挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

一章 誕生

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

4/179

魔法を使いたい、一歳児のおっさん

 俺の属性が『無色』と判明してから数ヶ月。

 スキンシップと愛情が過剰になった以外は大きな問題も無く過ぎていった。

 あれから様々な本を読んでもらって文字を理解し、俺は一人で本を読めるようになった。

 一年と少しで本を読める赤ちゃんが現実にいたら不気味以外の何でもないだろう。

 この世界の本はやはり貴重らしく、ボロボロな中古本も幾つかあったが、エリナさんは嬉々として次々と本を用意してくれる。

 もうあれだな、この人達の目は気にしないでいいか。親バカが全てを解決してくれる。

 開き直って本を読み続け、様々な事がわかった。

 予想した通り、世界の科学レベルは前世における中世時代っぽく、そこに魔法が入る感じ

 なので科学と言う単語は無く、代わりに錬金術が主流となっていて、正に物語の定番である剣と魔法の世界だ。

 大陸にもよるが四季はあるようで、一年は三百六十日が固定と前世より微妙に違うっぽい。

 貴族だとか平民とか、ノエルみたいな多種多様の種族だとか、魔物がチラホラいるわで中々シビアな世界だ。

 つまりそれだけ命が軽いってわけだ。前世の知識を生かして体力と魔法を鍛え、人生をしっかり生き抜いてやろう。

 だが……魔法で俺は躓くことになる。




 初級魔法教本。

 魔法教本には属性判定道具の概要が書いてあり、色の意味もちゃんと書かれていた。

 赤は『火』
 青は『水』
 緑は『風』
 黄は『土』
 そして俺の無色は……『無し』

 そう、属性の適性が無いのだ。
 万能に使えるとかそんな良い意味ではなく、四属性全てにマイナス補正がかかる欠陥なのだ。魔道具の起動に属性は関係ないので、生活するだけなら問題は無いのだが。

「マジかよ……」

 思わず声が漏れた。
 手にしている本は『アルベルト旅行記』。
 著者は世界中を放浪した旅人で、土地の風習や出会った不思議な現象を書き留めて纏めたのがこの本だ。
 要するに自伝書であるが、これがまた色々書いてあって面白いのだ。一年間竜巻が止まない土地や、猫族の奇妙な習性、銀狼族の特殊な儀式。前世ではありえない出来事が沢山載っており、それらは面白おかしく書いてあれば、また非情な現実も隠さず書いてあるので勉強にもなる。
 その非情な現実に『無色』が載っていたのだ。

 以下、本の一部分を抜粋する。


 私が放浪を続けて数年が経過した。

 様々な人間、様々な種族と出会い、魔法の使い方も多種多様で実に有意義な日々を送っている。

 ただ、種族間の差別や、貴族主義による貧困の差を垣間見る度に悲しくなる。

 とある町では、生まれた頃から属性を持たない者に出会った。

 一つに秀でてない、それだけでその者は無能と蔑まれ酷い扱いを受けていた。

 『無能者』

 そんな者は精霊に好かれた者以上に少ないというのに、何故差別するのだろうか?

 私にはわからない事だ。

 皆、世界の一人に過ぎず、世界の広さから見ればそんなの小さいことだと言うのに。 


 男気ありますな、アルベルト……ではなく、問題は属性を持たない者が『無能者』と呼ばれてる点である。
 俺は世間では無能者扱い。エリナさん達が哀れんでいた真相がこれだ。

 水晶の輝きは強かったので、魔力量だけは人並み以上にあるのだろう。
 しかし、無色では頑張っても属性魔法の初級程度しか使えず、せいぜい魔道具を長く扱える程度らしい。
 俺は生まれた瞬間からハンデを背負ってしまったのだ。




 ………まあいいか。

 元々、魔法が無い世界からのおっさんだ。
 全く使えないわけじゃないし、俺には魔法以上の知識と経験がある。むしろ無能者と知って敵の方が油断するんじゃないか? どんな生き物だろうと、油断と弱点さえ突けばナイフ一本で大抵の事は何とでもなる。それより何でもいいから、おっさんは魔法を使ってみたいのです。

 初級教本に書いてあったが、属性の無い魔法も存在する。
 無属性魔法とも呼ばれているらしいが、一部を除き使う人間はほとんどいない分野だそうだ。
 その一つである『ライト』。
 名前から想像する通り、光を生み出す魔法で初心者の入門用として使われるそうだ。だからなのか、発動に必要なキーワードがあるだけで詠唱が詳しく書かれていない。キーワードを入れてそれっぽく唱えればいいのかね。それなら俺でも出来るかもしれん。

「シリウス様ー、貴方のお姉ちゃんであるノエルですよ。お加減は如何ですか。お姉ちゃんって言いたくありません?」

 いざ実践、なタイミングでノエルがアホな発言と共に現れた。この小娘はどうしても姉と呼ばれたいらしいが、俺は絶対言わないからな。
 来たなら丁度いいや、ノエルに『ライト』を実演してもらおう。

「のえるー、まほうー」
「え? あ、いやー……はい。これを使ってほしいんですか?」

 あれ以来、彼女は魔法を俺の前で使っていない。
 無能者であるこちらに気を使っているのがバレバレなのだが、俺は全く気にしない。『ライト』が書かれたページを指差し、赤ん坊ゆえの無知っぷりで果敢に攻める。

