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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第90話

ラーフィーに念話で連絡するとちょうど宰相のミクリーと二人っきりで書類作業していたようなので、今起きた事件とそれから推測される全てをある程度まとめた事を話す。


ラーフィーも俺達の追加情報を待つと共に、アーリンドル王国中の事件を調べ直してくれるようだ。

何かわかった事があったらまた連絡すると言って会話を終えた。


グレタが拾ってくれていた水筒には四分の一ほど薬が残っていたので、フランクリンと分けて別々に分析してみる事になった。


フランクリンは早速自分の研究所に戻り詳しく調べたいからと、モーガンに訴えて転移魔法で一緒に魔王国へと帰っていった。


俺は目の前で倒れている冒険者の記憶を探る。


冒険者の名前はグーシー。

グーシーが実験台となったのは金のため。

グーシーが飲まされた薬は合計3種類。

間に1日開けるので5日がかりで悪魔獣に変化したようだ。


これなら即効性がないしまだまだ実験の段階で、今のところは警戒レベルはそこまであげなくても良いな。


実験では初日に薬を飲んで翌日の2日目は魔法を3回掛けられている。

3日目は薬を飲んでその場で魔法をかけられてから、4日目は何もしていないけど馬車移動でかなり疲弊してたようだ。


それで今日水筒のドリンクを飲んでまずは魔族へと変化した。

悪魔獣へと変化したのはだだの偶然で『失敗』していたみたいだ。

攻撃力や狂暴性は跳ね上がったのである意味成功と言えるのかも知れないけど、研究者からの説明とは違うのでだだの偶然の産物でしかないようだ。


グーシーの記憶の分析と共に体内に残る成分を分析したが……判断に困るな。

グーシーは説明されていた人体実験の結果とも違う結果となっている。

……こいつ、隠れて毎晩酒飲んでたな。

悪魔獣へと変化したのはこれが原因っぽいな。

それどころか魔族になったのも偶然の産物らしい。

研究者のチームは離れた場所から観察していたけど、ハイエルフの俺が制圧した事で恐れをなし早々に退散している。

記憶の中にある研究者チームの面々の顔を紙にサラサラっと書いてアイテムボックスに入れた。

後で領都周辺の村や町に指名手配をすれば1人ぐらいは確保できるだろう。

いや、全員の確保を狙うべきだな。

そうしないと敵の薬の研究が進歩していく可能性が高くなる。

そう思い目の前にいるここの責任者に、アイテムボックスから取り出した似顔絵を渡しながら説明する。


「ルドヴィークにコイツらの確保を頼みたい。」

「ホープラー様、彼らはこの事件の関係者なのですか?」

「犯人である冒険者『グーシー』に薬を飲ませていた研究チームの人間達だ。グーシーの突然変異に驚いて逃げ出したが、沢山の情報を持っていると思うから全員を確保して脳内を調べたい。」

