第73話
現場にいた全ての隊員が誰も見たことのない紋章らしい。
「うーん、難しいですな。見たことのあるような無いような……似たような紋章と見間違えてるかもしれません。」
「まぁ、今回は全てをテオに任すよ。じっくり捜査しておいて。ラーフィーとミクリーから他国から人間至上主義者達が、この大陸に入り込んできてテロ行為を行う可能性が高いと聞いているから……今回の賊達は何らかの関係があるように思える。」
「わかりました。私も人間至上主義者達のテロ行為の件は聞いてます。おい、訓練修了だ! 賊を運んで地下牢まで連れていけ! 追われていた獣人は治療院へ! 警備隊はチーム分けして捜査、周辺警備、パトロールを行ってくれ。」
このメンバーでのアーリンドル王国側の最上の地位にいるテオが次々と指示を出して編成する。
軍属はトップダウンが基本。
テオが優秀なのは有名なので警備隊も従っている。
森聖騎士団の団員が2本の槍にロープと布を渡して即席の担架を作り、さらに賊を1人づつ縛り付けて運べるようにして森の外へと運び出していく。
追い掛けられていた獣人も即席の担架に乗せられて運ばれていく。
「とりあえず明日にラーフィーのところに顔を出すから、どこの国のどんな組織なのかという尋問結果をあげといてね。明日までにわかる範囲だけでいいよ。無理しなくて良いからね。」
「わかりました。では今夜中に捜査結果だけ纏めておきます。」
「よろしく。嘘ついて捜査を引き伸ばそうとしたら……今回逮捕したのは調停者で龍の森の王のホープラー。今日中にケリつかないと『龍の森の裁判に送られる』って脅迫しといて。」
「了解しました。ホープラー様のお名前をお借りします。」
テオは敬礼すると足早に立ち去る。
警備隊は捜査班と周辺警備とパトロールに別れていくつかのチームがそれぞれ別の方向に歩き出した。
捜査班は賊達が移動してきた経路を探り、地面に何か落ちてないか捜査開始してる。
俺はグレタと手を繋いで散歩を再開する前にエイス・フーロー・ライチを撫でて誉める。
賊を含めて現場に誰1人として怪我人を出さなかったのはエイス達のお手柄。
撫でられて嬉しそうにするエイス達がより可愛い。
グレタも一緒にエイス達を誉めながら撫でる。
グレタもモフモフスキーだから嬉々として撫でまくっている。
俺も一緒なので撫でる方も撫でられる方もニッコニコ。
一頻り撫でられてエイス達が満足すると散歩の続き。
手を繋いで歩き出す。
「ホープラーはテオドール卿に全部任せちゃって良いの?」
「テオなら大丈夫でしょ。速攻でミクリーに相談しに行くと思うし、ミクリーはラーフィーとも繋がってるから……テオとミクリーとラーフィーの3人が絡んだらミスはなくなるでしょ。」
「確かに。あの3人が組むのなら例え国際問題に発展しても、アーリンドル王国にも龍の森にも有利になるように上手く処理してくるでしょうね。」
「そのための交渉材料として龍の森と俺の名前を自由に使って良いとテオにアドバイスしたし。それでも文句あるなら俺が乗り込める。」
「そうね。でもテオドール卿ならギチギチに締め上げて吐かせそう。」
「テオよりもヤバそうな部下が3人の副長だね。ヤツラは嬉々として締め上げるでしょ。」
「うわぁ……可哀想に。」
「正直に素直に答えれば何も問題ないんだけど……逆に3人の副長はガッカリしそうだ。」
「プププっ、あの3人なら『チッ』って舌打ちしそう。」
「やるね。あの3人ならわざわざ大きな音をたてて舌打ちするわ。」
メガネをクイッとして舌打ちする3人の副長を想像して笑いあう俺とグレタ。
今日の訓練には参加してないみたいで見かけなかったけど……森聖騎士団のテオドール軍団長を支える3人の副長はテオに負けず劣らずの有名人。
作戦参謀、内務参謀、外交参謀をそれぞれが担当してる3人の副長はテオの愛弟子でテオの裏と表を支えている。
