第48話
マルセラは弓を収納袋に入れてサブの武器を取り出した。
左手首に装着する直径30センチほどのバックラーと幅広の護拳のついたサーベル。
流石に洞窟では弓は使いづらいだろう。
防具はアーチャーのままなので身を護ることをメインに考えているバックラーと護拳だな。
中に金属の棒を数本入れてある革製のすね当てと肘当ても装着している。
位置取りも変化させていてマルセラとエルマの間に空間をとってあったが、今はかなり接近してエルマの方が前になっている。
バックアタックの強襲を警戒してるシフトかな。
エルマの護衛だな。
初擊さえ防げばエルマの魔法でなんとかなるだろうし。
俺は死体拾いをしないでしばらく放置してみたが、ダンジョンが死体を吸収するまでに10分ぐらいかかり、それからドロップアイテムが出るまで5分ほどかかった。
オークの通常ドロップアイテムは豚バラ肉5キロ。
レアドロップアイテムが豚トロ1キロだった。
ヨハン達を走って追いかけてオークがダンジョンに吸収されてアイテムがドロップしたことを報告。
俺がドロップアイテムを全部回収する為に遅れて歩いていくので、ヨハン達は死体を全て放置して先に進む事が決まった。
俺がかなり離れる予防策としてハイポーションを1人2本ずつ渡し、エルマにだけマジックハイポーションを2本渡した。
ハイポーションはともかくマジックハイポーションは、軍の上級魔法部隊や回復部隊しか所有してない程の高級な貴重品の為にエルマは受け取りを拒否していたが、手首のブレスレット型収納袋に入れておくだけでもと言ってなんとか納得させた後、龍の森に帰ればいくらでも製造可能だし、俺のアイテムボックスには何百本も入ってるので遠慮しないですぐに使って良いよと説明したら絶句して受け取ってくれた。
後ろに走って行ってダンジョンに吸収されて残されたドロップアイテムを回収してヨハン達を追いかけていく。
アイテムのドロップ率は8割が通常の豚バラで1割が豚トロで1割は何もない。
意外とドロップ率は良い方だが……
消えていくオークの後に何も出ない時があったので計算したら約1割は何も出ないようだった。
それでも9割アイテムが残るってのはドロップ率としてはかなり高い。
残されたアイテムを拾いながらのんびりとヨハン達を追いかける。
喉が渇いたのでアイテムボックスから冷たいアイスティーをグラスに注ぎ入れて飲む。
探知魔法で探った通り上に登る階段と下に降りる階段がいくつもあって、一本道なのに1階に降りたり2階に戻ったり、3階に登ってそのまま1階まで一気に降りたりしている。
ダンジョンになってまだ間もないからなのか、ずーっと一本道が続いているのでヨハン達の後を追うのがめちゃくちゃ楽だったわ。
俺自身も回収ついでに討伐もしている。
後ろから追いかけてきたオークや目の前でポップアップしたオークだけなんだけど。
ダンジョンの中ではとりあえずは……魔法のみで退治している。
ドロップアイテム狙いなんだし殺り放題。
明らかなオーバーキル攻撃を繰り返す。
雷撃の一撃で丸焦げにしたり爆裂魔法で木っ端微塵にしたり、全身に蔦を絡ませて瞬時に生命力を奪い取ったり絶対零度で凍らせてから蹴って砕いたり等と殺りたい放題。
まぁ、敵のオークもそれほど頻繁に出てこないので、普段は使うことない魔法で遊んでるだけなんだけど。
ヨハン達には大魔法の爆音が聞こえないように結界まで張って用意周到ではある。
あまりの楽しさに俺のストレスも発散出来てる。
今日は遅めの昼食だなと歩きながらサンドイッチを取り出して頬張る。
オークの味噌カツサンドイッチ。
少し焦がしたトーストに挟まれた、豚肉とキャベツと味噌の種類の違う甘さのハーモニーが美味しい。
多めに塗ってあるマスタードの辛みが効いていて、甘さと辛さのハーモニーもたまらない。
かぶり付きながら歩いていくとヨハン達に追い付いた。
ヨハン達も昼御飯休憩。
大きめのバケットにボロニアソーセージの薄切りと、玉ねぎスライスとレタスを山盛りを強引に挟んだバケットサンドを4人が頬張ってる。
周囲を警戒してるため4人が背中合わせに座って、無言でバケットサンドにかぶり付いている。
俺が追い付いて周囲に結界を張り巡らせると、ようやく緊張を解いて4人がリラックスしたようだ。
食後に俺が見張るので仮眠すると良いよと勧めると、4人全員が収納袋からクッションを取り出してゴロンと横になり、すぐに寝息をたて始めた。
