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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

四章 学校を目指して

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幕間 剣を探して三千メートル

 そういえば最近忘れ気味だが、少しだけライオルの事を話そうと思う。

 彼は実は今、あの家に住んでいない。



 話は家を出る一ヶ月前まで遡る。
 俺はレウスも連れず一人で彼の元へ赴いていた。

「……来たか」
「ああ……来たぞ」

 前回来た時に俺達は決めていたのだ。
 次に会う時は本気で戦うと。
 その証拠にライオルは鎧と自慢の愛剣を装備し、俺もまたディーから貰った剣とミスリルナイフに投げナイフ等とフル装備である。銃魔法は無粋なので使わないと決めていた。

「これが最後になるかもしれぬからのう。頼むから……わしより先に死んでくれるなよ?」
「そっちこそ、死ぬなよ?」

 それ以上の言葉は無く、俺達は場所を移して本気で殺しあった。
 俺は戦闘スイッチへと切り替えて本気で剣を振り下ろし、ライオルは殺す気で剛剣を振るう。正に死闘であった。

 ……戦いは無我夢中だったので覚えていない。

 結果だけを言うと、森の中に幾つものクレーターが出来上がり、ライオルは片腕を斬り飛ばされて半死半生になり、俺は家に帰れぬほどに消耗してしまい初めてライオルの家に泊まることになった。
 正直ライオルは死んでもおかしくなかったのだが、本人の生存本能と俺の治療によって生き長らえた。腕も何とかくっつけたので、リハビリをすればまた使えるようになるだろう。

「はっはっは! 今回は流石に本気で死ぬと思ったわい」
「笑うなよ。爺さんが死んだらこっちがへこむだろうが」
「すまんすまん。じゃが……全盛期近くまで戻してもお主に勝てなかったのう」

 珍しくしんみりとした様子だった。だけどその年でここまで体力を戻したのは異常に凄い事だぞ。前世の俺でもそこまでは出来なかった。

「何だ? ついに引退でもするのか。今度こそ本気で隠居か?」
「……逆じゃ!」

 数時間前には死にかけていたのに、ライオルは拳を握り締め獰猛な笑みを浮かべていた。ああもう、力んだせいでまた血が出てるだろうが。

「わしは旅に出る。弟子を探すでもない、ただ己を鍛え上げる為に旅へ出るのじゃ!」
「おいおい、年を考えろよ」
「関係無いわ! 途中で野垂れ死んだらそれまでの話じゃよ。それに、もうお主が訪れる事がない以上、ここに居る理由も無いのじゃからな」

 流石に学校まで行くとなると、ここまで来るのが面倒な距離になる。だから俺達は最後と思い本気で戦ったのだが……そうきたか。

「そうか。まあ爺さんの人生だ、俺が言うのも筋違いだな」
「そういう事じゃ。ところで、お主はあと何回くらいこれそうじゃ?」
「うーん……何もなければ二回かな?」
「じゃったらお主の弟子を連れて来てほしい。特にエミリアは必ずじゃ!」

 何故エミリアなのか?
 この爺さん、とんでもない孫バカであったのだ。


 レウスがお世話になっているので姉として挨拶しておきたいと、エミリアを爺さんに会わせたのが切っ掛けだった。

『初めまして、レウスの姉であるエミリアです。弟のレウスがいつもお世話になっています』
『ほう? 可愛らしくて礼儀正しい子じゃのう。わしはライオルという爺じゃ。いつもレウスをボコボコにしてすまんのう』
『いいえ、あの子も楽しそうですからお気になさらず。ライオル様もあの子の相手で大変でしょう?』
『なーに、わしも楽しんでおるから問題ないわい。ほれ、何も無いがお茶でも飲むか? 甘い物がよければ果物もあるぞ?』
『ああ、それは私が用意しますライオル様』
『むう……様なんて畏まった言い方をせずとも、家族みたいに気軽に接してくれて良いのじゃよ?』
『えっと、じゃあ……お爺ちゃん?』
『お爺ちゃんっ!? お、おお……何じゃこの胸を満たす喜びは?』
『だ、大丈夫お爺ちゃん?』
『おおう!? へ、平気じゃ、爺ちゃんは無敵じゃよ!』

 以上の流れがあり、ライオルはエミリアを孫のように気に入ってしまったのだ。
 レウスも似たようなものなのに、扱いに差がないかと聞いたことがある。

『小僧はお主の弟子であり、わしは臨時講師みたいな者じゃ。あれはあれで可愛いが、エミリアと比べようもないわい!』

 ……との事である。
 爺さんは結婚もしておらず、弟子を持ったことはあるが子供のように扱ってたわけじゃない。
 そう考えると、己の弟子でもないレウスとエミリアは自分の孫の様なものなんだろう。孫に剣を教え、孫を可愛がる……わかりやすい爺さんだ。


「連れて来てもいいが、エミリア優先は何故だ?」
「勿論会いたいからじゃ。レウスには奥義を見せてやろうと思ったが……まあそれはついでじゃな」

 いや……せめて逆にしてやれよ。レウスが泣くぞ?

