第33話
それから10日程経過。
草原の国の部族は隣の部族に吸収されて消えていった。
森への恐怖は新たな部族に伝播して草原の国を駆け巡った。
正直言って怪我をしたアリュカイオンは群れに混じってしまったので、被害を受けたアリュカイオンがどれがどれだかわからなくなってしまった。
怪我の影響は残って無いようなので良い事なんだろう。
今回の件で龍の森の北側の草原の馬系魔獣達にはより怖がられているようで、俺との距離の取り方が10キロメートル程だったのだが、今日散歩してたら12キロメートル以上に距離が伸びてきてる。
馬系魔獣達には何の興味もないので別にどうでも良い話なんだが……マジで負け惜しみではない。
龍の岩山は徐々に雪が積もり始め場所によっては秋から冬の彩りになっている。
山に登らなくても下から見える。
龍の森はまだまだ秋が始まったばかり。
アーリンドル王国も龍の森と同じような気候。
霊峰山の森は既に秋から冬の彩りに変わってきてる。
霊峰山の森の南側は山脈が続いていて山頂は年がら年中真っ白な雪が積ってて真夏でも解けてない万年雪。
山脈の先はこの大陸の最南端。
龍の森よりも北側の草原の国は大草原が広がっている温暖な気候で、その北側は砂漠が広がっているみたい。
砂漠の北側は海になってこの大陸の最北端となってる。
アーリンドル王国の北側は別の国がある。
興味無かったので知らなかったが、グレタによるとちょいちょいアーリンドル王国や草原の国に手を出しては撃退されてる。
グレタも国境での小競り合いに何度か派遣されて戦っていた。
それで功績をあげて爵位をもらい女男爵となった。
そのアーリンドル王国の北の国……
『ダーリングアストリー帝国』
が俺が始めた奴隷解放事件の余波でヤバい事になってるようだ。
この国は『強いヤツが全てをとる』ってぐらい強い皇帝が絶対的権力者となっていて、すべてを支配するのが当たり前となってるお国柄。
絶対権力者の皇帝家が奴隷を複数所有していたのでハイエルフによって一族郎党すべて抹殺されてから奴隷が解放された。
その後、貴族の権力闘争中に民衆蜂起によって民主主義国家が出来上がって貴族排除の混乱してる中、強いヤツこそすべての思想に凝り固まった軍部がクーデターを起こして中央権力を掌握した。
そのまま落ち着かずに北軍・東軍・南軍に別れて権力争いをはじめて、地方貴族は力を持ったまままだ残っててぐちゃぐちゃになっていった。
ダーリングアストリー帝国はダーリングアストリー民主主義国になり、さらにダーリングアストリー軍事政権へ。
その軍事政権が3つに割れて揉めてるんだと。
アニーが顔をしかめながら教えてくれた。
すでに内戦勃発していて複数の民衆がアーリンドル王国へと亡命しようと避難民が移動してるようだ。
ちなみに旧ダーリングアストリー帝国の時から西軍がないのは西側は原始の森となっているので軍は元からおいてない。
北軍東軍南軍に力の差はほとんど無くて三つ巴で拮抗してるからそこまで大きく動けない。
だから小競り合いが繰り返されて終わりが見えないでいる。
一緒に話を聞いてたグレタが「相変わらず小競り合いが好きな国だな」と苦笑してた。
アーリンドル王国と旧ダーリングアストリー帝国は元々争っていた国同士だから国交すらない。
亡命は許されてない。
国境も最初から開かれてない。
国境には巨大な壁しかなく門すら作られてない現実。
避難民が押し寄せられても移動出来ないのに、わざわざ押し寄せてきて人道的支援を勝手に要求してきてる。
いつも小競り合いを仕掛けてきた敵国の避難民のクセに生活保証を要求してくるクソみたいな国民が多い。
根本的な考えとして……
『俺達の方が強いからお前らは貢げ』
というジャイ○ン思想の持ち主のようだ。
西側の原始の森には怖すぎて行けないし、東側の草原の国は血統を重んじる民族主義が支配してる民族なんで逃げて行っても敵国の国民として身ぐるみ剥がされて抹殺される未来しかない。
だから北と南の国境に押し寄せて敵国に人道支援を勝手に要求してくる。
ちなみに旧ダーリングアストリー帝国の北側の国
『リンタネンキュトラ共和国』
も国境の壁はあるが門はない。
クソ面倒な国民性で国交すら絶っていた国民が何千人も勝手にやってきて、食い物寄越せだの中に入れて接待しろだの朝から晩どころか、晩でも止まない程クソ喧しい。
その苦情がとうとうハイエルフにきた。
アニー達ハイエルフが相談して導きだした答えが……
ウザい国民はすべて閉じ込める。
旧ダーリングアストリー帝国の南北を西側にある原始の森を広げて包んでしまう。
という力ずくの解決法。
朝の散歩を終えて住処に帰ってきたら、その原始の森の調停者が俺の住処に挨拶しに来てくれた。
