第20話
トルベッケトラース通商衛星国の国境の町へと向かう。
街道の近くまで転移してから飛翔魔法で街道の上空を町に向かって飛んでいく。
アニーにも言われてるが……
龍の森と霊峰山の森に挟まれてるこの街道は隷属の魔法の力が極端に低下するので奴隷が声を出しやすい場所。
なので道を通る時には極力上空から監視してほしいとお願いされてる。
奴隷を極端に嫌うアニーは街道沿いに監視用の植物が植えてあり、日々目を光らせて耳を澄ませていると言ってた。
街道の上空から監視したが異常なところは何もなかった。
鑑定魔法で道行く馬車や通行人、馬に騎乗してる人達にも異常なところは見当たらなかった。
残念だがいないな。
さすがにそこまで簡単には見つからないようだね。
魔道具とかで偽装してる人達も多いみたいだが、ハイエルフの鑑定魔法をくぐり抜けられるような魔道具は存在しない。
かえって偽装されてたりしたら魔力の異常な流れが遠くからでも目立つし一目でわかるので、ユーとミーのように隷属魔法がかかってる魔道具を外されて移動する時が最近では多くて……鑑定魔法では発見しにくくなってる。
なので声をあげたり脱走したりして発見するパターンが今は多いとアニーから教えてもらった。
魔道具を使って誤魔化す時代と、全ての魔道具を外して見つからないように隠す時代が交互にやってくるらしい。
今は魔道具の時代は終わり、なるべく外して隠す時代。
アニーに説明された時に、こんなところにまで時代の移り変わりがあるんだなと感心した記憶が残ってる。
ユーとミーも目を皿のようにして俺よりも高度の低い上空から馬車を目視してる。
今は盗賊や違法業者に雇われた傭兵ぐらいは簡単に退治できる強さをユーとミーは持っているので、少しでも早く被害者の事を助けられるようにと考えているのだろう。
ただ……飛翔魔法の移動では自分だけでスピードさえ出さないならいけるが、被害者達を運ぶのは双子ではまだ無理だな。
だけど、被害者達を浮かせて運ぶ事ぐらいは1トン位まではたぶん大丈夫。
双子なので2トンまでならいける。
まぁ、俺がサポートすれば良いだけなんだけど。
3人で注意深く監視したが、何も異常もなくトルベッケトラース通商衛星国の国境の町に到着した。
俺と双子が通用門の前に降り立ったことで国境警備隊は色めき立つ。
この国では1500年前からハイエルフは『恐怖の代名詞』となってるから。
アニー程でないが同じハイエルフ。
しかも6年前はまだ子供だったし、双子の幼児を連れてた。
その子供達がその後3年も間、あちこちに影響が残るまでの大混乱を引き起こした。
むろん非は町側にあり大混乱の後に本国から通商団を派遣して謝罪に赴いて、迷惑をかけたハイエルフに毎年貢ぎ物を出してる。
ハイエルフと本国は交易らしきものが始まってるが、それ以降この町にハイエルフは訪れていないのが続いていた。
それが数年後にムキムキのマッチョになって現れて連れてた幼子は150センチ位になって武装してやってきた。
入場の順番待ちしていた全員から
「「「お先にどうぞ」」」
と譲られて入り口から入る。
まずは警備隊隊員に確認する必要がある。
「ホープラー様、いらっしゃいませ。」
「確認したい事がある。以前、俺と騒動になった時の領主は今どこにいるんだ?」
「はい。領主の『ジルベール・フォン・ホルヴァート』男爵ですね。騒動の後に責任者の管理不十分の罪を問われ、罰として5年ほど本国で謹慎してましたが、昨年からこの『コンセプシオン』の町に戻り今は領主を勤めています。今日は領主の館で執務中だと思いますが……呼びますか?」
「いや、まだいい。……では謹慎中の代理は誰がやってたんだ?」
「コンセプシオン副領主のホルヴァート男爵家長男がそのまま勤めてました。今も副領主で健在です。」
ユーとミーが成長して落ち着くまで待っていたとはいえ……カツアゲ騒動から5年いや6年ちかく経過しているので、もうすでに奴隷売買の痕跡も残ってないと思っていたけど……
こりゃ、そのまま奴隷売買をはじめとする犯罪行為はまだ続けてるな。
バレてないと思ってるだろうし。
本国で謹慎していたとはいえ町に監査が入るわけでもなく、自分の身内にその後を任せていて直ぐに自分は返り咲いてるんだから。
しかもあれから俺達が一切顔を出さないし、誰からの追及もないので増長してるだろう。
今なら尻尾が掴めるかもしれない。
領主の館に連絡をいれようとするのを止めさせて、転移魔法で館に直接乗り込む事にする。
