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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

十章 新たなる旅立ち

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衝撃の再会

 バルドミールとカリオスをボロボロにしてから次の日。
 俺達はまだアルメストを出発していなかった。
 滞在したのは食料や道具の補給の他に、扇風機の試作品を作るためだった。効率良く風を発生させる羽根車の角度調整は難しいし、やはり提案した以上はちゃんとした物が出来上がるのを見届けたかったからな。
 魔法陣による回転機構なので、本体が軽すぎて扇風機自体が風圧で倒れたりするアクシデントはあったが、ついに前世とほぼ変わらない扇風機が完成した。

「いやぁ……凄い魔道具が出来たもんだな。あの貴族が売り出した物と比べて魔力の消耗が半分以下だぜ。こりゃあ間違いなく売れる」
「水の魔法陣を使って涼しくしているのだろうが、風で熱を逃がすのが重要だからな。無駄を省き、コストを削減して実用性重視にしたらこれくらいは出来るだろう」
「全く、こんな技術を考え付くなんて流石だぜ旦那。それで、こいつを提供してくれた報酬だが……」
「実は報酬についてちょっと提案があるんだ。金より欲しい物があってさ」

 俺達はすぐに旅立つから、この魔道具の売れ行きを知る事ができないので、エリュシオンに居た時にやっていた出来高による報酬が無理なのだ。なので、今回はお金ではなく物を欲した。
 報酬の代わりに頼んだのは、俺が生まれた屋敷である。
 近い内にドリアヌス家の経済は破綻すると思うので、金を工面しようとするだろう。そこにガルガン商会が話を持ちかけ、あの屋敷を買い取ってもらうわけだ。
 どれだけ値切れるかはガッドの交渉次第だが、立地条件や交通の不便さを考えるとそこまで値は高くなるまい。
 ついでにバリオの事も話し、一度彼と会って話をしていてほしいと言っておいた。彼ならほぼ無償で館を管理してくれるだろうから、ガッドの負担も少ないだろうし。
 俺の報酬内容を聞いたガッドは、胸を張って頷いてくれた。

「任せといてくれ。旦那の思い出の館なら絶対手に入れてやるさ。それで、そのバリオって爺さんに屋敷の管理を任せればいいのか?」
「ああそうだ。結構な年齢だから、時折でもいいから様子見もお願いしたい」
「わかった。正直、売り上げを考えると旦那の報酬が少ないと思うぞ。他に何かないのか?」
「旅に使う調味料や道具でもくれよ。後はまあ……何かあった時の貸しってことで」
「相変わらず欲が無いな」

 苦笑しつつガッドはすぐに道具の手配をしてくれた。明日には出発する予定なので、それまでに用意してくれるそうだ。
 前世を懐かしみつつ扇風機の最終調整をしていると、町を散策していた弟子達が帰ってきて完成した扇風機を見て驚いていた。レウスに扇風機の定番である『我々は宇宙人だ』ネタをやらせていると、俺達を眺めていたガッドが満足気に頷きながら口元を緩ませていた。

「それにしても、旦那達は本当にでかくなったなぁ。ディー達がどれだけ驚くか見てみたかったぜ」
「私達もお姉ちゃんのお子さんを見るのが楽しみです」
「そうだな、凄く可愛いー……と、いけねえ。喋ったらノエルちゃんに怒られちまうから言えねえや。すまねえな」
「そこは行ってからの楽しみってわけだな。ここからどれくらいかかるんだ?」
「馬車で三日ってところだな。ほとんど一本道だし、迷う事は無いと思うぞ」

 ガッドはノエル達の住む町まで何度も通っているので、地図を出してもらい道を教えてもらった。道中に分かれ道は少なく、看板もあるので迷いはしないそうだが一応な。

「ところで、その町の治安はどうなのでしょうか?」
「治安は良い方だな。ちなみに町の名前はオーラムと言うんだが、種族間の溝はほとんどないし、過ごしやすい町だと思うぜ。そうそう、旦那達が卒業する時期が近づく度にディー達は張り切っていたな。やっとシリウス様に会えるって、何度も言っていたぜ」
「やれやれ、旅立とうとすると文句を言われそうだな。アドロードへ行くのはいつになるのやら……」
「シリウス様、私達についてはそこまで焦らなくても構いませんよ」
「そうだよ。ノエル姉とディー兄に色々と報告したいしさ」

 別に急ぐ旅じゃないからしばらく滞在するのはいいけど、ノエルは絶対に永住してくれと言うだろうな。隣に家を建てて住んでくださいよう! ……とかな。


 そんなこんなで町での用事と補給は終わり、俺達は次の日にはアルメストを出発した。
 俺達の馬車の後ろには、ガルガン商会の馬車が一台続いており、それにはオーラムの町にあるガルガン商会の支店へ送る商品が載せられていた。
 俺達がどうして別の馬車と走っているのかと問われれば、ガルガン商会から護衛の依頼を受けたからである。あの馬車にはディー達へ届ける食材や調味料も入っているので、何かあればしっかりと守らなければなるまい。
 いつもならガッドがディー達に荷物を届けているので、俺達と一緒に行く予定だったのだが、どうしても外せない用事があるので、今回はガッドから紹介された丁稚が御者台に座って馬車を動かしていた。
 短めの赤髪碧眼の男の子で、子供っぽさが少し目立つが、誠実でレウス並に真っ直ぐそうな少年だった。俺達の前に現れた時は、大きな声ではっきりと自己紹介してくれたものである。

