13話
さっきまで茂みの中をゆらゆらしていた光が見えなくなっていた。
「おい、徹?どこだ」
大声で呼びかけるが、返事がない。
「おい、徹。こんな時にふざけるなよ。おい!」
周囲を照らすが、光輪の中に浮かぶのは草木だけ。
ふと、違和感を覚えた。
昼間に感じた違和感。
誰かに見られているような気配。
暗闇の中から誰かに。
隆は懐中電灯を向けるが、やはり草木だけ。
いや、
見えないが、草の擦れるような音が僅かに混じっている。
その時だった。
「逃げろー」
徹の叫び声が聞こえた。
「徹?!」
声のした方を振り向いた瞬間、何かが肩に当たり、焼けるような痛みが走った。
なんだ!?
振り向くと、棒を持った女が見えた。
誰だ?
懐中電灯を女の顔に向ける
一瞬女がひるんだように見えたが、瞬間、棒を隆の頭に振り下ろしてきた。
ヤバい。
咄嗟に懐中電灯を持っていた手をあげる。
ミシッと音がして、右手に棒が当たった。懐中電灯が転がって光が消えた。
なんだ、こいつは!
ヤバいヤバいやばい
隆は、来た道を走り出していた。
左手が濡れていた。
血だった。
真っ暗なので、どこを走っているかわからないが、徹のシビックのライトが見える。
あそこまでいけば。
途中何度か足を引っ掛けたが、何とか茂みを抜けて、車に辿り着くことができた。
なんなんだ、あいつは!
徹はどうなった。
車の鍵は?
徹が持っている!
そうだ、携帯。警察!
ちくしょう。
右手が動かない。
指紋認証ができない。
暗証番号、なんだ??
そうだ、緊急通報。
どうするんだっけ?
電源ボタンを連打!
隆の記憶はそこで途切れた。