双子の記憶では町の門から町に入らずに、別の場所にある地下道から領主の館の地下に入った。
だからあえて同じルートをたどれば秘密の裏側に乗り込みやすいだろう。
「ではホルヴァート男爵家が丸々関わっている容疑になるな。おい、そこのお前! 動くな。」
後ろでこそこそしていた警備隊隊員が西門にある通信室に入ろうとしてたので、ドアノブを持ったまま蔦でグルグル巻きで捕獲。
通信室も蔦まみれにしてから結界を張り入れないようにした。
「この町には町ぐるみで違法な奴隷売買の嫌疑がある。これから捜査する。町に入るのは構わないが捜査が終了するまで誰一人外に出してはならない。これはハイエルフとしての命令となる。」
命令を出した後に領主の館の敷地内全域に蔦の結界を張り巡らせる。
国境の門も同様に蔦の結界で覆われ、門の出入り口は開けてあるが町から出ようとすると蔦が絡まって身動き出来なくなると説明。
入ろうとして待ってた人達も逃げないように警備隊隊員が全員を中に入れた。
説明を終えると町の北東にあるもう1つの出入口『東門』に転移。
こちらでも同様の命令を下してから、東門も最低限の出入り口のみ残して蔦の結界で覆いつくす。
東門の通信室も蔦で封鎖した後に秘密の出入り口まで転移。
こちらは逆に俺達が入ってから蔦の結界で完全封鎖した。
蔦の結界の外側から少し離れた場所にエルダートレントを複数設置して、蔦の結界を見て逃げ出した連中を全て確保する。
ここの入り口を知って使っているヤツラは犯罪者しかいないだろう。
秘密の入り口を抜けると双子が馬車に乗せられた広い場所に到着した。
双子を注意深く見てるがトラウマが発動して変になってる雰囲気はない。
大丈夫そうだ。
今ここには誰もいない。
やはり深夜に活動してるようだ。
この地下空間を洞窟探索魔法で探る。
ここから更に地下に空間があり誰か捕らえられてるようだ。
3人で探したが下に行く階段が見つからない。
面倒になったので転移魔法で直接乗り込んでみた。
一緒に乗り込んだ双子がはしゃぐ。
「「凄ーい! デッカイ水晶がある!」」
双子には水晶しか見えないが、バカデカい水晶の中に妖精が捕らわれてる。
今回の件となんも関係なさそう……明らかに違ってんな。
そういえばこの水晶……凄く厳重な封印がかけられていて、この部屋にも結界がいくつか組み合わせてかけられている。
領主は知らんだろコレ。
人間にどうにかなるレベルの封印や結界ではない。
どこかのハイエルフが絡んだ案件だな。
水晶の下にバラの蔓が絡まっていて台座代わりになっているし。
水晶の中に座り込んでる妖精が俺の耳を見て驚愕してから……
『ねぇねぇ、私が見えてるよね? お願いだからここから出してよ。ねぇ、お願いよ。』
ってジェスチャーしてる。
双子には見えないみたいだしシカトした。
「デッカイ水晶だな。でもこの部屋は奴隷とはなんも関係ないようだし、上に戻って捜査の続きをしよう。」
そう言って双子を伴い外に出ようとしたら、水晶の中の妖精から思念が飛んできた。
【ちょっと待ったぁーーー!】
ハイ、ちょっと待ったコール入りました。
【ねぇ、そこのハイエルフさん。見えてるよね? きこえてるよね? お願い助けてよ。】
ふー、と俺が溜め息をつくと双子が不思議そうに見上げてくる。
「いや、2人には見えてないけど……そこにある水晶が俺に話があるらしい。」
「「水晶が?」」
「うん。中に……いや、説明しにくいな。スマンがちょっと待ってて。」
面倒くさくなって説明をしないで待っててもらうことにした。
話によっては放置する事もありうるからな。
俺も思念を送って会話する事にした。
【で、話って何?】
【ねぇ、お願いだから助けてよ。】
【ヤダ。明らかに封印されてんじゃん。許可もないのに解放したら、俺が封印した人に怒られる。】
【だって千年の封印刑って言われて封印されたのにもうすでに1500年以上経過してるんだから。】
【うっそー。】
【マジ。なんだったら刑を執行したアナスタシアって名前のハイエルフに確認してよ。たぶん忘れてるだけだから!】
アニーかよ。
通信魔法で確認してみる。
《アニー、ハロー》
《ハロー、ホープラー。どしたの。》
《アニーって妖精を封印したことある?》
作者からのお願いです。
少しでもこの作品を面白いと思っていただけたら↓の好評価とブックマークの登録をお願いいたします。
皆様の応援が作者の励みになります。
是非ともよろしくお願いいたします。




