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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第94話

「まぁ、皆の好意に甘えて新婚生活を楽しみますよ。マリベルからの祝福をグレタにいただいたんだし。」

「良かったわね、グレタ。」

「ええ、伝説の風王マリベルからの祝福なんてビックリしましたわ。」

「マリベルからの祝福は私も初産の時にもらったわ。初めての妊娠で不安だった気持ちが落ち着いて、大好きな人の子を授かった嬉しい気持ちが倍増したのよ。」

「俺も助かるよ。父親って未経験だし。」

「最初は誰でも不安なのよね。何回か経験して落ち着いていくんだし。」


紅茶とクッキーのおかわりを出されても雑談は尽きなかった。


「ユーとミーの突入部隊での経験までさせてくれてありがとう、アニー。」

「あの子達のスピードと突破力には私も結構助かってるのよ。魔法への対応も突入部隊への刺激になってて、彼らにも勉強になっていますから。」

「そう言ってもらうとユーとミーも喜ぶよ。双子の自信にもなるし。」

「ホープラーはあの危機的状況への対応力ってどうやって双子に教えたの?」

「俺だけでなくリッチさんとのツーマンセル教育の賜物なんだよね。リッチさんがアンデッドダンジョンで学ぶ為に必要な敵を、最適な数で用意してくれるから勉強しやすい環境が出来てるんだよ。」

「うーん、それだとうちの部隊の隊員に教えるのは難しいわね。」

「ちょっと無理かな。でもダンジョンで勉強できる事は多いと思うけど。」

「確かにね。ダンジョンでの教育カリキュラムも検討するわ。」

「そういや、このリンタネンキュトラ共和国ってダンジョンが多いんじゃなかったっけ?」

「だから他の国からの冒険者が多く来ていて、冒険者のフリしたゲリラが入り込みやすい環境なのよね。だからといって冒険者の入国制限を行うとダンジョンの恵みが確実に減るから痛し痒しなのよ。」

「確かにね。なかなか難しい問題だわな。冒険者のみ何か特別な入国審査を課すわけにはいかないだろうし。」

「ですけど……冒険者のゲリラ活動が活発になった時は、何かしらの対策が必要になるのではないでしょうか?」

「それが難しいのよね。人間至上主義者達はお金持ちが多いから、密かに依頼を受けてやってくる冒険者もいるし、元々人間至上主義者の貴族が手足のように使う私兵に冒険者登録を本国とは別の国でやらせて、海を渡ってやってくるのもいるだろうし、その見極めが至難の技だし……入国規制するよりもゲリラ活動に個別に対処するしかないという、後手後手に回らざるを得ないのよね。」

「確かに規制するのは至難の技だね。対策も今は思い付かないし。冒険者登録をトルベッケトラース通商衛星国でやられたら、同盟国として入国規制はほぼ不可能となるからな。」


三人でしばらく話し合ってアイデアを出しあったが、決め手となる対策は作る事ができなかった。


ゲリラ戦に対処できるチームを複数作って対策しつつ、大元の人間至上主義者達の権力と財力を奪う事に尽力するしかなさそうだ。


時間になったのでアニーと別れの挨拶をして、マリベルの宮殿にグレタと転移魔法で飛んだ。


マリベルは風神の森の王。

風神の森の周囲はエルフの国となっていて、大勢のエルフが住んで暮らしている。

マリベルはエルフの国の守護神として神格化されている。

風神の森の中にマリベルを慕うエルフによって建てられた宮殿にマリベルは住んでいる。

メイドも執事も秘書もコックも庭師も全てがエルフの国から派遣されていて、精鋭のメンバーが凄い競争を勝ち抜き選抜されて集まっているみたい。


宮殿の南側にある庭園の中の東屋(あずまや)に転移魔法で飛んでくると、今日はキツネバージョンのつなぎパジャマを着たマリベルも、すぐに秘書を引き連れて転移魔法でやってきた。


