第69話
「大きなワイン樽ですか?」
「そう樽だけ。大きなワイン樽ぐらいの大きな樽が小型ワイバーンにとって飲みやすい器みたい。」
「準備しておきます。」
「食事はオークのブツ切りで良いよ。これも大きなワイン樽に入れとけば骨や内臓ごとバリバリ食べてる。」
「わかりました。」
「とりあえず必要なのはそれぐらいだよ。……いや、もう1つあった。これもいるよ。」
なかなかの大きさの魔結晶をアイテムボックスから取り出してミランに手渡した。
「これは龍王の魔力が込められた魔結晶。小型ワイバーンはこの魔力を辿ってやってくるから必要になる。寝床になる砂場に埋めておいてね。そうする事でその砂場が休憩場所だとワイバーンは認識するから。」
などと他にも小型ワイバーンの注意事項をいくつか伝えておいた。
話は雑談に移行していきミルクティーを飲み干した後にヨハンのクラブハウスに戻った。
クラブハウスでのんびり待機していたグレタ達と合流。
ヨハンやジョル達に別れを告げて俺・グレタ・ユー・ミー・エイス・フーロー・ライチの全員で龍の森の住処に転移魔法で帰還した。
今日は新月で月は見えないけど、夕方から天気が良くて星が凄く綺麗に見える。
星を見ながら露天風呂で寛ぐ。
エイス達は住処で走り回って遊んでいる。
ユーと2人で湯船に浸かりながら会話。
ミーとジョルの3人で話込んでたからな。
ジョルから金虎獣人がどの大陸にどれぐらい住んでるのかとか色々な情報をもらったので、ユーとミーが成人後にどうやって回って行った方が効率が良いのかも話していたんだと。
それと今の情勢から……獣人が世界中からラハティカンナス獣人公国に集まって来るだろうし、金虎獣人の中でもジョルは有名人なのでユーとミーの両親の情報を集めてくれると約束してくれたみたい。
……ならばジョルと定期的に会う必要があるな。
ユーからもジョルと定期的に会って話を聞きたいとお願いされたので快諾する。
ヨハン達は良い奴らばかりなので俺も定期的に会って話したいしね。
風呂から出て焚き火を見ながら思い思いに寛ぐ。
俺とグレタはお酒を飲み寛ぐ。
《日本ではお酒は二十歳になってから》
俺がグレタとツーショットで会話を楽しんでると、ユーとミーはエイス達を連れて離れてくれた。
離れた場所で焚き火をおこし寛いでいる。
グレタはクラブハウス内に設置した蔦の転移門を通った先の異空間で、クラブの皆で共同でトレーニングしていて大満足らしい。
俺がミランと会ってる最中に冒険者ギルドに提出した届け出が受理されて、俺は調停者として正式にジョルが代表を務める冒険者クラブの顧問に就任した。
グレタもオブザーバーとしての書類を提出して受理されたので参加が決定してる。
ヨハン達に頼まれていたのでハイエルフとしての正式な書類を渡したから受理されるまで時間が掛かるかと思っていたけど……グレタも提出しに冒険者ギルドに同行したので目の前で即時受理されたと驚いていた。
まぁ、ハイエルフってどこの国においても国賓レベルの扱いを受けて当たり前って存在らしいしね。
冒険者ギルドの職員からみても……自分の国の冒険者とハイエルフが親しいってだけで誇らしいレベルなんだと。
クラブの顧問ともなると太いパイプが出来る事になり、冒険者ギルドのグランドマスター世界会議で報告すると羨ましがられるからとグランドマスターが興奮していて驚きが倍増。
グレタは珍しいのを見たと笑ってた。
グレタは元々アーリンドル王国の冒険者ギルドに所属していたけど、騎士団に所属した瞬間から冒険者ギルドのメンバーとしては凍結されるのがルール。
グレタの場合は騎士団を辞める前に、アーリンドル王国国境の街ジャリストン領主になっているので、冒険者ギルドのメンバーとして凍結された状態が続行される。
だからオブザーバーとしてしか冒険者のクラブチームとは関われないんだと。
俺はハイエルフだから所属する事は出来ないが、顧問なら問題ないとの事なので就任した。
これでハイエルフとしてこのクラブハウスに出入りしても何の問題もなくなる。
