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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

六章 学校 最強編

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閑話 生まれ変わる挑戦者

この話は、ライオルがシリウスと別れて数日後の話です。
 ――― ライオル ―――


 わしがシリウスと別れて数日が経過した。

 わしが住んでいた場所は別名『破滅の森』と呼ばれており、方向感覚を狂わす広大な森と、中級冒険者が束になっても危険な魔物が闊歩する恐ろしい森であった。
 じゃがわしは方向はしっかり見極められるし、魔物も一睨みで逃げ出すのでわしにとってはただの広大な森に過ぎなかった。

 そんな風にさしたる問題も無く、途中で襲った魔物の焼いた肉を齧りながら歩き続けてようやく森を抜けて街道に出た。

 そこでわしはとある事に気付き……過去に類の見ない後悔に襲われていた。

「はぁ……失敗したのう……」

 一人だと独り言が増えるので気をつけてはいるんじゃが、今回ばかりは抑える気力すら湧かなかった。
 愛用の剣がいつもより重く感じる中、街道をとぼとぼと歩きながら、おそらくあやつ等がいるであろう方角を見据えて溜息を吐く。

「何で……わしは一緒に旅へ行こうと誘わなかったんじゃろうなぁ……」

 世界を見て回りたいと言っていたシリウスが学校に行くのは、年を重ねる為だと聞いておった。
 実力はあっても未成年だと冒険者ギルドに加入出来ないし、子供だと面倒な事が増えるという理由じゃが、わしという保護者が居れば問題ないのではないかと気付いたのじゃ。
 もちろん断られる可能性もあったが、わしは言って後悔するより、言わぬ後悔の方が遥かに嫌じゃ。それにあやつの性格からして、わしの提案に頷いていた可能性は高かったかもしれぬ。
 それを思うと……悔しくて仕方がない!

「ぬああぁぁぁ―――っ! 一生の不覚じゃあ!」

 わしは今まで剣一筋で生きてきた。
 戦う事が大好きで、強い相手と戦えれば幸せじゃった。それは今も変わらんのじゃが……今は新たな楽しみが三つも出来た。

 まずはシリウスという子供じゃ。
 子供の姿じゃが中身はわしを越える化物で、未だに勝ち越せないライバルにして親友じゃ。あやつと戦うのはわしの生き甲斐でもあり、勝ち越すのが今のわしの目標じゃ。目標があるというのは良い、わしはあやつと出会えて本当に良かったわい。

 そしてあやつが連れて来たエミリアじゃ。
 シリウスの弟子で従者であり、可愛らしい銀狼族の女の子じゃ。初めて紹介された時にお爺ちゃんと呼ばれた時は心が震えた。わしは剣一筋じゃったからのう、弟子はとっても子供はおらんかった。そんなわしじゃから子や孫を想う気持ちが一切無いと思っておったが、あの時に芽生えた感情は未だ忘れられぬ。
 あやつは孫バカと言っておったが、わしはただエミリアが可愛いだけじゃ。孫バカだろうが何だろうがどうでもいいわい。

 そのエミリアの弟である小僧……確か名前はレウスと言ったかのう?
 わしは己が認めた者以外の名前を覚えない主義じゃが、理由はどうあれあやつの強さに関する貪欲さは認めておる。わしとシリウスに負け続けても、勝負を挑み続けるその精神はわしに似ておる。天性の動体視力も持っておるし、いずれわしを越える逸材じゃろう。
 まあ、そんな事は本人の前では絶対言えないがな。わしの実力半分まで出せたなら名前で呼んでやろうと思っておる。
 小僧もシリウスの弟子であるが、わしの弟子でもある。若いがわしに似た特徴から、思わず調子に乗って色んな技を教え込んでしまったわい。弟子は二度と取らぬと決めたので、小僧がわしにとって最後の弟子になるじゃろう。会う度にはっきりと成長が見てとれる、そんな小僧を教えていくのは楽しかった。

 それら三つの楽しみと一緒に旅が出来るチャンスを、わしは何もせず見送ってしまったのじゃ。今頃思いつくとは、なんとも情けない話じゃ。
 上手くいっていれば、可愛いエミリアと居られるし、小僧の面倒も見れるし、あやつといつでも戦える。良い事ずくめじゃ!
 なのにわしは一人で旅をし、あやつは弟子二人と学校へ行っておるとは……ああ羨ましい。羨ましいのう!

