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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第95話

執事によって開け放たれた宮殿の正面玄関の巨大な扉。

ずんずん進むマリベルの後ろに続いて歩いていく。

出迎えてくれる多数のメイドが脇に控え一斉に頭を下げる。


スラリとして見目麗しいエルフの男女が丁寧な動作によって美しく頭を下げる行為はまさしく壮観。


そのまま応接室へと案内される。

執務室かと思ったら応接室の方だった。

執務室では本国潰しの作戦会議でごった返してるんだろう。


「ようこそ、ホープラーにグレタ。今夜はゆっくりと泊まっていってくれ。」

「うん、ありがとうコンコン次郎。」

「お世話になります。」


温かいほうじ茶が出されたのでズズっと啜(すす)る。

香ばしいほうじ茶の香りと味が良くて落ち着く。


お茶うけにはカリっとしている小梅を出された。


俺が5才の時にマリベルに初めて会って最初に渡したおにぎりが梅干しのおにぎり。

マリベルはおにぎりマニアではあるが、まだ米は風神の森で実験的に生産されているのみ。

俺が渡した玄米を複数育てていて、風神の森の風土に合って美味しい品種を探して品種改良している真っ最中のようだ。

マリベルが1つの種類にこだわらず様々な食感のお米を何種類も作り出す為に……かなりこだわっているのでまだまだ時間が掛かるとの事。


しかし梅干しは俺が始めに梅酢を渡しているし、エルフ王国にとって元々から梅は馴染み深い食品らしく、果物として食されるだけでなく梅酒は大昔から盛んに生産されていた。

紫蘇は俺が種を渡して徐々に生産数を増やしている。

今ではカリっとしている小梅、酸味が強烈な梅干しや塩辛い梅干しなどなどのバリエーションがある。


エルフにとって……お茶はハーブティーが主流だったのだが、千年以上前に他の大陸から紅茶と共に茶葉がやってきて、紅茶や烏龍茶や緑茶はそれぞれのマニアなエルフによってブームとなり発展していった。

発展の途中でほうじ茶や番茶なども開発され、梅干しと共にほうじ茶や番茶がブームになっているとマリベルが教えてくれた。


ほうじ茶とカリっとしている小梅の組み合わせなんてメチャクチャ俺が好きな組み合わせなんで正直嬉しい。

マリベルも『凄く落ち着く組み合わせ』だと熱弁している。

エルフ王国の中でもファンは多いと執事まで熱弁している。


エルフという種族の何かに刺さったようで……気に入ってもらえたようでなによりだ。


軽い雑談をしながら、ついついまったりとした時を過ごしてしまう。

後ろに控えていた執事やメイドもマリベルに薦められて、今はソファーに座りほうじ茶とカリっとしている小梅の組み合わせをまったりと楽しんでいる。


俺としては初めて小梅を見たときから違和感ありまくり。

なにしろ小梅とはいえ直径2センチをゆうに越えているから。

しかしながら中の種の大きさは同じぐらいだし果肉もけっこう硬いので……どうやって中まで味を染み込ませているのか不思議なんだけど、肉厚ながらカリっとして美味しいので違和感が多少あるだけで文句はない。


