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ボーナスステージの異世界冒険録  作者: 椰子獅子


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第78話

グレタは膝を絞り手綱を握りしめて何とか落とされまいとしているけど、ブラックパールが自由奔放に動いてグレタの指示を完全に無視している現状ではただ掴まっていることしか出来ない。


完全に空中に投げ出されたのを合図に俺が転送魔法でグレタを安全な俺の手元に引き寄せた。


お姫様抱っこされたグレタは少し悔しそう。


「あー、ダメだったわ。結構頑張ったんだけど。」

「いや、めちゃくちゃ頑張ってたよ。あれ見てみ?」


俺の手から降り立ったグレタは俺の目線の先を目で追って笑いだした。


「プププっ、私、あれに掴まってたの? 確かに頑張ってたわ。」


エイス達と走り回るブラックパールの自由奔放な動きを見て逆に感心している。

ブラックパールはグレタが乗っていた時よりも、グレタを振り落とした事で更に動きが激しくなっている。


「グレタを振り落とした事でブラックパールの動きが更に酷くなってきてる。でもあれよりは多少マシとはいえ、グレタはよく掴まっていたよ。」

「確かにどんどんとヤバい動きになってきているわね。早めに降ろしてもらって正解だったかも。」


ブラックパールの全力全開の動きにグレタが少しひいてる。

ブラックパール自身は凄く楽しそうにしているだけに、少し複雑な顔をしているけど。

エイスとフーローもグレタが安全圏に離脱したので遠慮なくブラックパールの限界のスピードで遊んであげている。


グレタは疲れたみたいで俺の横に座る。

大草原で足を伸ばして寛ぎだした。

俺はスラリンにもたれて寛ぐ。

グレタもマリスにもたれて寛ぎだした。


アイテムボックスから取り出したオレンジジュースが入ったグラスを、1つはグレタに渡して俺も横に座ってオレンジジュースを飲む。


「プハー、このオレンジジュース美味しいわね。酸味と甘さが今の疲れた私にはちょうど良いわ。」

「あー、疲れたって時にこの酸味が美味しいんだよね。」

「わかる。ただ甘いだけのオレンジジュースよりも、疲れた時は酸味が体内をリフレッシュしてくれる感じがするのよね。」


龍の森の北側の草原に2人で並んで足を伸ばして座り、真冬の早朝なのに少し暖かく感じる風を浴びながら雑談。


「龍の森の北側の草原って真冬でも暖かいわね。」

「ここの草原は一年を通して気温の変化があまりないんだよね。真冬の早朝でも18度ぐらいまでしか下がらないし、真夏の炎天下でも28度ぐらいにしかならない。龍の森の俺の住処と似てる環境だね。」

「何かしらの理由がありそうね。」

「龍王から聞いた話では……ここの草原の下で龍脈が細かく枝分かれをして世界中の世界樹と繋がっているようだ。

この枝分かれの場所は特殊で魔素が薄くなっていて、その影響で気温の変化が少なくなっているんじゃないかって言ってた。」

「魔素が薄い?」

「魔素が異常なまでに濃い龍の森の周辺には、魔素の切れ目のような空白の地域がある。そこが龍脈の枝分かれしてる場所なんだけど、枝分かれしてる所は不思議と魔素が薄くなっているみたい。ちなみにジャリストンとトルベッケトラース通商衛星国を繋ぐ街道も空白地帯の切れ目となっているよ。」

「そうなんだ。」

「ただ、森を今の段階まで広げてアーリンドル王国からの要請で街道を通す時に、古龍の長老がクシャミしてジャリストンの手前の森の一部分を掠めてしまったらしく、毎日のように計画的に伐採しないと街道が森に埋もれる可能性があるようになったと聞いた。」

「クシャミが原因だったのね。でも……そのおかげでアーリンドル王国は龍の森の木材を大量に手に入れられるようになった。ジャリストンは樵と木材と鳥の王国と呼ばれるようになったんだし。」

