第92話
グレタはそうとう嬉しかったようで、ニコニコしながらお腹をさすっている。
お酒は昨日の事があったので乾杯を一緒にしただけで、時間をかけてゆっくり飲み干すと後は紅茶をグラスに注いで飲んでいるので、ブランデーを飲んでいるようにも見えて雰囲気は壊していない。
緊張状態から緩和されたのでルドヴィーク達は少し羽目を外してガブガブと飲み始めた。
マリベルからのプレッシャーがキツくて威圧感を強く感じていたんだろう。
もちろんマリベルは極力プレッシャーを押さえていたんだけど、あれだけの強さの生命体は漏れ出てしまうオーラや存在感だけで周囲にプレッシャーを与えてしまう。
脳筋なだけに底知れぬマリベルの強さに触れて、そうとう緊張してる時間を長く感じてたんだろうな。
マリベルも緊張を強いてるのをわかってるから、グレタへ祝福を授けてサッサと帰ったしな。
俺の場合は外に漏れないようにするのは諦めた。
なのでどういう漏れ方をするのかを研究して、漏れ出た力を別の次元に一度送って体内に戻して循環するようにしている。
消すことは出来ないけど大幅に減らすことは可能になった。
オーラの消し方はマリベルは俺ごとき程度では比べ物にならないほど消せるけど……あえて消していない。
俺の場合は見た目がハイエルフの高身長で190センチ以上あり、ムキムキで体重はこの前計ったら85キロもあって……ミドル級どころかクルーザー級まできてしまった。
鍛えてもいないのに……ムキムキが年々増してるので、来年辺りにはヘビー級を越えそうだな。
まぁそれはともかく……
見た目に威圧感があるのでオーラや存在感はあまり必要としない。
だけど、マリベルの場合は見た目は黒目黒髪で腰まであるロングの135センチのちみっこ。
潜入捜査をする時以外そこまで抑えてはいないと言ってたな。
オーラや存在感のダダ漏れよりはある程度抑えてはいるが、消すことで何度か嘗められてムカつく事があったので、今ではこのような対応に決めたらしい。
まぁ、マリベルには悪いが子供にしか見えないので仕方がない。
特にマリベルの場合は自分で可愛いと思えるような服装が子供っぽい服装なので、子供っぽい服装を着ている事がかなり多く、より子供っぽく見られて舐められてしまうのでオーラも存在感も消さない事にしたと、プリプリ怒りながら言われた事がある。
だけど容姿からして可愛い系統の服装しか似合わないので、仕方がないと言えば仕方がないような気がする。
むしろ、この容姿と服装で世界最強の一角と言われても、理解に苦しむのが普通の反応だろう。
次々と開けられるワインボトル。
俺はグレタが飲めないから勧められたら少しだけ飲むというスタイルで対応してる。
若手のコック達が次々とツマミの料理を運び込んでいる。
食べやすいように爪楊枝ほどの串に刺してあるツマミが中心となって提供されている。
なぜか出される大皿の上には必ず一握りのザワークラウトが乗っている。
サラダが全くないのでこれがサラダ代わりかもしれない。
かなり酸味が強いけど口内がさっぱりとしてクセになる味でもある。
俺はニンニクの効いた豚肉の串焼きが美味しいと思った。
串焼きの上にもニンニクチップをふりかけてあるので、匂いがヤバいレベルだけど旨さも倍増してる。
グレタは刻み生姜を乗せた焼き魚にハマっている。
サバが一番美味しいと俺にも薦めてくる。
確かにサバが一番美味しいのは、間違ってなかったが俺が薦めたニンニクはグレタに拒否られてしまった。
どうもニンニクの強烈な匂いが受け付けなくなっているようだ。
生姜の匂いは食欲がそそられるけど、ニンニクの匂いは少しなら美味しそうに思えるけど、強烈に香ると受け付けなくなってしまったとショックで項垂れていた。
グレタは元々はニンニク大好きだっただけに自分自身の変化に驚いているみたい。
妊娠したことで身体が少しずつ変化していっているのだろう。
まぁ、妊娠そのものに喜びを感じてくれているので、自身自身の変化に戸惑っているだけなので頭を撫でて労っておいた。
ルドヴィーク達のがぶ飲みは漸く落ち着きをみせて、全員が着席して穏やかに談笑しながらゆったりと飲み始めた。
