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セカンドシーズン ─好きな人を、真っ直ぐに。─ 〜第三章〜高3編〜【最終章】  作者: 波方 真季


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第183話 君のために、出来ること


翌日。


この事件については、被害者保護の観点と、雫本人の”誰にも知られたくない”という強い要望から、生徒たちへ知らされることはなかった。

学校は徹底して情報を伏せる方針を取り、事件について口外する教職員も一人としていない。


翌日から、門倉は出席停止となり、そのまま警察による本格的な捜査が始まった。

一方、雫もまた学校を休んでいた。

クラスでも、門倉や雫が欠席している理由について、担任が触れることは一切なかった。


今、学校が何よりも優先すべきものは、事件の説明ではなく、被害者である雫の心と、これから先の学校生活を守ることだった。


その頃。


警察は裁判所から発付された捜索差押許可状を携え、門倉の自宅へ家宅捜索に入っていた。


門倉の部屋から押収された物は、捜査員たちでさえ息を呑むようなものばかりだった。


棚や引き出し、収納ケースの奥から次々と見つかる、雫を盗撮した大量の写真。

学校生活の何気ない一瞬を切り取ったものから、遠く離れた場所から望遠で撮影されたものまで、その枚数は膨大だった。

何枚もの写真には、一緒に映り込む朔也の顔だけが鋭利な刃物で何度も切り裂かれ、黒く塗り潰されているものもあった。


さらに、以前学校から盗まれていた雫の私物も、複数発見される。


そして押収されたパソコンやスマートフォンの解析が進むにつれ、門倉の執着は、警察の想像を遥かに超えていたことが明らかになっていく。


データの中には、雫と朔也が並んで写る写真を加工し、朔也の姿だけを自分へ置き換えた合成画像。

そして、フォルダの奥深くから見つかった一つの文書ファイル。

そこには、朔也の行動パターンや下校時間、人気の少ない場所まで事細かに書き記され、最後に手を掛ける手順までも複数記された、殺害を具体的に計画した内容が残されていた。


