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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第87話

「勇者が復活するとかしないとかよくわからないのですが……」

「グレタ婦人に分かりやすく説明させていただくと……勇者というのは本来、何度でも復活します。しかも何のペナルティーもなくスキル、経験値などはそのまま継続して復活できるのが勇者というシステムです。」

「勇者がシステム……」

「はい。勇者は何度でも復活できるのですが……勇者にも制限があります。オーバーキルに制限があるんです。あまりにもレベル差がある攻撃を受けると魂が持ちこたえられなくて消滅します。なので古龍やハイエルフの攻撃を受けると魂が持たないのです。私も全力で攻撃すれば消滅しますし、グレタ婦人ご存知の冥王(リッチさん)の攻撃でも消滅しますね。」

「では勇者と魔王の戦いとは?」

「たぶん私以外の魔王との戦いでしょうね。私の前に現れた勇者で魂が持ちこたえられた者は存在しません。全て消滅させてますので。」

「そうなんですか……物語とは違うのですね。」

「人族に伝わる物語は私も読んだ事はございますが、本来の事実とはかなりのかけ離れた空想的な物語となっておりますね。ですが私が勇者に倒されたことは一度もないです。攻撃を受けた記憶もありません。勇者攻略は理解できてますので最初の一撃で消滅させて終了してます。」

「……」


生き証人で当事者のモーガンの言葉がグレタには重すぎたようで返事もできなくなっていた。

子供の頃に読んでいた伝説の勇者達の伝記だと思っていた物が、ただの空想小説って当事者から言われたら……そりゃショックだわな。


まぁ、真実って意外と残酷だしね。

俺は自分自身が経験してきた輪廻転生の中の勇者とはかけ離れた存在のこの世界の勇者に少し戸惑っている。


俺は別の世界で勇者も敵側の魔王も経験してきたけど、『勇者は何度でも生まれ変われる』なんて不死のシステムはなかった。

デスペナルティーもないなら迷惑極まりない存在だな。

魔王や古龍やハイエルフさえ相手にしなければ、人間相手なら無双できるような存在になれるだろうし。


「勇者は人間同士の戦争なら無敵の存在になりえるから、魔王から避けた方が利にかなっていると思うけど……それが理解できた勇者や勇者の所属する団体が、魔王を避けて戦争に駆り出していたんだろう。長く続いた勇者ほど人間の他国の戦争に参加していたんだろうしね。」

「魔王を避けて人間の戦争に利用される……物語としてはかなり俗物な勇者になりそうね。ホープラーが言っているように人間同士での戦いでは無双可能みたいですから。それを隠す為の伝記風空想小説にしてあるのかもしれませんね。」


等々、雑談は昼食時まで続いた。


昼食は俺の手作りの『すき焼き』にした。

龍王が大好きなメニューでリクエストされたから。

モーガンからも絶賛された。


……魔王も餌付けできたな。


龍王とモーガンは昼からは予定があるらしく、昼食後はそそくさと帰っていった。

モーガンも転移魔法はマスターしてるので、今後は暇を見つけて会いに来ると言って帰っていった。


龍王とモーガンが帰った後、20分ほど仮眠してからアーリンドル王国の首都フェリクスにグレタと転移。

ユーとミーに連絡してみると今日はリッチさんのアンデッドダンジョンでトレーニング中。

エイス達もダンジョンに行きたいとの事で転送魔法で送ってあげた。


エッシェンバッハ辺境伯家に訪れる。

予約してあるわけではないけど、エッシェンバッハ辺境伯家の当主『ルドヴィーク・フォン・エッシェンバッハ』から結婚の挨拶時に『お気軽にお越し下さい』と聞いているから訪れてみた。