「初めまして。龍の森の王の調停者のホープラーです。よろしくね。」
「やぁ、初めましてだね。汽水湖の森の調停者の『パッサリーニナパロ』名前は長いからパシーと呼んでね。うちの森は西側の真ん中辺の半分が湖となっててね名前の通り海と繋がっていて海水と淡水が混じっている湖を持つ森なんだ。」
アニーと一緒で森の王ではないようだ。
「それで急に挨拶しにきたのは汽水湖の森を旧ダーリングアストリー帝国の南北に広がったのにあたって、龍の森の恐竜を何匹か貰えないかと思ってね。」
「パシーそれは構わないけど……どうしてうちの恐竜なの?」
「最近うちの森の草食魔獣が増えて困っていたけど今回大幅に森が広がったからね。それにうちの森の魔獣だけでは旧ダーリングアストリー帝国国民はそれほどの脅威を感じてないから面倒くさいんだよね。ちょいちょい俺が出ないといけなくなる。」
草食魔獣が森を出て旧ダーリングアストリー帝国国民が仕留められて食べられる事が最近たまにあって、森の外に出た魔獣全ての管理をするのが面倒だし、龍の森の外縁部に住む恐竜なら適度に増えていた草食魔獣を間引いてくれるし、旧ダーリングアストリー帝国国民からは恐怖の対象でしかないので丁度良い塩梅で調整してくれるんではないかと期待してるらしい。
パシーは魔獣と会話できるようなので適当にお願いしておくらしい。
スカウトする恐竜の選択は会話して選ぶので任せて欲しいと言われた。
挨拶しに来てくれたし、俺からは別に何もないからどうぞご自由にとしか言えない。
俺にはお礼として汽水湖の生物のウナギとシジミをある程度持ってきてくれた。
アニーから俺が変わった食べ物を探してると聞いて選んで持ってきてくれた。
俺は泥を吐かせる為の池を急遽作りウナギを池にはなす。
ウナギの池は水の流れを作り結界で虫も入らないようにした。
シジミは海水につけとく。
どっちも美味しそうと俺は思ってるが、アニーとグレタの反応はいまいち。
見た目グロいウナギと真っ黒な貝のシジミは、知らない人から見たら美味しそうなんて微塵も思わないしね。
俺とユーとミーのテンションが上がってるのを見て不思議な顔をしてる。
シジミは今夜いけるがウナギは7日は待たないとな。
パシーは俺が池を作ってる間に恐竜をスカウトしに行った。
疑心暗鬼なアニーとグレタの為に今朝の朝食は俺のアイテムボックスにある鰻丼にしてやった。
朝なので小さめの丼なのだがあまりの美味しさに驚愕。
ウナギを美味しく食べる為に7日は流水に入れて絶食させると泥を吐いて美味しくなるんだと言うと絶句してしまう。
まぁ、森の王のハイエルフは誰も知らない不思議な知識を持ってる事が多いというのが、このジャスビレンドの世界では共通認識となってるので俺には何も聞かれなくて助かるけど。
俺と双子のテンションの高さを理解してくれて助かった。
「アニーに聞きたいんだけど、パシーが恐竜を連れて行くのは良いんだけど、森を広げる前に連れて行っても良いの?」
「森は既に昨晩だけで広げ終わってる。汽水湖の森には5姉妹の古龍が住んでて手伝ってくれたから5分で終わったわ。だから全て終わった今朝に来たのよ、」
「なるほどねぇ。」
食後のコーヒーを飲みながら駄弁ってる。
グレタはモフモフにまみれて嬉しそう。
ユーとミーは食後の休憩で二度寝してスライムにもたれてうとうとしてる。
アーリンドル王国と旧ダーリングアストリー帝国の国境はお互いに5キロメートル程の間を空けて壁を築いている。
間は草原。
そこに避難民が押し寄せていたのだが、昨晩に間の草原がなくなって汽水湖の森になってる。
北側のリンタネンキュトラ共和国も同じように汽水湖の森になってるので今頃避難民は大パニックとなってるだろうとアニーが笑ってた。
グレタが言うにはアーリンドル王国でもかなり問題になっていたようだ。
旧ダーリングアストリー帝国は馬が特産品で騎馬隊が数多くいた。
大きな複数の民族を纏め上げて大きな帝国となり戦争を仕掛けまくった挙げ句、南北に巨大な壁が築かれて侵略できなくなった。
それでも何度も小競り合いを絶えず仕掛けてくる国交すらない敵国。
アーリンドル王国とリンタネンキュトラ共和国からすれば侵略する価値もない国だから、厄介な民衆がお荷物としてついてくるだけの迷惑極まりない隣国。
汽水湖の森の魔獣は草食魔獣といえど人間ぐらいは骨ごと食べる雑食らしい。
ただ今の避難民ぐらいなら草食魔獣で撃退できるが、正規軍の騎馬隊がきたらちょっとヤバいらしいので、北と南で50匹ずつぐらい連れていくんじゃない?
とアニーから教えて貰った。
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