画面を見つめていた捜査員の表情が、静かに強張る。


単なる恋愛感情の暴走ではない。

その執着は、すでに誰かの人生そのものを壊そうとする危険な領域へ踏み込んでいた。


一方、陽向も担任や母・早苗から「今日は無理をしなくてもいい」と登校を止められた。

昨夜受けた暴行の痕はまだ生々しい。

頬には赤黒い打撲の跡が残っている。


それでも。

卒業まで、あとわずか一週間。


高校生活最後の日々を、一日たりとも失うという選択肢は、陽向の中には存在しなかった。

それ以上に────


雫がこれからも安心して学校へ通える未来を守ること。


そのためには、自分が事件を必要以上に大きく見せるわけにはいかなかった。

だから陽向はいつも通り教室へ入り、友達の前で何でもないように笑った。


「階段踏み外して顔面からズッコケちゃったよ〜」


陽向は笑い飛ばしながら、誰にも気付かれないよう胸の奥でそっと息をついた。

雫が、何も知らないままの日常へ戻れるなら。

こんな嘘くらい、こんな秘密くらい。

いくらでも背負ってみせる。


そんな陽向の覚悟も決意も、知る由もなく───────。





「ふざっっっけんなーーーーーーー!!!!!!」





放課後。


校内の応接室へ、怒号が轟いた。

空気を震わせるほどの叫び声に、その場にいた教師たちが思わず息を呑む。 


担当刑事を真正面から睨みつけていたのは、朔也だった。


額には青筋が浮かび、肩は怒りで激しく上下している。

今にも机を蹴り飛ばしそうな勢いだった。


「黒川…!落ち着け!」


担任教師が慌てて間へ入る。

しかし朔也の耳には、その声すら届いていなかった。


今回の事件の発端となったのは、“黒川朔也”の名前を騙った一通の手紙。

その事実を受けて今朝早く、警察から学校へ連絡が入った。


「黒川朔也くんは、本日登校していますか?」


加害生徒や被害生徒との関係、そして事件当日の状況について“黒川朔也くん”本人に話を聞きたい──という要請だった。


学校側は放課後に時間を設け、朔也を応接室へ呼んだ。

だが、その放課後を迎えるまでの間に、家宅捜索は大きく進展していた。

門倉の部屋からは、朔也に関する資料が次々と押収された。


「雫は…どーしてんだ今!」


怒りに震える声が部屋へ響く。


「ひなは今日見かけたけど…怪我は大丈夫なのかよあいつ!!」


担任教師は、興奮する朔也を少しでも落ち着かせようと必死に言葉を返した。


「小野さんは、精神的に深いダメージを追っているけど…星野は幸い、大きな怪我には至らなかった…!」


その横で、担当刑事も静かに口を開く。


「黒川くん自身も危害を加えられる可能性がありました。現時点では、黒川くんの安全についても──」


「くっそ…!!」


朔也は刑事の言葉を遮るように吐き捨てた。

大人たちの説明など、もう頭へ入ってこない。


震える拳を強く握り締める。

爪が食い込むほど力を込めても、胸の中で燃え上がる怒りは少しも収まらなかった。


「そいつ…俺の事やりに来てくんねーかな…!」


低く漏れた声には、抑え切れない憎悪が滲んでいた。

ギリ…と奥歯を噛み締める。


「絶対に探し出して……俺がぶっ殺してやる!!」


怒りで充血した瞳が、獣のように鋭く細められた。


「気持ちはわかるが………黒川くん。」


張り詰めた空気の中、刑事は静かに息をついた。

興奮した朔也を真っ直ぐ見つめ、刑事は落ち着いた声でゆっくりと言葉を紡ぐ。


「怒りに自分がすべて飲み込まれてしまうより……今、一番大切なことは──」


ほんのわずかに間を置き、優しく続けた。


「大切な恋人である小野雫さんを、この事件で負った傷から救い出して。もう一度立ち直らせてあげられる一番の存在は……黒川くんなんじゃないかな。」


手紙に記されていた”黒川朔也”という名前。

