表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/62

55 ユフィの弱点

 翌日、二人で力を合わせて戦闘するようになってから、リザードマンの群れを退けることができるようになり、俺たちはスムーズに第八十五階層まで到達する事ができていた。


 本日の目標である八十七階層まであと二階層となったところで、俺たちは転移魔法陣の近くで昼食を摂っていた。


 魔法陣の付近に魔物がいないという訳では無いが、ピンチに陥った際はすぐさま第十階層まで逃げることができる。そのため、休息を取る際は必ず転移魔法陣の近くで行うことが迷宮攻略における常識となっている。


「ウィルはどこで魔法を覚えたの?学校で教わったにしては、レベルが高すぎる気がするし、そもそも帝国の魔法学校に入れるのは十歳からだったよね?」


 俺が今朝、朝食と一緒に作ったサンドイッチを食べながら、ユフィが質問してきた。


 年齢に不釣り合いなほど魔法に熟達している俺が、どうやってそれを習得したのか気になったのだろう。


 シンプルな質問ではあるが、下手な答えをしてしまうと、自分の出自がバレてしまう可能性もあるため、どう答えたものかと迷った末に、俺は母さんから教わったと答えることにした。


「優れた魔法使いだった母さんに教わりました」


 発言した直後、この答えがあまり良くないことに俺は気づく。自分に教えることができるほど優れた魔法使いということは、母さんが普通の一般市民では無い可能性が高いことを意味するからである。


 というのも、帝国で一般市民への本格的な魔法教育が始まったのは十二年前からであり、それ以前は王国と同じく軍人や一部の特権階級の人間が使用できる状態だったらしい。


 母さんが一般市民だったとして、若く見積もったとしても二十歳付近の頃に魔法を習い始めたことを意味しており、優れた魔法使いであるという俺の発言に違和感を覚える人間も多いだろう。


「お母さん、ね......。やっぱり魔法の才能って遺伝するものなのかしら?」


 しかしながらその心配は杞憂に終わったらしく、俺の発言に対してユフィは別の感想を抱いたようであった。


「そういった話も聞いたことはありますが、根拠は無いと思いますよ」


 彼女は自分に魔法の才能が無いと思っているのだろうか?そう言えば、俺は彼女が一度も属性魔法を使用している姿を見たことが無い。


 《魔力障壁》を使ってくる魔物が出現する深層では、属性魔法の効果が薄いため使用しないのも理解できるが、浅層でも全く使わないというのは少しおかしい。


 というのも、相手が弱ければ近接攻撃で敵を倒すよりも、魔法で攻撃した方が広範囲の敵を一度に倒すことができるため、効率よく先へ進むことができるからである。


 最速踏破のために攻略の効率を追求していたユフィの言動と、属性魔法の攻撃を全くしないことは矛盾してしまうのである。


「もう気づいているかもしれないけれど、私は属性魔法を上手く使えなくて苦手なの」


 俺の表情から何を考えているのかを察したのか、彼女は自ら属性魔法が苦手であることをカミングアウトしてきた。


「あれだけ無系統魔法が得意なユフィが、属性魔法が苦手というのも変だと思うのですが......」


 属性魔法は魔法陣と詠唱さえできれば、基本的には発動できるはずなので、魔力制御に優れたユフィが躓いてしまうポイントはあまり無いように思う。長い詠唱を覚えるのが苦手なのだろうか?


「もちろん、魔法陣を魔力で描いて詠唱するところはうまくできるの。でも、魔法を発動させた後、それを制御するのがうまくできないのよ」


 彼女の言葉が正しければ、おそらく原因は魔法のイメージの部分だろう。自分も同じ部分が原因で魔法の発動に失敗していたため、ユフィに少しばかりの親近感を覚えた。


「私は火属性なのだけど、不安定でどこに向かうかも分からない炎しか出すことができないから、味方を危険に晒す可能性を鑑みて戦闘での使用を師匠から禁止されているの」


「おそらく発動できない原因はイメージだと思いますが、テセウスやエミリアさんからその部分の指導は受けなかったのですか?」


「当然、魔法を制御するためのイメージについては色々二人から教えてもらったけれど、中々改善しなかったわ。どうも、魔法のイメージというのは他人に教えるのが一番難しいと言われている部分らしいの」


 確かに、王国で最初に魔法を習った時も、イメージという部分に関しては魔法を発動させた結果を目視させるという、非常に単純な方法で教えていた。


 おそらく実際に魔法の発動した結果を見るということが、多くの人間にとって一番簡単に魔法のイメージを形成することができるからである。


 だが、中には魔法の発動結果を視認しただけでは、自分のイメージを確立できないユフィのような人間がいるのだろう。


「私みたいな人間に一番効果があると言われているのが、同じ魔法属性の人からイメージを言語化して教えてもらうことらしいわ。けれど残念ながら、《黄金ノ獅子》には私以外、火属性の人間がいないのよね......」


 テセウスは風属性で、グレアムさんが地属性であるということは知っていたが、他のメンバーにも火属性魔法の使い手がいないということだろう。


 俺の場合は、前世の知識をうまく魔法のイメージに活用することで発動させることに成功したが、ユフィの場合はどうだろうか?


 火属性魔法に対する具体的なイメージを、物理的な知識から形成するというアプローチが自分以外の人間にも有効なのか、気になった俺は彼女で試したいという欲求に駆られた。


 以前までの彼女であれば、俺が教えようとしても話を聞かなかっただろうが、今ならばアドバイスを聞き入れてくれると判断し、助言をしてみることにした。


「......もしかしたら、ユフィに火属性魔法のイメージを教えることができるかもしれません」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