第76話
巨大なタワーシールドのガッシリした重さと羽根のように軽いオリハルコン製のロングソード。
対照的なほどの違いがあるなかで……
慣れて自由自在な攻撃や防御が出来るようになる為の練習を繰り返すレオン。
お手玉のように左右を入れ替えてみて驚愕してる。
左手でも振りやすいオリハルコン製のロングソード。
何か閃いたみたいだな。
レオンは左右のどちらでもロングソードと盾を振り回せるように練習し始めた。
俺がレオンの盾を少し改造してあげて、盾の持ち手に魔力でパチンとくっつくようにしてあげた。
パチンと簡単に取り外せるから……
両手を使ってシールドバッシュで突撃してから、左右のどちらの手でも攻撃可能になったので選択肢がぐんと広がる。
オリハルコン製のロングソードの威力をレオンに知ってもらうために、レオンの収納袋に持っている鉄製の数打ちロングソードでレオンの攻撃を受けてみる。
ハイエルフの持つ技術で2、3回は打ち払えるけど、それからはかなりキツくなる。
始めの1本目は10回までは耐えられたが、2本目以降はレオンがオリハルコン製のロングソードの取り扱いに慣れてきて俺がどう頑張っても5回が限界。
いくら数打ちのロングソードとはいえ、これはレベルが低すぎるロングソードだわ。
ムカついてストレスが溜まるので俺が鍛治師スキルを使い、鉄製ロングソードを打ち直すとかなりマシになる。
15回以上打ち払っても壊れなくなった。
レオンが手を止めて問い掛けてきた。
「あれ? ホープラー、何で壊れなくなったんだ?」
「あまりにもひどい鉄製ロングソードだから、俺が鍛治師スキルを使って打ち直してバランスや粘りを良くしただけだよ。」
「それって何度も使うとホープラーは疲れるのか?」
「へ? この程度じゃ全く疲れないけど。」
「それなら収納袋にまだまだロングソードや投げ槍などの武器が残ってるから、全部ホープラーに打ち直して欲しいんだけど。」
「別にそれぐらい簡単に出来るよ。」
俺が収納袋に入っている武器を次々と取り出して、鍛治師スキルを使って打ち直して並べていく。
「数打ちとはいえ……こりゃひどいな。」
あまりのレベルの低さに頭が痛くなってくるが、気にしないでどんどん打ち直していく。
俺が打ち直して並べたロングソードや投げ槍を振ったり投げたりして驚愕するレオン。
「何で軽く感じるんだ?」
「重さもバランス悪かったからね。調整しただけだよ。ついでに研ぎ直してるから切れ味もマシになっているはず。」
デカい丸太を地面に打ち込んで立ててあげると、レオンは軽く斬り付けて丸太に傷が残ってるのを見て驚いている。
「俺の防具も変わるかな?」
「ん? そのミスリル製のフルプレートアーマーとタワーシールド?」
「そう、これ。」
「んー、これは物凄く丁寧に作られてるから防御力やバランスに変化はないよ。ただ……魔法防御力はそこまで作り込んでいないから、魔法防御力はかなり上がるね。どう? 打ち直す?」
「是非ともお願いします。」
装備中なのでレオンは一歩俺に近づいてお願いしてきた。
その仕草に俺は笑いながらミスリル製のフルプレートアーマーとタワーシールドを打ち直す。
俺とレオンが何か笑いながらやっていたから皆は手を止めて見ていて、何をやっているのか理解出来た今は、レオンの後ろに並ぶルーベンソンの更に後ろに並んでニコニコ笑顔で待機中。
もちろん全員分の武器と防具を全て打ち直してあげた。
どこかで見た風景だなと考えたら……龍の森クラブハウスでジョル達を相手にして同じような事をやってたな。
1時間も掛からずに打ち直しを終えるとトレーニング再開。
俺とレオンは模擬戦方式ではなくなったので、ルーベンソンとグレタは騎士団に混じり、エイス達との模擬戦に参加している。
グレタが加わった事でエイス達はようやく少しは気を使うようになり、騎士団の攻撃を爪や尻尾で弾き返して受けてくれるようになったみたい。
嬉しくて喜んでいる騎士団連中を横目に理由がわかっているグレタは少し悲しそうな目をしているけど何も言わない。
