第83話
夕方になってきて東屋ではかなり寒くなってきたので、館の応接室に全員で移動しましょうとイングリッドが席を立つ。
執事が先導するように歩き始め東屋の後片付けはメイドがトレーを持って待機中。
俺達が移動するのを待ってくれているようだ。
到着した応接室はかなり豪華な造りとなっている。
豪華絢爛とまではいかないけど領地を持たない男爵家の家格を考えると、かなりセンスが良い華やかさだと思う。
家族の絵画や胸像などの美術品も派手になりすぎない程度に設置されていてバランスが良く配置されている。
入口に立って真正面の壁には何代か前のアーリンドル王家から下賜された金属製のプレートが飾られており、プレートには王家の紋章の横にカラマンリス家の紋章まで彫られている。
法整備において多大な貢献をした事に対しての御礼のプレートみたいだ。
俺からの問いにダニエルが答えてくれた。
まぁ、もらったのは200年以上前らしいから、ダニエル自身もよく分かっていないようだけど。
内務の法務系の家系ではこういう御礼のプレートを下賜されるのは、めちゃくちゃ珍しいようでアーリンドル王国が成立して以来、同じようなプレートを持つ内務家貴族には5家で合計5枚しか下賜されてない。
それだけがカラマンリス家の唯一の自慢らしいとダニエル本人が笑っている。
戦争で活躍した軍属の家系は短剣などの武器が下賜されるし、外務系の貴族はタペストリーなどの織物が下賜されているのが、アーリンドル王家流のパターンとなっているみたい。
最上級の下賜には多くの小さな宝石が埋め込まれた宝剣が贈られている。
テオは宝剣が下賜されているアーリンドル王国唯一の実在する人物。
俺も今度ラーフィーに世話になったら護身刀でも贈ろうかな。
などの雑談をして盛り上がっていると、執事がディナーの準備が出来ましたと部屋に入ってきた。
今夜もヘラカイオンの巨大な肉の塊を半日かけて焼き上げた肉のステーキが中に入れてあるタンシチューがメイン料理だと説明を受ける。
スープには花が浮かべてあり彩りは華やかで、前菜にも食用の花が添えられているのは美しい。
シェフがカラマンリス家の誕生から代々契約を続けているのは、カラマンリス家が代々食事に拘る当主が続いているとの証明になっているのかも。
領地を持たない男爵家のシェフは代替わり毎に変更されるのが普通の事であって、カラマンリス家のように代々続けて契約をしていくのは珍しい。
領地持ちの貴族が領地で雇うシェフを代々続けて契約をしていくのはしごく当たり前な事で、シェフを代々育てるシステムとなっていることが多い。
だけど領地を持たない貴族は安定的な収入があるとはいえ、それでもそれほどの収入は得られていないのにも関わらず……シェフを代々続けて契約を結び高額な報酬を支払い続けて囲い続けているのは、シェフが作る料理に余程の拘りがあるからなんだろう。
カラマンリス家のシェフが腕を振るって出されたランチとディナーは素晴らしかった。
ラーフィーと食べたアーリンドル王家のディナーに劣らないレベル。
次回のグレタの実家のカラマンリス家族との食事会は、龍の森に招いて俺が腕を振るって食べてもらいたいとディナーの途中で提案してみたら、是非ともよろしくとダニエルから返事をもらった。
ついでに横に控えて料理の解説をしてくれていたシェフや、食事の世話をしてくれていた執事やメイドも招待すると約束すると、皆は恐縮しているが嬉しそうな反応をしてくれていた。
食事を終えると応接室に移動してお酒が出される。
食事で出されたワインがかなり美味しかったのでワインをリクエスト。
ツマミにはローストビーフとローストチーズが出される。
一口サイズにカットされたツマミが爪楊枝サイズの串に刺されて大皿の上に並べられている。
ドライフルーツやドライ野菜チップスなども並べられているので味の変化を楽しんでいる。
食事と時からの雑談が続いている。
エイス達の種族説明をしたが、この大陸にはいない種族なので誰も見た事ない種族だから、彼らに関する色々な質問をされて俺が答えた。
更にエイス達は俺とリッチさんの訓練により、種族特有の魔法なども種族限界を遥かに超えているので、同じ種類の中でも飛び抜けた存在となっているとも説明。