 そんな事実も知らず、レウスはライオルから奥義を見せてもらって目を輝かせていたのであった。



 そんなライオルと最後に会ったのは、俺達が家を出る数日前だ。
 すでに旅に出る身支度を整えており、家の中はすっきりとしていた。俺に挨拶が終ると同時に出るつもりなのだろう。

「まずは感謝じゃな。わしの新たなる目標となってくれたお主には本当に感謝しておる。ありがとう」
「何度も言ったが気にするなよ。俺だって強くなる為のライバルとなってくれて感謝しているさ」

 ガッチリと手を繋いで別れを済ますと、ライオルは荷物とは違った小袋を取り出し渡してくれた。

「それは過去の弟子に渡そうと思って作った免許皆伝の証じゃ。小僧がお主の目から見て十分だと思ったら渡してほしい」

 袋には剣のマークが彫られたメダリオンと一通の手紙が入っていた。

「お主の行き先はエリュシオンじゃろう? あそこにはわしの愛剣を作ったチビで偏屈な爺が住んでおるのじゃよ。その手紙はそいつにレウスの剣を打ってほしいという紹介状じゃ」

 ライオルという変態から偏屈と呼ばれる爺さんか。一体どれほど気難しい人物なのやら。
 しかし免許皆伝といい、レウスの剣を打ってもらえといい、何だかんだでレウスを大事にしているんだな。
 レウスは実力はすでにエミリアの上であるが、彼女に頭が上がらないのだ。せめて剣に関する事だけでも優越感を味あわせてやりたい。

「あ、勿論エミリアの分もお願いしておるぞ。レウス以上の物を作らないと殴りに行くと書いておいたわい」

 ……レウスはどう頑張っても姉には勝てないようである。

「ではな。今度会う時はお主に絶対勝ってみせるからのう!」

 そうして満面の笑みを浮かべたライオルは、六十歳を前にして再び旅に出たのであった。






 そんなこんなで、時は学校から合格を貰い、学生寮に入る二日前である。

 俺達はライオルから紹介された偏屈爺を探し、エリュシオンの町を歩き回っていた。

「とはいえ、店の名前しか教わってないからな。町は広いし、一体どこにそんな爺さんがいるのやら」
「じっちゃんの話だと、ずんぐりむっくりで辛気臭い上に口うるさいチビな爺だって言ってたな」

 悪口増えてないか?

「確か店の名前が『撃滅滅殺金剛鍛冶屋げきめつめっさつこんごうかじや』でしたよね?」
「本当にそんな店名あるのか? ネーミングセンス皆無だろ」
「その分わかりやすいですよ。あ、シリウス様、あそこの屋台の人に聞いてみてはどうですか? 屋台が年季入ってますし、この辺りに詳しそうですよ」

 エミリアも情報収集の大切さと収集のやり方をわかってきているようだ。感心しながら見ていると、屋台の串焼きを手に情報を得て帰ってきた。

「わかりました。そこの路地を曲がった先にあるそうです」
「意外に近くにあったんだな。早速向かうとしよう」

 路地を曲がり、先を進むこと数分。目当ての『撃滅滅殺金剛鍛冶屋げきめつめっさつこんごうかじや』は確かにあったので中に入ってみた。
 外見からもそうだが、中を見て確証した。この店、閑古鳥が鳴いている。
 看板は色褪せているし、棚の上や壷などに埃が溜まっているのだ。まるで無人屋敷みたいだが、奥から金槌を叩く音は聞こえるので人はいるようである。
 一見商売する気は無さそうだが、武器に対する情熱は本物のようだ。少ないながらも飾られている武器がしっかり手入れされているからだ。

「ここかな? すいませーん!」

 レウスが叫ぶが反応無し。相変わらず奥から金槌を叩く音が止まらない。

「おーい、すいませーん! お客として来たんですけどーっ!」

 無反応。あまりにも金槌を叩き過ぎて耳がバカになっているのかな?

