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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第88話

年末の慌ただしさで更新が遅れてしまっています。

申し訳ありませんが気長にお待ち下さい。

警備隊の小隊が誘導して歩いていると周囲の人々が足を止めて俺とグレタを見て『ご結婚おめでとうございます』と祝福してくれる。


グレタはこの領都に数年間暮らしていたこともあるし、男爵に叙爵(じょしゃく)された時もエッシェンバッハ辺境伯の計らいで、この領都でパレードしてもらっているから有名人だ。


領都で暮らす人々からの祝福にグレタは嬉しくて少し涙ぐんでいる。


そのグレタが『今日は妊娠(おめでた)の報告に』と言ったものだから大騒ぎに発展。

万歳三唱まで起きている。


「辺境伯が城でお待ちだ! すまんが道を開けてくれ!」


と俺達の周囲にいた警備隊の隊長が叫んでようやく前に進めるようになったが、道の両脇にいる人々から次々と祝福の言葉をかけられてグレタは目が潤んでいる。


俺も歓迎されているようなので嬉しく思う。

人の幸せが祝えるというのは、この領都においてホルヴァートの治世が上手くいっている証拠だろう。


お城までの道のりでとても幸せな気分を味わっていたのに、この平和な領都に不届き者が紛れ込んでいるようだ。

不審な気配に反応して相手を見ると懐から吹き矢を取り出した。

しかも3人いる。

電気(スタン)

全ての実行犯が同時に崩れ落ちると、驚愕する人々と違って慌てて逃げようとする人間も10人以上いたので、全員をスタンで意識を失わせた。

俺達が歩く街道の場所から少し離れているので誰も気付いていないようなので、隣で警護してくれている警備隊の隊長に耳打ちする。

隊長は俺が小声で誰にもわからないように囁いた事を察して、隊員達にハンドサインで指示を出して応援を呼ぶ隊員と現場に急行する隊員を動かす。


んー、またまた人間至上主義者の国からやって来たテロリストの奴らかな?

エッシェンバッハ辺境伯領の領都にまで入り込んでるのか?

俺が隊長とコソコソ話をしてるのはグレタも気付いているだろうけど、せっかくグレタが楽しそうにしてるのを邪魔する不届き者どもに腹が立つ。


応援の部隊と共に俺からの情報を得た隊長が自ら馬に乗って現場に急行する。

吹き矢を持つ殺し屋どもはグレタを目指していたようだし、俺が『許すつもりはない』と隊長に告げた事で隊長自ら現場に急行した。


グレタにも『不届き者を何人か捕獲したから指示をした』と耳打ちして安心させる。


俺も後で尋問させてもらおうと考えてた時に、お城へと続く街道の脇道で建物の暗がりから異様な気配が膨らむ。

反射的に見るとガタイの大きな冒険者が飲み干した水筒を投げ捨てたところだった。


瞳が赤く光り膨れ上がる殺意。

隣にいた警備隊隊員に『こっちで対処する』とだけ告げてジャンプ。

一飛びで冒険者に肉薄すると190センチの俺より少し背の高い冒険者の顔を右手で掴み強制的に俺の腰の高さまで屈伏させる。

冒険者は全身に力を込め全力で抵抗しているようだけど、俺は右手にそれほど力を込めた訳ではないが力の上限に違いがありすぎる為に、冒険者はゆっくりと膝を付き俺を見上げる形になる。

俺の右手に爪を立てて必死になって抵抗しているけど何も出来ない冒険者。


突然始まった歓迎パレードから一変して、街道脇にいた異様な冒険者をハイエルフが押さえつけている光景に、周囲にいた領都民達は後退(あとずさ)りして固唾を飲んで見守っていることしか出来ない。


こいつは何だ?