「そこのお爺さん危ない!」
「逃げてお爺さん!」

 何やら背後が騒がしいので、街道を逸れて道を譲ってやった。
 すると凄い勢いで走る馬車がわしの横を通り過ぎるが、しばらく進んだ所でスピードが急激に落ちて完全に止まってしまった。どうやら馬車を引っ張る馬が限界のようじゃな。とはいえ、わしは助ける義務もないのでそのまま歩き続け、馬車の横を通り過ぎようとしたところで背後が再び騒がしくなった。

「やっと追いついたぜ!」
「あいつら止まっているぜ、チャンスだ!」
「獲物も増えてるぞ!」

 ふーむ……盗賊か?
 立ち止まって振り返れば、馬に乗った数人の男が喚きながらこちらへ向かってきおる。まあわしには関係ないので前を向けば、馬車から二人の男女が飛び出しわしの前に立ち塞がったのじゃ。

「そこの御仁! 私達を助けてくれませんか?」
「わしか?」
「はい、そのような大剣を持つ御方です。きっと高名な剣士様に違いありません!」
「高名ねぇ……」

 そうじゃな、名前ならそれこそ凄い知れ渡っておるし、あんな盗賊なんぞ一捻りじゃな。じゃが……正直に言えば面倒臭いし、強者ならともかく雑魚と戦う気分じゃないからのう。
 必死にわしへ懇願する二人を置いて立ち去ろうと思ったのじゃが。

「お父さん、私達……大丈夫なの?」
「こら、お前は馬車に隠れていなさい! お願いします、お金なら差し上げますから!」
「どうか、私達をお救いください!」
「今の子は……お主達の子か?」
「はい、私達は旅の商人でしてー……いえ、娘はお許しください! お金なら! お金ならありますから!」
「娘が欲しいとかそういうわけじゃないわい! 仕方ないのう、お主達は馬車に隠れておれ」

 馬車から顔を覗かせた女の子が、ふいにエミリアと重なってしまった。姿は全く違うし辛うじて年齢が近いようじゃが、見てしまった以上見捨てる感情は消えてしもうたわい。
 こんな性格じゃなかった気もするが、わしはシリウスに殺されかけて生まれ変わったのじゃ。剣を振る理由なんてそんなもんでいいじゃろ。

「お? 何だ妙にでかい爺だな」
「おい爺さん。俺達は後ろの馬車に用があるんだ。金目の物を置いてさっさと消えな」
「そんなでかい剣を振れるのか? 見た目で脅すならもっと考えた物を背負えよ、ははは!」

 わしが奴等の前に立つといきなり笑われてしまった。わしを弱者と見なすとは、危機管理がなっておらんな。強者を嗅ぎ分けるのは盗賊の必須能力じゃぞ? 盗賊の質が昔に比べて落ちてないか? どれ、試してみるかのう。

「やかましいわっ! ぐだぐだ言ってる暇があるならかかってこんか!」

 わしの気合に盗賊達の動きが止まった。何じゃ? まさかただ大声を出しただけで臆したというのか? どれだけレベルが低くなっておるんじゃ?