イビキをかいてる人はいないがあまりの寝付きの良さにビックリする。
寝付きの良さも冒険者必須のスキルかもしれない。
1時間弱の50分ほどで仮眠を終えたので全員にアイスコーヒーのブラックを渡すと一気にがぶ飲みして飲み干す。
俺が土魔法で作った小屋を4つ作ってトイレを済ますと4人はトレーニングを再開した。
魔法で作った小屋は更地に戻す。
俺は逆に土の上に寝っ転がって今から仮眠とる事にした。
15分だけの超短時間仮眠でスルッと寝てすぐに起きる。
目覚めはスッキリ。
これは前世の日本人だった名残だな。
睡眠不足をこれで乗り気っていた。
まぁ、最終的には乗り切れずに過労死したけどね。
物事には限度があるから要注意だ。
……ハイエルフになった今は10年ぐらい一切寝なくても平気な無尽蔵の体力を手に入れちゃったが。
俺も土魔法で作った小屋でトイレを済まして小屋を潰すと、アイスコーヒーを片手にヨハン達を追う。
アイスコーヒーとミルクを半々で割ったコーヒー牛乳を、氷をたっぷり入れたグラスに注ぎ入れストローでズルズル啜りながら追いかける。
後ろからオークの集団が追いかけてきてたのでしばらく待って殺ってから追う事にした。
土魔法で複数錬金した鉄槍をオークの集団にブチ込んで一瞬で全滅させると、オークがダンジョンに吸収されるまで待機。
ダンジョンのレベルに変化が表れたのかわからないが……10分掛からずにドロップアイテムに変化した。
ただ、オークの出現数は減っている。
落ちているオークのドロップアイテムの数は昼食前に比べて明らかに少ないが、ある程度まとまってアイテムが落ちているのでオークの集団化が進んでいるのかもしれない。
ダンジョンに明らかな変化が出て来てるので注意を促す為に、ドロップアイテムを放置してヨハン達を追って、ちょうど戦闘を終えたヨハン達に話しかけた。
「敵の集団化が進んでいる……もしかして上位種が出たのか?」
「ああ、僕らが今退治したオークの集団の中でリーダーとなっていたオークは、オークの上位種である『オークソルジャー』だったよ。」
「みたいだな。」
「オークの集団化が進んでいるのは確実だし、オークの上位種も今後は増えてくるのかな?」
「ダンジョンがまだまだ『若い』から、一気に成長するとは思えない。けど……皆でダンジョン侵攻を始めてから、明らかに変化がきてるのでレベルアップしてるのは確実だ。とはいえ、オークを爆発的に増やす程に魔力は貯められていないし、冒険者が俺達以外には簡単にはやって来ることができない立地で、魔力を貯めやすい環境にないダンジョンだから、大きく成長するにはかなり時間が掛かるだろうけどね。」
「なるほどね。心配するにはまだ早いってとこ?」
「だな。」
「わかった。ありがとうホープラー。じゃあ皆、オークの上位種が入ってきたから気を引き締めて午後の訓練をしよう。」
「「「了解!」」」
ヨハンがチームミーティングをし始めたので俺は今来た道を戻る。
朝からかなり退治してダンジョンに吸収させたから、ダンジョンの魔力にも変化が出たんだろう。
目の前でポップアップしたオークは上位種のオークソルジャー。
オークソルジャーは複数の種類がいて、武器の数だけオークソルジャーの種類がいると言われてる。
弓を使うオークアーチャーもいるし、槍を使って攻撃してくるオークパイク等もいる。
戦斧等々武器の数は多いし、盾を持ちフルプレートアーマーを装備したオークソルジャーもいて厄介だ。
オークソルジャーは集団戦が得意で、オークソルジャーが複数いるオークの集団は、集団攻撃が得意で波状攻撃までしてくるし、横合いや後ろに回り込んでから攻撃してくるなどの集団戦の妙技までしてくる。
オークソルジャーを複数使いこなす『オークナイト』が率いるオークの集団は少数の冒険者チームや低レベル冒険者チームの集団では逃げる事も出来なくなる。
更にオークナイトを複数使いこなす『オークジェネラル』までくると、数百のオークの集団となり複数の騎士団でないと対応するのが難しくなる。
更に上の『オークキング』『オークエンペラー』までになると国家存亡の危機。
ハイエルフやドラゴンの出番になってくる。
……そこら辺が出てくるとあまりの強さに『プチっ』で終わっちゃうけど。
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