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セカンドシーズン ─好きな人を、真っ直ぐに。─ 〜第三章〜高3編〜【最終章】  作者: 波方 真季


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第180話 最後の生徒会役員会議


そして、季節は三月を迎えた。


校舎の窓から差し込む朝の陽射しは、二月までの鋭い冬の光とはどこか違っていた。

まだ空気は冷たい。

けれど、頬を撫でる風の奥には、ほんのわずかに春の匂いが混じり始めている。


卒業式まで、あと一週間。


この日は、今年度最後となる生徒会役員会議の日だった。


テスト期間中は、部活動も、生徒会活動もなかった。

終礼のチャイムが鳴れば、雫は誰よりも早く教室を飛び出し、逃げるように校門をあとにしていた。


誰とも会いたくなかった。

陽向とも。

朔也とも。


廊下ですれ違うことさえ怖くて、視線を合わせることすらできなくて。

少しでも遅れれば、どこかでどちらかと鉢合わせてしまうかもしれない。

そんな考えが頭をよぎるたび、心臓が苦しくなった。


けれど今日だけは、そういうわけにはいかなかった。

放課後は、一年間一緒に活動してきた仲間が集まる最後の役員会議。

逃げることはできない。


「……はぁ……」


玄関へ向かう足取りは、自然と重くなる。


放課後になれば、陽向と顔を合わせる。

いつものように笑顔で話しかけられたら、自分はちゃんと笑い返せるだろうか。

何事もなかったような顔をして。

胸の奥に押し込めた嫉妬も、憎しみも、苦しさも。

全部隠したまま。


そんなことを考えるだけで、胸の奥が重く沈んだ。


昇降口へ着くと、雫は静かに自分の下駄箱を開ける。

金属の扉が、小さく軋む音を立てた。

上履きを取り出そうと手を伸ばした、その時だった。


───カサッ。


小さな紙の擦れる音。


「……?」


雫は足元へ視線を落とす。

二つ折りにされた白い紙が、自分の下駄箱から一枚だけ床へ落ちた。


誰かのプリントだろうか。

そう思いながら拾い上げる。


何気なく折り目を開いた、その瞬間───


「…………っ……!」


雫の呼吸が止まった。





”役員会議のあと話したいです。18時に雫の教室に行きます。 黒川朔也”





世界から音が消えた。


指先が、小さく震える。

何度も、その文を見返す。

見間違いじゃない。


確かにそこには、朔也の名前が書かれていた。


(……なんで……?)


胸の奥がざわつく。


どうして、手紙なんだろう。

別れたあの日。

朔也はきっと、自分のLINEを友だちリストから消したのかもしれない。

だから、こうして手紙を入れたのだろうか。


(……今さら……話って…………何……?)


思考がまとまらない。

胸の奥では、不安と戸惑いが渦を巻いていた。

けれど、その渦の中に。


あってはいけない、小さな感情が混じる。


(……もしかして……)


鼓動が、一つ大きく鳴った。


やり直したいって、言ってくれるのかもしれない。


そんなはずない。

そう思う。

別れを告げたのは彼だ。

好きな人がいると言われた。

星野先輩のことが好きだと。

終わった恋なのだと、何度も自分に言い聞かせてきた。


なのに。

心は、どうしてこんなにも愚かなのだろう。


”話したい”


