第63話
とはいってもナックルガードと脛当てに付いている魔結晶の分の魔力しかないから、全力全開だと何十分とは持たないだろう。
今度は左ミドルキックを放ってきて、軌道の途中で脛当てに直接爆裂魔法を当てて、ローキックに強引に変化させてきた。
ガードしてから踏み込もうとしていた俺の予想を上回る攻撃。
右膝を踏ん張ってガードするが踏み込めなくなって中途半端な体勢で止まってしまい次の流れに行けなくなっている。
流れを読んで動く癖があるのでそれが外れると動きにくくなる。
それを見透かすようにジョルは連続攻撃してきた。
爪攻撃すらも爆裂魔法で軌道を変えてくるから、予想と違う動きになるので次の流れに行けずに止まってしまう。
対人戦闘の動きの読み合いを魔法で変化させる強引な攻撃は素晴らしいし、俺はめちゃくちゃ楽しんでいるのだけど……楽しい時間はそれほど続かない。
魔力と体力を使い果たしたジョルは、突然意識を失うように崩れ落ちた。
完全な魔力切れだな。
地面に倒れる前にキャッチしてゆっくり地面に寝させる。
走り寄ってきたグレタにマジックハイポーションとハイポーションを2本づつ渡すと、グレタは理解できたようでジョルにまずはゆっくりとマジックハイポーションを飲ませていく。
「ホープラー、師匠は大丈夫?」
「ただの魔力切れだよ。心配ない。」
「『爆裂女王』と呼ばれる師匠がスパーリングで魔力切れなんて初めて見たよ。少なくともワシの記憶にはないわ。」
「流石にあれだけ連発してきたらそんなにもたないよ。でも流石は覇王の娘だな。武器を含めた格闘のセンスは桁外れだ。」
「それをしのいでいても笑顔で対応できてるホープラーには戦慄しか覚えないけど……」
「まぁ、ハイエルフってそういうもんだから……としか言いようがないよ。」
ヨハン達男性陣と話してる横では女性陣がジョルを介抱してる。
マジックハイポーションとハイポーションを2本づつ飲んだおかげで意識も回復してるから、横でワイワイと楽しく会話できるんだけど。
女性の介抱は男はやりにくいから難しい。
それが子供の時から世話になっている師匠ともなると難しさは倍増。
女性に任せた方が良いだろうと任せてしまっている。
……特にグレタはトレーニングで魔力が切れて俺に介抱された経験が何度もあるので慣れてるって理由もある。
始めの頃は自分の限界が掴みきれず何度も魔力切れをしてぶっ倒れる場面が多かったし。
体力は日頃のトレーニングで掴みやすいけど、魔力が切れるまでトレーニングした経験が余りないらしい。
特に軍隊に所属していた頃はいつ出動命令が下されても対応できるように魔力は温存しておく癖が付いてたと聞いてる。
冒険者も魔力は余裕を持って戦闘するのが生き残る条件の一つらしいから。
だけど……
魔力の限界を超えない事には魔力の最大値が上がりにくくなってるんだからと俺の話を聞いて……
ラーフィーとミクリーはびっくりしていた。
実際に実験として王族の私塾で俺の限界超えトレーニングを受けた子供達は、魔法教師達が驚愕するほどの最大魔力値が上昇している。
教師達も限界超えトレーニングで自分自身の最大魔力値が上がっているのを実感している。
特に子供の頃からの限界超えトレーニングは最大魔力値の伸びが凄くなる。
成長期だと伸び代が追加されていくような感じになる。
なので今ではアーリンドル王国の魔法授業では積極的に限界超えトレーニングを推奨していて、特に学生の限界超えトレーニング後に昼寝して魔力を回復させるというカリキュラムが追加された。
ミクリーの話では魔法兵団のみでなく各騎士団や内勤者までもが最大魔力値に変化があり、個人差はあるけど今後は大幅に伸びる効果があるだろうと言ってた。
ユーとミーと話をしていた王族の1人が魔法授業で……
『なるべく魔力を保存しておく方が好ましい』
と学んだんだけどって相談されたのがきっかけ。
俺が言ってた事の真逆を言われたから混乱していたみたい。
リッチさんが隣にいて相談したら、かなりの高齢者が教育方針を纏めたんじゃないかというのが2人の予想。
かなりの高齢者なら魔力切れが死に繋がる。
まぁ、あくまでも予想だけど。
とはいえ俺がもたらした限界超えトレーニングで新たな教育が始まり、アーリンドル王国は魔法兵団の拡充が進み、魔法大国への道を歩み始める。
魔法大国に肥大し過ぎて調子にのり過ぎないように監視が必要かなとリッチさんと話をしていた。