「初めまして! 俺はガッドさんの元で修行中のクリスフィートと言います。クリスと気軽に呼んで下さい」
「こいつは二年前に俺が奴隷市場で発見した奴で、ザックと同じく俺の弟子の一人だ。まだ子供だが将来が期待される奴でな、オーラムまでの間でいいから一緒に連れて行ってくれないか?」
「連れて行くのは構わないが、旅に出して大丈夫なのか?」
「こいつは何度か俺と一緒にオーラムへ行っている。それに冒険者の知識も教えてあるし、馬の扱いもばっちりだから、旦那についていくだけなら問題は無いさ」
「足は引っ張りませんので、よろしくお願いしますシリウスさん」

 とまあ、護衛としての依頼料も貰い彼は俺達の旅に同行しているわけだ。年齢は十二歳と俺よりたった二つ下だが、ガッドの言葉通り馬車の扱いが上手いので、ホクトが速度を出さなければ大丈夫そうだ。
 出発直前にこっそりと教えてもらったが、クリスを同行させたのは俺達の凄さを直に見せてやってほしかったからだそうだ。ガッドの弟子であるザックが大きく成長したのは、俺と関わったからと思っているそうで、クリスも是非そうなってもらおうと思ったわけだ。俺はただ技術を提供しただけなんだが、それを上手く扱ったのもまた成長なのかもしれん。
 そんなわけでついて来ているクリスは御者台に座って馬車を動かしているが、彼は唖然とした表情でこちらを眺めていた。

「あの……聞いてもよろしいですか?」
「ん? どうしたのクリス君」
「皆さんはどうして馬車に乗らずに、その……」

 御者台の近くを走っていたリースに、クリスは思わず話しかけて疑問をぶつけていた。まあクリスが疑問に思う気持ちはわからなくもない。エミリアは馬車で休んでいるが御者台に座っておらず、リースは馬車を降りて走っているのだから。
 更に俺とレウスは、少し離れた位置で組み手をしながら馬車を追いかけているのだ。

「もちろん訓練だよ。馬車に乗ってばかりだと体が鈍っちゃうし」
「それはわかるのですが、ここまでやるものなのでしょうか?」

 普通の人からすれば、俺達のやっている事は異常にしか映るまい。外に出れば魔物や盗賊にいつ襲われるかわからないので、本来なら体力の消耗を避けるべきなのだ。
 だが俺達はそこらの魔物や盗賊に負けない強さをもっているし、敵の気配に敏感なホクトが居る。いざという時に備えて確実に一人は休ませているので、軍隊でも来なければ対処は可能であろう。
 ちなみに俺達の馬車はホクトが状況を察しながら勝手に走ってくれるので、御者台に座る必要は無い。

「そうだねぇ、クリス君の気持ちはわかるよ。私も数年前ならそう思っていたと思う」
「で、ですよね! 走っているリースさんはわからなくもないんですけど、あそこで戦っているお二人は本当に訓練なんですか? どう見ても怪我じゃ済まなさそうな勢いなんですけど」

 時折馬車に置いていかれつつも、俺はレウスの攻撃を捌きながら前へ進んでいる。レウスの放った拳が地を砕き、俺が合気の要領で投げれば、レウスは山なりを描いて馬車の頭上を飛んでいるのだ。傍目から見れば、訓練と言われても疑問を浮かべるだろうが……。

「あれはまだ軽い方だね。本気で戦っていたら、夢中になって馬車に置いていかれちゃうから」
「あれで軽い!? ガッドさんが言っていたのは冗談じゃなかったんだ……」
「何て言っていたの?」
「シリウスさん達と関わるなら、今までの常識を捨てろと言われました。確かに常識だとか言っているのが馬鹿らしくなります」

 俺達の行動を受け入れ感心している様子から、クリスは中々豪胆な少年のようだ。ガッドが目をつけたのもわからなくもない。
 そのまま休憩する者を交代しながら馬車は進み、夕方になったところで野営の準備に入った。クリスは自分の食事は自分で用意すると言ったが、一人だけ違うのを食べるのも仲間外れみたいで嫌なので、多めに作るから一緒に食べようと誘った。俺達が作る食事に興味があったのか、クリスは素直に頷いて馬の世話を終わらせようと自分の馬車へ戻った。
 ホクトに周辺の見張りを、そしてエミリアとレウスには食材確保を命じ、残ったリースは俺の補助を頼んで作業を進めていると、馬の世話を終えたクリスが、料理の材料を切っている俺に近づいてきて手伝いを申し出てきた。