「て、てめえ爺! そんな声出したってこっちは三人もいるんだよ! たかが爺が調子に乗ってんじゃねえ!」

 ようやく正気を取り戻した一人が馬を蹴って走らせ、わし目掛け剣を振ってきた。挑んでくるのは良いが……剣の振りが遅すぎるわい。

「ふんっ!」

 自身の身長はある愛剣を片手で握り目前の男へ振り下ろした。男は馬ごと真っ二つとなり、体が縦半分に別れてわしの背後で崩れ落ちた。

「へ?……あれ?」
「馬が……え? 今の何だよ?」

 愛剣を振り回し血糊を飛ばす。ふーむ……あやつと戦って斬り飛ばされたせいか、まだ利き手の感覚が鈍いのう。じゃから今のは反対の手でやったのじゃが、なんと脆いものじゃ。

「何じゃ、もう終りか?」
「く、くそ! 挟み込め! あんなでかい剣なら小回りはー……」
「判断が遅いんじゃたわけ!」

 相手が何か言い終わる前に飛び掛り、今度は馬を狙わないように男の頭を目掛け横薙ぎで振るった。剣は相手の頭を果実みたいに潰し絶命させ、わしはもう一人を睨みつけたのじゃが。

「ひ、ひいぃぃ――っ!?」

 さっさと逃げ出しおったわい。奴等を追い払えば十分じゃし、逃げた奴は放っておくとしようかのう。
 剣を背中に仕舞っていると馬車に隠れていた商人達が出てきて、笑顔でわしに頭を下げてきおった。

「まさかあっという間に二人も倒してしまうとは、素晴らしい腕前です!」
「あの程度大したことないわい。それよりお主等の馬は大丈夫なのか?」
「は、はい。辛うじて息はありますが、走らせ続けた事によりしばらく休憩が必要かと……」

 盗賊が奴等だけだと良いのじゃが、わしの勘だと盗賊団が近くにあって、奴等はただの下っ端かもしれぬ。

「おそらく逃げた奴が仲間を連れて報復にくるかもしれん。馬車を捨てて、急いでここから離れるのをお勧めするがのう」
「そんな!? 馬車と商品が失われたら私達はどうやって暮らせば……」
「命と商品、どちらが大事かよく考えて結論を出すのじゃな。ではな」
「あの、助けていただいたお礼は?」
「いらん」

 わしが勝手にやったので、こやつらから報酬を貰うつもりはなかった。とりあえず助けたので去ろうと背中を向けたのじゃが。

「お母さん、あのお爺ちゃん凄かったね」
「そうね。でも……まだ安心出来ないわ。またあの悪い奴らが来るかもしれないのよ」

 さっきの子が母親と一緒に並んでいる姿を見てしまった。ふーむ……やはりエミリアと似ても似つかぬ女の子じゃが、このまま置いていくのは忍びないのう。わしはどれだけ孫のような子に甘くなっておるのじゃろうなぁ。

「おい、そこの商人」
「はい! 何か?」
「提案があるのじゃがな……」



 わしが街道に出てしばらく経ち、徐々に空模様が赤く染まり始めていた。
 もう少しすれば太陽が隠れ夜の時間帯になるが、わしと商人一家は馬車を街道からずらして休んでいた。いや、商人一家は盗賊の襲撃に怯え、休んでいたのはわしだけかもしれんな。

「本当に……来るのでしょうか?」
「来なければそれでいいじゃろう。まあ、たとえ来たとしても問題ないわい」

 わしらがここに留まっているのは、わしの提案で馬が回復するまでここに待機する事にしたからじゃ。先ほど告げた盗賊の報復もあるかもしれぬが、わしが警護してやると言ったら商人達は覚悟を決めて頷いてくれたのじゃ。
 商人の男からお茶の入ったコップを貰い、わしは盗賊が去った方角を静かに眺めていた。

「しかしお主も中々剛毅じゃな。提案したわしが言うのもなんじゃが、こんな爺を信じるのか?」
「商品を守って命を落とすのと、荷物を捨てて逃げても生活の糧を得られなければ一緒です。貴方の実力は先ほど見せていただきましたので、可能性が高い方を選んだだけですよ」
「そういうものか。ところでわしは俗世から離れていたせいで世間知らずなんじゃ。良ければ色々教えて欲しいのじゃが」
「わかりました。私の知ってる範囲で良ければ」

