第十五話 おとずれ
三月に入ってから、真尋との連絡はまた少しずつ減っていた。
途切れたわけじゃない。
ただ、お互いにタイミングが合わなくなっていた。
『今帰り〜(>_<)』
夜遅くに届いたメールへ、春樹が返信する頃には、もう真尋は寝ている。
次の日の昼休み。
『昨日寝落ちしてた笑』
そんな返事が来る。
それだけのこと。
少し前なら電話していた時間だった。
◇
「おーい春樹!」
終業式のあと、春樹は帰ろうとしてところを祐介に呼び止められた。
「最近真尋ちゃんとはどうなん?」
「なんで?」
「いや、お前最近ぼーっとしてる時あるし」
「そう?」
「わかりやすいって」
祐介は笑いながら肩を小突いてくる。
「春休みどっか行ったりしないの?」
「今のところ予定ないなぁ」
「ふーん」
祐介は少しだけ真剣な顔して春樹を見る。
「まぁ、会える時ちゃんと会っとけよ」
◇
その日の夜、真尋からメールが届いた。
『春樹もう春休み入った?』
すぐに返信しようとしたが、さっきの祐介の言葉よぎった。
『うん、明日から。どっかで会える日ある?』
返事が来るまで、少し時間が空いた。
『部活忙しいかも…。でも午後練の日あるから、その日なら』
その文を見ながら、春樹は携帯を握る。
『わかった。じゃあその日にそっち行っていい?』
送ったあと、少しだけ緊張した。
『え、春樹来てくれるの!?うれし笑 』
喜んでくれている姿が目に浮かぶ。
真尋の学校がある街へ行くのは久しぶりだった。
◇
「なんか変な感じ」
待ち合わせ場所に着くなり、真尋が笑う。
「春樹がこっちいるの」
「…たしかに。学校のあるとこまで来たのは初めてだわ」
「だよね。いらっしゃいませ」
真尋はそう言いながら、嬉しそうする。
駅前を少し歩く。
制服姿の学生が多い。
「あれうちの学校のだよ」
真尋が指差した先を、同じジャージ姿の男子集団がランニングしていた。
「見られたらちょっとめんどい」
「じゃあ離れる?」
「…やだ」
真尋は笑いながら、春樹の袖を軽く引っ張った。
◇
「はい」
駅ビルの袋を春樹が差し出す。
「え?」
「遅れたけど、バレンタインのお返し」
「あ、ホワイトデーってこと?」
真尋が袋を開ける。
中には猫の形の缶に入ったクッキーが入っていた。
「え、なにこれ、かわいい!春樹が選んでくれたの?」
「いやー…、店の人に聞いた」
「へぇ〜」
真尋は春樹の顔を見ながら、なんだか楽しそうに笑った。
「じゃあそういうことにしとくね」
「…うん」
絶対見抜かれてるな、と春樹は思った。
でも真尋は、それ以上何も言わなかった。
「ありがと。うれしい!」
真尋は嬉しそうに笑いながら袋を抱える。
「……来てくれたのも」
最後だけ、声が小さかった。
春樹は、なんとなく照れくさくなって視線を逸らした。
本当は、もっと一緒にいたかった。
でも、真尋はこのあとすぐに部活に向かわなければならなかった。
「ごめんね、今日短くて」
「いやこっちこそ急にごめん」
「ほんとはもっとゆっくりしたかったなぁ」
「そうだね。部活、頑張ってね」
春樹がそう言うと、真尋は少しだけ笑った。
「……うん」
駅へ向かう春樹を見送った真尋は、いつもより嬉しそうに手を振っていた。
◇
その日の夜。
風呂上がりに携帯を覗くと、真尋からのメールが届いていた。
『今日ありがと!缶かわいかったし、めっちゃおいしかったよ』
妹にも相談して選んだものだったが、喜んでもらえてよかった。
返信を書きかけて、少し迷って。
『また時間ある時遊ぼう』と送った。
『うん。また会おうね!』
その一文と、一枚の画像が添付されていた。
添付された画像の中で、真尋は缶を抱えて嬉しそうに笑っていた。
春樹はそのメールへ『おやすみ』と返し 、ベッドへ寝転がった。
部屋の中には、真尋にもらったCDの曲が流れていた。