教師や陽向から、”小野雫さんの交際相手”であると説明を受けていた刑事は、迷いなくそう口にした。


その言葉に、朔也は何も返さない。

否定もしなかった。

今、この場でそれを説明する意味など、どこにも見つからなかった。


ふっと、全身から力が抜ける。


さっきまで怒りで震えていた肩が、糸の切れた人形のようにゆっくりと落ちていく。

朔也は深く項垂れ、そのまま椅子へ身体を預けた。

視線は床へ落ちたまま、拳だけが膝の上で震えている。


「…門倉の野郎…さっさと……早えーとこ……俺んとこに来りゃ良かったんだよ………」


掠れた声だった。

怒鳴り続けていた喉は張り付き、言葉を絞り出すたびに胸の奥が軋む。

俯いたまま前髪へ指を差し入れ、ぐしゃり、と髪を握り潰した。


「雫に変な真似する前に………俺が……ぶっ殺してやれりゃ………良かった………」


声の最後は、小さく震えて消えた。



──俺のせいだ。



胸の奥で、何度もそう囁く。


俺が雫の手を離したから。

俺が、自分から雫を突き放したから。

あの日、あんなふうに別れたりなんかしなければ。

雫は、あの手紙を信じることもなかった。

放課後、一人で教室へ残ることもなかった。


門倉と二人きりになることも──なかった。


考えれば考えるほど、後悔が胸の奥で黒く膨れ上がっていく。


あれだけ雫と、毎日のように一緒にいた。

朝も、昼も、放課後も。

並んで歩き、笑い合い、何気ない時間を積み重ねてきた。


それなのに。

どうして、あの男の執着に気づけなかった。

どうして、それほど膨大な盗撮を、一枚たりとも察知できなかった。


胸の奥で、鈍い痛みがじわりと広がっていく。


雫は目立つ存在だった。

廊下を歩けば、多くの男子が思わず振り返る。

教室でも、廊下でも、校庭でも。

誰かが雫へ見惚れている光景なんて、もう見慣れた日常だった。

雫と並んで歩くたび、自分へ向けられる羨望や嫉妬の視線も、雫へ注がれる熱い眼差しも、嫌というほど浴び続けてきた。

そんなのは、いちいち気にしていたらキリが無かった。


だからこそ──


その中へ、あんなにも歪みきった執着と、底知れない憎悪を宿した視線が紛れ込んでいたことに、気づくことができなかった。


知らぬ間に、雫は見られ続けていた。

追われ続けていた。

写真を撮られ、私物を盗まれ、それでも助けを求めることすらできないまま、恐怖は少しずつ積み重なっていた。


その事実を思うたび、胃の奥が重く締めつけられる。


もっと警戒するべきだった。

もっと慎重になるべきだった。

雫を、一人にするべきじゃなかった。


何度思い返しても、後悔ばかりが胸を抉る。


──どうして。


どうして、気づいてやれなかったんだろう。


その問いだけが、出口のない闇の中で、何度も何度も朔也の心へ重く響き続けていた。


拳を握り締めても。

怒鳴っても。

仮に門倉を殴っても。


もう何一つ、取り戻せない。


悔しさと、自責の念。


そして、自分自身への激しい憎しみが、重い鎖のように朔也の心を締めつけ、押し潰していくのだった。







一方その頃───────。






「だーかーらー!そんなの退学一択でしょーが!」



放課後の職員室では、別の人物の雷鳴のような怒号が響いていた。


ビクリ、と数人の教師が肩を震わせる。

コピー機の前で立ち止まる教師。

書類を書いていた教師のペン先が止まる。

職員室中の視線が、一斉にその声の主へ集まった。


「勿論星野さんの言う通り、それはそうなのよ…ただ処分の決定には段階というものがあって………」


怒りで肩を上下させながら立っていたのは、陽向だった。


雫と門倉を受け持つ一年一組の担任教師が、陽向にガン詰めされて困り切った表情で座っていた。


「そんな悠長な事言ってたら!」


バンッ!!