たったそれだけの言葉に、期待してしまう。


ほんの少しだけ。

ほんの少しだけでも、もう一度夢を見てしまう。


「…………」


雫は手紙をそっと胸元で握りしめた。

その紙切れ一枚が、ひどく熱を持っているように感じる。


胸の鼓動だけが、静かな昇降口でやけに大きく響いていた。


様々な感情に心をかき乱されながら。

雫はゆっくりと教室へ向かって歩き始めた。




───────。




そして───遂に放課後が訪れた。



放課後の校舎は、部活動へ向かう生徒たちの声で賑わっていた。

廊下の窓から差し込む西日が、床へ長く伸びた影を描いている。


その賑やかさとは裏腹に、雫の足取りだけはひどく重かった。


「……はぁ……」


小さく息を吐く。

吐き出した重たい息は、まだ冬の名残を残す廊下の空気へ溶けていく。


一歩。

また一歩。

鉛のような足を引きずるように、生徒会室の前まで辿り着いた。


扉の向こうからは、聞き慣れた笑い声が漏れてくる。

一年間、何度も聞いてきた、生徒会のみんなの声。

本当なら安心するはずの場所。


それなのに今日は、その笑い声さえ胸を締め付けた。


ぎゅっと拳を握る。


笑おう。

何もなかったように。


そう自分へ言い聞かせながら、雫はゆっくりと扉へ手を掛けた。



ガラリ───。



「……お疲れ様です。」


控えめな声が、生徒会室へ静かに落ちる。


なるべく目立たないように。

誰にも気づかれないように。

そんな願いとは裏腹に。


「しぃちゃーーーん!」


ぱっと花が咲くような笑顔で、陽向が勢いよく手を振った。

その明るい声だけが、生徒会室いっぱいに響く。


「お疲れー!」


周りの役員たちも、自然と雫へ視線を向けた。


「……お疲れ様です。」


雫は小さく会釈だけ返し、足早に席へ向かう。

机へスクールバッグを置く。

その間にも、軽やかな足音が近づいてきた。


「しぃちゃんっ!なんか久しぶりだね!」


パタパタと駆け寄ってきた陽向が、嬉しそうに雫の隣へ立つ。

屈託のない笑顔。


「テスト終わってからも全然会わなかったけど、ちゃんと学校来てた?」


「来てました」


短く答える。

無意識に、温度のない声。

視線は机へ落としたままで、どうしてもその笑顔を見ることができなかった。


「あれー?じゃあタイミング合わなかっただけなんだ!結構忙しかった?」


陽向は気にした様子もなく、いつものように笑う。


「…………まぁ……色々ありましたので……」


自分でも驚くほど声が掠れていた。

これ以上話したら、何かが零れてしまいそうだった。


早く、この会話を終わらせたい。


そう願った、その時だった。




ぎゅっ───。




「……!」


突然、腕へ柔らかな温もりが伝わる。

陽向が、いつものように両腕を雫の腕を抱きしめるように絡めていた。


「大丈夫?」


心配そうに顔を覗き込む。


「なんか元気なくない?」


今までなら、その温もりが嬉しかった。

憧れの先輩が、こんなにも近くに。

こうして、自然に触れてくれることが。


可愛くて、愛しくて。

その優しさが。

その笑顔が。

大好きだった。


けれど今は違う。




私の好きな朔也くんの心を、奪った人。




胸の奥へ押し込め続けてきた感情が、一気に悲鳴を上げる。


──ズキンッ


心臓を、鋭い刃で突き刺されたような痛み。


苦しい。

憎たらしい。

許せない。

近づかないで。

触らないで。


そんなこと思いたくないのに。

思ってしまう自分が、何より嫌だった。


「……っ!」


バッ───


反射だった。

雫は咄嗟に陽向の腕を振り払っていた。


空気が、一瞬で止まる。


「…あ……」


陽向の瞳が、小さく揺れた。

驚きと戸惑い。

その表情を見た瞬間、雫の胸がぎゅっと締め付けられる。


「…………。」


俯いたまま、自分の席へ腰を下ろす。

重苦しい沈黙だけが、二人の間に静かに広がった。


