第11話
アーリンドル王国の首都フェリクスの東門の手前まで転移してきた。
1キロほど歩く距離だが巨大な都市を囲む壁が左右に伸びているのが、ここからだとはっきり見渡せる。
「おーー」
「「ふぉーーーー」」
俺は思わず声が出たが双子は興奮してハモって叫んでる。
満足すると俺と左右に並んで一緒に歩きだす。
ジャリストンには服や屋台の串物を購入しに、ユーもミーも何回か一緒に行った事がある。
フェリクス訪問は初めてなのでユーもミーも興奮して声を出しながらニコニコの笑顔だ。
東門までどんどんと進んでいくと、壁が近付いてきて東門前までくると見上げるばかりの高さ。
俺も初めて訪れた場所なので3人でキョロキョロしている。
入場を待つ長い待機列の中で……完全にド田舎から来たおのぼりさん状態の3人を見て微笑ましい雰囲気が漂っている。
流石に長い耳を出してる俺にわざわざ絡みにくる無謀な人はいない。
出入り口の警備隊隊員の3人にステータスカードを見せる。
「ホープラー様、ありがとうございます。えっと彼らは?」
「ちょっと縁があってね。養子のようなものかな。だから彼らの身分証明は僕が引き受けるよ。」
「了解いたしました。それなら何の問題もありません。ようこそフェリクスへ。」
「それで相談があってね。彼らの事なんだけど……」
「話が長引きそうなので場所を変えさせていただきますね。」
ここからは長くなりそうだったので、フェリクス入場に並ぶ列から離れて別室に移動することになった。
後ろにユーとミーもニコニコの笑顔でキョロキョロと周囲を見ながら2人並んでついてくる。
東門横にある壁の内部の応接室へと歩く。
3人掛けのソファーに並んで座り話を進める。
ユーとミーの所属などの話は警備隊隊員では答えられないと謝罪されてしまう。
それならば、できればラーフィー王に話が聞きたいんだよねと言ったら何人かが素早く部屋を出ていった。
応接室の隣の通信室にある通信機ですぐに王宮と連絡がつき、前に行った事のある王宮にある国王執務室で待ってますと伝えられたので移動する。
今日はラーフィー王とミクリー宰相の2人とも時間的に余裕があり、今すぐでも大丈夫と言われたので俺とユーとミーの3人で転移魔法で直接飛んだ。
国王執務室の3人掛けのソファーに並んで座ってると、すぐにラーフィー王とミクリー宰相が入ってきて挨拶をかわす。
「やぁ、ラーフィー。ちょっとぶりかな?」
「先月ぶりぐらいだね。ホープラー」
「今、東門から緊急連絡が入ったと聞いてビックリしたよ。ホープラー、何で今日は王宮に直接来なかったんだ?」
「やぁ、ミクリー。最近忙しいと聞いてたしね。深い意味はなく身分証明の話だからさ、警備隊の方が詳しいかもと思ってただけだよ。それにせっかく彼らを初めてフェリクスに連れてきたんだから、首都フェリクスの巨大な壁を見せようと思ってたんだよ。」
ユーとミーが2人だけでダンジョンに訪れるようになって、リッチさんにある程度の子育ての時間を任せるようになった。
そうなると逆に俺は暇を持て余し、単独でフェリクスに何度も訪れていてラーフィー王とミクリー宰相に何度も会って会話してるので、すでにめちゃくちゃ仲良くなっている。
俺が変装魔法で3人の姿を変えてフェリクスの街中に遊びに行ったのは一度や二度ではない。
ラーフィー王もミクリー宰相も30才を越えたばかりだが、二人とも俺と同い年の子供と実弟がいるので、もはや身内と話すような気軽さになってて、俺もまだ13才だし話しやすくて楽だったりする。
流石に王家と侯爵家は子沢山だ。
俺と楽しそうに話す王様と宰相にビックリして目を見開き固まってる双子。
両手で二人の頭をワシャワシャと撫でると、ようやく再起動を果たしたようで元気に挨拶した。
「はじめましてホープラーの弟のユーです。」
「はじめましてホープラーの妹のミーです。」
ラーフィーとミクリーは挨拶を返して自己紹介完了。
2人には弟と妹として俺は接してる。
年齢を考えるとおかしい話ではない。
自己紹介が終わって一息ついた頃を見計らっていたメイド長とメイドが何人か執務室に入ってきて紅茶を並べる。
ユーとミーが俺を見つめる。
「ちょっとだけ熱いから気をつけて飲んでね」
メイド長の完璧な所作と計算され尽くされて入れられた紅茶は飲みやすい温度で入れられてるが、いかんせんユーとミーは猫系獣人なので猫舌。
紅茶をフーフーしながらゆっくり飲んで、あまりの美味しさと香りだかさにホワっと笑顔になる。
メイドも含めて執務室にいる全員がホンワカしてしまう。
双子らしく全く同じ動作をしている。
動きまでハモっているので可愛さは倍増。
俺も極上の紅茶を味わう。
