第34話
アニーの予想通りパシーがスカウトから戻ってきてから100頭程連れて行くと言われた。
俺にお礼を言ってから恐竜達を皆転移魔法で連れて帰った。
何種類かのペアがいたようなのでそれなりに繁殖するとは思う。
しばらくは様子見であちこち見回る必要があるし、森は広がってるので飽和状態だった草食魔獣達も余裕が出てくるだろう。
まぁ、パシーはアニーよりも年上なんで俺より全然経験豊富。
龍の森は100頭ぐらいの肉食恐竜を連れてかれても誤差の範囲でしかない。
確認の為に何回か見回れば良いだろう。
パシーも余裕ができたら遊びに来るだろう。
アニーは旧ダーリングアストリー帝国に偵察に行ってくると言って出掛けていった。
グレタは領主執務室に俺が転送魔法で送る。
俺は確認のパトロールに出掛けるので、エイス達と双子はリッチさんのアンデッドダンジョンに送った。
1日ダンジョンで訓練するようだ。
グレタは午後からの半休なので、俺は午後からジャリストンに行ってくる。
鳥まみれのカフェデートだな。
パトロールとして龍の森を歩いてるが、秋の彩りが濃くなってきた以外に変化は感じられない。
恐竜達は冬前の食いだめシーズンの到来。
ドングリみたいな木の実を漁る草食恐竜。
草食恐竜を狙って動き出す肉食恐竜達。
その外側には魔獣達の弱肉強食がある。
それで食い残された草食恐竜や草食魔獣と、逆襲されて倒された肉食恐竜や肉食魔獣等の死体をアイテムボックスにいくつか入れる。
ダンジョンコアが喜ぶからな。
午前中をあちこち転移しながら広範囲をパトロールする。
何年もやってきたから少しずつ手慣れてきてる……気がする。
パトロールを終えるとジャリストンに転移。
そのままカフェで待ちわせなので、カフェの2階の個室に歩いていく。
既に待たせてるようだ。
個室内に店員がいるのでグレタは敬語での会話となる。
「ホープラー様、お久しぶりでございます。今日はお誘いに応じていただき誠にありがとうございます。」
「久しぶりだね。」
との少しだけ白々しい話は続く。
注文したランチが届いた後でやっと普通の会話に戻る。
「それにしても今朝のウナギば驚いた。あんなに美味しくなるんだとびっくりしたわね。」
「手間暇がかかるから面倒ではあるんだけど、あれを味わっちゃうとねぇ……頑張った甲斐はあるから。あれと違う食べ方もあるからそれは楽しみにしてて。」
「へぇー、そんなに違うの?」
「今朝食べたのは『蒲焼き』って言ってタレ付けて焼いて食べるんだけど、もう1つは白焼きって言って焼いてから刺身みたいにわさびと醤油を付けて食べるんだ。どっちが美味しいか人によるから一概には言えない。」
「なるほどね。楽しみだわ。」
「そういや汽水湖の森の件で中央から話はきてた?」
「アニーさんが宰相に直接話してたみたいね。面倒が減ったと中央から通達がきてたわ。」
「ラーフィーとミクリーが面倒で頭を抱えてたからな。厄介過ぎて手に負えないってイラついてたし。」
「アーリンドル王国の後の問題は西側だけね。あそこは宗教が絡んでるから。」
「西側? 宗教?」
「デバッケルフラート教国。宗教が政治の中枢で教皇が代表ね。」
「宗教かぁ、聞いただけで厄介そうだ」
「あそこは狂信者が軍隊だから突撃ばっかりしてくるのよ。軍隊からして頭がイカれた国ね。」
「うわぁー……」
「そう、そんな顔をしたくなる国。でもデバッケルフラート教国はトルベッケトラース通商衛星国とずーーっと争っている国だからうちとはそんなに揉めてないから放置するしかない国だから。今回の騒動前は。」
商人国家と宗教国家……
わかりあえそうな雰囲気すら感じないな。
実際に水と油みたいに全然合わないようだ。
デバッケルフラート教国はトルベッケトラース通商衛星国と海上通商的にも敵国。
どちらも海洋交易が主要産業なので、何から何まで気に入らない仲。
国の規模は圧倒的にトルベッケトラース通商衛星国の方が大きいが、商人の傭兵達では狂信者を数多く抱えてる国は押さえ込めないみたい。
