第15話
アニーは住処でゴロゴロしてた。
転移で現れた俺達3人を見て身体を起こした。
「あら、いらっしゃい。ホープラー、久しぶりね。」
「よっ! アニー。……でもそんなに経ってないよ。先々月アニーが龍の森に来てたから。」
「そうだっけ?」
「トルベッケトラース通商衛星国から海産物をもらったから海鮮BBQパーティーをして呑んだくれてたじゃん。」
《日本ではお酒は二十歳になってから》
「あれ、先々月だったっけ? 30年ぐらい前じゃなかったっけ?」
「30年前なら俺はまだジャスビレンドの世界に生まれていないよ。まだ俺15才なったばかりの新成人なんだから。」
「そういやそうね。」
何千年という年を過ごしたハイエルフは曖昧になってる事が非常に多くなる。
異空間に魔法で作ったいくつものデータサーバーに記憶させて、本人は曖昧な記憶にして脳の負担を減らしてるからだ。
なのでデータサーバーを調べれば直ぐに正確にわかるんだけど、めんどくさいからどうしても必要にならない限りは調べない。
俺も既にそうしてる。
面倒くさがりなハイエルフの特性だろう。
「「アニーさん、お邪魔します。」」
「あらあらユーとミーもいらっしゃい。相変わらずハモってるわね。練習してるの?」
「「してないしてない。」」
否定して手を振る角度まで揃ってる。
俺もいくら双子とはいえここまで揃ってるのを見ると、俺の知らないどこかで密かに練習してんじゃないかと最近少し疑ってる。
理由は……双子のキャラを維持するために。
「今日はどうしたの?」
「今日はユーとミーの冒険者デビューの記念日だ!」
「「デビュー記念日だ!!」」
「何それ意味わかんない。」
両手を脇腹に当てて胸を張る3人を見て余計に意味不明だと首を振るアニー。
まぁ、冒険者ごっこ遊びの延長で今日から冒険者なんだとデビューすることを勝手に決めたと説明した。
「丁寧な説明されても全然意味わかんないね。」
と匙を投げられた。
しかし冒険者遊びをするならと頼み事を言われた。
霊峰山の森のオークがいつしか増えてて、被害にあってる山林モンキーからの訴えが昨日来たようだ。
弱肉強食とはいえ余りにもオークが多過ぎて何かおかしいと。
なので冒険者遊びをするなら、もののついでに適当に間引いてとの頼み。
「「「この依頼受けましょう!」」」
俺まで揃ってしまった。
でも依頼を受けるというのは……冒険者になったようでちょっと楽しい気分になる。
オークの住処や山林モンキーの住処等々、アニーから色々な事を教えてもらって細かい情報を得てから山林モンキーの主の住処に移動。
冒険者なので転移魔法は使わない。
移動する道中も貴重な薬草等の採取の時間だから。
そういや興奮し過ぎて朝御飯を食べてない事に気付くのが遅れ、昼ご飯を兼ねたブランチをゆっくり食べたので、山林モンキーの住処に到着したのは昼をまわっていた。
山林モンキーの住処に到着した時に丁度オーク10頭の集団に襲撃されていたので、冒険者(仮)の3人で撃退。
5頭を倒したところで残りの5頭は逃走。
追撃で3頭倒して残りはわざと逃がした。
アニーにオークを間引くだけだから全滅させないでねとお願いされてるからね。
多少は逃がしておかないと。
山林モンキーの主から話を聞くことに。
ハイエルフである俺しか山林モンキーとは会話できないので、ユーとミーには倒したオークの処理をお願いした。
主は10日前ぐらい前からオークが爆発的に増えてて異常事態らしい。
山林モンキーはもっと広範囲に暮らしているのだか、被害の多さから撤退につぐ撤退でここまで押し込められた。
普段は山林モンキーの戦士が集団でオークを襲えば勝てる。
オークと山林モンキーは捕食し合う間柄。
なので、一方的に蹂躙されている今の現状は異常事態らしい。
山林モンキーの戦士の集団が簡単に撃退されるほどの、異常種のオークが混じっていて異常種をリーダーにした集団に押し込められたと訴えられた。
ついでに主は既にオークのスタンピードが始まってると訴える。
確かに先程のオーク集団に目が血走って狂ったようなオークが間違いなくいた。
ユーとミーも解体中のオークを俺の側に運んできて、オークが変だと現物を解体しながら説明してきた。