ユーとミーの2人の国籍についてだが、彼らのステータスカードには龍の森の所属になってて、俺の弟と妹と表示されるので全世界的に見ても何の問題もないようだ。
俺も確認のために見せてもらってビックリした。
トルベッケトラース通商衛星国でのカツアゲ事件の後に、ユーとミーの2人のステータスカードを見た時は『無所属』になってて、どうしたもんかと心配していたからな。
それ以来見てなかったので今まで気付かなかったし。
ミクリーが言うに……
「奴隷解放されてからホープラーが双子を連れて龍の森に移り住み、さらには弟と妹の家族として取り扱っていたし、ユーとミーの2人もホープラーの弟や妹にしてもらったと信じて一緒に生活していたのでステータスカードの所属や家族欄の表記が変わったのだろう。」
とのこと。
生活に何らかの劇的な変化があり、その新しい生活を続けているとステータスカードの表記が変わる事はままあるらしい。
代表的なのが結婚・離婚・養子縁組等々があるようだ。
初めて知ったよ。
しかしもう一つの問題は少々厄介だ。
アーリンドル王国首都フェリクスにある王立学校は5才から9才迄は初等部。
10才から14才までは中等部。
15才から19才までが高等部。
全部5年間。
初等部と中等部はアーリンドル王国民の子供は通う義務がある。
高等部は財務系官僚教育のための学科とか軍隊の兵站を専門に学ぶ学科等々、専門分野のスペシャリスト育成機関。
学生といえど専門職見習いとして現地で学ぶ事も沢山あるので、その職業に進む人しか通わない。
だけどユーとミーの所属は龍の森なので学校に通う義務はない。
留学生という形で学校に通う事は何の問題もないようだが……そうなるとユーとミーの強さなどの厄介な問題が多数あって大騒動になりかねない。
俺とリッチさんが英才教育し過ぎたせいで武力は正規の近衛騎士団でも隊長クラスの力があるらしい。
魔法は学校で学べる事は何一つないようだ。
ユーとミーに沢山質問したり何度もステータスカードを確認したから間違いないそうだ。
読み書き計算等もツーマンセル教育で専門職バリの知識があり、これも学校で学べる事はないと言われた。
なので学校で完全に浮いてしまう。
教師では敵わないので仕方ない。
だがユーとミーの2人共、人間社会でほぼまともに生活したことがないので……人付き合いの経験が全くないし、詐欺等の特殊犯罪に巻き込まれる可能性が非常に高い。
彼らの所属が龍の森である以上、彼らを利用しようと企む輩は山ほどいるだろう。
うーん、そっち方面の教育は手付かずだったな。
龍の森での生活が中心にあるから、どうしても人間社会の常識等の教育は後回しどころか全くやってこなかった分野の勉強。
俺やリッチさんもこの分野は苦手ってより、人に教えるレベルにいない。
ユーやミー達も双剣や魔法の訓練を楽しんでたから、途中からは教育が片寄ってたという自覚もあるので俺自身反省が必要だろう。
ラーフィーは個人的な意見として学校は人間関係等学べる事は沢山あるし、同期の友人を作る場は学校ぐらいしかないから学校に通って欲しいと思ってる。
だけどもアーリンドル国王としては、大混乱が簡単に予想できるので……とてもじゃないが学校入学は遠慮して欲しいそう。
ミクリーも同意見。
俺も言ってることが理解できるので、ラーフィーに無理強いは出来ない。
そこでミクリーが妥協案を出してきた。
アーリンドル王国首都フェリクスに王立学校があって国中から優等生が集まり国外からの留学生も受け入れている。
ここに入学するのはヤバ過ぎて流石に許可できない。
ヘタすると国際関係まで壊れる可能性がある。
だが実は……市中ではなく王宮でもなく、王城の方に王位継承権をもつ王族子弟専用の私塾がある。
学校に通う前の王族や学校では学べない帝王学等を学ぶための私塾。
ここなら高レベルの教育が受けられるし、早い話『森にケンカ売るようなバカタレは今現在いない』
とのこと。
うーん、ここなら大丈夫そうだな。
友人が王族のみという凄まじい交遊関係になりそう。
だけど私塾での勉強中は周囲にメイドや執事がいて、何らかの異常はすぐに発見して問題に発展する前の芽が出る前に潰せるだろうとのこと。
ユーもミーも友達出来そうとの言葉に少しワクワクしてる。
俺も大丈夫そうなんで許可を出した。
月に20日ほどの私塾なんで龍の森との送り迎えを俺が魔法ですれば日帰り出来るだろう。
最後に……
「俺も13才だから学校の中等部に行こうかな。」
と笑いながら言ったら……
ラーフィーとミクリーは持っていた紅茶カップを置いて両手挙げて
「「マジで勘弁して」」
と降参された。
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