見回すと全員が真っ赤な顔で談笑しているが、流石は脳筋軍団の指導者達で酔ってはいても悪い酒にはならないようだ。
執事が酒を注ぐペースも漸く落ち着いてきて、酒やツマミを運んでいたコック達も小走りを止めてゆったりと歩いている。
それから俺とグレタは部屋に行って就寝したが、ルドヴィーク達はもう少し飲んでいくそうだ。
ルドヴィークは既に60才を越えているのに元気だな。
客室はこの館の中の一番の部屋なんだろう。
ベッドや柱や壁の細かな場所にまで装飾が施されていて……まさしく豪華絢爛。
エッシェンバッハ辺境伯領の領都周辺の景色を表す、草原と丘と街道がカーテンにも刺繍がされていて、めちゃくちゃお金が掛かっている部屋だ。
大勢の職人が腕をふるって作られている部屋の奥に、レースのカーテンで仕切られたベッドはキングサイズよりも更に巨大。
レースのカーテンも薔薇の花柄で赤や緑で美しく鮮やか。
グレタ曰く……
『王族などを迎えた時用の最上級客室』
らしいね。
防音も素晴らしくて部屋の中に外部からの音は一切入ってこないように、部屋に簡易的な結界が施されているだけでなく、壁や天井にも防音の細工がしてあり部屋の中の音が外に漏れないようにもなっているようだ。
二人でゆったりと朝まで休んだ。
かなり早めに就寝したおかげで翌朝は日の出前に起きた。
グレタと龍の森の住処に戻る。
エイス達に確認するとユーとミーも一緒に散歩したいとの事で転送魔法で全員を龍の森に引き寄せた。
今朝はかなり冷え込んでいたが、暖かい龍の森の南側を散歩したので途中から上着を脱いだ。
俺がエイス達にフライングディスクなどを投げて遊んでいる間に、ユーとミーとグレタは準備運動してから精神集中して武器を持ってゆっくりと様々な型をする。
グレタはショートソードとラウンドシールドの剣闘士スタイルの防御重視。
ユーはロングソードよりも大きな大剣。
ミーの薙刀も長くなった。
ユーとミーの身体が成長して大きくなって、筋肉も増えてきたので武器を大きく更新させたがまだ実戦では使わせてなく朝の練習でのみ使用している。
ゆったりとした動きはかなり辛いらしく休み休みやっているが、子供と言えど金虎獣人の身体は特別製でかなり強めのトレーニングでも、肉体は壊れることなく進化し続けていくそうだ。
覇王の血筋は伊達ではないとジョルこと『ジョルジーヌ・ブランケンハイマー』に直接教えてもらったので、ユーとミーの武器を大きくして今日から大人のサイズと重さにしてある。
グレタはユーとミーの動きに合わせてまずは防御してから反撃、かわしてからの反撃を意識してゆったりと動いている。
グレタには時々身体の動かし方と足運びを指導して修正している。
無理な体勢になると防御一辺倒となり、反撃への糸口を失ってしまうのでグレタも真摯に取り組んでいる。
ユーとミーは疲れてくると姿勢が悪くなるので、姿勢が悪くなると休憩させている。
変な姿勢では練習の意味がなくなる。
それを理解しているので俺から言われたら素直に休憩している。
最後は三人共に大の字になり疲れはてたようだ。
落ち着いてからユーとミーとエイス達を元の場所に転送する。
今日は日が落ちた後で犯罪者組織に突入するアニー達を手伝うとの事。
酒盛りしてる最中を狙うんだからかなり安全だとアニーから話は聞いている。
エイス達は敷地の外から逃げ出す賊を捕獲する役なんだと。
アニーからはフォローとバックアップ要員だと聞いてる。
俺とグレタもエッシェンバッハ辺境伯家の領都の館の部屋に転移魔法で飛んだ。
部屋で貴族服に着替えてカーテンを開けて風景を楽しんだ後は、ソファーに座りグレタと寛いでいると部屋の呼び鈴がなったとたんに外部からの音が聞こえるようになった。
部屋の簡易的結界が呼び鈴がなったとたんに解除されたようだな。
面白い仕掛けがしてある部屋だな。
王族のプライベートを守るために作られているんだろう。
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