「あの、何かやる事はありますか?」
「そうだな、あの薪にかけている飯盒を見ててくれないか?」
「わかりました。えーと、中から沸騰する音が聞こえたらいいんですよね?」

 この飯盒はガルガン商会が売り出した道具の一つで、米の味を知った人達へ密かに売れているらしい。
 先程薪に仕掛けておいた飯盒を見張っているように頼むと、彼は棒切れを持って横で待機していた。一応炊き上がりについて細かい説明をしておいたので大丈夫と思う。

「そいつから水が零れ始めたら教えてくれ。さて、リースの方はどうだ?」
「野菜は切り終わりました。後はエミリアとレウスが帰ってからですね」

 ちなみに野菜は前日のアルメストで買った物だが、鮮度はそれなりに保たれている。
 これは馬車に内蔵してある冷蔵庫に入れていたからだ。魔法陣によって一定の温度を保つだけで昔の冷蔵庫と全く同じだが、野菜とか冷たい物を保存するには十分な性能を持っている。冷やす魔法陣の魔力は大気中から自動的に吸収するようにしてあるので、稼働率が高くなる暑い場所でない限りは魔力を注ぐ必要が無い。
 飯盒が水を噴き、御飯が炊き上がった頃にエミリアとレウスは帰ってきた。

「ただいま兄貴。変なイノシシみたいな魔物が居たから、美味そうな部分だけ剥いで来たよ」
「ただいま戻りました。香草と木の実が幾つかに、そして唐辛子が見つかったので採ってきました」

 前世で見た唐辛子とは明らかに違う緑色の種子だが、俺が勝手にそう呼んでいるだけだ。しかし辛味は間違いなく唐辛子そのもので、調べてみるとこの世界における薬味の一種らしい。こいつは別の料理に使うので置いておいて、まずは狩って来たブロック肉を解体して串に差し、薪に当てて焼くようにレウスへ命令しておいた。

「凄いな、携帯食を一切使わないんですね」
「携帯食は、いざという時の為にとっておかないとな。さて、一気に炒めるとしますかね」

 火が通りにくい材料を鍋に入れ、俺は炒めるための準備を始めた。炒めると言ったクリスは俺と薪を交互に見て首を傾げていた。

「あの、薪は串肉で埋まっているんですけど、どうやって炒めるのですか?」
「それ用の魔道具があるのさ。エミリア、あれを」
「はい」

 エミリアが馬車から取って来た箱型の物体を受け取り、俺はその上に鍋を乗せてから魔力を流した。ほんの数秒であるが流し終わるとそれは高熱を発して、鍋から物が焼ける匂いが漂ってきた。

「へっ!? もしかしてその魔道具は!?」
「ああ、携帯コンロだ。火に直接かけるより安定した熱を出すことが出来るんだ」
「うう……こんな高性能で高価な魔道具が次々と。ガッドさん、この人達は一体何者なんですか……」

 高熱を発する魔法陣を使えば簡単に出来そうであるが、今までの魔法陣、特にこんな風に料理に使うには魔力の消耗が激しくて、常に魔力を流し続けていないとコンロとして使えなかった。
 だが魔力を吸収する魔石に連結し、同火力を保ちながら魔力消費を抑えた魔法陣を描くことにより、携帯コンロとして実用に耐えうる品を作り上げたのである。欠点は魔石を使うので値段が高い点だな。
 そろそろ精神ダメージで参りそうなクリスは放っておいて、料理の仕上げに入った。

「次に飯盒のご飯をこいつに入れて……っと。ここから一気に仕上げるぞ」

 俺が作ろうとしているのは炒飯である。別に飯盒で炊いた御飯をそのまま食べてよかったのだが、どうせなら一工夫しようと思ったのだ。
 御飯に香辛料を振りかけてから、野菜と串肉の余った部分の肉も一緒に炒めて炒飯の完成だ。

「兄貴! 串肉焼けたぞ」
「卵スープも完成です」
「人数分の食器も用意しました」

 本日のメニューは野菜たっぷりの炒飯に、卵スープと大量の串肉だ。結構な量だが、弟子達なら普通に食べきってしまうので問題あるまい。
 炒飯を皿に盛り、スープが各人に行き渡ったところで夕御飯となった。

「うわ……美味しい。まさか外でこんな食事が出来るなんて思ってませんでしたよ」
「串肉は自由に取って食べるといい。明日も移動だから、たっぷり食べておけよ」
「お代わり兄貴!」
「シリウスさん、炒飯はまだ……」
「鍋に残っているから好きなだけ食べなさい。ちゃんと分けるんだぞ」