 何年も森に隠居しておったが、これから旅を続けるのじゃから情報収集も必要じゃ。商人から聞く話を一喜一憂しながら聞き続け、最後にわしの目的である質問をしてみたのじゃ。

「わしは強くなる為に旅をしておるのじゃが、どこかに強い相手はいないかのう?」
「そのお年でですか!? あ……すいません、失言でした。ですが、貴方以上に強い人を私は見た事がありません。あれ程の力を持ちながらまだ強くなりたいのですか?」
「当然じゃ。わしより強い者が一人おってな、そいつに勝ち越す為にわしは更に強くならねばならぬのじゃ」
「強い人を探すなら闘技場へ行ってみたらどうですか?」

 わしと商人の会話を聞いていたのか、商人の子供である少女が会話に交ざってきおった。突然の乱入にわしが気を悪くしたと思ったのか、商人は慌てて少女を遠くへやろうとするが、わしはそれを止めて少女に質問したのじゃ。

「待ちなさい、闘技場とは?」
「前に立ち寄った大きな町にあったの。この大陸で一番だと言われてて、見物に行ったら人が沢山いたんだよ」
「興味深いのう。その場所を―……タイミングの悪い奴等じゃな」

 闘技場の詳細を聞こうとしたら、盗賊だと思われる気配を多数感じたのじゃ。わしは立ち上がり、少女の頭に手を置いた。

「すまぬが仕事のようじゃ。後で詳しく聞かせてくれぬか?」
「う、うん……わかりました」
「もしや盗賊が!?」
「そのまさかじゃよ」

 商人達に隠れるように言い、馬車を背にしばらく待っていると、馬に乗った男達が土煙を上げながら迫ってくるのが見えたのじゃ。そしてわしらの前に並び、一人の男が前に出てきてわしを指差した。

「頭、こいつです。こいつが二人を殺ったんです!」
「ただの爺じゃねえか。本当にこんな爺さんが?」
「あの持っている剣を見てください。あの剣で馬ごと斬ったんですよ!」
「確かにあれなら斬れそうだな」

 頭と呼ばれている男が疑いの目を向けてくるが、わしの剣を見て少しだけ納得したようじゃ。頭が何か呟き始める中、馬車に隠れていた商人達は盗賊の集団に怯え、家族一塊になって震えておった。仕方あるまい、少なく見ても三十はいるようじゃからな。

「そんな……こんなに……いたなんて」
「お母さん! お父さん!」
「だ、大丈夫よ。きっと……大丈夫よ」
「そうじゃなぁ、これだけの数とは思わなかったわい」

 まさか…………これっぽっちとは思わなかった。
 少なくとも五十人は居ると思ったんじゃが、これは些か予想外であったわ。それにわしの前に立ち塞がるんじゃなくて、外周を回って包囲すれば良いものの。余裕の表れじゃろうな。

「おい爺! よくも俺達の仲間をやりやがったな!」
「やかましいのう。襲ってきた時点で襲われて当然じゃろうが。お主等が一方的に搾取出来る側だと思ったか?」
「うるせえ! 頭、まだですか?」
「――我が命に従いし人形に命を与えん『ロック・ゴーレム』!」

 頭と呼ばれる男が地面に手を置くと周囲の土が盛り上がり、わしでさえ見上げるような大きなゴーレムが現れたのじゃ。あの頭、盗賊だが魔法士だったのか?

