第47話
「ホープラー、防御魔法の事なんだけど……シールド系の魔法も誘導付与魔法と同じで使いなれた方が魔力使用量は減るの?」
「付与魔法ほどの減り具合ではないけど、限界まで鍛えればほんの少しは減るよ。シールド系の魔法だと魔力使用量よりも維持出来る時間が増えるから、既にシールド魔法を使って自分の周りに展開させておいて、いざという時にシールドを移動させるだけで済んだり、出来る限り使用して鍛えといた方が咄嗟の時に展開しやすくなるし。防御魔法はどんな状態からでも展開出来るように訓練しないといざという時に役に立てないからね。」
「あぁ、なるほどね。そっちの訓練も必要だね。」
「エルマはこのチームの盾役で回復役なんだからあらゆる状況を想定して対処出来るようにしておかないとな。」
「確かに。想定が甘かったのは認める。」
「エルマならトレーニングすれば簡単に出来るようになるよ。エルマは俯瞰で物事を捉える癖があるんだけど、その癖はチームの守りを任される後衛としてプラスに働くからね。」
「うん。ありがとう。」
「次はワシだな。ホープラーに聞きたいのはメインの大剣の予備の武器だ。ワシには何が向いてるんだろうかって。」
「うーん、ベルの大剣以外か……パワー系なら大抵何でもベルならOKなんだけどなぁ……予備の武器となると、投擲も出来る片手斧とか鉈なんかも良いよ。」
「片手斧や鉈ならダンジョンのドロップアイテムが何本か持っているのだが……」
と、ベルが自分の収納袋から片手斧と鉈を取り出して俺に見せてくれた。
俺は椅子に座ったまま片手斧と鉈をジャグリングしてみた。
「全部優秀な武器で変な癖もなくバランスが良いね。これなら投擲武器としても使えるから、咄嗟の時に投げられるように腰に1つ装備出来るように改造してあげるよ。」
ベルトの腰の部分に鉈を入れられるように超小型の革製収納袋の鞘をつけグリップのみ露出させた。
斧は背中側に背負う事になるのでベルのハーフプレートアーマーの背中にホルダー型の超小型収納袋を着けて片手斧も持ち手のみを露出。
これなら普段大剣を振り回す時に邪魔にならないだろう。
投げた後で収納袋に手を突っ込めば次の片手斧や鉈を取り出せるし。
超小型の収納袋なので5本づつぐらいしか収納できないけど。
こんな収納袋の使用方法は初めて見たようでヨハン達も皆驚いている。
これは師匠も知らない技術だと絶賛していた。
なので皆に超小型の収納袋をいくつか作ってあげた。
ヨハンは投げ槍を3本収納できる超小型収納袋を革鎧の首の後ろに取り付けた。
マルセラは矢を取り出しやすい革ズボンの右ポケットの横、お尻側に革製超小型収納袋を取り付けた。
龍の森の住処で拾った恐竜の革製なので、収納量は多く300本以上の矢を収納できる。
エルマは右手で杖を持っているので、左手で取り出しやすいように右手手首のリストバンド型の収納袋。
収納するのは魔力補給する為に魔力を貯めてある魔結晶。
俺へのお礼としてこの部屋は俺専用としていつでも泊まれるように空けておいてくれるらしい。
なんかヨハン達のチームの顧問みたいになっちゃったな。
気の良い奴らだから俺としては文句はないけど。
楽しい夜は今日も更けていく。
翌朝は曇天模様。
窓の外は暗いのでまだ少し涼しい。
今日はたぶん一日中曇って暗い日になりそうだ。
今日は昨日までと違うカフェに行く予定。
そこはトーストと紅茶が美味しくて有名な店でベルが贔屓にしてる。
それからヨハン達の俺が渡した収納袋を実戦で使用する訓練。
昨日に引き続いての連携の訓練。
俺は転移魔法で送り迎えするだけ。
ベルのオススメのカフェへ皆で歩いていく。
昨日までのカフェよりもクラブハウスに近いのですぐに到着。
朝のメニューは紅茶とトーストのセットしかないので座るとすぐに出される。
紅茶はお店のオリジナルブレンドティーが大きめのマグカップに入って出てくる。
トーストは4枚切りの分厚いトーストを斜めにカットして三角にしてあり、片方はバターを分厚く塗ってある。