陽向の拳が机を激しく叩く。

積み上げられていた書類が跳ね、ペン立てがカタリと揺れた。


「しぃちゃんはいつまで経っても安心して学校に来られないっつーの!!」


職員室の空気が凍り付く。


「言いたい事はわかるんだけど……」


担任教師は息を呑みながら、それでも何とか冷静さを保とうと口を開いた。


「…捜査の結果を受けて、その後に学校側が教育委員会と協議して…懲戒委員会を経てから───」


「あんな重大な凶悪犯罪者に!協議の余地もクソもあるかーーーっっっ!!!」


教師の言葉を遮るように陽向が怒鳴る。


「ほ、星野さん…っ…声が大きい…!」


陽向のあまりの剣幕に、担任教師の声はどこか震えていた。


「あんた一年間も担任のくせに!門倉の異常さを見抜けなかった責任とか感じてないわけ!?」


今にも暴れそうな勢いの陽向を見かねた生徒会顧問、餅田先生が腕を掴む。


「星野…お前ちょっと言い過ぎだ!」


陽向の言葉に、一年一組の担任教師は言葉を失っていた。


門倉は教室では真面目で、大人しく、目立たない生徒だった。

教師の前で問題行動を起こしたこともほとんどない。

だからこそ、何ひとつ気付けなかった。

その胸の内に、ここまで歪んだ執着が育っていたことを。

自分が生徒を責める資格がないことくらい、教師自身が一番よく分かっていた。


「学校からの、即退学処分が無理なら!!」


陽向は職員室中へ響き渡るほどの声で言い放った。


「今すぐ門倉の親に電話して、自主退手続きの紙に一筆書かせろーーー!!!!」


怒号だけが、夕暮れの職員室へ重く響き続けていた。


その時。


ガラッ─────


職員室の扉が開いた。


「心意気は立派だけど、ちょっと声がでかいな!」


その声に、陽向は職員室の入口へ勢いよく振り返る。


「星野さん、これは一応校内では極秘案件だよ?」


苦笑混じりの声だった。

振り向いた陽向の表情がぱっと明るくなる。


「本田さん!来てたの?」


事件を担当する本田刑事だった。

その後ろには、三年生の学年主任が資料の束を抱えながら続いている。


「黒川くんの聴取が終わったところ。」


そう答えながら本田刑事は陽向へ歩み寄る。


「げ!朔也に言っちゃったの…?」


「重要参考人だから…そりゃ話さないと。」


「朔也、めっちゃくちゃブチギレてなかった?」


「あぁ…かなり怒ってたし、心配もしてたよ。」


そして、腫れの残る頬を見つめ、小さく眉を寄せた。


「顔、そこまで酷くないね」


「ファンデ塗ってるからね!」


陽向は照れ隠しのように笑う。

本田刑事は思わず肩をすくめた。


「まさか…昨日の今日で学校来てるとは思わなかったよ」


「まぁ、卒業まで一週間しかないし。休んだら勿体ないじゃん?」


さらりと返す陽向。

その言葉に、本田刑事は小さく息を吐いた。


「……さすが、星野さん。」


しかしその目には苦笑だけではない安堵も浮かんでいた。

その時だった。


ガラッ─────


再び職員室の扉が開く。


「……っ!」


陽向の心臓がドキリと跳ねた。


「…ひな……!」


事情聴取を終え、その後担任から被害者保護の観点で拡散防止による注意事項についての話しを終えた朔也が、担任教師とともに職員室へ姿を現した。


目が合った瞬間、朔也は迷うことなく陽向の方へ歩いてくる。


「お前…っ…大丈夫かよ…!」


「……朔也…」


あの大喧嘩以来、朔也と陽向がまともに会話するのは一ヶ月以上ぶりだった。


あと数歩というところで立ち止まり、傷の残る頬を見つめた。


「…ほんと……無茶苦茶だよ……お前は…っ…」


昨夜、その小さな身体で雫を守った。

その事実だけが胸の中で何度も繰り返される。

その奥には、心配と、無事だったことへの安堵が滲んでいた。


陽向は少し困ったように笑う。


「心配かけてごめん。」


そのやり取りを静かに見守っていた本田刑事が、二人へ視線を向ける。


「今日の家宅捜索で、かなり重要な証拠が押収された。」


二人の表情が少しだけ強張る。


「押収品の内容、それからデータ解析の状況を踏まえると、身柄については早い段階で逮捕手続きに進む見込みだ。」


「本当ですか!?」


陽向の目が大きく開く。


「ああ。正式に身柄が拘束されれば、少なくとも小野さんへ接触する心配はかなり小さくなる。」


「よっしゃーーーー!!!」


職員室へ元気な声が響き、教師たちが苦笑した。

本田刑事も思わず笑みを漏らす。


