第77話
新人君を走らせて俺達は装備を外して軽装に着替えバーキットに戻る。
店は漁港の近くで経営者は漁師とその家族という黄金パターン。
これは期待できそう。
レオンだけでなくルーベンソンや他の騎士団団員もオススメ出来るだけじゃなく、他の街の人達に自慢できるぐらい美味しい店らしくて……
さっきから腹の虫が大騒ぎしている。
レオンに貸している収納袋のレンタル代金代わりに、定期的に魚介類を山盛り貰っているので、バーキットの魚介類の美味しさは既に癖になっている。
この店で有名なのは『塩釜焼き』の鯛とオーク肉とのこと。
腹減って歩きながら店に向かう時間が1番キツいね。
レオンやルーベンソンや騎士団団員達がどんな料理の何という味付けが美味しいだの、散々聞かされて我慢し続けるキツい時間。
少しづつ早歩きになってくるわ。
それすらレオンに笑われてムカつくな。
レオンのトレーニングのせいでこんなに晩御飯が遅くなって腹が減り過ぎて我慢してたのに。
漸く店に到着した俺とグレタを先導して案内するのは先行して走って予約しに行った新人君。
店の前で待って居て俺達を誘導する。
2階の大部屋と中部屋が空いていたので、両方とも貸し切ったらしい。
だから2階が丸々貸し切りなんだと。
バーキットは何度も訪れているのでハイエルフの俺が歩き回っても、もう町の中が騒然となったりはしない。
レオン達と飲み屋で大騒ぎして近所の住民から怒られて謝罪するぐらいには馴染んでいる。
店の2階に入りレオンに上座を譲られて俺とグレタが隣同士に座ると、既に新人君が注文済みの料理が酒が次々と運ばれてくる。
まずはレオンが乾杯する。
《日本ではお酒は二十歳になってから》
まずはビール。
ここのビールはしっかりと冷やされていて美味しい。
ビールを空けると次のビールがすぐ渡される。
テーブルに並べられる魚介料理をつまむ。
焼き魚や焼き貝などの焼き物だけでなく、蒸し料理や揚げ物なんかも所狭しとテーブルに並んでいる。
ビールジョッキを持ちゴクゴクと飲んでいると、横にいるレオンが既に次のビールジョッキを持ち待機してる。
ジョッキを持って待機されるとプレッシャーになるので流石に待機しないで皆で楽しもうと次のビールの待機は遠慮する。
雑談しているとシェフがメインの塩釜料理をワゴンに乗せて運んできた。
塩釜を木槌で割り塩釜から鯛を取り出して大皿に乗せられてテーブルに出される。
これもシェフがフォークとナイフで小分けに分解されて小皿に分けられ、上座を座る俺の前に出された。
鯛を口に入れると塩釜と鯛の間に挟まれた香草の香りが口内に充満して鼻に抜けていった。
味は鯛の少し淡白な味に塩と塩釜で閉じ込められた香草の味がふんわりと加えられていて美味しい。
次の塩釜料理は肉。
オーク肉も塩釜で蒸されて閉じ込められた味わいが堪らなく美味しい。
周囲を見渡すとグレタもレオンもルーベンソンもお酒を止めて塩釜料理を目をつぶり満足そうに味わっている。
他のテーブルの騎士団団員達も同じように噛み締めるように味わって満足そうにしている。
これは人気になる店。
お酒は美味しいしツマミも美味しい。
メイン料理は最高に美味しくてここでしか味わえない絶品料理。
メイン料理を味わい尽くした後はパーティーに移行。
オリーブオイル漬けにしたサーモンを入れたマリネも美味しい。
白ワインビネガーが良いアクセントになっている。
貝のワイン蒸しや小さなベビーホタテのバター蒸しにもワインで香り付けされていて食欲をそそる。
トルベッケトラース通商衛星国はいくつかの名産地のワインを、主要取引先として生産量の何割かを押さえているようで、ワインの種類が他国に比べて豊富だと思う。
レストランやバーに並ぶワインの種類がかなり多いので、様々な魚介類に対応できるワインが何かしらある。
そのため料理用のワインも発達している。
酒に弱いレオンが酔ってくると毎回このワイン自慢が始まってくるので、凄くわかりやすくて逆に助かっている。
ルーベンソンはザル。