もう片方はお店の手作りストロベリージャムが塗ってあり、甘味が控えめで酸味が強いストロベリージャムが紅茶に合って非常に美味しい。
15分ほどで食べ終えると店を出る。
むちゃくちゃ回転率の高い店で、のんびり食べたりべちゃくちゃ話してる人も誰もいない。
値段も格安で大きめのマグカップ入りの紅茶とトーストのセットが400B。
ほぼ紅茶のみの値段だとしても安い。
ベルが待たされる時間すら勿体無いと言っていたのは衝撃だった。
俺の中では待たされる時間すら楽しむのがカフェだったから。
忙しい時期の食事なら理解出来るんだけど、カフェって時間の許す限りのんびり楽しむところだと思い込んでたな。
まぁ、これはこれで需要があるからこの混雑があるんだろう。
また昨日のようにクラブハウスに皆で戻ってから、転移魔法で周囲に冒険者やテイマーがいない遠距離の丘に移動する。
ここは大きめのオークの集団が複数存在するほど地下に巨大な洞窟がある。
索敵しながらヨハン達は丘の地下洞窟の攻略を始める。
俺は後ろをついてバックアタックを警戒。
壁にある小さな穴から敵の槍が突き込まれた。
エルマが土製のアースシールドを槍に当てて方向を変えて直撃回避。
先頭にいるベルが槍に大剣を叩きつけてへし折り、後ろにいたヨハンが逆に槍を突き込んで退治した。
ヨハン達はそのまま進む。
俺は穴に手を突っ込み退治されたオークとへし折られた槍を回収。
今日はエルマに昨夜お願いされて全ての回収係を俺がする事が決まっている。
エルマは防御魔法を駆使してチーム防御を優先、防御魔法のレベルアップを訓練していく。
洞窟内はダンジョンのようで不意打ち攻撃も多いから訓練としては最適だろう。
オークも武器を持って攻撃してくるところから、既に洞窟のダンジョン化は始まっているのかもしれない。
鑑定魔法や探知魔法で探ると『オークのダンジョン』と表示されたのでもう既にダンジョンだったわ。
皆に知らせておかないとな。
「皆、スマン。ここは既にただの洞窟ではなくてオークダンジョンとして表示された。スタンピードが始まるまではまだまだ時間がかかるけど放置するのは良くない。今日は俺も手伝うから出来る限りオークを退治しておこう。」
「「「「了解!」」」」
「ここは首都から50キロメートル以上は離れた場所だから途中にいくつかの町が出来てからじゃないとダンジョンの恵みの恩恵は受けにくい。」
「「「「……」」」」
「今、侵入した入口が2階になってて上と下に1階ずつある3階建てのダンジョン。広さはこの丘の全てがダンジョンになってるので、メチャクチャ横に広い少し特殊なダンジョンだろう。」
「「「「……」」」」
「ダンジョンコアは地下にあるけど、ここから向かうには入り組んでいるし、距離も遠すぎて今日中の攻略は不可能だろう。」
鑑定魔法と探知魔法で探りとった情報を皆に説明して情報共有しておく。
ダンジョンの場所を簡単な地図に書いてヨハンに渡した。
ダンジョンがあるとわかっているなら、冒険者ギルドに情報提供しておけばギルドが対応策を立ててくれるし。
情報提供者として俺のハイエルフとしての名前を出せば冒険者ギルドも本格的な調査をして真偽を確かめる必要がある。
だから簡単な地図に『龍の森の王ホープラー』と空いてる場所にサインしてから、サインにハイエルフの刻印を焼いてヨハンに渡した。
この刻印はハイエルフにしか打てない。
だから冒険者ギルドも信じざるを得ない。
「ホープラー、済まない。これなら冒険者ギルドも動きやすくなる。」
「せっかく新たな場所に作り始めた国に隠しておくことじゃないからね。」
「ああ。」
「ヨハン達の師匠や前の大陸に残してある軍隊が完全撤退が完了して、この大陸に移動してきたら戦力や攻略人員に余裕が出来るだろうから、それまでは冒険者ギルドと連携して対応していくしかないよ。」
気を取り直してダンジョンの侵攻を再開する。
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