「ほう……ゴーレムか?」
「貴様がいくら強い剣を持とうと、この大きさの岩の体を斬る事は出来まい! いけ!」

 何じゃ? こいつらわしの剣が特殊な物だと思っているのか? たしかに変な機能はついているが、基本は頑丈でただ重たい剣じゃぞ? それに……。

「これよりでかいゴーレムと戦った事があるわい!」

 それを作ったのは四百を越えたエルフであったが、そやつが作ったゴーレムはこいつの二倍かつ体が鉄製であったわ。こんな岩ゴーレム、あれに比べたら張りぼてのようなもんじゃな。
 振り下ろされる拳を前へ飛び込むことにより回避し、足元で剣を振るうとゴーレムの両足が斬り落とされた。重心は前方にあるので、当然そんな事をすればこちらに倒れてくるが、わしは剣を大きく振りかぶり一閃した。

「剛破一刀流、剛衝閃ごうしょうせん!」

 魔力を飛ばすように剣を思い切り振る事により、斬撃の形をした衝撃波を飛ばす技である。
 その衝撃波は前方のゴーレムを木っ端微塵に砕き、背後にいたであろう盗賊を数人巻き込んで消滅した。射程が短いのが難じゃが、広範囲を攻撃する衝破より威力が高いのが特徴じゃ。しかし……なんちゅう脆さじゃ。まるでシリウスが持って来たトーフみたいじゃな。あ、思い出したら無性にトーフが食べたくなったわい。

「「「…………え?」」」

 三十……いや、今ので数が二十になった盗賊達が揃いも揃って呆けておる。何じゃお前等、逃げないのなら襲わせてもらうぞ?

「何を呆けておる小僧共が! それだけ雁首揃えてたった一人の爺を恐れるのか!」

 再び剛衝閃を放てば、盗賊の数が更に減りおったわ。そこでようやく呆けている場合ではないと気付いたようじゃが、年期の入った一人の盗賊がわしを指差し叫びだしたのじゃ。

「あの大剣……この強さ。間違いない。あいつは盗賊殺しのライオルだ! 全員逃げろ! 皆殺しにされるぞ!」
「ライオル!? 剛剣じゃねえか! 死んだんじゃねえのかよ!」

 これはまた懐かしい呼び名じゃな。
 まだ有名じゃなかった頃、わしは強い相手を求めて旅をしていたのじゃが、食費が必要じゃったから盗賊狩りをしておった時期があったのじゃ。部位を残さないといけない魔物と違って手加減要らずじゃったから、当時のわしにとって貴重な収入源じゃった。
 調子に乗って二十もの盗賊団を壊滅させていたら、気付いたら『盗賊殺し』だとか呼ばれておったわい。大陸の偉い人達が盗賊の被害が減ったと喜び、わしに礼を言って来た事もあったのう。
 あとわしは隠居してただけじゃ、勝手に殺すでないわ。

「逃げろ逃げろ! くそ! 頭はどうした!?」
「さっきの衝撃に巻き込まれて気絶したぞ!」
「だったら後ろの奴等を人質に……」
「馬鹿野郎! そんなのが通じる相手じゃ、ぎゃあぁっ!」
「はっはっは! 狩る側から狩られる側に変わる気分はどうじゃ?」

 うむ、やはり体を動かすのはいいのう。後悔で気落ちしていた気分が晴れ、いつもの調子が出てきおったわ。
 敵の真っ只中に飛び込み、愛剣を存分に振り回し盗賊達を斬り捨てた。時折商人達を人質にしようと馬車に近づく輩もおるが、剛衝閃を放ち阻止……もとい葬ったのじゃ。何せ倒して奴等を調べれば金を確保できるわけじゃし、旅の軍資金はしっかり稼いでおかねばな。
 森では魔物相手で退屈していた分、わしは暴れに暴れた。




「ふうむ……こんなもんかのう?」

 愛剣を背中に仕舞いつつ、破壊の跡が残った街道を見回した。剛衝閃によって抉れた地面に、砕けたゴーレムの破片に様々な死に方をした盗賊達が転がる光景はまるで戦争が起こったような破壊跡じゃ。じゃが商人達を守る事を優先していたから、盗賊を数人程逃がしてしまったわい。まあ頭らしき奴は確保したし、こいつを町に突き出せば多少の金にはなるじゃろ。
 少しやり過ぎたかと反省していると、商人が青い顔をしながら話しかけてきた。