「いいのかな。でも、これは無属性だし……うん。わかりました!」
「おー!」

 決断早いのがノエルイズム。

「でも私、無属性はあんまり使ったことないんですよね。明かりなら火を使っちゃいますし」

 あー、確かに火の属性ならそうなるよね。
 詠唱を思い出そうとしているのか、目を閉じて指を額に当てて唸っていた。

「う〜ん……闇を払え……だったよね。では、行きますよ」

 ノエルが大きく息を吸うと、雰囲気が切り替わった。

「根源たる魔よ、脈動せし力よ、二つの力を持ちて、闇夜を照らす一陣の輝きを放ち、我が闇を払え」

 詠唱、長っ!
 これで入門用すか?
 ああ、使う人間少ないから、短縮の研究がされてないわけか。

 「『ライト!』」

 ノエルの指先に光が灯った。
 淡く儚く、何かが溢れるように輝く光の玉は綺麗に見えた。手で触れてみるが熱さは感じない。ただ、手から確かに感じる言葉にしづらい何か、これが魔力なんだろうか
 一分も満たない時間であったが、魔法を消したノエルの額にはちょっと汗が浮かんでいた。

「ふう、やはり無属性の維持は疲れますね。火ならここまで疲れないんですけど」

 火より疲れるとの感想だが、無属性は魔力の消費量が多いのだろうか?
 触れた時に感じたのは、蛇口を捻って水が流れ続けるように魔力がだだ漏れていた気がする。私的な見解だが、他の属性は適性によって何かしらの補助があるのかもしれないな。
 検証しようにもノエルしか知らないし、いずれ本格的に調べたい。

「すごいー」
「え、ええ! 凄いですよね! もっと褒めていいんですからね。私最高ですから!」

 拍手をしてあげたらかなり喜んでくれた。有頂天にもなっているが。その後、別の仕事があるノエルは部屋を出て行った。

 一人になったところで俺も魔法に挑戦してみるとしよう。
 見本は見たんだ。後は実行するのみ。

「根源たる魔よ、脈動せし力よ、二つの力を持ちて、闇夜を照らす一陣の輝きを放ち、我が闇を払え」

 普段は演技で口調が幼いが、さすがに詠唱は真面目に唱えねばなるまい。
 ノエルに見せてもらった光をイメージしていると、全身が熱を持ち始めた。風邪をひいて熱が出たような熱さじゃなく、軽く準備運動をして体全体が活性化している感じ。それが全身から手の先へ集まり始めるのを感じ、俺は発動の言葉を紡いだ。

「『ライト!』」

 淡い光を放つ球体が手に生まれた。
 ノエルが作ったやつとほぼ変わらないが、俺は初めて魔法を使ったのだ。相変わらず原理不明だが、こうして実際に使ってみると感動するな。
 おっと、年甲斐もなくはしゃいでしまった。落ち着いて実験を開始しますか。まずはこの光を動かす事が出来るかどうか。イメージ、一歩前へ……よし。イメージしたように光は前方へ飛んでいく。
 そこから更に上下へ移動をさせようとしたところで光が消えた。

「あれ? 消した覚えは―……」

 目前の景色がゆっくりと斜めになっていく。いや、俺が倒れているんだ。
 わかっていても体が言う事をきかず、俺はベットに倒れこんでいた。そしてやってくる強烈な疲労感。これはもしかして。

「ああ……これが魔力切れかぁ……」

 本に書いてあった通りの事例だ。わかってはいたが、中々きついぞこれは。
 前世なら無理矢理でも動けただろうが、成熟してない赤ん坊の身じゃ無理な話だ。ベットの上で良かった。このまま寝てしまえば違和感なんかないだろうし。
 しかし光を出せたのは大体十秒くらいだろうか。おまけに動かしもしたから消耗度合いが変化してたかもしれない。これではとても実用に耐えれない。何回この疲労感を味わえばいいのやら。
 先は長そうだ、寝よう。


 次の日、俺はいつも通りの筋トレしていた。
 一日経てば疲労感は一切消え、むしろ前より調子が良いくらいだ。魔力も十分に回復しているようだし、とにかく練習してみるとしよう。

 昨日は大した検証できず倒れてしまったから、今日は自分の限界を調べようと思う。
 あの時は興奮していたせいで魔力が空になるまで気付かなかったのだ。どれだけ消耗すれば体は辛く、また魔法が切れるのか。
 まずは己の中にある、これ以上使ったら倒れる危険ラインを知るところから始めよう。

 詠唱し、光を作って待機する。何もせず集中していると、体から魔力が抜けていくのが感じとれた。これは血が抜けていく感覚と似てる気がする。
 次第に疲労感が押し寄せてきたので消えろと念じた。ちゃんと消えてくれたので、安堵の息を出しつつ体調確認。
 うむ、だるさはあるが問題ない。
 接続時間は十三秒、ここが今の限界か。誤差の範囲内かもしれないが、前回より伸びてる気がする。

 こんな調子で俺は魔力を鍛え続けた。

 とんでもない思い違いをしたまま。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