↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて天下を目指させます~』  作者: カワカン
高岡合戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/50

第十二話 高岡合戦 帰還

高岡の外から、兵たちの声が聞こえてきた。


「戻ってきたぞ!」

「負傷者を先に運べ!」

「荷はこっちだ!」


源蔵の指示が飛び交う。

高岡に残っていた兵たちは、帰ってきた黒田、小寺の兵を迎え入れていた。

戦場から戻ってきた兵たちは、皆疲れ切っている。

衣服には泥がつき、濡れた具足を身につけたまま歩いている者もいた。

その後ろから、捕らえた赤松の兵や、戦場で得た武具、兵糧なども運び込まれてくる。

松は救護所から、その様子を眺めていた。


「負傷者はこちらへ!」


女衆が声を上げる。

松もすぐに動き出す。


「その人をこちらへ。傷を見せて」


次々と運び込まれる負傷者を、松たちは受け入れていく。

やがて、高岡の門の向こうから、見慣れた旗が見えた。


黒田の旗。

そして、その後ろには小寺の旗も続いている。


「……帰ってきた」


松は、門の方へ目を向けた。

高岡合戦を終えた黒田・小寺の軍が、ようやく高岡へ戻ってきた。


高岡の門をくぐった兵たちは、そのまま休むこともできず、それぞれの役目へ散っていった。


「負傷者はこちらへ!」

「捕虜はそちらへまとめろ!」

「運び込んだ荷は、一度数を確認してから倉へ!」


源蔵の指示が飛ぶ。

高岡に残っていた兵たちは、戻ってきた者たちを受け入れるために忙しく動き回っていた。

松も救護所へ運ばれてくる負傷者を一人ずつ確認していく。


「その人は腕を先に」

「はい!」

「こちらは出血が多いわ。早く」

「承知しました!」


戦場から戻った兵たちの顔には、疲労がはっきりと浮かんでいた。

それでも、高岡へ帰ってこられたという安堵もあるのだろう。

松はその様子を見ながら、ふと門の方へ目を向けた。

黒田の旗に続いて、小寺の旗も高岡へ入ってくる。

職隆、高友、そして官兵衛の姿も見えた。


「お帰りなさいませ!」


高岡の兵たちから声が上がる。

松は、その中から官兵衛の姿を探した。

やがて官兵衛が馬から降りる。

疲れてはいる。

だが、無事だった。

松は小さく息を吐いた。


「……よかった」


高岡は、守られていた。



職隆たちが高岡へ戻ってきたことで、ようやく戦場の様子が松にも伝わってきた。


「赤松は?」


松が尋ねる。

職隆が答える。


「青山まで退かせた」

「では……」

「高岡は守った」


松は小さく息を吐いた。

だが、職隆の表情は晴れていない。


「こちらも楽な戦ではなかった」


高友が続ける。


「兵もかなり疲れております。昨夜の雨で、さらに消耗しました」

「赤松も同じでしょう?」

「そうだろうな」


職隆は頷く。


「先鋒も大きく削れておる。だが、政秀の本隊まで潰したわけではない」


完全な勝利ではない。

赤松も高岡を落とせなかった。


黒田・小寺も、赤松を追い詰めきれなかった。

それでも、高岡を守るという目的だけは果たしている。

松は運び込まれた捕虜たちへ目を向けた。

その中には、先ほどまで戦場にいた赤松の兵たちがいる。


「……お父様」

「何だ?」


松は少し考えてから、職隆へ声をかけた。


「少し、お願いがあります」


松は、運び込まれた捕虜たちへ目を向けた。


「お父様」

「何だ?」

「捕らえた兵を、こちらに預けてもらえませんか?」


職隆が松を見る。


「捕虜をか?」

「はい」

「何に使う?」

「労力にしたいの」


職隆は眉をひそめた。


「労力?」

「砥堀で、人手が必要なの」

「しかし、敵兵だぞ」


職隆は捕虜たちへ目を向ける。


「言うことなんぞ聞かんだろ」


松は、あっさり答えた。


「聞くように取引をしました」


職隆の目が松へ戻る。


「……取引?」


松は頷いた。


「はい」


そして、少し離れたところにいた井上へ目を向ける。


「井上に捕らえられた、先鋒の将の弟です」


職隆も井上を見る。


「どういうことだ?」


井上が一歩前へ出た。


「姫様に、その者の嘆願を頼まれまして」

「嘆願?」

「はい。その者の命を助けてほしい、と」


職隆は頼家を見る。


「それを、姫と交換したのか?」

「左様です」


職隆は井上を見た。


「……いくら積まれた?」


井上は少しだけ間を置いて答えた。


「真綿の布団二枚です」


職隆の表情が止まった。



職隆は、しばらく井上の顔を見ていた。


「……真綿の布団二枚か」

「はい」


職隆は松へ視線を戻す。


「お前の考えが、よく分からん」


松は黙って聞いていた。


「だが、井上と話がついているのだな?」

「はい」

「その者たちを、領内へ置いても問題はないのか?」

「頼家に兵たちをまとめてもらいます。半年だけです」

「半年?」

「ええ。砥堀で働いてもらいます」


松は捕虜たちへ目を向けた。


「その間、こちらの言うことを聞いてもらう。その代わり、半年が過ぎたら解放するわ」


職隆はしばらく考えた。

捕虜をただ収容しておくより、砥堀で労力として使えるなら意味はある。

それに、すでに井上との話もついている。

頼家自身も条件を受け入れている。


「……分かった」


職隆が言った。


「お前の考えは、まだよく分からんが」


松を見る。


「井上と話がついている」


そして捕虜たちへ目を向ける。


「なおかつ、領内で暴動が起きないというのであれば、預けることにする」

「ありがとうございます、お父様」


松は頭を下げた。

職隆はもう一度、捕虜たちを見る。

戦場では敵だった者たち。

その者たちが、今度は砥堀で働くことになる。


高岡を守った戦のあと。

松は、戦場で得たものを、また別の形へ変えようとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。