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『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて天下を目指させます~』  作者: カワカン
黒田家に居座る

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SSU 養女になった松姫

 養女になって、しばらく経った。

 私は自分の部屋で一人、紙を広げていた。


「さて……」


 これからのことを考える。

 養父様の家――砥堀黒田家を、もっと大きくしたい。

 戦で武功を立てる。

 領地を増やす。

 それも大事だ。

 けれど、それだけではない。


「お金が必要なのよね」


 兵を増やすにも銭がいる。

 城を整えるにも銭がいる。

 道を作るにも、荷場を作るにも銭がいる。


 ならば――。


「稼ぐしかないわ」


 私は紙にいくつか思いつくものを書いていく。

 水車。

 農具。

 鉄砲。

 紙。

 布。

 船。

 現代で見たことのあるものを思い出せば、いくらでも出てくる。

 だが、すぐに筆が止まった。


「……待って」


 私は紙を見つめる。

 これらを作るには、どうする?

 私が工房を持っているわけではない。

 鉄を加工できるわけでもない。

 水車を組み立てられるわけでもない。

 鉄砲だって、知っているのは現代の銃の形や使い方であって、鍛冶の技術があるわけではない。


「職人を呼んで……試してもらって……」


 そこまで考えて、嫌なことに気づく。


「……銭、かかるわね」


 試作品を作る。

 失敗する。

 また作る。

 また失敗する。

 そのたびに職人へ銭を払う。


「開発って、結構お金がかかるのよね……」


 私は筆を置いた。

 せっかく黒田家を大きくしようとしているのに、私の思いつきで蔵の銭を減らしてしまったら本末転倒だ。


「うーん……」


 紙を眺める。

 作ってみたいものはいくつもある。

 けれど――。


「先に利益の出そうなものから、やろうかしら」


 私はそう呟いた。

 売ればすぐ銭になるもの。

 今いる職人でも作れそうなもの。

 失敗しても、家の負担にならない程度のもの。

 まずは、そこから。


「儲かったら、その銭で次を作ればいいものね」


 私は再び筆を取った。

 今度は「作りたいもの」ではなく、


**「今の黒田家で、作れそうで、売れそうなもの」**


を考え始めた。


 私は紙に書いたものを眺めながら、いくつか候補を残した。


「まずは、今ある技術で作れそうなものね」


 いきなり大きなものを作る必要はない。

 むしろ、小さく始めて利益を出したほうがいい。


「水車は……」


 少し考える。

 水の力を使って何かを動かす。

 原理そのものは分かる。

 ただ、実際に水車を作るとなると、木材の加工や歯車の作り方など、職人の技術が必要になる。


「これは職人を探してみてもいいか」


 横に丸をつける。

 次に鉄砲。


「鉄砲も気になるけど……」


 こちらはもっと難しい。

 鉄砲鍛冶に頼めば作れるだろう。

 でも、私が知っているのは現代の銃だ。

 それをそのまま、この時代の職人に作れと言っても無理だろう。


「まずは、今の鉄砲を見せてもらうところからね」


 これも候補に残す。

 さらに紙や布なども考える。

 今あるものを少し改良するだけなら、比較的試しやすいかもしれない。


「紙なら需要もあるでしょうし……」


 私は筆を止めた。

 そこで、もう一度考える。


 **売れるか?**


 ここが一番大事だ。

 作ることができても、売れなければ意味がない。


「いくら良いものでも、誰も買わないなら失敗だものね」


 逆に、多少の改良でも大量に売れるなら、それでいい。

 私は紙の端に、小さく書き足した。


**作れるか。**


**売れるか。**


**いくら儲かるか。**


 この三つ。


「うん。これで考えよう」


 そうすれば、思いついたものを片っ端から作る必要はない。

 まずは職人に聞く。

 作れるのか。

 どれくらい銭がかかるのか。

 どれくらいの期間が必要なのか。

 そして、それをいくらで売れるのか。


「……私が全部考える必要もないわね」


 職人には職人の知識がある。

 商人には商人の知識がある。

 なら、その両方に聞けばいい。


 私はただ、**「こういうものは作れない?」**と聞けばいいのだ。


「だったら――」


 私は紙をまとめた。


「まず、職人を探してもらいましょう」


 いきなり工房を建てるのではない。

 いきなり大量の銭を投じるのでもない。

 まず話を聞く。

 そして、できそうなものだけ試す。

 それで利益が出たなら、その銭を次へ回せばいい。


「……これなら、養父様の蔵を空っぽにしなくて済みそうね」


 私は一人で頷いた。



 私は紙を眺めながら、最初に何を試すか考えた。

 水車。

 鉄砲。

 紙。

 布。

 ほかにもいくつか思いつくものはある。

 けれど、今すぐ全部に手を出すつもりはない。


「まずは一つね」


 いくつも同時に始めれば、それだけ銭も人も必要になる。

 失敗したときの損も大きい。

 ならば、一つ試して、うまくいったら次へ進めばいい。


「それに……」


 私は少し考える。

 私が知らないことは、職人に聞けばいい。

 水車なら水車を作っている者。

 鉄砲なら鉄砲鍛冶。

 紙なら紙を作っている者。

 私より詳しい人間はいくらでもいる。


「私が全部教える必要もないものね」


 私が知っているのは、完成したものの姿や、それが何に使われているか。

 作り方まで詳しく知っているわけではない。

 ならば、職人の知識と私の知識を合わせればいい。


「まず、できそうなものを探してもらいましょう」


 私は紙の端に、候補をいくつか残した。

 そして、その横に小さく書く。


**職人を探す。**


**費用を聞く。**


**売れるか調べる。**


 これでいい。

 いきなり大金を使って開発するのではない。

 まず調べる。

 できそうなら、小さく試す。

 売れそうなら作る。

 利益が出たら、その利益を次のものへ回す。


「……うん」


 私は頷いた。


「これなら、私の思いつきで養父様の家を貧乏にすることもないわ」


 むしろ逆だ。

 少しずつ銭を増やしていけばいい。

 その銭が増えれば、今は作れないものにも手を出せる。

 水車も。

 鉄砲の改良も。

 もっと先にある、私が知っている便利なものも。


「いつか作れればいいものね」


 私は紙を折りたたんだ。

 まずは、儲かるものから。

 そして、その利益で次のものを作る。

 そうやって少しずつ――。


「黒田家を大きくしていきましょう」


 私は立ち上がった。

 まずは家臣に、職人探しを頼むことから始めよう。


 私は紙を折りたたみ、引き出しへしまった。

 まだ何を作るのかは決めていない。

 けれど、やることは決まった。


「まずは、話を聞ける職人を探してもらいましょう」


 私が知っているのは、あくまで完成したものの姿だ。

 作り方まで知っているわけではない。


 だからこそ――。


「できる人に聞けばいいのよね」


 今の黒田家にいる職人より、もっと詳しい者がいるかもしれない。

 まずは探す。

 そして、できそうなものから試す。

 利益が出れば、その銭を次へ回す。


「……うん」


 私は頷いた。


「これなら、少しずつ大きくできそうね」


 戦で領地を広げるだけではない。

 銭を増やし、人を増やし、技術を増やす。


 そうしていけば――。

 いつか、今は作れないものにも手が届くかもしれない。

 私は立ち上がった。


「さて、誰に頼もうかしら」


 まずは職人探しから。

 私の知らない技術を持つ者を探す。

 それが、これからの黒田家を変える最初の一歩になる。


 ――このときの私は、まだ知らなかった。


 何気なく書き出したこの紙が、これから先、黒田家で作られるものの**最初の種**になっていくことを。




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