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《11》
「いいから気にすんじゃないよ
来なさい」
目線が引くなった母に慣れないまま小走りで母に続いた
3階のドアの鍵を開けて
母は中に光を灯した
そこは言われていたままの物置きの様相
「この鍵であの木箱を開けてごらん」
「俺が?」
「お前じゃなきゃ開かないんだよ」
どこにでもあるような錆び付いた南京錠にどこにでもあるような鍵を差し込んだ
木箱の縁がバキバキと化け物の歯の形を成したかと思うと包まれていた黒い霧と共にスーっと化け物が空間に消えていった
「ミミックだよ
消えたからもう開けても平気さ」
開けてみたが何も無い
「手を入れてごらん」
箱の中に手を入れると手先が光る空間の中に消えて何かを掴んだ
光からこの世に来て初めて見る本だった
「ほら、どんどん出しな」
箱に手を入れては何かを掴み引っ張り出した
何度か引っ張り出すと探しても何も無い
「もうないかい?
取り出した物は今のお前に絶対に必要な物さ」
箱から出てきたものは・・・
明らかに旅支度の物だった
理解した
理解したが認めたくない現実だった
「行きなさい」
「嫌だ」
「行かなきゃ、ネ」
俺は知っている
家の外の稲光は夕立ちでも台風でも嵐でもない
攻撃なのだ!、と