面倒くさい国同士が争ってるのでどの国も放置してどちらの国にも支援しない。
「まぁ、そんな事は置いておいて……国王様からホープラーへの手紙が定期便に入ってたわよ。」
「へー、どれどれ。」
ラーフィーからの手紙は今回の件より数ヶ月も前からアーリンドル王国とリンタネンキュトラ共和国は敵の敵は味方という理論と、立地的にも旧ダーリングアストリー帝国に対して挟撃してる国の位置にあるので、元々友好国ではあったのだが正式に安全保障の同盟を結ぼうという機運が上がっていた。
それで近日中に両国の仲介をしていたパシーとアニーが、お互いの正式な代理人を転送魔法で送って調印式を同時に行う予定日まで決まっていた。
しかし今回の件で汽水湖の森によって完全に分けられる事になった。
なので旧ダーリングアストリー帝国はどうでもよくなり安全保障の同盟ではなくて普通の通商交易の開始に変更された。
無論、より強化された軍事同盟は結ばれる。
これはデバッケルフラート教国への牽制目的。
通商交易の仲介をするのがトルベッケトラース通商衛星国というのも決まり、こちらのバーキットの港とリンタネンキュトラ共和国を船で結ぶ。
アーリンドル王国からはジャリストンの木材……龍の森の木材がリンタネンキュトラ共和国へ運ばれる。
リンタネンキュトラ共和国は草原と砂漠の国で木材はいつも不足している。
そのリンタネンキュトラ共和国からは砂漠から大量に産出される火の魔石。
アーリンドル王国は火の魔石はほとんど産出されないので需要に供給が追い付いてない状況。
リンタネンキュトラ共和国の砂漠は特殊で魔力が空になった魔石を砂漠に埋めておくと火の魔力が満タンに補充される。
世界中から空の魔石が集まり、火の魔力が満タンになった魔石として世界中に売られていく。
アーリンドル王国とリンタネンキュトラ共和国はトルベッケトラース通商衛星国とデバッケルフラート教国の戦争に対して中立を保っていたが、デバッケルフラート教国の数百年にも及ぶ度重なる要求、『デバッケルフラート教を国教と定めよ』に対抗するにあたり、アーリンドル王国とリンタネンキュトラ共和国とトルベッケトラース通商衛星国の三国軍事同盟が正式に発足することになった。
3ヶ国から正式に国交断絶と宣戦布告が同士に発表となる。
それで近日中にリンタネンキュトラ共和国から通商団と代理人がアーリンドル王国に船で訪れる。
龍の森の南の街道を通る際、龍の森の王の調整者に挨拶がしたいので紹介して欲しいとリンタネンキュトラ共和国からお願いされたみたい。
まだ20日以上は先の話だがよろしく頼むと手紙は書かれてた。
別に構わないのでOKの返事を書く。
公式な手紙なので公式に返事の手紙を認めて魔法でラーフィーとミクリーにしか開封出来ないように封印する。
その手紙をグレタに渡した。
「北側の敵が国境を接しなくなったので、アーリンドル王国も思い切って舵を切ったみたいね。」
「俺からすればトルベッケトラース通商衛星国もデバッケルフラート教国も信用には値しない国だからなぁ。ラーフィーは教国だけはイヤだと言ってたし。教国の上層部はヒドイらしいね。」
「あそこの国は教本が全ての基本で自分達のみが神の代理人と平気で言ってくる。全ての人民が神の代理人の僕となれば世界に平和が訪れる。神の僕ならまだ理解できるけどなんで間にお前らが入るの? って質問に代理人は神に選ばれて世界のリーダーとなるべき人達だからって言う。でも神だったら何で世界平和にするために神を信じる人々以外の全てを滅ぼさないのか? という疑問には、更正する機会を与えてるとか言ってる。全ての疑問の答えは始めから決まってるんだけど、全ての答えがどこか間違ってるんだよね。だから教国の人と会話してるとこいつらは思考停止してるバカなんだと理解できるよ。」
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