特に裏を担当する事が多いので悪名の方が有名だったりする。
彼等3人が上手く俺と龍の森の名前を利用してテオに助言してくれると信じてる。
俺も飲み友達だしな。
全員メガネを掛けていて体型はバラバラ。
髪の毛の色が金銀銅と別れてるので、通称『テオの三色』と言われてる。
一緒に飲んでると楽しいヤツラだけどね。
そろそろ昼食の時間。
散歩の途中にあった湖の横の砂浜でシートを広げて昼食。
さっきの元奴隷が美味しそうに食べてたホットドッグをグレタと2人で頬張る。
スラリンにもたれ掛かってダラダラとした時を過ごす。
食後はそのままハーブティーを飲んで寛いだまま。
グレタはミルクティーを楽しんでる。
今日の雑談は止まらない。
エイス達は少し離れたところを走り回って遊んだ後に昼食を食べて、食後は俺とグレタの回りに寝そべり昼寝。
寝息を立てるエイス達につられて俺とグレタも昼寝する。
昼寝を終えたのはトルベッケトラース通商衛星国バーキット領主レオンチェヴィッチ・フォン・ハルマリノフ……通称レオンからのヘルプがあったから。
「ホープラー、済まないがまた助けて欲しい。」
「どうしたレオン。またうちの恐竜が暴れてるのか?」
「そっちは大丈夫。最近はエサとした魔獣を咥えたら直ぐに森に戻ってくれるので、正直に言うとありがたいぐらいなんだけど……今は海の方なんだ。」
「海?」
「うん。3日前からバーキットの港の湾内に水龍とみられるドラゴンが現れて、グワーグワーと何かを訴えているみたいなんだが、うちのテイマーでは理解できなくて困っているんだ。ホープラーならわかるかもと思って、できれば助けて欲しいんだけど。」
「わかった。直ぐに行くよ。」
付き合いも長くなり漸くホープラーと呼び捨てで呼べるようになったレオンからの緊急連絡だったので何かと思ったけど、そこまで深刻な話ではなさそうで安心した。
皆を起こし港町バーキットの南門に転移した。
南門ではレオンが馬車で待っててくれたので直ぐにグレタと2人で乗り込む。
エイスとフーローは左右に別れて付いてくる。
ライチは馬車の上の最後尾に掴まって楽してる。
俺達が港に行って顔を出すと 湾の外にいた水龍が気配を察知したようで船着き場まで侵入してきて顔を出した。
結構デカいな。
20メートル以上はある大人の水龍だ。
グワーグワーと必死に訴えてくるが流石に龍の言葉を理解するのは無理。
思念を送って思念での会話。
《どうしたの?》
《瀕死だった大きな鮫を食べたら変なの入ってたみたいでお腹に刺さって痛いの。》
鑑定してみたら剣が刺さっている。
しかもかなりの業物のようだ。
まあ、だからこそ消化出来ないで残っていたんだろう。
転送魔法で俺の手に転送して回復魔法で治療するとグワーと一鳴き。
《ありがとう。痛いの取れたよ。もう痛くなくなった。ありがとう。》
《ん? 大きいから大人だと思ってたけど、もしかしてまだ子供?》
《ボクね、食いしん坊だから大きいんだよって皆に言われるけどまだ3歳だよ。》
《皆……他の水龍は?》
《皆はもっと深いところにいるよ。たぶんボクがまだ帰らないから待ってるよ。》
《そうか。それなら良いな。じゃ、今度何かあったら思念を飛ばしてくれ。ドラゴンかハイエルフなら気付くから。》
《んー、わかった。えーっとあなたのお名前は?》
《俺の名前はホープラー。この大陸の中にある龍の森の王だよ。》
《ホープラーさん、ありがとう。またね。》
《おう。またな。》
グエーっと一鳴きすると沖に向かって水龍は泳いでいった。
平和に解決できて良かった。
手元の剣を見るとオリハルコン製の剣で、かなりの歴史を感じる装飾が施されている。
だけどオリハルコン製の剣の持ち手や柄、鞘などは水龍の消化液で消化されてるようで、剥き出しのまま武骨な剣となっている。
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