「さっさと出てこいよ! この無駄酒飲みのネーミングセンス皆無野郎が!」
「何だとこの馬鹿野郎!」

 そういう悪口は聞こえるんだな。というか、お前どこからそんな悪口を知った?

「じっちゃんがそう言えば反応するって言ってた」

 ライオルとこの人は一体どういう関係だったのやら。
 憤慨しながら出てきたのは、俺と身長の変わらない爺さんであった。この長い髪と髭に、手足が短くともがっしりとした頑丈そうな体を持つ種族はドワーフだ。
 酒と鍛造を愛し、優れた武器が欲しいならドワーフを探せと言われる程、ドワーフは鉱石や鍛冶に詳しいのである。

「やっと出てきた。初めまして、私はシリウスと申すのですが……」
「子供と貴族は相手にしない主義なんだ。どうせ冷やかしなんだからさっさと帰れ馬鹿野郎が!」
「あの、冷やかしではなくライオルの紹介でここに来たのですが?」
「ああっ?」

 店の奥に戻ろうとしたドワーフであるが、ライオルという言葉に反応しこちらへ視線を向けてくれた。

「これが紹介状です。読んでいただければ私達がわかるかと」
「ふん……嘘だったらわしのハンマーで殴り殺してやるからな馬鹿野郎が」

 この人、馬鹿野郎が口癖なんだろうか?
 差し出した手紙を引っ手繰るように奪い、親の仇を見るような目で手紙を読み始めた。
 読み終えると同時に手紙をくしゃくしゃと丸めてそこら辺に放り投げ、陳列されていた大きな剣を数本並べ、左端の剣をレウスの目前へ差し出した。

「持って振ってみろ。全部振ってしっくり来たのを言ってみな」
「わかったぜ。おお……やっぱりそこらの剣と違うな!」

 一応剣を振れるスペースがあるからいいけど、室内で振るのはどうかと思うんだ。持ち主であるおっさんが何も言わないなら別にいいけどさ。

「シリウス様、このナイフ凄いと思いませんか?」

 嬉しそうに剣を振っているレウスを他所に、エミリアは飾られていたナイフを持ってうっとりとしていた。

「お嬢ちゃん、そいつの良さがわかるのかい?」
「はい。とても鋭利そうで、肉なんか抵抗も無く切り裂いてしまいそうです。長さも丁度良いですし」
「そうかそうか、わかる奴には売ってやってもいいぜ。予算は?」

 エミリアはこちらを一瞥したが、遠慮なくやりなさいと頷いておいた。

「あまり手持ちがなくて、銀貨五枚ほどしかありません」
「五枚か……厳しいな」

 これ程のナイフなら金貨一枚でも安いくらいだと思う。姉弟にはポケットマネーとして金貨一枚分のお金は渡してあるのだが、エミリアはどれだけ値切るのか見物である。

「私はこちらのシリウス様にお仕えしているのですが、私が有事の際に少し頼りないのです。これを見てくださいませんか?」
「あん? ふーむ……確かにこりゃ酷いな馬鹿野郎が」

 見せたのはいつもエミリアが使っているナイフだ。そこらの店で売ってた安いナイフだから、本職に酷いと言われてもしょうがあるまい。

「私はもっとご主人様のお役に立ちたいのです。それにはこのような素晴らしいナイフが欲しくて。ですが、ご主人様のお金を負担させるのは従者として忍びないんです」
「ぬぐっ! お嬢ちゃんの意見もわかるが、こちらも商売だからな」
「お願いします、お爺ちゃん!」
「お爺ちゃんっ!? な、何だこの胸を満たす喜びは?」

 あ……ライオルと全く同じ反応だ。

「ライオル様もお爺ちゃんと呼んでいますので、その知り合いである貴方もお爺ちゃんかなと思いまして……駄目ですか?」

 エミリアさん策士ですね。上目遣いで懇願とは、ライオルで学んだ甘え技術を存分に生かしていらっしゃる。

「おおう……問題ないぞ! 好きに呼んでいいぞ! そいつは無料ただでやるぞ馬鹿野郎!」
「いえ、無料ただは流石に困るので、銀貨五枚でよろしいですか?」
「仕方ねえな、お嬢ちゃんがそう言うならそれでいいぜ」
「ありがとう、お爺ちゃん!」
「馬鹿野郎!? 無料ただで持っていけよぉ!」