 我が家の食いしん坊二人が、残った炒飯を全部掻っ攫っていった。米粒一つも残っていないし、作る側として非常に満足できる食べっぷりだ。欠点はエンゲル係数が高いくらいか。
 続いてホクトの食事だ。ホクトは大気中の魔力を吸収するだけで生きていけるので食事をしなくても大丈夫なのだが、味覚や食感は楽しめるので時折だが物を食べさせている。その中でも辛い物が好きらしく、口の中で感じるピリピリした感覚が堪らないらしい。
 というわけで、先程エミリアが採取してきた唐辛子をふんだんに使った肉を焼き上げ、超が付くほどの激辛ステーキが完成し、ホクトを呼ぶと尻尾を振りながらやってきた。大きく口を開けるホクトにステーキを食べさせてやると、辛味が堪らないのか喉を鳴らしながら肉を噛み締めていた。
 余談であるが、食いしん坊の二人が食べてみたいと言い出したので、そのステーキを小さく切って食べさせたのだが……。

「ぎゃああぁぁっ!」
「うーん……辛くて肉の味がほとんど感じられないけど、これはこれで悪くないかな?」

 レウスが口を押さえて転がり回る中、リースは水を飲みながら冷静に分析しているのである。
 リースの恐ろしさを垣間見た瞬間であった。

 次の日、俺達はいつも通り訓練しながら移動していたが、今日はクリスも訓練に参加していた。今朝になって彼は自分も鍛えて欲しいと言い出したからである。
 商人だからそこまで鍛える必要はないと思うのだが、クリスのやる気に水を差すのもなんだし、熱意があるならという事で許可した。
 と言っても、移動している日中は走らせる程度しか出来ない。クリスの乗っていた馬車の操作をエミリア達に任せ、ひたすら走らせ続けた。

「どうした、まだ走り出して一時間も経っていないのに顎が上がっているぞ。どんな時でも前を見ることを忘れるな!」
「はぁ……はぁ……はい!」

 隣で追従しながら叱咤するが、クリスは一切弱音を吐く事もなく走り続ける。何が彼を駆り立てるかわからないが、真剣に取り組む以上は俺も真剣に対応するのが礼儀だろう。
 疲れたら俺達の馬車に回収して『再生活性』で回復させ、動けるようになったらまた走らせる。その日の野営まで何度もそれを繰り返し、クリスの精神はいい具合に削れていた。
 そしてようやく落ち着いて休めると思っていたクリスに俺は追い討ちをかける。

「おいおい、今日はまだ終わってないぞ? 今から対人戦における基礎を教えようと思ったんだが……必要ないか?」
「っ!? ……お、お願いします!」

 一瞬心が折れかけたようだが、何とか奮い立たせて訓練は続けられた。オーラムまで二日もないし、後に思い出して一人で鍛えられるように詰めるだけ詰めておかねばなるまい。
 彼は剣を持っていたので、剛破一刀流を元に俺なりの動きを加えた型を教えてみた。力だけでなく、剣は技術で振る事を体に覚えこませるために何度も指摘しながら素振りを繰り返させた。
 剣の型を覚えさせ、これを毎日繰り返すようにと伝えてから今日の訓練は終わった。クリスはその場に崩れ落ちるように倒れたが、満足気にしている様子から続けるのに苦を感じなさそうである。
 それにしてもクリスは真っ直ぐな奴だと思う。その真っ直ぐな部分はレウスと似ているが、ちゃんと違いがあるのが面白い。簡単に言い表すなら、熱血真っ直ぐと天然真っ直ぐと言ったところかね。

 訓練が終わったのを見て弟子達も集まり、後の処置をリースに任せて食事の準備をしようと思ったが、クリスには気になる点があったので聞いておく事にした。

「なあクリス、どうしてお前は強くなりたいんだ? 商人の弟子なら強くなるより、商売の勉強をするべきだと思うが?」
「もちろんそれもやっています。ですが、いざと言う時に力が無くて、何も出来ないまま終わる悔しさをもう二度と味わいたくないからです」
「お前は奴隷市場で発見したと聞いたが、やはり元は奴隷だったというわけか」
「はい。ガッドさんに拾ってもらえなかったら、俺はどうなっていたかわからないです」

 奴隷という事は過去になにか辛い事があったに違いない。だが俺はこいつの保護者でもないし、今はただの連れだ。過去を掘り返すのは止めた方がいいな。

「そうか。まあ……こちらはやる気がわかれば十分だ。今はオーラムに着くまで鍛えてやるだけだ」
「ありがとうございます。そして短い間ですがよろしくお願いします、先生!」
「はあ?」

 まさか先生と呼ばれるとは思わなかった。というか、お前と俺は二歳しか違わないんだが。

「何で先生なんだよ。お前は俺の正式な弟子じゃないのにそう呼ぶのはおかしい。呼ぶならガッドの方だろ?」
「ガッドさんは兄貴分みたいなものですから。それにシリウスさんは凄く冷静でこう……達人の風格を持っていますし、先生と呼ぶに相応しい人です」
「あ、それわかるぞクリス! 兄貴って俺とあまり変わらないのに、何かすげぇ大人なんだよな」
「私もそう思う。会って間もないのに、シリウスさんってお父さんみたいだなって何度も思ったもの。近くに居ると凄く安心するんだよね」
「出会って僅か二日の相手に、自然と先生と呼ばせるなんて。これがシリウス様の実力です!」