俺は冒険者の肉体の変化をゆっくりと観察する。

水筒に何が入っていたのかはまだわからないけど、何かを飲み始めた瞬間から冒険者の肉体は変化を始めたから強制的に押さえつけている。


紫色の湯気のようなモヤを出しながら肉体が変化している。


俺の右手に突き立てている爪は最早人間の爪ではなくて魔獣のような鋭さ。

俺の手作りの服だから破れていないけど、鋼鉄の鎧すら引き裂く事が可能なほど固くて鋭い爪。

俺の右手の指の隙間から少しずつ延びている角。


グレタが状況を察したみたいで警備隊に指示を出して周囲の人々を更に後退させた。


「グレタ、あそこに落ちている水筒を拾ってくれ。あれを飲み干してからこいつは魔獣のように変化をしたんだ。」

「わかったわ。」


グレタは俺が指差した方向に落ちている水筒に目掛けてダッシュ。

下に転がり誰も気付いてなかった水筒をグレタが拾った頃に、俺が押さえつけている冒険者に更なる変化が訪れる。


全身からシルバーの毛が生え始めた。


俺の鑑定魔眼で観察していたが……

はじめは人間と表示されていた冒険者の種族名が文字化けして、グシャグシャと変化した後に魔族と変更して表示された。

更にまた文字化けへと変化していた冒険者の種族名は今は悪魔獣という珍しい種族になった。


意味がわからんな。


魔族に詳しい魔王に念話をして何か情報を持っていないか確認してみた。


「ホープラーだけどモーガンは今は忙しいかな?」

「いえ、別に大した用事ではありません。何かございましたか?」

「モーガンは人間が魔族に。更に魔族が悪魔獣になる薬を知ってる?」

「世界統一戦争時に兵器として開発された経緯があります。しかし私が黄泉縛りの眠りに付く前に廃棄するように指示して消滅しましたが……何かありましたか?」

「今、俺の目の前で押さえつけている人間の……いや、『元』人間の冒険者が水筒の中身を飲んだら魔族に変化した。今は悪魔獣のキメラに変化している真っ最中なんだけど。」

「え? 少々お待ち下さい。」


モーガンとの念話が切れた。


右手一本で押さえつけている元冒険者は革と金属のハーフプレートメイルとインナーを引きちぎってますます巨大化している。


人間の面影は既に無い。


手は前足に変わって4本足の獣と化している。

俺が力で押さえ込んでいるので頭の大きさが変わっても、俺の腰の高さよりも上に上がらないので地面にめり込んで巨大化している。

こいつが悪魔獣という証明は前足の膝から先が毛皮ではなく皮膚が鱗に被われている。

後ろ足は爪ではなく鹿のように蹄が別れている遇蹄目となっている。

悪魔獣特有の羊の角が側頭部からくるりと回って外側に生えている。

背中にはコウモリのような羽根があり、色々と混ざりすぎのキメラがガルガルと唸っている。


俺が冷静に観察していると、巨大化した魔物の周囲の人々は更に距離をおいて周囲の建物の中にいた人々も続々と避難している。


モーガンが魔王の正式鎧を装備して転移してきた。

隣にもう1人の貴族服を着た魔族の高位貴族らしき人物を連れてきている。

眼鏡をかけた少し青白い顔色をしたインテリ系なイケメン吸血鬼。

モーガンほどではないが手練れなオーラを纏っている。


「ホープラー様、彼が魔獣薬師の『フランクリン・パンドルフィーニ』侯爵で魔獣薬の専門家なんで連れてきました。」

「やぁ、俺は龍の森の王で調停者(ハイエルフ)のホープラーだ。よろしくね。」

「ご挨拶ありがとうございます。フランクリンとお呼びください。」

「フランクリン、こんなに急激に人間が魔族に、そして更に悪魔獣に変化できるものなのか?」

「少し調べさせてください。」


クイっと眼鏡を左手で上げたフランクリンは足元に転がるハーフプレートメイルを拾った。

「元々こいつが装備していた鎧はそれだな。ほんの数分でここまで巨大化している。」

「フムフム……確かに異常なまでに巨大化してますね。」

「ああ、生命力やその他のステータスも膨れ上がり、別の生物へと変化している。種族名もキメラとなっているから……色々と混じっているようだ。」

「フムフム……」


そこからは蔦で縛って浮かせてからひっくり返したりして、フランクリンから指示された通りにこの魔物の体勢を変えている。魔物が暴れようとしているが、ハイエルフ特製の蔦がたかだか悪魔獣に何か出来る訳もなく、フランクリンが見やすいように口を開かせたりとやりたい放題。

フランクリンも研究家気質が出てきて、ポケットから取り出した木槌や金属棒で叩いたりとやりたい放題。

俺も初めて見る悪魔獣のキメラにやりたい放題にしているので、周囲の一般人からは悪魔獣に同情する空気になっていたと後でグレタから教えてもらった。


俺は蔦を操り悪魔獣を好き勝手に操りながら壊れた石畳を一瞬で修復。

フランクリンはメモを取りながらブツブツと呟いて考え込んでいる。

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