夜も更けてきてユー達も熟睡し始めてるので今夜は解散。
アーリンドル王国国境の街ジャリストンにある領主の館にグレタを転送魔法で送って今日のデートは終わり。
ユー達もそれぞれの寝床に転送して俺は1人で星見酒。
お気に入りのブランデーとナッツを楽しむ。
エイスとフーローは俺の両脇で寝てる。
スラリンはクッションとなり俺を包み込んでいる。
ライチは俺のお腹の上で丸くなって寝ている。
プルプルの上で寝転びモフモフに囲まれて至福の時間だ。
お酒やツマミは空中に魔法で浮かせているので邪魔にならないようにしてある。
1時間ほど何も考えずにまどろみ、ボーっとした時間を過ごす。
今日は皆と纏まって寝るので木のベッドはキングサイズを遥かに越えるほどデカくした。
モフモフにまみれて寝る幸せな時間を楽しむ。
それから3ヶ月ほど経過して年が明けた。
ラハティカンナス獣人公国は経済発展が凄まじいレベルで推移している。
同盟国のアーリンドル王国とトルベッケトラース通商衛星国とリンタネンキュトラ共和国は共に経済発展している。
世界中の獣人移民問題はハイエルフが世界中の人間至上主義者達に強大な圧力を掛けて獣人移民を合法化させた。
いくつかの国は強制的に政治介入しているから、王が無礼討ちされて権力を失い王族が政治から強制的に切り離されている。
ハイエルフの歴史がない俺とは違い、アニーのように国を滅ぼした伝説を持つハイエルフがほとんどなので、王族が反抗しようにも軍部はハイエルフに従うと表明されてるから何も出来ない。
王族がハイエルフに何か企てたのだが、王族を守護するはずの近衛騎士団がクーデターを起こして王族を幽閉している事例もある。
高位貴族がハイエルフに反抗を企て独立しようとしたが、全ての部下がハイエルフに連絡して捕まる事例も出てる。
こういった動きが獣人移民に反対する空気を失い、世界中からラハティカンナス獣人公国へ移民する獣人は後を絶たない。
受け入れる側のラハティカンナス獣人公国は爆発的に人口が増えて好景気の後押しをしている。
それと以前発見したオークダンジョンが道や施設も整備され、初心者に優しいダンジョンとして冒険者ギルドから推奨を受け、獣人が次々と冒険者としてデビューしている。
更にジョルの存在も大きい。
ジョルは冒険者の才能を見抜く天才であり、その才能を育て上げる天才でもあるのは世界的に超有名。
そのジョルがいる冒険者クラブを龍の森の王のハイエルフの俺が顧問しているというので、名声の上に箔までついてしまった感じになった。
俺が顧問になってからジョルは冒険者クラブの名前を『龍の森』として冒険者ギルドに提出。
正式に受理されたのでクラブハウス名も『龍の森クラブハウス』となり、正門に看板までつけられた。
龍の森クラブメンバーは俺の指導も加わりめきめきと力を付けている。
ジョル自身も強さを増しているから、クラブに所属したいという冒険者チームは後を絶たない。
実際ジョル達が面接を行い……いくつかの冒険者チームは龍の森クラブに所属することになった。
ラハティカンナス獣人公国を攻めた2つの国は互いの国を非難して、4国同盟へと近付こうと企んでるようだが、無論上手くいくはずもない。
トルベッケトラース通商衛星国は予定通り2つの国を攻め主要な港を完全占領。
更に別の港を攻める動きとアーリンドル王国とリンタネンキュトラ共和国が共同した動きを見せた事で2つの国は休戦協定の協議を提案してきた。
予定よりも多い3つの港ずつの6つの港をトルベッケトラース通商衛星国の飛び地の占領地として認めさせて休戦協定が結ばれた。
休戦協定の締結はラハティカンナス獣人公国の新たな首都『マエンタウスタ』で俺もオブザーバーとして参加。
マエンタウスタ休戦協定として獣人解放も条文化されており、2つの国は獣人の移民を妨げることがないようにハイエルフが監視するとも書かれてる。
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