 何か妙に褒められているが、俺の中身はお前達が爺ちゃんと呼んでもおかしくない年齢だから当然だろ。唯一それを知っているホクトは、仲間ですねと言わんばかりに尻尾を振って俺に擦り寄ってくるのだった。
 それから弟子達は俺の素晴らしい点を語り始めたので、放っておいて食事の準備を始めることにした。ああなると中々止まらないので、気にせず今日の献立を考える方が有意義だと悟っているからだ。
 しばらく話し合っていたが、結局クリスは俺を先生と呼ぶことにしたそうだ。

「俺が勝手に呼ぶだけですから気にしないでください先生」
「ああうん、もう好きにしてくれ」

 ちなみに今日の晩御飯は、採取してきた野草や肉を炒め、麺を投入してから調味料で味付けした焼きそばにしてみた。この絶妙なソースの味を作るのに苦労したが、弟子達には好評で今日も綺麗に食べ尽くされた。弟子達に食べ物を残すという言葉は存在しない。
 それにしても……少なくとも十人前は作ったのに、こいつらの胃は一体どうなっているのだろうか? 何年経っても解けない謎である。


 そんな風に旅を続け、アルメストを出て三日目……俺達はようやくノエルとディー達が住むオーラムへと着いた。
 オーラムはエリュシオンと比べて半分も無い町だが、活気が溢れる町であった。あちこちに冒険者らしき人を見かけるし、新しい家屋が建築中だったり、外の防壁を更に高く堅くしようとする作業が進められている。

 現時刻は夕方前で、まずはクリスをガルガン商会の支店に連れて行ってから依頼を済ませた。ついでに馬車も支店へ預かってもらい、しっかりと管理するように頼んでおく。

「ありがとうございました先生。たった二日だけでしたが、教わった事をしっかりと続けていこうと思います」
「俺はもう見てやれないけど、教えた内容を続けていればきっと強くなれる。頑張るんだぞ」
「はい!」

 一緒に居たのは僅か三日だが、中々見所のあったクリスと別れ、俺達は夜の帳が下り始めている町中を歩いた。最初は町の宿に泊まって朝にゆっくりと向かう手も考えたが、そんな事をしたら絶対にノエルは切れるだろう。何で家に泊まらなかったんですかーっ! と叫びながら怒り狂うだろうな。
 ホクトの珍しさから周囲の視線を集めていたが、俺達は気にせずディーが建てたという食堂を探して歩き回る。何度も文通していたので店名はわかっても、流石に地図までは書いてなかったので、周囲の人達から食堂の位置を聞いてみたが……。

「ああ、その店をこの町で知らない奴はいないな。店ならその先を曲がった先だよ」
「あそこは町の名物店ね。あなた達もあの料理を食べに来た口かしら? 店ならあの道を左ね」
「料理もいいけど、あそこのサンドイッチが美味いんだ。ほら、あそこに見えるのがそうだよ」

 町の人達の反応からして、ディーとノエルは立派にやれているようだ。最後に店を指してくれた人にお礼を言い、俺達は遂にノエルとディーの店へ辿り着いた。


『エリナ食堂』


 何だろう。事前に知っていたとはいえ、看板を直に見ると込み上げてくるものがある。これほどあいつらに相応しい店名は他に無いと思うのだ。
 エミリアとレウスも同じように思ったのか、穏やかな顔付きで店の看板を見上げていた。

「……これがお姉ちゃんとディーさんの夢の形なんですね」
「へへ……何でだろう。何か凄く嬉しいよ」
「ああ、俺もだ。それより中に入ろう。ディーがどれだけ腕を上げたか楽しみだな」

 残念ながらホクトを食堂に入れるわけにいかないので、外で待機を命じておいた。何かあったら呼んでくださいとばかりに吼え、人目に付き辛い建物の陰に寝転がった。
 ようやく二人に再会するわけだが、エリュシオンへ居た頃に受け取った手紙の内容にはこのような文が含まれていた。

『成長した私を見て驚いてくださいね!』

 どれほど成長したのか楽しみにしつつ、俺達はエリナ食堂へと足を踏み入れるのだった。


「おーい、カレーを二つ頼むよ!」
「追加のエリナサンド三つくれ!」
「こっちはシチュー二人前な!」

 エリナ食堂の内装は、幾つかの丸テーブルと椅子が並ぶオーソドックスな食堂だった。一応カウンター席も用意されていて、まさに大衆向けといった食堂に仕上がっていた。
 しかし夕方のピーク時なのか、店内は活気に溢れるどころか満席状態であった。空いている席を探していると、ウエイトレスと思われる女性が俺達を発見して声を掛けてきた。

「ごめんなさい、ただ今店内は満席なんです。お客さんは四人ですし、テーブルが一つ空くまで壁側の席で待っててくれますか?」

 ノエルと同じ赤い髪にネコ耳……もしかして彼女はノエルの妹だろうか? どことなくノエルの面影があるし、手紙で妹にウエイトレスをやってもらっていると書いてあったしな。
 何にしろ満席なら待つしかあるまい。彼女の言葉通り、壁際に置かれた椅子に俺達は並んで座った。待っている人用に椅子を用意しておくとは、俺が話した気配りというのをしっかり実践しているようだな。