「全ては星野さん、君の大健闘あっての事。あのリュックが現場に証拠として残ったおかげで、捜査はかなり迅速に進めやすくなった。」


少し照れくさそうに笑う陽向。


「危険を顧みないところは褒められたものではないけど…現場の警察官もみんな感心してたよ。」


「じゃあ今日逮捕して下さい!」


「え…きょ、今日かぁ……証拠品と、さっき黒川くんから聴取した供述も含めて全部検察官に送ってから裁判所へ逮捕状を請求してもらうから…」


「もーーーいいよそんなのカットで!じゃあ明日絶対ね!!」


「明日…ね…。頑張ってはみるよ」


本田刑事は思わず苦笑した。

そして、穏やかな表情のまま続ける。


「あとは……小野さんの心のケアが今後の課題となるが。」


一度言葉を切り、今度は朔也を見る。


「黒川くん。小野さんが”安心できる存在”だと思える相手がそばにいることは、きっと支えになる。」


その言葉に、朔也はゆっくりと目を伏せた。


「………俺に…………そんな資格は…ないです…」


自分を責めるような、小さな声だった。

本田刑事は否定もしなければ慰めもしない。


ただ静かに頷く。


「その答えを持っているのは、小野さん本人だよ。」


その一言だけを落として、本田刑事は静かに笑った。

その言葉は、不思議なくらい重かった。


「……。」


朔也は何も返せないまま、ただ唇を噛み締める。

答えを決めるのは、自分でも、周りでもない。

雫自身なのだと。

その事実だけが、胸の奥へ静かに落ちていった。


その後、陽向と朔也は並んで職員室を後にした。


夕暮れの廊下には、生徒たちの笑い声が遠く響いている。

窓の外では、茜色へ染まり始めた校庭を運動部の掛け声が渡っていく。

つい昨日、自分たちの学校であんな出来事が起きたとは思えないほど、世界は何事もなかったように動き続けていた。


久しぶりに一緒に帰る、通学路。

二人はほとんど言葉を交わさなかった。


駅までの道も。

ホームで電車を待つ時間も。

並んで揺られる車内も。


ぽつり、ぽつり、と。

時々落とされる言葉。

弾まない会話。


沈黙だけが、二人の間を静かに流れていた。


(……雫が今……俺を必要としてるなら…………)


側にいてやるべきなのかもしれない。


ふと、そんな思いが胸をよぎる。


傷ついた心の支えになれるなら。

少しでも笑顔を取り戻せるなら。

雫のために、自分にできることがあるのなら。


どんなことだってしてやりたい。

本気でそう思うし、その気持ちに嘘はない。


それでも──────


朔也は、電車内の向かいの窓へ映る景色から、隣へ視線を移した。


吊り革を握る陽向が、小さく揺れる電車の振動に合わせて身体を預けている。


「…………。」




ひなを好きだという気持ちは、どれだけ否定しても消すことは出来ない。




雫を一番に想えない、そんな自分が。

雫の隣へ戻る資格なんて、本当にあるのだろうか。

ひなの事が好きだと言う俺に、雫は隣に居て貰いたいだろうか。


自分で雫を振っておいて。

泣かせて。

傷つけて。

自分のせいで危険な目に遭わせて。


考えるほど、胸の奥へ黒い後悔が積み重なっていく。


今さら、自分から連絡なんてしていいのか。

突然現れても、困らせるだけじゃないのか。

逆に嫌な気分にさせないだろうか。

また余計に傷つけてしまわないだろうか。


だけど。


こんなに悲惨な事件を知っていながら。

自分の名前が発端になった出来事にも関わらず。

何事もなかったような顔で無視をして。

別れているからと言って見知らぬ素ぶりで過ごすのは、あまりにも残酷過ぎるのではないだろうか。


どうすればいい。


何が正しい。

何を選べば、雫は一番救われる。

雫の為に、どんな行動を取ることが正しいのか。

答えが見えない。

どれだけ考えても、自分の中には正解がなかった。


その時だった。

本田刑事の静かな声が、胸の奥でゆっくりと蘇る。


(その答えを持っているのは、小野さん本人だよ。)


「…………。」


朔也は長く息を吐いた。




大切なのは。

雫が、どうしたいのか。


ただ、それだけだ。


 


揺れる電車の中で、朔也はゆっくりと拳を握り締めた。

その瞳には、まだ迷いは残っていた。

それでも先ほどまでとは違う。


暗闇の中で、かすかな光を見つけた者だけが宿す、小さな決意が静かに灯り始めていた。



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