04
思いの外序章の昼ドラもとい、乙女ゲームの裏話が長くなっております。あと一話で終了する予定です。
次第に張っていく胸と徐々に膨らんでいく腹に、コーデリアは生まれてくる子供の成長を楽しみにするようになった。
「ねぇ、男の子かしら、女の子かしら、最近よくお腹を蹴るのよ、見て!ホラ!」
侍女相手に無邪気にそんな話しをするようになった。ぽこぽこ動く腹を撫でながら、嬉しそうに笑っている。
実際コーデリアの人生において、この頃が一番幸せだった。
侍女はコーデリアのお腹を見ながら、微笑んだ。内心を包み隠して。
コーデリアはロイドが閨に通うようになった、最初に言った言葉を忘れたわけではなかった。
だがどこかで、子供は自分が守るのだと、自分が育てるのだと、そんな風に楽観視していた。
――だってわたくしの子だもの。
ある日、コーデリアに陣痛が来た。侍女はコーデリアをベッドに寝かせると、不安そうに見上げるコーデリアに安心するように伝え、ロイドと医師と手伝いのメイドを呼びに搭を出た。
初産という事もあり、出産には半日以上かかった。産声が聞こえた瞬間、コーデリアは安心して気絶するように眠った。
夜半にコーデリアは目を覚ました。
暗闇の中にロイドが立っていた。
「――ロイド?わたくしの子は?」
そう、ベッドにも、部屋のどこを見渡しても、あの子はいなかった。
「……あの子は本邸で、乳母が面倒を見ています。男の子です。ジョシュアと名付けました」
ただでさえ、出産の疲れで青いコーデリアの顔は真っ青になった。
「そんな!まだこの腕に抱いてもいないのよ!返して!わたくしの子よ!」
「……俺の子でもあります。初めに言ったはずだ、あの子は俺達夫婦の子として育てると」
ロイドはコーデリアに憎まれていると言ったが、実際はロイドの事も義母の事もコーデリアは憎いと思った事は無かった。搭に幽閉された時も、純潔を散らされた時ですら。
だが今、はっきり瞳に憎しみを滲ませている。
ロイドはコーデリアのその覇気に気圧されそうになり、奥歯を噛み締めた。
――まるで手負いの獣の前にいるみたいだ。
「――一度腕に抱いてしまえば、別れが辛くなるだけです。領地の南に家を用意しています。使用人や護衛の騎士も手配しています。あなたの体調が戻り次第、そこに移っていただきます」
コーデリアは軋む体を叱咤して、ベッドから降りた。
痛む体を無視してロイドの前まで歩き、その頰をひっぱたいた。ロイドは避ける事もせず、されるがままに叩かれた。
「……南は港町で、気候が穏やかです。外出には制限がありますが、ここよりはマシなはずです。子を持つ事は許されませんが、恋人を見つけてもいい……」
コーデリアはロイドの首に腕を回して、唇を塞いだ。ロイドは思わずその背中を抱きしめようとして、腕を下ろした。
「……いいの?今、わたくしを手放せば、もう二度とあなたの手には入らないわよ?」
ロイドはコーデリアの濡れた唇を見つめていた。化粧をしているわけでもないのに、紅い唇に真珠のような歯が覗いている。吐息はどこまでも甘くて、吸い寄せられるように口付けていた。




