第10話
双子のユーとミーが俺の足にしがみついているのを引きずっては歩けないので二人を両肩に座らせて運ぶ事にした。
いくら3才児の双子といえど軽々と持ち上げて肩に乗せて運ぶ俺を見て周囲の人々はドン引きしてた。
双子が両側から俺の頭に抱きついている。
俺の異常なステータスからすれば砂粒を乗せてるぐらいの感覚だし。
そのまま町の中を歩く。
この国は海に面してるし海洋交易立国の国だから海の魚とかイカ・タコ・貝類などが屋台で焼かれてるのかと思っていたけど……どこにもないな。
ジャリストンほど鼻腔を刺激する香りが漂ってこないし……屋台への興味が薄れたな。
冒険者ギルドへと急ごう。
双子を両肩に乗せて両側から頭に抱きつかれてると、俺の長い耳が周囲から全く見えていないということに気付いたのは、冒険者ギルドに入り買い取り窓口まで行く途中でゴツくてデカイ冒険者に周囲を囲まれて脅されたしばらく後。
揉め事に巻き込まれた後だった。
「よー、優男のにーちゃん、めちゃくちゃ高そうな服着てんな。どっかのボンボンか? ワシはちょっと金欠でな……少し恵んでくんねぇーか?」
「……」
俺はハイエルフに絡んで脅してくるヤツがこのジャスビレンドの世界に存在するとは予想もしてなくて『……え?』って固まっていた。
「おぅ、ビビって声もでねぇーのか。有り金全部置いてくならちょっとは優しく許してやんぞ? いや、その高そうな服も置いてけや」
「「「ギャッハッハ」」」
「うぉぅ、頭が停止してたわ。僕ってもしかして脅迫されてたのかな? えーっと、僕は全く金持ってないし、ケンカなら言い値で買うけどどうする?」
「「「「テメー、ふざけんなよ。表出ろや!」」」」
4人の冒険者に囲まれたまま服を捕まれて外に連れ出される。
4人に囲まれその周囲を沢山の冒険者達が爆笑しながら囃し立てている。
まぁ、ヒョロヒョロの見た目の俺だしね。
みんなで笑って楽しそう。
実は『おー、テンプレきた!』と少しテンション上がってる俺がいる。
4人の冒険者がそれぞれ後ろに下がり背中に背負った大剣を抜いて構えてから大声で叫ぶ。
「「「「舐めやがって、ブッ殺してやる!」」」」
更に周囲を囲む冒険者が増えヤンヤヤンヤと囃し立てている。
楽しいイベントに見えるんだろうな。
俺は両脇にスペースが空いたので双子を下に下ろす。
「さてと……殺しあいでいいのかな?」
俺のハイエルフの長い耳がさらされた瞬間に周囲から音がきえた。
シーンと静まり返る。
遠くにいて通りかかった冒険者達が会話してる小さな声が響き渡る。
「ハイエルフ様?」
「うっそ、エルフじゃないの?」
「いや、間違いないよ。さっき西門に30人以上いる盗賊の『送り狼』を引き渡しにハイエルフ様がきてたよ。」
「マジ?」
「ホントだって。警備隊がさっきから走り回ってるのがそれだよ。」
「あそこにいるのが、そのハイエルフ様なの?」
「間違いないよ。双子の子供を肩に担いで歩いて行ったもん。」
停止していた時間が動き出す。
それから大騒動に発展。
町の領主が部下を引き連れて謝罪にくるし冒険者達はずーっと土下座してるし。
何かよくわからないけど、おばさん達が色紙持ってサインをせがまれるしで災難でしかない。
冒険者ギルドにも入れない。
服屋にも行けない。
ユーとミーはずーっと怯えて震えて、また俺の両足にしがみついている。
何もできなくて余計イライラしてくるわ。
とうとう最後はブチ切れた。
「うるせぇうるせぇ、クソ冒険者ども。そんなに罰が欲しいならくれてやる。」
町中に葛のような蔦をびっしり生やしてやった。
「しばらくはずーっと生えてくるからな。10日ぐらい生えまくるから、ずーーーっと刈ってろクソ冒険者ども。それが僕からの罰だ! もう知らんわこんな町。」
大声で叫んだ後、双子を連れて飛んで龍の森に帰っていく。
町は10日ほど蔦でマヒした。
刈っても刈っても次々と生えてきて馬車も走れない。
家の中は流石に生やさなかったが、冒険者ギルドの内部だけは20日ぐらいは中までびっしりと蔦まみれにしてやった。
冒険者ギルド業務は露天営業となって道行く人々に謝罪し冒険者が総出で蔦を刈り続ける毎日となった。
俺をカツアゲしようとした冒険者チームはまだあの町に住んでる。
冒険者ギルドが彼らに課した罪は町への贖罪。
全ての装備を取り上げられて与えられる仕事は、ドブさらいとゴミ拾いの町内清掃のみ。
宿泊場所は冒険者ギルドの空き部屋。
飯は3食ギルドで食べられるがお金は銅貨1枚とて貰えない。
金がないので逃げることもできない。
町内清掃してると子供に石まで投げられる。
暴力的な考え方は破壊され逆らう事も考えられなくなり、いつもオドオドビクビクして生活してる。
彼らが許される日がくるのかは知らない。
更に町内は蔦が消えると同時期に緑が全て無くなった。
種を植えても生えずに腐る。