せっかく喜んでいるのに水を差してもね。
エイス達が本気で動いたら目で追うことも出来なくなるとグレタは知っている。
俺やリッチさんと本気で遊んでいるエイス達を見ているから。
俺とリッチさんは遊んでいるんだけど、エイス達は本気で動いているのも知ってしまったので自分を込みで悲しそうな目になっているんだろう。
それでも格段に動きは良くなっているから、バーキットに現れる普通の魔獣に遅れを取ることはない。
河から時々出てくるワニ魔獣ぐらいならイケるかもしれない。
龍の森の外縁部の恐竜や魔獣には歯が立たないけど、俺が教えた『交渉術』で帰還してもらう事に何度も成功してるみたいで安心。
交渉術と言っても大したこと無い。
恐竜や魔獣達はこちらの言葉は理解してるから説得するだけ。
「そろそろ龍の森に帰らないとホープラーさんを呼びますよ。」
と大声で呼び掛けるだけ。
恐竜や魔獣達はビクッとしてから周囲を見回してエサを咥えて帰っていくらしい。
帰り際に……
「こっちは余りエサがないので向こうの方がエサは豊富ですよ。」
って森の方向を指差すとエサを咥えたまま頷いて帰って行くんだと。
しかも指差した森の方に。
この程度の交渉で来なくなるみたいだ。
しかも指差した方向の森の魔獣がちゃんと減ってるみたい。
この交渉術のおかげで森の魔獣達の数がコントロールできるようになったとレオンが俺への感謝の言葉と共に教えてくれた。
うん。
ウィンウィンの関係が出来つつあるな。
俺としても龍の森の王として喜ばしい。
持ちつ持たれつの関係だとどっちが上とか無くなるからさらに嬉しい。
龍の森の外縁部に住むワイバーン達は余り食べない。
彼等はかなりの少食でオーク1頭を丸ごと食べたら、それからは3日は水しか飲まないぐらいの少食。
翼を広げると10メートル以上の大きさがあるのにそれで済んじゃうのに驚愕した記憶がある。
ワイバーン便に使われる小型ワイバーンの方が1日1頭のオークを食べるのは毎日飛び回っているからだと龍王に教えてもらったし。
そういやワイバーンってあまり飛び回らないなって思って龍王に聞いたら色々とワイバーンや龍種について教えてくれた。
……酒の肴に。
そんなくだらない事を頭の隅で考えながらもレオンを指導している。
ロングソードとタワーシールドの戦闘中のスイッチで防御と攻撃の幅が広がり、様々な形から攻撃を行えるように俺との練習を繰り返す。
始めのうちはロングソードやタワーシールドを、スイッチする時につかみ損ねて落としたりしていたが、徐々に慣れ始めてきて……更に新たなオリハルコン製のロングソードにも慣れてきて、格段に動きが良くなってキレが出てきている。
今は巨大なタワーシールドの陰に隠れて自らの動きを隠した状態から変幻自在な攻撃が出来るように練習している。
タワーシールドの動きも敵を幻惑するようにしたり、タワーシールドのまま突撃してからのシールドバッシュ等々。
選択肢が増えたので練習を繰り返して身体に動きを馴染ませていく作業。
夕方になり暗くなってきても止める気配がないレオンに気を使い、ライトの魔法を周囲に浮かべて練習していたが、流石に腹減ってきたので練習はそろそろ終了する。
レオンに誘われてバーキットの有名なレストランに繰り出す事になった。
バーキット名産の貝尽くし料理で有名な店。
予約してないけどって思ったら騎士団の中の新人君が装備をパパっと外して、自分の収納袋に突っ込み軽装になって走っていった。
レオン曰く……既に9時を過ぎてるから空いてるだろうと。
つーか、言ってくれたら漁港の方に転送してあげたのにと言ったら、これも訓練のうちで体力作りの一環だから……自力の転移魔法ならOKなんだけど、他人の魔法で飛ぶのはダメみたい。
そう言われたら無理にとは言えなくなる。
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