その時だった。


ガラリ───。


「みんな揃ってるかー?」


顧問、餅田先生の明るい声が、生徒会室へ響く。

張り詰めていた空気は、その一言でゆっくりとほどけていく。


役員たちは慌てて席へ着き、最後の役員会議が静かに始まった。


役員会議は、滞ることなく進んでいった。


卒業式当日の役割分担の最終確認。

生徒会から卒業生へ贈る記念品の確認。

新年度の役員へ引き継ぐ資料の整理。

そして、一年間の活動報告。


どれも、この一年を締めくくるための最後の確認事項ばかりだった。


窓の外では、夕暮れの柔らかな西日が校舎を茜色に染めている。

生徒会室にも、その光が静かに差し込み、机の上へ長く影を落としていた。


この部屋で何度も重ねてきた会議も、今日で最後。


一年間、当たり前のように集まってきたこの時間が、もう二度と戻らないものになるのだと思うと、誰もがどこか名残惜しそうな表情を浮かべていた。


そして、最後の議題。


卒業を迎える三年生役員、一人ひとりからの最後の挨拶だった。


「……みんなに支えられて、助けられて……本当に、みんなのお陰で乗り越えられた生徒会長の一年間でした……」


陽向は言葉を詰まらせながら、小さく笑う。

こみ上げる涙を何度も拭い、それでも最後まで顔を上げて話し続ける姿は、どこか陽向らしかった。


「本当に、ありがとうございました……!」


ぺこり、と深く頭を下げる。

静まり返った生徒会室に、小さく鼻をすする音だけが響いた。

その空気を破ったのは、阿久津孝明だった。


「…生徒会長の仕事、ろくにしてないですけどね」


「それ今言っちゃ駄目なやつ!」


加賀優音が即座にツッコミを入れる。


「あははははっ!」


張り詰めていた空気が一気にほどけ、生徒会室いっぱいに笑い声が広がった。


「このタイミングでそれ言う!?」


「事実だからしゃーねーだろ」


「フォローしろよ!」


「あはは!」


涙を浮かべながら笑う陽向に、横溝琉話もつられて笑い出す。


誰かが笑えば、また誰かが笑う。

それが、この生徒会だった。

楽しい時はみんなで笑って。

辛い時は誰かが手を差し伸べて。

失敗しても責めるのではなく、笑いへ変えてくれる。


そんな温かな空気が、この一年間ずっと、この部屋には流れていた。


二年生役員の阿久津孝明と加賀優音は、来年度から生徒会長、副会長として、新しい生徒会を引っ張っていく。

そして陽向、横溝琉嘉、相田桜子たちは、それぞれの想いを後輩たちへ託し、この部屋を卒業していく。


今年度最後の役員会議は、最後まで笑顔の絶えない、いかにもこの生徒会らしい温かな雰囲気のまま幕を閉じた。


────ただ一人だけを、除いて。


「……お疲れ様でした。」


最後に小さく頭を下げると、雫は誰よりも早く椅子から立ち上がった。


役員たちがまだ「お疲れ!」「卒業式よろしくね」などと笑い合う賑やかな雰囲気の中、一人だけ輪へ加わることなく、静かにスクールバッグを肩へ掛ける。


胸の奥では、心臓が落ち着きなく脈を打っていた。


これ以上、この部屋にいたら駄目だ。

笑顔を作り続けることも。

何事もなかったふりを続けることも。


もう限界だった。


足早に出口へ向かう。


ガラ───。


静かに扉を開けた、その瞬間。


「しぃちゃんっ!」


背後から、弾むような陽向の声が響いた。

雫の肩が、かすかに震える。


けれど、振り返ることはなかった。


立ち止まることも。

返事をすることも。

ただ、その声から逃げるように、生徒会室をあとにする。


閉まりかけた扉の向こうへ、その背中は足早に消えていった。


ガタッ


陽向は思わず立ち上がる。

何かがおかしい。

さっきからずっと感じていた違和感が、確信へと変わる。


「………。」


横溝琉嘉と相田桜子も、何かを察したような表情で互いに顔を見合わせていた。

陽向は、迷うよりも先に身体が動いていた。


ガラッ───!