最初っから最後までなにも変わらない。
グレタは酔うとどんどん若返り、次第に幼児化して最後には子犬化してくる。
今は結構酔ってきていて俺の椅子の真横に椅子をくっつけて、ぴったりと俺に張り付いて寄り添っているけどまだまだ子犬化はしてないようだ。
俺の逆側にいる女性店員と楽しそうに話している。
これが子犬化すると俺しか見なくなる。
見てるだけなので会話は出来ない。
俺を見ながら俺を酒のツマミにして飲んで、最終的には抱き付いて寝るのがいつものパターン。
グレタを連れて何度もレオン達と飲んでいるから、グレタの様子は見慣れてるようで誰も注意を向けたりしてない。
普通に会話してるだけ。
ルーベンソンと別の大陸で産出されるお酒について会話をしてると、グレタが俺に抱き付いて寝だしたのでそろそろパーティーも終わりの合図。
レオンとルーベンソン達に別れを告げて、グレタをお姫様抱っこして龍の森の住処に転移魔法を使って帰った。
翌朝はまた俺、グレタ、エイス、フーロー、ライチの皆で散歩。
今日は龍の森の岩山の北側の森を抜けて草原まで歩いてきた。
俺達が龍の森の北側に転移したとたんに草原に住む馬系魔獣達は、蜘蛛の子を散らすように全力で逃げ出すのが探査魔法でわかる。
「そういやグレタのバイコーン『ブラックパール号』はどうしてる?」
「今頃不貞腐れてるかもね。でも、ホープラーを前にすると最初にビクッとするのは治らないわ。」
「うーん、種族的に相当無理してるからね。俺が触れるようになっただけでも物凄い成長だと思うよ。それにエイスとフーロー達が少し嫉妬して離れた場所から睨むから仕方がないよ。」
「睨んでたの?」
グレタが問い掛けると隣を歩くエイスとフーローがサッと同時に顔を逸らす。
分かりやす過ぎてむしろ可愛いと思ってしまう。
グレタと目を合わせて爆笑してしまった。
「エイスとフーロー、私の騎馬なんだからそろそろ仲間に入れてあげてよ。」
グレタのお願いを理解してるエイスとフーローはシュンと凹んでる。
ライチは既に仲間として受け入れているだけに、エイスとフーローの子供っぽさが余計に目立ってしまうな。
エイスとフーローは足を止め鼻をグレタにピタッと付けた。
「ん? ブラックパールに謝りたいのかな?」
俺の問いにコクコクと頷くエイスとフーロー。
「わかったわ。ホープラー、ブラックパールをこっちに連れてくるから、ブラックパールの所に送って。」
「ほいよ。」
転送魔法でグレタをアーリンドル王国の国境の街ジャリストンにある領主の館の厩舎に送った。
しばらくしてからグレタの念話道具からの連絡が来たので、ブラックパール号とグレタをこちらに転送した。
俺とエイスとフーローを見てビクッとするブラックパール。
俺はそのままだが、エイスとフーローはブラックパールに近寄りグレタにしたように鼻をピタッと付ける。
ブラックパールも鼻をエイスとフーローの額に鼻を付けた。
エイス達はブラックパールに許してもらえたようだ。
エイスとフーローが俺にも鼻を付けてきたので撫でて誉める。
ブラックパールも俺に鼻を付けて甘えてきたので鼻をスリスリと撫でてあげた。
ブラックパールも俺に慣れてきたようだな。
それからグレタはブラックパールに馬具を装着してから跨がり駆け出す。
エイスとフーローは走って追いかけて、俺とライチは空を飛んで追いかけっこして遊ぶ。
ブラックパールはバイコーンの希少種でステータスは通常のバイコーンを遥かに上回るが、走るスピードや切り返しの早さなどは流石に種族的にエイスとフーローには敵わない。
だけどブラックパールはグレタを乗せたまま、エイス達と追いかけっこをして遊んで楽しそうにしている。
グレタは自由に走り回るブラックパールに跨がっているのに必死になっている。
これはグレタのトレーニングになってるな。
まぁ、危なくなったら俺が魔法で転送するだけなので、グレタには頑張って限界を越えてもらおうか。
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