「なあ兄貴、どうして兄貴が来たって言わないんだ? 知らないあの人ならともかく、厨房に入ればディー兄がいるだろ?」
「どうせなら自然の状態による接客と料理の味を見てみようと思ってな。それに今は忙しそうだし、店が落ち着いてからでもいいだろう?」

 住民や冒険者がひしめく店内を見回したが、ノエルの姿は見当たらなかった。ウエイトレスをしているのは俺達を応対してくれた女性一人だけで、その彼女は忙しそうに店内を動き回っていた。

「……お姉ちゃんがいませんね。こんなに忙しそうなのに、どこへ行ったのでしょうか?」
「あの人、凄く忙しそうね」
「ふむ……仕方あるまい。やはりここはー……」
「おい! どうなってんだこの店は!」

 俺達も手伝いに入ろうかと思って腰を上げた瞬間、テーブルを囲んでいた冒険者の一団が大きな声を出して注目を集めていた。
 すぐにウエイトレスの子が近づいて事情を伺いに行くが、冒険者達は遠慮無しに彼女に怒りをぶつけていた。

「美味いって聞いて来てみれば、この店はこんな料理を出すのかよ! 辛くて食べられた物じゃねえぞこれは!」
「そうだそうだ! こんな料理、誰も食べられねえだろ!」

 冒険者達が文句を言っている料理はカレーらしい。相手は集団で威圧しているが、ウエイトレスの子はテーブルの料理を一瞥し、冷静に淡々と冒険者達に告げていた。

「お客様、私は注文を受ける前にこの料理は辛いと説明しています。それに辛さを調整出来ると伝えたところ、笑いながら最高に辛くしてくれと仰っていたではありませんか」

 テーブルにはエールと思われる酒類が並んでいるので、酔った勢いで最高の辛さを注文したと思われる。事前に説明しているのに頼んだのだから、これはこいつらの自業自得であって文句を付けるのは筋違いだ。彼女の言い分は正しいのだが……冒険者相手だとそうはいかないだろうな。
 案の定、男達の目つきは鋭くなり、今にも彼女に襲い掛からんと席を立ち始めていた。

「うるせえな、男なら挑戦したいと思うもんだろうが。とにかくこんな料理は食べられねえから下げてくれよ。もちろん、金は無しだよな?」
「注文した上に、一口食べた状態では無理ですね。でしたら、口直しに他の料理を頼まれてはどうですか? デザートでしたらショートケーキがお勧めですよ」
「ふざけるな! デザートだとか言って馬鹿にしやがって、おいお前等、この店をー……」
「待ちなさい!」

 あまりにアホらしいクレームに、レウスを派遣しようかと思ったその時だ。
 大きな声が店内に響き渡り、何事かと冒険者達が見回す中……店の奥からそれはゆっくりと姿を現したのである。まるで世界タイトルのチャンピオンみたいに店内を威風堂々と歩き、冒険者達に前に立ってからビシッと音が出る勢いで相手を指差した。

「私の可愛いノキアちゃんに文句を言う奴はどこのどいつですか?」
「いいぞーっ! やっちまいな!」
「旦那の料理を馬鹿にする奴なんか懲らしめてやれ!」

 屋敷に居た頃と同じメイド服に身を包み、何か魔法のステッキみたいな小道具を持つ彼女こそ、俺達が会いたかったノエル本人であった。
 それにしても何だこの状況は? 住民から慕われているのは良いが、まるで何かのショーみたいな空気に俺達は声をかけるのを憚られ、呆然とその光景を眺める事しか出来なかった。

「な、何だお前は?」
「私ですか? 私はその料理を作った人の妻ですよ」
「妻より本人が出て来いよ! こんな辛い料理なんて不味くて食えたもんじゃねえよ!」
「ほほう?」

 ノエルの目が細められ、彼女の魔力が高まっていくのを感じとった。
 視線を横にずらせば、ノキアと呼ばれたウエイトレスは頭を抱えて溜息を吐いていた。どうやら日常茶飯事の光景らしい。
 改めて彼女を見てみると、五年前に比べて髪は伸びているし、子供を産んだせいもあって母親らしい大人びた顔つきになっていた。手紙に書いてあった通り、彼女は大きく成長していたようである。
 ……おかしな方向にだが。

「私の旦那さんが作った物に文句を言うどころか、デザートを軽んじる始末。そして何より、家に食べに来たお客さんの邪魔をするなんて、エリナ食堂の看板娘である私が許しませんよ!」
「何が看板娘だ! ふざけているんじゃねえ!」
「貴方達の傲慢は神が許しても私が許しません。騒げばそれだけ周りのお客さんに迷惑がかかるんですから。ほら、周りを見てみなさい。皆さんが困った顔をー……」