勢いよく扉を開け放つと、陽向は雫の後を追うように、生徒会室を飛び出した。


「待って……しぃちゃん、待って……!」


静かな放課後の廊下へ、陽向の焦った声が響いた。

パタパタッと駆け寄ってくる上履きの足音。

その音が近づくたび、雫の胸はぎゅっと締め付けられていく。


止まりたくない。

振り返りたくない。

今あの笑顔を見てしまったら、胸の奥へ押し込めてきたものが全部あふれてしまう。


だから雫は、ただ前だけを見て歩き続けた。


その時だった。


──ガシッ。


「……っ」


不意に手首へ温もりが伝わる。

反射的に肩が震えた。

陽向が、雫の手首を掴んでいた。


雫は立ち止まる。

恐る恐る振り返ると、目の前には息を弾ませた陽向がいた。

肩で小さく呼吸を繰り返しながら、不安そうに雫を見つめている。


「……どうしたの……?」


その瞳が、かすかに揺れた。


「何かあった…?しぃちゃん、今日ずっと様子が変だよ……」


その優しい声が、胸へ刺さる。


どうして。

どうして今も、そんなふうに心配してくれるの。


雫は小さく唇を噛んだ。

言えない。

本当のことなんて、絶対に言えない。


あなたが好きだったから苦しいなんて。

あなたを憎んでしまう自分がいるなんて。


そんな醜い気持ちを、憧れ続けた人へ向けられるはずがなかった。


「…………別に……何もないですよ……」


ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど小さく掠れていた。


陽向は少しだけ眉を寄せる。

納得していないことは、その表情だけで分かった。


それでも問い詰めることはせず、今度は雫の手を両手で包み込むように、そっと握り直す。


ぎゅ…っ


「一緒に帰ろ?」


その声は、春先の陽だまりのように柔らかかった。


「……話、聞くから。」


「…………。」


雫は黙ったまま、繋がれた二人の手へ視線を落とした。


小さな掌。

少しだけ冷えた指先。

それでも、そこから伝わる温もりは、以前と何ひとつ変わらなかった。


放課後になれば、こうして自然に手を繋いで歩いた。

他愛もない話をしながら笑って。

肩を並べて廊下を歩いて。


その何気ない時間が、たまらなく幸せだった。


この手の温もりが好きだった。

可愛くて。

愛おしくて。

憧れて。


ずっと、ずっと隣にいたいと思っていた。


──でも。




もう、あの頃には戻れない。




雫はそっと息を吸った。

そして、できるだけ感情を押し殺した声で言う。


「…今から……朔也くんと会う予定になってるので。」


事実だけを伝える。

それ以上でも、それ以下でもない。


その言葉に、陽向は目をパチリと瞬かせた。


「え?朔也、まだ学校に残ってるの?」


「……はい。」


短く頷く。

すると陽向は、どこか安心したように小さく息を吐いた。


「そっか……」


最近、朔也と雫が二人で一緒にいる姿を見かけなかった。

テスト期間だったこともある。

朔也は受験直前で、毎日勉強漬けだった。

だからきっと、会う時間がないだけなのだと陽向は思っていた。


それでも。

今日の雫は、あまりにも様子がおかしかった。

どこか怯えるように視線を逸らし、笑顔もなく、腕を振り払った。


もしかしたら。

自分のせいで、二人の間に何か起きてしまったのではないか。


そんな不安が、一瞬だけ胸をよぎっていた。


けれど、それは思い過ごしだったらしい。

自分が知らなかっただけで、今もこうして朔也と約束をしている。


なら、大丈夫。


そう自分へ言い聞かせるように、陽向はふわりと笑った。


「気をつけて帰ってね。」


そう言って、そっと手を離す。

温もりが、ゆっくりと掌から消えていった。


「……はい。」


雫は小さく会釈をすると、踵を返した。


西日に照らされた廊下を、一人静かに歩いていく。

向かう先は、一年一組。

約束の時間まで、あと少し。


制服のポケットへ入れた手紙の感触だけが、不規則に鳴り続ける鼓動とともに、その存在を強く主張していた。




雫と別れて生徒会室へ戻ると、さっきまでの賑やかな空気は少しだけ静かになっていた。

扉が開く音に気付いた役員たちが、一斉に陽向へ視線を向ける。


誰もが、雫の様子がおかしかったことに気付いていた。


「小野、どーした?」


最初に口を開いたのは、横溝琉嘉だった。

腕を組みながら首を傾げる。

陽向は小さく息を吐いてから、少し困ったように笑った。


「一緒に帰ろって言ったんだけど……朔也と帰るからって。」


さっきまで手の中にあった雫の温もり。

振り払われた腕。

震えていた声。

何度思い返しても、胸の奥に小さな違和感だけが残っていた。


相田桜子が心配そうに呟く。


「だいぶキツそうでしたね…小野さん…」


「相当ヘラッてましたね(メンヘラってる)」


阿久津孝明も苦笑いを浮かべながら頷く。

すると加賀優音が、思い出したように陽向を見た。


「なんか一年前の星野先輩見てるようですよ!」


「へ?どーゆうこと?」


陽向はキョトンと首を傾げる。

その反応に、相田桜子がクスッと笑った。


「去年の今頃、陽向ちゃん毎日泣いてた。」


懐かしそうに目を細める。


「藤崎先輩の前じゃ絶対泣かないのに、居なくなった瞬間メンヘラ爆発させてたな。」


横溝琉嘉も思い出したように笑う。


「あー確かに!そうだったなぁ〜」


陽向は少し遠くを見るように目を細めた。


去年の春。

卒業まで、あと少し。


“もう会えなくなる”


その現実が日に日に近付くたび、胸が苦しくなっていた。


放課後になるたび涙が溢れて。

先輩達の前では笑っていたくて。


強がり続けた。


けれど一人になった瞬間、張り詰めていた糸は簡単に切れてしまった。


泣いて。

泣いて。

泣き疲れて。

それでも翌日になれば、また笑って会いに行った。


そんな毎日だった。


「小野さんも、寂しさに耐えられないんだろうね。星野先輩の事大好きだから。」


加賀優音の言葉に、陽向の胸にも寂しさが込み上げる。


「…うん………」


そうか。

しぃちゃんも、きっと今は同じなんだ。


好きな人が卒業してしまう。

遠くへ引っ越しもしてしまう。

これまでみたいに、学校で毎日会えなくなってしまう。

その寂しさに、一人で耐えている。


去年の自分がそうだったように。

だから、あんなに苦しそうだったんだ。


胸の奥に、去年の卒業式の日に自分へ寄り添ってくれた先輩たちの姿が浮かんだ。


それでも卒業する時は。

彼の前で。

先輩達の前で。

死ぬほど泣いた。


(しいちゃんも、いっぱい泣かせてあげよう。)


今度は自分の番だ。


陽向はそう心に決めて顔を上げると、不意に生徒会室の時計が目に入った。


「あ、下校時間になっちゃう!図書室寄りたいんだった!」


「おし、今日は解散するかー」


陽向と横溝琉嘉の声に、役員達は動き出す。


一年間、当たり前のように繰り返してきた光景。

けれど、その”当たり前”も、あと少しで終わる。


陽向はバッグを肩へ掛けると、生徒会室を飛び出した。


廊下へ差し込む夕陽が、長く伸びた自分の影を照らしている。

図書室へ向かう足取りは軽い。

その胸の中には、ただ一つだけ。


“しぃちゃんを、一人にしない。”


そんな優しい決意だけが、静かに芽生えていた。





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