魔獣のくくりのなかでも飛び抜けた存在となっているとまでは説明してないけど、トレーニングによって種族の中では強くなっているとは説明しておいた方が良さそうだと判断した。
あまり魔法を使う種族ではないのに、魔法を使いまくっていたら変だし。
ダニエルはソファーの上で寛ぎながら、自身の太ももの上で丸まって寛いでいるエイスを撫でてご満悦。
途中から会話に参加してこなくなっているから……既に自分の世界に旅立っているんだろう。
フーローはグレタの太ももの上で丸まって寛いでいるし、ライチは俺の右肩に止まって右耳に頭を擦り付けている。
話題は長男バレリオの恋愛話へ。
「バレリオの彼女は生まれる前からの婚約者なの?」
「ホープラー様……それがエッシェンバッハ辺境伯家の現当主『ルドヴィーク・フォン・エッシェンバッハ』様から『派閥の繋がりを大切にしたいから、私に世話をさせてほしい』と頼まれまして、バレリオとレナートの婚約者は10年ほど前の学生時代に今の婚約者に変わりましたの。」
「そうなんだ。グレタの事で辺境伯家の派閥に入った影響かな?」
「はい。我がカラマンリス家は元々法衣貴族の中でも派閥には無所属……あえて無所属を選んだわけでなく、どこからもお呼びが掛からなかっただけなのですが……まぁ、うっすらと法務局系統には入ってましたけど、それほど強い繋がりも縛りもありません緩い派閥でしたね。」
「ふむふむ。」
「私の実家はエッシェンバッハ辺境伯家が寄り親で、グレタの教育関係で実家に頼った時から繋がりが出来たことで、エッシェンバッハ辺境伯家の派閥に加えさせていただきましたの。」
「成る程ね。派閥の関係強化を込みでルドヴィークが直接バレリオとレナートの囲い込みに動いたんだ。」
「それはそれで別の問題が起き始めたんですけどね……何しろ私の婚約者とレナートの婚約者はルドヴィーク様の弟君の娘で姪っ子となっていましたので、法衣貴族で男爵家の子供が一大派閥の長の末弟が養子入りした伯爵家から嫁を? と一時期は騒然となっていました。」
「そりゃ明らかに身分的に不釣り合いな嫁入り……騒がしくもなるわな。」
「まぁ、そんな問題もグレタがホープラー様と仲良くさせていただいていると、新たな繋がりが出た瞬間に消滅しましたし、今となってはルドヴィーク様の目の付け所が絶賛される事になりましたわ。我が家への『新入りのクセに!』というやっかみは消滅しましたのよ。もちろん表面上の話でして裏側はわかりかねますが。」
「なるほどなぁ。それで結婚への今後の予定は?」
「兄貴は騎士団に入ってもう立場も落ち着いてきたから……もうそろそろなんじゃないの?」
「グレタ姉さんが先に結婚するのは予想外だったけど、今年中には式を挙げる予定ではいるよ。先方とも既に詳細な日程調整中だから……このままいくと半年後ぐらいかな。レナートは騎士団で揉めてたから少し遅れそうかな?」
「うん。残念だけど後2年ぐらいは掛かるかもってところかな。」
「俺も結婚式に参加しようか?」
「めちゃくちゃありがたいのですが、先方の参加者とのバランスに難航しそうなんで遠慮させていただきます。」
ここで弟達の結婚式に参加できなさそうと思ったグレタが少し淋しそうな顔を一瞬だけ見せた。
「ならば結婚後に1日もらいたい。龍の森での食事会にバレリオ夫妻を招待させてもらおう。」
「わ、わかりました。」
「龍の森でしか食べられない料理を振る舞わさせてもらいたい。」
「それは私も楽しみね。グレタからホープラー様の料理の美味しさを何度も自慢されて悔しかったから、一度味あわさせていただきたかったですの。」
「お義母さんとお義父さんもシェフも皆を招待しますよ。」
話が盛り上がっているけどダニエルはエイスと戯れるのに必死で会話に全く参加していない。
まぁ、後で話を聞いたダニエルが断る事はないと思うけど。
作者からのお願いです。
少しでもこの作品を面白いと思っていただけたら↓の好評価とブックマークの登録をお願いいたします。
皆様の応援が作者の励みになります。
是非ともよろしくお願いいたします。