そう言われてホントに気軽に来るとは思ってないだろうけどね。

身分的には遥かに上の存在な訳だからまぁ、大丈夫でしょう。

俺は貴族でもないから貴族の風習とかマナーとかはあまり問われないだろうし。


まずは行った事のない領地ではなく、結婚の報告で訪れた事のある首都フェリクスにある館を訪れる。


「やぁ、ホープラーだ。君たちには前にも会ったね。ルドヴィークはいるかな?」


門の前に立って話しかけると門番をしていた衛兵が深々とお辞儀して挨拶をしてくれた。

門番控室にいる休憩中の門番が1人館に走って連絡しに行った。


館から執事見習いのルーニーが走って来る。

ここの執事見習いはエッシェンバッハ辺境伯家の現役執事の孫で俺と同じ年の18才。

見習いとして3年前から勉強中らしい。

アーリンドル王国の王立学校高等部で執事の教育を受けている。

月の半分は学校に通って知識を身につけ、もう半分は現場で勉強中と言ってたな。

名前はまだ見習いだからルーニーだけで充分だと本物の執事である祖父から聞いてるので俺は知らない。


「ホープラー様、お越しいただき誠にありがとうございます。生憎(あいにく)と当主と祖父は領地に戻っての視察中で、後5日ほど戻らない予定となっていまして……」

「そうか、わかったよ。グレタはエッシェンバッハ辺境伯家の領地に行った事あるんだよね?」

「何度もあるわよ。ルドヴィーク様の代理で視察団に同行したこともあるわよ。」


俺が問いかけたことで思い出している最中のグレタの記憶を覗くと領地の場所がわかる。


「わかった。ルーニー、じゃあ俺達は領地の方に顔出すよ。じゃあまたな。」

「え? あ、はい。またいつでもお越しくださいませ。」


グレタと一緒に再び転移魔法でエッシェンバッハ辺境伯家の本拠地に移動。

巨大な正門前より少し離れた場所。

グレタが好きな風景の場所に移動していた。


領都の街の奥にあるのはそこまで大きな城ではないが立派で青い屋根が美しい城だ。


城は大きな湖の隣の少し小高い丘の上に立ち裾野に領都の街が広がっている。

丘の周辺は牧草地帯が広がっていて、エッシェンバッハ辺境伯家の特産品『軍用馬』と『馬車用の馬』の生産が盛んな場所なんだろう。

アーリンドル大河の支流が流れ穏やかで風光明媚な土地。

アーリンドル王国の騎士団の軍事演習も行われる土地で、河の反対側は旧デバッケルフラート教国があり過去は最前線の土地でもあった。

今は同盟国のラハティカンナス獣人公国となり、土地に染み付いていた緊張感は消えている。


風光明媚な風景を楽しみつつ歩いて正門前に向かう。

道の脇の草原をテクテク歩いているが街道は馬車の往来は多い。

馬車の往来が多くて危険なので歩行者は皆草原を歩いているからついていってる。


草原とはいえ草の長さは歩行に負担があるまでの長さはなく、足首までいかない長さしかない。


草原の所々に馬がポツポツと放牧されている。

柵は一応あるけど人間の腰ぐらいの高さしかなく、馬を出さないようにする為の柵ではなくて牧草地を仕切るための柵って感じだな。

牧草地をブロックごとに仕切ってあって、牧草の成長具合を見ていくつかの放牧地をローテーションで回しているんだろう。

仕切ってある牧草地ごとに牧草の長さが違うのでそう感じた。


グレタと手を繋ぎ草原を歩きながら雑談。

道行く馬車の御者は俺とグレタをチラチラと見ながら馬車を操車している。

ほとんどの馬車はレースのカーテンが閉めてあり、馬車の箱の中の人達は外を見てないようなので俺は気づかれていないようだな。

時々手を振る子供にグレタと2人で手を振り返すと喜んでいるのがわかって、ほんわかとした気分になって気持ちが良いね。


草原から吹いてくる風はほんのり暖かく草の香りを運んでくる。

真冬だけど街道脇に降り積もった雪はない。

今年はこの辺ではあまり積雪量は多くないようだな。


正門前に到着して順番に並んでいると警備隊の小隊がすっ飛んできた。


「やぁ、龍の森の王で調停者(ハイエルフ)のホープラーと妻のグレタだ。ルドヴィークに会いに来たよ。」

「お久しぶりです。夫と一緒にお伺いさせていただきました。」

「ホープラー様とグレタ婦人、ようこそお越しくださいました。では、こちらにお越しください。」


先導されて別の通用門から街へと入る事になった。

街の中は賑やかで活気に溢れている。

エッシェンバッハ辺境伯領は元から裕福な財政だった。

今では更に同盟国のラハティカンナス獣人公国が隣に引っ越してきた事で、軍事的な緊張感は消えて人の交流が激増した事で、馬車用の馬と軍用馬の需要が増えているのが活況の源だろう。


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