 ……目が合った。
 そう、彼女と目が合ってしまったのである。

「…………ち」
「ち?」
「違うんですよぉ!? こ、これはちょっと調子に乗ったと言いますか、面白おかしく食事を楽しんでいただこうとキャラを作っただけで、本当の私じゃああぁぁ…………」

 大きく叫びながらノエルは店の奥へ全力で逃げ出すのだった。
 あまりの逃げっぷりに周囲は呆然としていたが、俺はレウスの肩を叩いてゴミ掃除を頼んだ。頷いたレウスは未だ呆然としている男達に近づいて顔面を掴み、開いている窓から外へと放り投げた。もちろん抵抗してくる奴もいたが、レウスの方が力も技術も優れていたので、全員あっさりと外に放られ、食事代の回収も兼ねてレウスもそれに続いた。ホクトの鳴き声も聞こえたので、後は任せておいて大丈夫だろう。
 そして俺は手を叩いて注目を集め、ノキアに手を向けて後の処置を任せた。

「あ……えーと、皆さんは引き続き食事を続けてください」

 客も慣れているのか、その言葉で喧騒を取り戻していた。しかし忙しい状況は変わらないので、俺達は互いを見合って頷いた。

「俺は厨房に入るから、エミリアとリースはここを頼む」
「はい、お任せください」
「ウエイトレスは初めてだけど、頑張ってみます」

 エミリア達がノキアに手伝いを申し出ているのを確認し、俺は厨房へと足を向けた。
 厨房ではディーともう一人、ネコ耳の男性が所狭しと動き回っている修羅場と化していた。壁にあったエプロンを借りて、厨房に足を踏み入れたところでネコ耳の男性が俺に気付いた。
 そういえばディーの手紙で弟子が一人できたと書いてあった。名前は確かアラドだったかな?

「あ、すいませんお客さん。ここは厨房ですので、勝手に入られると困ります」
「いえ、俺は手伝いに来たんです」
「手伝いって、そもそも君は一体誰なんー……」
「シリウス様!?」

 そこでディーが俺の存在に気付いて振り返った。五年ぶりに見るディーの目は以前より鋭くなっていて、まさしく職人の顔つきになっていた。料理人だというのに、体全体の筋肉は変わるどころか増している気がする。それだけ過酷なようだが辛そうに見えないので、充実しているようでなによりだ。
 相変わらずこちらに向ける目は睨んでいるように見えるが、微妙に口元が緩んでいるので喜んでいるのはわかる。

「久しぶりディー。積もる話はあるだろうが、今はこの状況を乗り越えてからにしよう」
「ですがシリウス様……いえ、よろしくお願いします」

 俺が引かないと理解したのだろう。更に状況も悪いので、ディーは素直に助力を受け入れてくれた。

 厨房とフロアを繋ぐ吹き抜けの台に料理名が書かれた木の札が置かれているので、これが注文票だと思われる。
 すぐさまメニュー表を確認し、必要な材料を揃えて卵を割っていると、アラドは俺を指差しながら声を荒げていた。

「て、ちょっとディーさん、この人は一体誰ですか! 勝手に料理を作らせていいんですか!?」
「この人なら大丈夫だアラド。お前はお前の仕事をこなせ」
「は、はい!」

 その一言でアラドは仕事を再開した。どうやら中々の師弟関係を築けているらしく、命令には忠実に従うようだ。しかし完全に納得はできていないようで、アラドはこちらの様子を何度も確認していたが、俺の野菜を切る手際を見て感心するように唸っていた。

「凄いな、俺より早い」
「当たり前だ。この御方こそ、俺の主人であるシリウス様だぞ」
「えっ、この人があのシリウス様!?」

 俺がディーの主人だと知ると、アラドの表情は疑問から憧れへと変わり目を輝かせていた。ディーは俺をどんな風に説明しているのだろうか?
 彼は何かそわそわしている様子で、先程以上にこちらへと視線を向けるようになった。

「アラド。気持ちはわかるが、まずは手を動かせ」
「い、いけね! すいませんでした」
「下ごしらえは任せろ。お前達はとにかく仕上げていくんだ」
「「はい」」

 いくら俺が教えたレシピだろうが、ディーが出す味まで再現はできない。なので俺は完全にフォローに回ることにした。
 野菜や肉を切り、鍋やフライパンの前に立つ二人の横へ必要な物を邪魔にならないように置いていく。それにより厨房を動き回っていた二人の動きは縮小され、調理全体の速度は格段に上昇した。
 しばらくして余裕が出来てきたのか、ディーはフライパンを振りながらアラドに声をかけていた。

「わかるだろう? 下ごしらえも極めればこんなにも楽になるんだ」
「はい! 流石はディーさんの師匠ー……あ、どうも!」

 アラドの横へ野菜炒め用の肉を置き、出来上がった料理を店内に続く台へと乗せていく。
 そこから店内の様子を確認したが、エミリアが無類の活躍を見せてスムーズに回っているようだ。エリュシオンの宿『止まり木』で手伝いをした経験を遺憾無く発揮しているようだな。
 リースも戸惑いつつも注文をとっていて、客達は突然現れた銀髪と青髪の女の子に色めき立ち、上機嫌で追加注文をしていた。ちなみにセクハラしてくる相手には、二人と同じくウエイターをしているレウスが睨んで退散させている。
 向こうは大丈夫そうなので、俺は再び調理班のフォローに回った。