これはスタンピード発生時の異常種で間違いない。
オーク異常種には鼻の裏側に普段はない魔石がある。
冒険者ギルドでのオークの討伐証明はオークの鼻。
この魔石を現場で確認する為に討伐証明として鼻を切り取って確認して部位を提出する。
山林モンキーの主も異常種は撃退するだけで退治出来てなかったので、異常種の魔石を見て……やはりスタンピードは始まってると呟いてた。
主に聞くと霊峰山の森では……
だいたい百年位の周期で色々な種族のスタンピードがあり、前回は山林モンキーの方がスタンピードしてる。
それでアニーに間引かれて、生き残りの中で1番強かった自分が主になった……それが今から40年ほど前。
スタンピードにはまさか早すぎると対応が遅れたせいで、山林モンキーの種族の数を減らし過ぎてしまったと落ち込む主。
アニーもスタンピードだとは思ってもいないので、まだ大丈夫だろうとゴロゴロしてるし。
アニーから直接依頼を俺達が引き受けてるから安心しなさいと胸を張る俺達3人の冒険者(仮)。
流石に俺は若いし連れてる双子は幼いしで若干不安を隠せない主だが、鎧袖一触で先程目の前にいたオークの群れを瞬く間に殲滅し、逃げ出した敵を余裕で狩り2頭だけ見逃した様を目の当たりにしてるので……よろしくお願いしますと頭を下げた。
「じゃあ主、行ってくるよ。」
「すみません、ここの守りは……」
「周囲の木をエルダートレントに変えてるから。彼らが守ってくれるから安心しててね。」
山林モンキーの住処の中にある木や周囲に生えてる木に、エルダートレントを憑依させて一時的な守りに変える。
頑丈そうな木を全てエルダートレントにしたから100本以上はエルダートレントになってる。
オークが例え2千を越える集団で攻め込んできてもこの防衛線は抜けないだろう。
憑依タイプのエルダートレントなので、エルダートレントの身体の木の部分を破壊しても近くにある適当な木に乗り移って行くので、木がある限り終わらない戦いが続く事になるだろう。
エルダートレントの別名
『原始の森の厄介な守護者』
は伊達じゃない。
憑依タイプなので歩いて移動する事は出来ないが、枝を伸ばして攻撃&根っ子で下から攻撃してくるので本当に厄介だ。
枝を折っても破片が絡み付いてくる。
周囲に沢山のエルダートレントの気配を感じて、ようやくリラックスする主を後にして俺達はオークの沢山の気配がする方向へと歩き出す。
ユーとミーには
「オークの異常種は全滅させる。」
「普通のオークは半分以上は間引く。」
「解体は後日まとめてするので、今日は退治したオークは全部そのまま収納。」
こんな指示を出した。
俺はこのまま真っ正面からオークに突入。
ユーとミーは左右に別れて後ろに回り込む。
オークの異常種は一目でわかる。
少し背が低い。
普通のオークは3メートルよりも少し低い位で、異常種は2メートルよりも少し大きい位で一回り小さい。
蝗害のバッタみたいだな。
ただし小さい分スピードは早い。
……3倍まではいかないが早い。
普通のオークは何も武器を持たないが、異常種は丸太を持って攻撃してくる。
真っ正面から乗り込んだので次々襲ってくるオーク。
俺は直径2センチ位まで何十本も編んで強化した蔦を鞭のように振り回して攻撃。
左から飛び出してきた異常種オークを左手の蔦ロープで絡み取り、右手側で木の後ろに隠れて俺に隙が出来るのを待っている異常種オークに叩きつけて両方殺害。
左手の蔦ロープを死んだ2つのオークの身体を絡み取りそのまま上に放り上げてアイテムボックスに。
そうやって次々と飛び出してきたり、木に隠れている異常種オークも蔦ロープで地面に叩きつけたり、オーク同士をぶつけたりと殺害してアイテムボックスに入れていく。
……なんかさっきから異常種オークしか出て来ないんだけど。
分かりやすくて良いな。
オーク肉は美味しいので沢山欲しい。
カツサンドが食べたくなってきた。
……異常種オークは食べた事ないな。
美味しいのか?
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