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06

 コーデリアは強い疲労感を覚えながら目覚めた。


――あの夢は何だったのか、泥沼愛憎劇の二時間ドラマを観た後のような、なんとも言えない疲労感。しかも、バッドエンド。


 主要登場人物は大人のコーデリアと、ロイド、そして侍女もとい、ロイドの妻のエレノア。


 ――あれは十歳児が見ていい夢じゃなかったぞ。何しろ、モザイクがなかったんですけど、あの、濡れ場みたいなシーン。


(多分あれは私の知る乙女ゲーム、ロイドルートのその後の物語だ)


 コーデリアはロイドルートを思い出していた。


 ゲーム本編では悪役令嬢コーデリアの影にひっそり佇む美少年がロイドだ。無表情でヒロインがどれだけ話し掛けても、好感度の表示もない事から、攻略対象者ではないと思われていたのだ。

 それが本編終了後におまけ要素のようにストーリーが始まった。


 ロイドルートのエンドはそれこそネット上を騒然とさせた。

 好感度が十分に上がりきってロイドに告白したのに、こう返されたのだ。


『あなたを愛せたなら、俺はどんなにか幸せになれるだろう。だけど、俺には人を愛する気持ちがわからない。愛したいとも思えない。幸せなど微塵も願っていない。俺の事は忘れて。あなたには幸せになってほしいから』


 暗い瞳に何の感情も読み取れない拒絶。その時ロイドはヒロインを見てもいなかった。見ていたのは、闇に小さく浮かび上がるコーデリアを幽閉した塔。


 エンディング後のエピローグで数年後のロイドが登場する。コーデリアに虐められて、自殺してしまった母ユリアの墓参りにやってきたのだ。その腕には幼子を抱いている。その子はコーデリアそっくりの金髪と翠の瞳だったのだ。

 その墓の前に、赤子を抱いたまま蹲るロイドの背中のスチルでゲームは終了した。


 もうネット上では蜂の巣をつついたような騒ぎだった。

 一部コーデリアがかわいそうという声もあったものの、ロイドの愛と憎しみの果ての執着に多数の人が同情した。そして一部性癖の人に刺さった。

 数多のプレイヤーが他のエンドが隠されているのでは、とあらゆる条件下で検証したものの、ロイドルートはそのエンドだけだという結論に至った。


 後にシナリオライターがインタビューにこう語った。


『賛否両論あるエンドでしたが、あれ以外のエンドは書けませんでした。もしもコーデリアがヒロインだったなら、違う結末もあったかも知れません』


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