「あの……ありがとうございます」
「いやいや、礼はいらぬよ。わしはただ暴れただけじゃからな」
「それでもです。ちょっとやり過ぎ……な気がしますが、私達一家が助かったのは事実ですので」

 この無残な光景を生み出したわしに怯えつつも礼を言うとは、やはり胆力がすわったやつじゃな。

「運が良かったと思うがいい。わしはもう行くとしようかのう」
「お待ちください。どちらへ向かわれるのですか?」
「さてのう? 街道に沿って歩けばいずれ町に着くじゃろ」
「目的が無いのでしたら……私達の馬車に乗って町に行きませんか?」

 ふうむ、さっきまで青い顔をしていたが今度は真剣な顔でわしを見てきおる。魔物ですら逃げ出すわしの眼力を正面から受けるとは中々やるのう。

「ほう、わしが怖いのにどういう風の吹き回しじゃ?」
「盗賊達が言っておりました。貴方はあの剛剣と呼ばれたライオル様であると。これほどの強さなら間違いなく本物でしょうし、怖いのは当然かと」
「本物だろうと偽者だろうと、わしはお主程度ならすぐに殺せるのじゃぞ?」
「ならば私達を見捨てればよかったのです。ですが貴方は私達を守る為に戦ってくれたのですから、少なくとも敵ではありません」

 合理的な考えではある。実際わしもこやつらの馬車に乗せてもらうのはありがたい。捕まえた盗賊の頭を運ぶのも楽じゃし、旅の商人なら料理くらい出来る筈じゃ。料理の出来ないわしにとって非常に助かる話じゃな。

「それに貴方が共に来てくれるなら私達は軍隊に守られるより安心出来ます。そういう打算もあるのですよ」
「はっはっは! 中々上手い事を言うのう。しかし軍隊よりも安心出来るときたか。そこまで評価してくれるとは思わなんだ」
「実は私、密かに貴方に憧れていたのですよ。伝説に会えて光栄です、剛剣のライオル様」

 言葉通り、興奮した表情で商人はわしに握手を求めてきた。その手を握り返しながらわしは思う。わしはもう……その名で呼ばれるべきではないとな。

「わしは確かにライオルじゃが、もはや剛剣ではない。剛剣は死んだのじゃ」

 そう……シリウスに全てをかけて挑み、敗れた時にわしはもう剛剣の名を捨てたのじゃ。
 ここに居るのはただの爺に過ぎぬ。

「今のわしはただのライオルじゃ。これから剣一本で成り上がる一人の男じゃよ」

 わしはこれから原点に帰り、一から再び強くなっていくだけじゃ。

 そしていつか、大人となったシリウスと再戦し……勝つ!

 わしは剛剣から一人の挑戦者に生まれ変わったのじゃからな。







「そういえばお嬢ちゃん、闘技場のある町じゃが……」
「ひっ!?」

 ……逃げられたわい。
 エミリアも今のわしを見たら逃げるじゃろうか?
 だとしたら……わし立ち直れんかもしれん。
 生まれ変わったついでに少し自重を覚えるべきかのう?


 ちなみにエミリアは多少慣れているので逃げません。ただ、若干引くので結局ライオルは凹みます。

 今回はただライオルが暴れる作品を作りたかっただけですが、何故かノエル達より長くなってしまいました(笑




 IFルートではシリウス達は学校に行かずライオルを連れて旅をし、なんやかんやあってピンチになり、シリウス達を逃がす為に魔物の大軍を前に一人立ち塞がります。

「若者より先に死ぬのは爺と決まっているのじゃよ!」


 そして……。






「いやぁ、弱かったのう」

 何事も無く帰ってきます。

 ……という、ネタが作ってる最中に浮かんでました(笑

 今日の夜辺りにでも活動報告あげます。
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