「ホープラー、グレタ、待ってたぞ。」

「やぁ、コンコン次郎。」

「コンコン次郎さん、お世話になります。」

「うむ。では、行くぞ。」


マリベルは転移魔法は使わないでずんずんと庭園を歩いていく。

庭園は色とりどりの花が咲いていて花の香りが鼻腔をくすぐる。

世界中の花が集められているようで、エルフの庭師によって管理された巨大な庭園はいつ訪れても何かしらの花が咲いている。


俺とグレタを楽しませる為に少し遠回りして庭園を最適なルートで歩く秘書のエルフ。

マリベルと雑談しながらゆったりとお散歩。


マリベルの結界の保護下にあるこの庭園は物凄い種類の鳥が飛び回っている。

あちこちから様々な鳥の鳴き声がして結構騒がしいのだが、不思議と心が穏やかになって落ち着く庭園。

花を見るのも香りも大好きなグレタの為にマリベルは庭の庭園を毎回散歩して案内してくれる。


「ここの庭園を歩いていると何故か心が落ち着いてくるので大好きなんですよ。」

「わかる。俺もグレタと一緒。心が穏やかになり優しい気持ちになって嬉しくなるんだよな」

「エルフ達が精魂込めて庭園を維持しているからの。ホープラーとグレタが褒めていたと皆に伝えておいてくれ。」

「はっ、必ず伝えておきます。庭師の皆も喜んでくれるでしょう。」


庭園の草花や木は様々な結界に依って最適な温度や湿度で徹底的に管理されている。

草花達と会話可能なエルフには簡単な仕事だろう。

最適な環境で美しく育つ植物達に囲まれた生活は、エルフの生命力や魔力を活性化させるので、この庭園はエルフにとって天国のような場所を自分たちで作り上げている。


マリベルの宮殿を中心にこの風神の森は優しい風が吹いている。

あちこちの原始の森に招待してもらって行っているけど、龍の森に次ぐ魔素の濃さがこの風神の森。


龍の森とは違い殺伐とした環境にない風神の森だが、魔素の濃さに相まって数多くの種類の魔獣が食物連鎖の中で数多くの群れとなって暮らしている。


風神の森は広大な敷地を持っているので強力な魔獣が闊歩する恐ろしい場所なんだが、まるでエアーポケットのようにマリベルの住んでいる宮殿には魔獣は近寄らない。


マリベルの宮殿の敷地内はマリベルの結界によって守られているので、マリベルの大好きな小動物の楽園となっている。

ネズミやイタチ、モモンガとかハリネズミまでいる。

エルフによってエサを与えられて育てられている彼等。

ハイエルフやエルフ達しか訪れないこの宮殿に久しぶりに訪れた人間のグレタに興味津々で近寄ってくる。

小動物が大好きなグレタが触ろうとして手を伸ばすとササっと隠れてしまうので残念そうな顔をするグレタ。


俺は190センチ以上の身長があってデカくてゴツイんだけど、子供の頃から訪れているからか様々な小動物がよじ登ってくるし、モモンガは飛んでくる……全く遠慮しないなコイツら。


まぁ、可愛いから笑顔で許しちゃうんだけど。


宮殿の建物の正面玄関に到着したので手をポンポンと叩くと、よじ登っていた小動物達は飛び降りて庭に帰っていった。


母屋の建物はまさしく宮殿。

エルフの建築士達や技術者達によって作られた宮殿は様々な嗜好を凝らした装飾に飾られていてまさしく『豪華絢爛』。


客室だけで30以上あり100人以上のエルフがメイドとして働いている。

執事や秘書もそれぞれ20人以上いるしコックも10人以上。


交代制で働いているんだろうから総数はよく分からないとマリベルは笑っていたけど……たぶん冗談だろう。

エルフ全員の名前を覚えているんだから総数を知らない訳ないし。


宮殿に警備隊はいない。


龍の森の俺の住処と同じ理由だろうな。


森の中で気配を溶け込ませる事ができるエルフと、隠密行動に特化した特殊な種族であるダークエルフ、圧倒的強者のハイエルフなど限られたメンツしか森を横断出来ない。

龍の森では森の住人エルフすら恐竜に見つかり補食されるので、ハイエルフ以外は龍の森では過ごせないんだけど。


そんな森を抜けてくるヤツには逆に会ってみたくなる。


まぁ、風王マリベルの住む風神の森は中央部分のみだけど、エルフによって広げられた巨大な森に築き上げられたエルフ王国の中にあり、風神の森に訪れるにはエルフ王国を抜く必要がある。


森に住むエルフの軍隊を抜く事は他国の軍隊では不可能。

森の中では神出鬼没のエルフのゲリラ戦に耐えられないだろう。

だから警備隊は必要がない。

森まで誰もたどり着けないんだから。

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