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『興国の悪女 ~性転換転生したら黒田官兵衛の異母姉だったので、弟の尻を叩いて天下を目指させます~』  作者: カワカン
黒田家に居座る

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第十五話 家を大きくする

 私は決めた。

 婿を取らない。

 そのためには――。


「家を大きくしよう」


 単純な話だった。

 私が高友叔父様の跡を継ぐ。

 その家が小さく、何の力もなければ、いずれ誰かの助けが必要になる。

 そうなれば、


「婿を取ったほうがいい」


 と言われるかもしれない。

 ならば、そんなことを言われないくらい、自分の家を強くすればいい。

 金がある。

 人がいる。

 仕事がある。

 土地がある。

 そして、黒田家とのつながりもある。


 そこまで大きくなれば――。


「私が一人で家を守っても、誰も文句を言わないよね」


 たぶん。

 私はそう考えた。

 しかし、そこで一つ疑問が浮かんだ。


「……そもそも、この時代で高いものって何なんだろう?」


 前世の感覚では分からない。

 砂糖は高い。

 それは分かった。

 でも、他には?

 何を作れば儲かるのか。

 何を売れば、この家を大きくできるのか。

 私はさっそく養父様のところへ向かった。


「お養父様」

「どうした、松」

「この辺りで、高いものって何ですか?」

「高いもの?」

「はい。珍しいものとか、値の張るものです」


 養父様は少し考えた。


「そうだな……」


 そして、いくつか挙げていく。


「干し椎茸は高いな」

「干し椎茸」

「山で取れるが、いつでも取れるものではないからな」

「なるほど」

「馬も高い」

「馬……」

「それから砂糖だ」


 私は頷く。

 やはり砂糖は高級品らしい。


「上等な漆器も高いな」

「漆器ですか」

「ああ。他にもいろいろある」


 私は考え込んだ。

 干し椎茸。

 馬。

 砂糖。

 上等な漆器。

 前世では、どれも普通に目にするものだった。

 けれど、この時代では違う。


「……お養父様」

「なんだ?」

「私が作って売ったものの銭で、それらを作りましょう」

「…………」


 養父様が私を見る。


「それは、まあ……いいと思うが」

「本当ですか?」

「ああ」


 ただし、と養父様は続けた。


「漆器くらいしか、ここでは作れんと思うぞ」

「なぜです?」

「椎茸は山でたまに取れるくらいだ」

「…………」

「馬は育てるのに時間がかかる」

「なるほど」

「砂糖は――」


 養父様が少し考える。


「まあ、お前が考えたものに使うというなら、作ることになるだろうな」

「砂糖は作ってくださるんですか?」

「ああ」


 私は少し考えた。

 どうやら、何でも自分たちで作ればいいというわけではないらしい。

 山が必要なもの。

 土地が必要なもの。

 長い年月が必要なもの。

 それぞれ事情がある。


「……じゃあ、作れるものからですね」

「ああ」


 私は頷いた。

 そのとき、養父様がふと思い出したように口を開いた。


「それと――」

「はい?」

「お前の考えた、真綿を使った布団だ」

「布団?」

「あれはいいな」


 養父様は笑った。


「かなりの高級品になるぞ」

「……そうなんですか?」


 私は少し驚いた。

 私にとっては、ただ――。


 **この時代のひどい寝床を、少しでもまともにしたかっただけなのだけれど。**




「ああ。真綿をあれだけ使うのだからな」


 私は少し考えた。

 確かに、あれを大量に作るなら問題がある。


「……真綿が、たくさん必要ですよね」

「そうだ」

「買うだけでは?」

「量を揃えるとなれば、かなりの銭がかかるだろうな」

「…………」


 私は考え込んだ。

 だったら――。


「蚕を育てないといけない?」

「そうなるな」


 養父様が頷く。


「桑を育て、蚕を飼い、繭を取る。そこから真綿を作る」

「なるほど……」


 手間はかかる。

 でも。

 私は布団を思い浮かべた。

 この時代の寝床とは比べ物にならないほど快適だった。

 そして、それを欲しがる人はきっといる。


「でも、布団なら売れますよね?」

「おそらくな」

「だったら、いいと思います」


 私は即答した。


「養蚕から始めましょう」

「ずいぶん簡単に言うな」

「だって、お金になるんでしょう?」

「……まあ、そうだな」


 養父様は苦笑した。


「それに真綿は布団だけではない」

「他にも使えるんですか?」

「ああ。上等な綿入れにも使えるし、様々なものに使える」

「なら、なおさらいい」


 私は頷いた。

 蚕を育てる。

 繭を取る。

 真綿を作る。

 それを布団にする。

 そして売る。


「……最初は大変でも」


 私は少し考えた。


「自分たちで真綿を作れるようになれば、ずっと使えますよね」

「ああ」

「それなら、やる価値があります」


 養父様は腕を組んで私を見る。


「お前、本当に金儲けが好きだな」

「違います」

「違うのか?」

「私は――」


 私は少し胸を張った。


「**婿を取りたくないだけです**」

「…………」


 養父様が黙った。


 そして、やがて苦笑する。


「なるほど。それなら仕方がないな」


 私は頷いた。

 婿を取らない。

 そのために家を大きくする。

 家を大きくするために、金を稼ぐ。

 金を稼ぐために、売れるものを作る。

 そして今度は――。


「養蚕も始めましょう」


 私の家を大きくするための新しい仕事が、一つ増えた。


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