「住民の大半は(きこり)と木材加工の職人、後は輸送関連……まさに木材特化してる都市だな。」

「ホープラーが言ってた『魔素の切れ目』だから龍の森の南側にある街道は、ここと同じように気温の温暖差があまりないのかな?」

「というのが龍王の推論」

「でも少し離れてるジャリストンは普通なのよね。」

「魔素の切れ目は草原となっているのが多いみたい。この大草原のように広大な土地となっている場所は世界的にも珍しいみたいなんだけど、原始の森の周囲を囲む空白地帯が草原ってのは定番らしい。」


アイテムボックスから卓袱台を出して寛いでいると、疲れきったブラックパールが動きを止めた。

ブラックパールが大きく口を開けて口と鼻からフーフーと呼吸をしている。

巨大なタライに水を入れてブラックパールの目の前に出してあげると、ゴクゴクと音をたてて飲みだした。

エイスとフーローの目の前にも水を出すとペチャペチャと音をたてて飲みだす。


ブラックパールが落ち着くまで皆でのんびりと風景を見たりして楽しむ。


ここの草原は本来ならば馬系魔獣が沢山いて結構騒がしい場所なんだけど、ハイエルフの俺がいるだけで半径12キロメートル以上の馬系魔獣空白地帯が出来上がり、草原を駆け抜ける風の音しか聞こえない静謐な場所に変わる。

はるか上空にワイバーンが飛んでるのがわかる。

ライチはもっと上空を飛んでる。

……何やってんだあいつ。


咥えていた枝を投げてきたけど、風の計算が間違っているようでてんで見当違いの場所に落ちていく。

しょうがないので立ち上がり遠くに離れていく枝を転送魔法で引き寄せて手で握る。


「ブラックパールはまだまだ疲れているようだし俺達は俺達で遊ぶよ。グレタはブラックパールが落ち着くまで待ってて。」

「わかったわ。」


グレタも立ち上がってから腰に付けた収納袋からブラシを取り出して、ブラックパールをガシガシと撫で始めた。


気配を察したエイスとフーローも立ち上がり俺に付いてくる。

ライチは上空で翼を広げたまま大きな輪を描くように周回してる。


枝を力任せにぶん投げるとライチが枝に向かって急降下開始。

アイテムボックスから取り出したフライングディスクを投げ飛ばすと、フーローが物凄い勢いですっ飛んで行くように空を突っ走っていった。

アイテムボックスからドッチボールを取り出して遠投するとエイスがボールに向かって走って行く。


2頭のスピードに目を見開いて驚くブラックパール。


「エイスとフーローの本気のスピードにブラックパールが驚愕してるわね。」

「これでも本気のスピードではないよ。俺と遊ぶ時の身体能力だけのスピード。本気の時は種族特性の魔法で上乗せしてくるから更にスピードは上がってくる。」

「……そうなんだ。」


グレタも流石に若干引き気味だな。


「でもブラックパールの遊びに付き合わせちゃったかな?」

「あれはあれでエイスもフーローも楽しく遊んでいたんだから、彼らに全く不満なんてないよ。楽しくないならすぐにやめちゃうんだから。今の遊びもさっきの遊びも楽しんでるよ。」


フライングディスクを空中でキャッチしたフーローが一目散に帰ってくる。

エイスの方が早くボールに追い付いているが、ボールで遊んでいるので飽きるまでしばらく帰ってこないだろう。

猫はこんなもんだ。


ただ、急降下でスピードを上げまくっているライチの方が帰ってくるのは早い。

ライチが先に俺の目の前に降り立ち俺に咥えている枝を差し出す。

俺が枝を手に持つとバッサバッサと翼をはためかせて上空へ舞い上がる。

俺が枝を槍投げのように投擲すると紫電を纏い凄いスピードで追い始めた。

流石に今回は加速するまでに時間がかかりそうだと判断したのか、自分の持つ種族特有の雷魔法で自分をレールガンの弾丸のように超加速させて追い掛けて行く。


ライチの本気の加速にグレタが絶句しているけど。


フーローがフライングディスクを咥えたままお座りして俺を待っている。

フライングディスクを受け取りながらフーローの頭を撫でてあげると目を細めてめちゃくちゃ嬉しそうにしている。

今度はさっきと違う方向にフライングディスクを飛ばすと、フーローが猛ダッシュで加速してフライングディスクを追い掛けて行った。

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