「あっれー? シリウス様、いつの間にここへ?」

 しばらくして客足が途絶え始めた頃、何食わぬ顔で厨房に入ってきたノエルが、大げさなリアクションで驚いていた。

「……さっきな。お前こそ一体何があった?」
「嫌ですねシリウス様。従者と主による感動の再会なのに、何でそんなに淡白なんですか!」

 この人妻……さっきの出来事を無かった事にしようとしている。
 まあいい。その辺は後でゆっくり話すとしよう。

「積もる話は店仕舞いをしてからだ。ここは大丈夫だから、お客様の相手をしていなさい」
「はーい。あなた、行ってきますね」
「ああ」

 すぐそこなのにわざわざ声を掛け合うとは、夫婦仲の方は変わらずのようだ。厨房の方も落ち着きを見せ始めているので、ディーの許可を貰って賄いを作っていると、店内からの声が聞こえてきた。

「エミちゃんとレウ君久しぶりーっ! 会いたかったよぉ!」
「俺も会いたかったぜノエル姉!」
「うんうん、こんなにも大きく育っちゃって。あれ、もしかして貴方がリースちゃん? 凄いね、髪綺麗だね」
「えっ!? え、えーと……初めましてノエルさん。リースと言います」
「こちらこそ、私はノエルよ。お姉ちゃんって呼んでもかまわないからね」
「お姉ちゃん! 仕事中だから後にして!」
「レウスもいい加減にしなさい!」
「「……はい」」

 ここからは見えないが、エミリアとノキアに怒られて落ち込んでいる二人の姿が目に浮かぶ。そういえば、二人はよく悪ふざけをして母さんに怒られていたな。
 この辺りは本当に変わっていない。まだ碌に再会の挨拶もしていないのに、屋敷に居た頃と全く同じ空気を感じる。
 自然と笑みが浮かんだ俺は、上機嫌のまま鍋の煮え具合を確認するのだった。


 そして少し早いが店仕舞いとし、店内の中央に集まって俺が作った賄い……鍋を囲んで改めて再会の挨拶となった。
 人数的には俺達四人と、ディーとノエル一家のアラドとノキアの大所帯である。そしてノエルの背中に隠れてこちらを窺っている小さな女の子がいた。
 ふむ、つまりこの女の子が……。

「ふふー、気付いちゃいましたシリウス様? 色々話したい事がありますけど、まずはこの子を紹介させてください」
「ああ、構わないぞ。ぜひ紹介してほしい」
「はい! この子こそ、私達の宝物であるノワールちゃんですよ。ほら、ノワールちゃん挨拶は?」
「あの……わ、私はノワール……です」

 ノエル譲りの赤髪とネコ耳の可愛らしい女の子だった。間違いなくお母さん似で、ディーの遺伝子はほとんど無さそうである。
 少し人見知りするのか、ノワールと自己紹介した子は再びノエルの背中に隠れてしまった。ディーが偉いなと言いながら頭を撫でると嬉しそうに笑っているので、子供との仲も良好そうだ。
 そしてノエルはノワールを抱き上げてディーの横に並び、俺達に改めて頭を下げた。

「よく出来ましたノワールちゃん。そしてシリウス様、お久しぶりでございます」
「お久しぶりです。そして貴方に感謝を。私達は貴方の御蔭でここまでこれました」
「俺は少し手伝っただけだろ? 成功したのはお前達が努力を続けたからこそだよ」
「私達も努力しましたけど、全てはシリウス様の教えがあってこそです。ご覧くださいシリウス様。これが今の私達です。貴方の御蔭で家族共々、凄く幸せに過ごしていますよ」

 ノエルが浮かべた満面の笑顔に、俺は満足気に頷くのだった。

というわけで、ノエル達の子供はノワールでした。
男の子の名前も出したので、双子等と色々と想像されてた人はいたでしょうが申し訳ない。
そして、本当ならこの話でこの章を終わらす予定だったのですが、予想以上に長引きそうなのでもう一話入れます。なので、次はそんなに長い話にはならない……と思います。
次は本格的にシリウス達とノエル一家との遭遇です。
次の投稿は三日か四日の予定で頑張ろうと思います。

そして今回のタイトルは『衝撃の再会』ですが、別案で『笑撃の再会』とも考えてました。



おまけ

弟子達に聞きました。
シリウスの悪いところを挙げてください。

「…………」
「…………」
「…………」

「いやいや、何かあるだろ。気にせず言っていいぞ」

「もっと撫でてください! もっとブラッシングしてください! そしていつ私を抱いてくれるんですか?」
「ご飯をもっと食べたいし、もっと構ってくれよ!」
「ケーキが食べたいです。あとは……手を繋いでほしいな」

「それはお前達の要望だろうが!」

 結果……わからないままである。
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