 面白い爺さんだ。
 でもな爺さん、そのナイフの使用先は料理用ですよ? 見せたナイフは料理にしか使ってないやつだったし、真実を知ったら……いや、お爺ちゃんの一言で全て許しそうだ。
 そしてライオルと似ている部分が多いから、二人は同属嫌悪ってやつなのかもしれないな。
 無料と言い張る爺さんにエミリアが強引に銀貨五枚を握らせていると、一通り振り終わったレウスが呼んでいた。

「おーい、おっちゃん。振り終わったよ」
「ああ? 馬鹿野郎が、どれが一番しっくりきたんだ?」
「五番目と六番目かな? どっちもあと一歩って感じなんだ」
「ふーむ……馬鹿野郎にしては珍しい癖を持つようだな」
「俺は馬鹿野郎じゃないぜ。レウスって名前があるんだ」
「馬鹿野郎が! お前はやっぱりあのライ野郎の弟子なんだな。同じ武器を選ぶんだな!」
「俺はレウスだ! 俺は兄貴の弟子だし、同じ武器ってどういう事だよ」
「馬鹿野郎が!」
「レウスだ!」

 ……偏屈と天然では話が進まない。
 あまりにも不毛なので介入し、話を纏める事にした。

「……つまり色んな種類の武器を振らせたのは、その人に合った癖を見分けるためだと?」
「そう言うこった! 剣ってのは人によって相性があるんだよ。軽くて鋭いやら、重くて破壊力重視やら色々あるんだよ馬鹿野郎が」
「兄貴は馬鹿じゃねえ!」
「あれはただの口癖だから黙ってなさい。それでレウスはどういう方向だと?」
「重くて鋭い物だな。重心も手元よりで、あのライ野郎とほぼ似通った癖だ。全く、あいつがここまでやれと言ってくるとは、お前さんら余程気に入られたんだな」

 偏屈でどこかおかしい人だが、腕と目は確かだな。レウスは頻繁に剣が軽い軽いと愚痴っているし、ライオルのあの巨大な剣を作った実績もあるようだからこの人に任せて良さそうだ。

「ではこのレウスに合った剣を一本打ってもらえないでしょうか? 今はこれだけしかありませんが、足りない分は後日必ず払いますので」

 懐から金貨五枚を机に置いた。正直この程度では全然足りないだろうが、誠意はしっかりと見せ付けるのが良さげな相手だからだ。

「私からもお願いします」

 エミリアも懐から金貨一枚を取り出して重ねた。ちょっとエミリアさん? 格好良く決めてるけど、金貨持ってるってばれたんじゃないの?

「兄貴……姉ちゃん……」
「へっ……中々男気溢れた主人だな馬鹿野郎が」

 だが本人は気付いてない様子だ。何か二人揃って感動しているので、このまま押していこう。

「ライオルに作ったような立派な剣とは言いません。この子が大きくなり、もっと強くなるまで耐えられる剣が欲しいんです」
「……俺としては中途半端な剣を作るつもりはねえ!」
「やはり無理ですか?」
「違ぇ! 俺は職人として中途半端な剣を作らねえって事だ。作るならこの馬鹿野郎が大きくなっても耐えられる剣を打ってやる!」
「という事は……作ってもらえるのですね?」
「そうだ。久々に俺の実力を揮える相手の剣を打てるんだ。腕が鳴るぜ馬鹿野郎!」

 室内でハンマーを振り回し、やる気満々で鼻息荒くする姿に不安は覚えるが、とにかくレウスの剣問題は解消だな。

「あと金はいつでもいい。出世払いで構わねえぞ」
「ですが、生活とか材料費とかあるでしょう?」
「俺は貯金があるからいいが、生活費はお前さんらの方が大変だろうが。材料費なんか餓鬼が気にしてんじゃねえよ馬鹿野郎!」
「そうですか、何かあったら言ってください。一応俺達はそれなりに強いつもりなので、簡単な材料なら取ってこれますから」
「任せときなおっちゃん!」
「あー……そういえば手紙にそう書いてあったな。これも何かの縁か。おい、そこのー……何だっけな?」
「シリウスです。そちらは?」
「俺はグラントだ。あのライ野郎がお前さんはとても頭が良いと書いてやがるからよう、相談があるんだよ」

 顔を顰めて話し始めたので、俺はグラントの話に耳を傾けた。
 どうやら最近アイデアが浮かばないらしく、何か新しいインスピレーションが湧く刺激が欲しいそうだ。

「適当な武器を作っても使いこなせる者もおらんし、作ってもすっきりしないんだよ。何か面白いアイデアねえかな?」
「ふむ……とりあえず俺の武器が変わっているので見てみますか?」