土を変えようが栄養剤を使おうが魔法を使おうが一切育たない。
町に元々生えていた草も木も水草も、蔦と共に消滅した。
雑草すら生えない。
『ハイエルフ様の怒り』
と後日言われるようになった都市伝説。
……雑草が生えるようになったのが1年後。
草が生えるようになったのが2年後。
木が生えるようになるまでに3年かかった。
カツアゲ事件から3年もたつと俺は13才。
身長は180センチを越えた。
体つきも少し変わってヒョロヒョロだった体は少し肉もついてガリマッチョぐらいにまで成長。
自分で言うのもなんだが、13才には全く見えない。
ハイエルフはこの後少し身長が伸びて成長が止まり、そのまま何千年も変わる事無く生き続けるらしいし。
一緒に森で暮らすようになったユーとミーの双子も6才になった。
身長も伸びて130センチぐらいはある。
肉付きも俺よりマッチョ系なのは獣人だからだろう。
食事の改善もあるだろうし。
奴隷時代とは比べ物にならないぐらいに、めちゃくちゃ食べて飲んでるからな。
沢山の笑顔で俺を癒す存在なのは3年たっても全く変わらない。
ユーもミーも全力で遊び全力で学んでる。
森での生き方……俺は団体生活になりかなり変化している。
ユーとミーは最初は何をするのも俺にべったり。
半年ぐらいはずーっと引っ付いて生活してた。
それも可愛いので俺は構わないのだか……森での生活に段々慣れてくると子供らしく走り回って、飛び回って色んな物に興味を持って質問してきて学んでる。
龍の森の生物も俺の匂いがするユーとミーは避ける。
森での敵のいない生活に変化が出たのはリッチさんがやってきてから。
洞窟ダンジョンからやってくる友人のリッチが子供好きだったのは僥倖。
最初は物凄く怯えていたが少しずつ慣れてきて、そして餌付けされていった。
ダンジョンからちょこちょことオモチャやお菓子を持ってきて、近付いて馴染んでいく距離感が絶妙だったので双子も意外と早く馴染んだ。
俺がリッチさんと呼んでいるので双子もそう呼んでいる。
リッチさんが便利なのはお土産だけでなく、双子の戦闘訓練に最適な場所を提供してくれたからだ。
ユーとミーでは森の生物に全く歯が立たない。
だけどリッチさんのダンジョンに行けば、ユーとミーのレベルに合わせて最適な敵を用意してもらえる。
ユーとミーは金虎獣人。
戦闘獣人らしく闘いが楽しくて大好きなようだ。
最初の頃は一緒にダンジョンに行っていて
、ユーもミーもスケルトン等のアンデッドを倒しドロップする魔石やアイテムを拾っていたが、俺は拾わないし使い途も売る場所もないので……俺が作製したウエストポーチ型の収納袋に入れて、後でまとめてリッチさんに引き取って貰うようにしているようだ。
1年ぐらい前から2人でリッチさんのダンジョンに勝手に行って帰ってくるようになった。
龍の森の中では闘う相手がいないしな。
俺ほどではないがリッチさんは格闘を教えるのも上手く、ダンジョンで闘いながら指導もしてくれてる。
俺とは流派が違う戦闘スタイルなので勉強になるようだ。
俺がユーとミーに教えてるのは、2人の得意なスピードを生かした双剣スタイル。
今の2人のステータス的に最適な戦闘スタイルだろう。
オーソドックスなショートソードの二刀流だが、リッチさんのスタイルはサーベルの二刀流らしくて剣の使用方法に若干の違いがある。
敵の鎧の関節部分を集中的に切りつけて、敵の行動力を奪ってから仕留めるようで、突きは全然使わないとのこと。
俺とリッチさんの英才教育のおかげもあってメキメキと力をつけている。
魔法も色々と教えてる。
獣人は魔法は使えないと一般的に言われてはいるが、正しく訓練すれば多少は使えるようになる。
エルフ等の魔法特化種族には敵わないが人族のトップクラスぐらいなら余裕。
魔法も俺とリッチさんのツーマンセルでの英才教育。
魔素の溢れる龍の森の中では直ぐに回復できるので、ユーとミーは6才ながらすでに人族のレベルを超えている。
魔法と戦闘のレベルやダンジョンでの戦闘でステータスレベルも上がって、今では龍の森の小型の草食恐竜位なら倒せるだろう。
まぁ、食べもしない草食恐竜を狩るという行為に俺もユーもミーも忌避感があるので闘わせた事もないが。
……そういえば、双子の国籍やら身分証やら学校教育やらをどうしようかと悩んでいる。
リッチさんに相談したら俺に聞かれてもと困りながら、そういうのに一番詳しいだろう王様にでも聞けば? となげやりに言われて……
王様の知り合いは1人しかいないし、今日はアーリンドル王国のラーフィー王に聞いてみることにする。
って事でラーフィー王かミクリー宰相がいるであろうアーリンドル王国の首都フェリクスへ双子を連れて転移魔法で移動する。
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