「それは全員確保したいですね。わかりました。辺境伯領にいるうちに確保できれば何とかなりそうですな。」

「まずは早馬を出して周辺の町や村の警備隊に先触れさせましょう。後追いのチームは街道を後ろから追わせます。」

「漏れがないように頼む。俺はグーシーの記憶から知り得た情報を回す。」


ルドヴィークが秘書に似顔絵を渡すと、秘書は複製魔法を使って似顔絵を大量に作り出し、騎士団の団員達に先行する部隊編成を指示する。

ルドヴィークは領都の警備隊チームを動かして領都に残った不審者がいないか捜査。

そして一時的に門を閉じて、もしかしたらまだ領都に残る手配犯が動きにくいようにした。


俺はミクリーとラーフィーに追加情報を念話で話す。

俺も複製魔法でコピーした似顔絵をラーフィーに転送魔法で送る。

それからハイエルフの知り合いの全てにも、同じように追加情報を念話で送る。


これは時間の勝負だな。

しかしこちら側にも俺の魔法というチートがあるので負けてないはず。

先行する騎士団の馬と団員を俺の前で集合させてから、付与魔法でステータスを上げてスタミナとスピードを最大限強化した。


俺の魔法だから半日以上は持つだろう。


騎乗した騎士団が残った警備隊隊員が引くほどのスピードで突っ走って行く。

あの勢いならすぐに到着できるだろう。


警備隊にも同じように付与魔法を掛けてステータスを上げておいた。

警備隊の隊長に念話魔道具を渡して緊急事態には俺に連絡をするように伝えておく。

トーキンググリップを握り話せば俺だけでなく全ての念話魔道具から声が聞こえるように設定しなおした。

警備隊もチームに別れて捜索開始。


俺とグレタはルドヴィークの秘書の操車で、馬車に乗ってルドヴィークの館に向かう。

ルドヴィークの館に緊急捜索本部を設置して手配犯を捜索するとの事。


馬車に乗る前に俺とグレタにも本部に待機していただきたいと依頼された。

事件の状況として……後は任せるとはまだ言えないぐらいに中途半端と言える状況なので、本部に待機する事を了承してそのまま本部へと向かう。


館に到着すると秘書が先導して応接室へと誘導してくれる。

案内された席につくとメイドが紅茶をポットから注いでくれた。

芳醇な紅茶の香りが辺りに漂う。

昨日グレタの実家で飲んだダニエル秘蔵の紅茶と全く同じ味がした。

お得意様にしか渡していないという値段の付かない紅茶なんだろう。

まずは香りを楽しんでから一口味わうとホッとする。


秘書と執事を従えたルドヴィークも応接室に入ってきて自分の席に座り執事と秘書に指示を与えてる。


俺とグレタは紅茶を楽しみながらメイドから追加で出されたクッキーを味わう。

ルドヴィークも指示を終えると俺とグレタの雑談に混じる。


全員確保の連絡が入ったのは執事と速報の連絡をいれにきた騎士団の副隊長が応接室に駆け込んできたのは雑談を始めて1時間後の事だった。


騎士団と警備隊は合同でチームを編成し、部隊をいくつかに分けて、街道にいる全ての馬車を臨検してしらみ潰しに捜索していた。

それほど時間が掛からずに全員を確保できたのは研究者達が訓練された軍人ではなく、団体行動に向かない研究者達が逃走準備も整ってない状況の中で急いで逃走した結果がこれなんだろうとの報告を受ける。


しかも尋問どころか軽く質問しただけで少し自慢げにペラペラと話しているとのこと。


まぁ、彼らは軍人ではない。

何らかのトレーニングを受けた訳ではないし、守秘義務を律儀に守って拷問を受ける研究者なんて聞いたこともないけどね。


後の答え合わせで俺が立ち会えば嘘か本当かすぐにわかるから大丈夫だろう。

ハイエルフの俺が変身した冒険者を片手で押さえつけていたところを見てるから、無意味で無駄な抵抗をしていないのかもしれないが。


エッシェンバッハ辺境伯の館から領都の警備隊本部にある地下牢へと移動するルドヴィークと同行する。

館の正面玄関前に停められた馬車に乗り込み移動。


地下の牢屋で個別に収容されている研究者達に直接面会して脳内を探る。


うーん……やはり冒険者の変化は偶然の産物のようだ。

冒険者の脳内を探った時と同じ結論が出たな。

マウスを使った実験ではマウスが暴れまわって凶暴になったけど、人体実験では一度も上手くいっていないのに今回何故成功したのか理解出来ていない。

予想していたのもてんで見当違いの方向に向かっていってるな。


それと研究データも研究していた薬も全て馬車に乗せてあったようので本国には書類のデータも何もないらしい。


これで敵の組織から全て取り上げた形となったので、敵の組織は研究者と研究結果を奪い取られ大損する事になる。


……ざまぁ。


本国は国家の中枢を含めて国ごと潰すと現地のハイエルフがブチ切れてるので、彼女と念話で相談した結果……

捜査結果と研究結果の全て、逮捕した犯人達をまとめて数日後に引き渡す予定になった。


ルドヴィークにそれを説明すると明らかにホッとした表情を見せる。

捕まえたヤツラをどう処理したものかと頭を悩ませていたんだろう。


尋問にも立ち会ったが誰も嘘をついていないと確認がとれたので、後は警備隊が受け持ち捜査を続けている。

事件の概要と研究結果などは明日の朝までにまとめてくれる事になった。

一応、万が一があるかもしれないので監視として紙で作った式神を置いておく。

不審者が侵入してくる可能性もあるし、研究結果を盗もうとするヤカラもいるかもしれない。

俺の作った式神の監視網を抜けるのはハイエルフでも不可能だ。


俺とグレタとルドヴィークは館の応接室に戻る。

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