 ディーから貰った異常に軽い剣と、フィアからもらったミスリルナイフを渡してみた。興味深そうに二本を眺め、特に興味を持ったのは剣の方だった。

「このナイフはミスリルで作られた以外、特に何かあるわけじゃねえな。だが、この剣は妙だ。この鉱石で作られた剣がここまで軽いとは思えん」
「鉱石って事は、材料がわかるんですか?」
「こいつは『グラビトロン』という鉱石で作られていてな、本来この鉱石は頑丈でとにかく重い鉱石なんだ。こんな短い剣でも三十キロはあってもおかしくないんだが、こいつはまるで重さを感じねえ」
「となると、やはりこの剣に秘密が?」
「だろうな。この刃に刻まれた紋様か、又は柄の中に何か細工があるのかもしれねえ。そこら辺は俺の管轄外だからわからねえな馬鹿野郎が」
「ありがとうございました。そこまでわかれば俺としては十分です」

 グラントには大した刺激にならなかったようだが、俺としては十分な刺激となった。この剣は予想以上に秘密がありそうだ。調べる価値はありそうだ。

「それはそれで面白かったが、他に何かねえか馬鹿野郎」
「そうですね、ではこういうのはどうでしょうか?」

 俺が話したのは刀の技術だ。
 刀ってのは一つの鉄で出来ているわけじゃない。
 芯鉄と呼ばれる柔らかい鉄が中心にあり、その外側に皮鉄と呼ばれる硬い鉄で覆われるのが刀だ。
 そうする事により、柔らかい芯鉄が衝撃を吸収して折れず、硬い外側の皮鉄が曲がるのを防ぐ。そうやって折れず、曲がらず、切れるという立派な刀はあるわけだ。
 残念ながら情報として知っているだけで作り方までは知らない。だけどアイデアとして色々役に立つんじゃないかと話してみたのだが……。

「馬鹿野郎っ!」

 気に障ってしまったのだろうか、ハンマーを床に叩きつけて床板が砕けてしまっていた。

「芯鉄と皮鉄……とんでもないアイデアだ! そんなの実現できたらとんでもない事になるぞ!」

 違った、この人感極まっただけだ。それにしても床板砕くってやり過ぎだろ。

「ですが作り方までは知りませんよ?」
「馬鹿野郎! それを探すのが俺の仕事なんだよ! おおお……燃えてきた!」

 再びハンマーを振り回し、正に有頂天であった。
 ついでに他の問題もグラントを通せば解決するかもしれない。提案するだけしてみようか。

「あの……レウスの剣も忘れずお願いしますね」
「わかっておるわい。どちらにしろ今は材料が無いからな。入手するまで時間がかかるからしばし待っておれ馬鹿野郎!」
「それと俺達ギルドに登録が出来ないので、魔物を倒した素材を買い取ってもらえないんです。よければ、グラントさんが使えそうな素材があったら買い取ってもらってもいいですか?」
「ああん? そりゃ構わないぜ。適当な物だったらいらねえが、最悪俺を通してギルドで売ってやらぁ」
「ありがとうございます。ではその内……えーと、撃滅滅殺金剛鍛冶屋げきめつめっさつこんごうかじやに素材を持って来ます」
「馬鹿野郎! 家は撃滅抹殺金剛鍛冶屋げきめつまっさつこんごうかじやだ!」

 滅殺と抹殺の一字違いであるが、激しくどうでもよかった。

「ライ野郎もよ、俺の作ったあの極点覇王紅蓮剣きょくてんはおうぐれんけんをよ、面倒だから紅蓮と呼ぶんだぜ? 俺のセンスを理解しやがらねえんだ馬鹿野郎が!」

 俺もライオルに一票である。
 エミリアも同じ意見なのか、顔を引きつらせて無理矢理笑みを作っていたのだった。

「俺は極点覇王紅蓮剣きょくてんはおうぐれんけんも良いと思うぜ!」
「わかってるじゃねえかレウ野郎!」

 レウス……お前もか。

 先人から学ぶのは結構だが、ライオルの変態性といい、グラントのネーミングセンスといい、変な物まで吸収してる気がする。
 何度も言った気がするが、激しくこの子の将来が不安だ。

「シリウス様……あの子はしっかり教育していきましょう」
「そだね、二人で頑張っていこう」

 笑い合う二人の姿を見ながら、俺達はレウスを間違った方向へ進ませまいと固く誓うのであった。


半分勢いで書きました。
最初は幕間じゃなくて閑話としてたのですが、閑話って無駄話って意味なのでこれは違うと思い、急遽幕間に変更したのでした。
+注意+
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