ラーフィーとミクリーが俺達と同じ懸念を抱き、調子にのりそうな上位貴族を監視して情報を集めだしてる。
俺が王族私塾での実験結果をラーフィーとミクリーに報告。
王からの通達で限界超えトレーニングを始めて成功。
皆がレベルアップしたのは自分が王にお願いしたからだと嘘をついていた上位貴族が何人かいるから監視してるみたい。
俺からすれば誰の手柄とかどうでもいいじゃんって思うけどな。
上位貴族の私兵が全然強化されてないからすぐに嘘だとバレそうなんだけど……それでもバレてないって思っている程度の輩なんてどうでもいいし。
信頼するラーフィーとミクリーがなんとかするだろう。
ラーフィーが退位した後やラーフィーの権力が落ちてきたら監視強化すれば良いと楽観視してる。
ジョルの意識が戻り立ち上がれるようになったのでトレーニングでの総評。
魔法と武器攻撃が時間差があって対処しやすかった。
更に上を目指すならば付与魔法を覚えて能力強化の状態を保ったまま同時に魔法を繰り出したりして……武器攻撃と魔法攻撃の更なるレベルアップを狙う。
威力を保ったままで手数や魔法の種類が増やすのは難しいけど、ジョルならすぐに出来るようになるとアドバイスした。
威力を増やすのは結構時間がかかると思う。
武器に付いてる魔結晶を大型にして魔法の威力を上げたり武器そのものを変えれば、威力は簡単に増えるけど肉体の負担も増えるので、長期戦に向かなくなりかえって無理な戦いを仕掛けなければならなくなるからオススメ出来ないし。
ジョルの最大魔力値はまだまだ伸び代があるので、今後の限界超えトレーニング次第だと説明した。
最大魔力値が上がれば魔法の手数が増やせるから今後の能力アップに繋げられるだろうというアドバイスを送る。
そろそろ夕方なので帰ろうとしたらジョルから金虎獣人の双子に会ってみたいから、次回こっちにくる時に連れてきてくれないかとお願いされた。
会うぐらいなら今日でも良いけど……ユーとミーに都合を聞いてくるとアーリンドル王国王宮前広場に転移した。
「よ! ユーとミー。訓練は終わった?」
「終わって今まで雑談してたよ。それとラーフィーさんからの伝言で念話の魔道具の修理を頼みたいって言ってたよ。」
「そういや壊れてるってグレタが言ってたな。朝に来た時に修理するのを忘れてたわ。」
ユーとミーをそのまま待たせて国王執務室に直接転移。
「ラーフィーごめん。念話魔道具を修理するのを忘れてたわ。」
「こっちこそ言いそびれて忘れてたわ。」
修理しながらラハティカンナス獣人国の首都『マエンタウスタ』で街を歩いた時に感じた事を話す。
活気があって街が生き生きとしていたこと。
獣人や亜人ではない普通の人々もそれなりにいて、その中に人間至上主義者の国から冒険者に化けた軍人らしき人が入り込んでいる事。
それに絡まれたので排除した事。
獣人に変装魔法で擬態してる時に絡まれた事から、若い獣人のカップルを狙って動いている事も話した。
「うーん、アーリンドル王国を含む3国同盟がラハティカンナス獣人国のバックアップするために4国同盟になっているのは知っているだろうから……うちの国にも入り込んでるかな?」
「可能性を考えると入り込んでるだろうね。各領主に通達を伝えて対処を考えておいた方が無難だね。」
「わかった。ミクリーと相談して明日には全領主に通達を出すよ。」
「警備隊が対処することになるだろうから、警備隊の対処方法を指示した方が早いだろうな。」
「そうする。ありがとう、ホープラー。」
「いえいえ、どういたしまして。」
魔道具の修理も終わったので王宮前広場に転移。
聖騎士団や近衛騎士団の連中とは別れて龍の森に俺は皆を連れて転移。
「騎士団には聞かせられないからここで話すけど、今日はラハティカンナス獣人国でグレタとデートしたんだ……」
と、今日の出来事をユーとミーに説明する。
「それで……ジョルがユーとミーに会いたいと言ってるけどどうする?」
「「もちろん、すぐに会いたい。」」
「わかった。エイス・フーロー・ライチ達はどうする? 小さくなったら連れていくよ。」
エイス達は即座に小さくなる。
「じゃあ、皆で転移するぞ。」
皆を連れてヨハン達のクラブハウスの庭に転移した。
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