総料理長が応接室にやってきて昼食の準備が整ったとのこと。

料理長のドヤ顔が少し気になるね。


執事の先導でプライベート用のダイニングルームに向かう。

王候貴族おもてなし専用のダイニングルームはキンキラキンでマリベルが使いたがらないからな。

あの部屋はキンキラキンが大好きなバカを密かにバカにするためのイヤミの部屋らしいし。

俺も出来れば遠慮したい。


ダイニングルームに来てビックリしたのが……俺が以前に教えた事のある中華料理用の丸いテーブルがドンと置いてあり、真ん中にはターンテーブルまで乗っている。


俺が驚いているのを見てマリベルがしてやったりの顔。


「ふふん。ホープラーが前に教えてくれたのはこんなんか?」

「あぁ、間違いない。コレだよコレコレ。」


俺がターンテーブルをゆっくりと回しながら上に椅子の数だけ小皿を並べて、グッと勢いよく回すと各椅子の前に正確に綺麗にすっと並ぶ。


「ぬお! なんじゃその技は!」


執事や料理人達が喜ぶかと思ったらマリベルが食いついてきた。

マリベルに伝授するついでに執事長とメイド長にも小技を伝授。

音もたてずに使いこなすと意外と見栄えの良い小技なんだよね。

マリベルも執事長もメイド長も即座に習得したので、マリベルの宮殿では代々受け継がれていく小技になっているかもな。

後ろにいた他のメイドや執事やシェフ達も目を輝かせて興味津々で見ていたしね。


昼食は俺が昔教えた中華料理のコース料理。

青菜炒めから始まり青椒肉絲やエビの点心等々。

マリベルが気に入ったので料理長に数々伝授してある。

調味料もレシピや現物をキロ単位で渡してあるので、マリベルの宮殿に来ると中華料理が定番となっている。


それでこの前、中華料理は中華料理専用のテーブルとターンテーブルがあって……などと調子こいて教えていたら……マジで作りやがったわ。


エルフとダークエルフの技術力と美味しい料理を楽しく食事したいという執念を忘れてた。

前世の日本人のように美味しい料理に対する執着心と執念がエルフ達にはある。


あるエルフ執事の言葉では……

『ハイエルフ様方には及びませんが、長い寿命を持ち長大な時間を過ごすエルフ達の楽しみは《食事》なんです。美味しい料理の為に使う時間は長ければ長いほど良い』

らしいし。

まぁ、わからんでもない。

だからこそ俺もマリベルの料理人達には惜しげもなく技術を伝授してるんだし。

長寿のエルフ達は技術の伝来について他の種族とは一線を画する。

それに人間達と比べて文化的な交流が少ないので、情報の伝播は物凄くゆっくりとしか伝わっていかないから、俺としてはありがたい。


〆の杏仁豆腐が最高に美味しかった。


食後は応接室に戻り、またまた皆でまったりする。


今度は紅茶と塩バタークッキーの組み合わせ。

ある意味この世界では王道の組み合わせといえるな。

塩味が効いたバターがホロホロとした歯応えのクッキーの美味しさを引き立てる紅茶で、香りはそれほど強くないが渋みはそれなりにあるから満腹なのに飲みやすい。


「ん? そういえば今日はいつものエイス達は来てないのか?」

「エイス達はユーとミーの突撃部隊のバックアップ要員としてアニーに貸し出し中だね。」

「それは残念だの。モフモフして遊ぼうかと思っておったのだが。」

「また今度ね。エイス達もコンコン次郎と遊ぶのが大好きだから喜ぶよ。」


マリベルの小さくて華奢な身体で通常状態のエイス達に抱きつくと、モフモフに埋もれてしまうので想像以上に気持ち良いのでやみつきになってくるとのこと。


俺に甘える時と同じようにマリベルにも甘えるので、離れて見ているとモフモフの隙間からマリベルが時々見えるぐらいに埋もれてる。


言葉ではコラコラと言っていたけど、モフモフの隙間から見えるマリベルの顔は満面の笑みだったのでホントに喜んでくれていたみたい。


「じゃあ、何して遊ぼうかの」

「遊び前提?」

「私の担当はホープラーだからの。本国潰しは弟子に頼んだから既に私の仕事は終わってるし。」

「相変わらずハイエルフ使いが荒いようで。」

「その代わりに頼まれた仕事がホープラー担当だからの。」

「仕事っていう遊びなのに?」

「仕事という遊びだから楽しまないと弟子に失礼になるからの。」

「そりゃそうだな。」


そんな軽口を叩いているマリベルだが、ホントに手放しではないだろう。

仕事はきっちり徹底的にというのがマリベルスタイル。


全ての指示を終えて後の実行担当は弟子に任せたからという信頼感がこの軽口となっている。

俺も何回かマリベルの手伝いをしたことあるから知っている。


俺とグレタに出来る事は楽しくマリベルと遊ぶ事だけだ。


「他にコンコン次郎がしたい事はあるの?」

「うーむ、そういえば……ホープラーが以前言ってた『そろきゃん』に最適な場所を風神の森で見つけたぞ。」

「マジで?」

「うむ。池があって周囲は砂浜か草原みたいになってて、夜には星や月が綺麗に見える静かなところだったな。」

「そうそう、たまに魔獣とかが水を飲みにくるんだけど誰もが騒がず大人しく水だけ飲んで帰っていくような静かなところが最高だな。」

「うむ。10日ぐらい前に日中見つけたが日中でも静かで良いところ。」

「それは最高だね。」

「よし、今から行こうぞ!」


マリベルは後はメイド長に任せたと言い残し、俺とグレタを引き連れて転移魔法で飛んだ。


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