戦力を立て直せる。

そう考えていた。


高岡で負った傷が、まだ癒えていない。

ならば、休んでいる場合ではない。

奪えるところから奪えばいい。


室津を切り取り、それで失ったものを取り戻す。

そのつもりだった。


――だが。


「……黒田の横槍が入ったか」


政秀は、室津で失った兵の数を聞いていた。


政秀は、室津で得たものを改めて確かめていた。

兵糧。銭。

これだけあれば、しばらくは兵を養える。

高岡で失ったものを、少しずつ取り戻せるはずだった。


「室津を取ったこと自体は、間違いではなかった」


政秀はそう考えていた。


問題は、その後だ。

横から入ってきた黒田によって、連れて行った兵を少なくない数、失った。


「……余計なことをしてくれたものだ」


室津を切り取れば、兵を回復できる。

その計算だった。

だが、得たものの一部を、また戦で失ってしまった。

政秀は、苦い顔で報告を聞いていた。



政秀が報告を聞いているところへ、別の知らせが入った。


「小寺が、動きました」

「小寺がか?」


政秀の顔が険しくなる。

室津を取ったばかりだというのに、今度は小寺まで出てきた。


「兵は?」

「こちらへ向かっております」


政秀はしばらく黙っていた。

室津に兵を置いておけば、小寺と正面からぶつかることになる。

だが、今の兵力ではそれも厳しい。


「……龍野へ戻る」

「はっ」


政秀は兵をまとめ、龍野へ引いた。

そして、残った兵だけでは足りないと判断する。


「領内から兵を集めろ」

「承知しました」


各地へ使いが走る。

やがて集まった兵を龍野へ入れ、どうにか小寺と睨み合えるところまで持っていった。

政秀は城から、その向こうにいる小寺の軍を眺める。


「……ここで動けば、また兵を失う」


今は戦うよりも、動かずに時を稼ぐほうがいい。



睨み合いは、すぐには終わらなかった。

政秀も、小寺も動かない。

兵を集めたところで、今すぐ決着をつける余力はない。


ならば――時間を稼ぐしかない。


日が過ぎていく。

やがて、田起こしの時期が近づいてきた。


「もう、兵を戻さねばなりませんな」


政秀は黙って外を見る。

農繁期になれば、召集した兵たちも田へ戻さねばならない。

ここで無理に戦を続ければ、来年の兵糧そのものがなくなる。


「……仕方あるまい」


政秀は兵を領内へ戻すことを決めた。

だが、戦が終わったわけではない。


高岡で兵を失った。

室津でも失った。

兵を集め直すためにも、銭と兵糧を使った。


政秀は残った蔵の中身を帳面にて確かめる。


「……足りぬな」


ならば、集めるしかない。

領内へ徴収を命じる。

銭も、兵糧も。


なんとか工面していく。

それでも、政秀の表情は晴れなかった。


室津を奪えば、立て直せるはずだった。

その計算は、黒田小寺の横槍によって崩れていた。


龍野の城内。

政秀は、集められた銭と兵糧の帳面を前にしていた。

なんとか工面はできた。


だが、余裕があるわけではない。


「高岡で傷つき……」


政秀は呟く。


「室津を奪って、取り戻すつもりであった」


室津は取れた。

だが、横槍が入った。

そして小寺まで動いた。


「……思うようにはいかぬものだ」


家臣は何も答えない。

政秀は、しばらく黙ってから地図を見る。


「兵が戻れば、また戦える」


今は農繁期。

無理に戦を続ける時ではない。

兵を休ませ、領内から徴収した銭と兵糧を蓄える。


そして――次の機会を待つ。


政秀はまだ、諦めてはいなかった。

舅を赤松宗家の当主に戻す

その考えだけは、変わっていない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。