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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

二十章 経験

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予想外の資質




 早朝……旅の道中で立ち寄った村の宿で目を覚ました俺は、窓から見える景色を眺めながら体を起こした。
 隣には穏やかな表情で眠るフィアがいたが、俺が目覚めた事に気付いてゆっくりと目を開けていた。

「おはよう。まだ朝食の時間には早いから、もう少し眠っていたらどうだ?」
「……ううん、私も起きるわ。おはよう、シリウス」

 朝の訓練は結構騒がしくなるので、村の中では休みと決めているが、やはり俺たちは自然と目を覚ますようだ。
 欠伸をしながら起き上がったフィアは大きく伸びをして、俺の頬に口付けをしてから微笑んでいた。
 その魅力的な笑みに男の本能が刺激されるが、それを抑えながら着替えを済ませた俺は、愛用の櫛で髪を梳いているフィアの姿をぼんやりと眺めていた。

「もう少しかかるから、先に顔でも洗ってきたらどう?」
「そうさせてもらうか」

 こうした穏やかな時間を楽しむのもいいが、せっかく早く起きたのだからホクトと軽く散歩でもしてくるか。
 そして部屋を出て宿の外にある井戸へと向かうと、そこにはすでに先客がいた。

「おはよう、兄貴!」
「お父さん、おはよう」
「おはようございます……」

 おそらく俺と同じく顔を洗いに出て来たと思われるレウスとカレンが井戸の前に立っていたのだが、二人の隣にはカレンと年齢の近い女の子が一緒だった。

「ああ、おはよう。ところでその子は?」
「イルアちゃんだよ。さっき名前を教えてもらったの」
「この宿を経営している人の娘なんだってさ」

 詳しく話を聞いてみれば、イルアと呼ばれる少女は宿の手伝いをしているらしく、先程会ってお互いの自己紹介が終わったばかりだそうだ。
 少女の足元には水の入った木製のバケツが置かれ、これで宿内にある水瓶に水を溜めている最中だそうだが、今のイルアは少し困った表情をしていた。

「あの……私は大丈夫ですから」
「でも、大変そうだよ?」
「そうだぜ。こういう時は皆でやった方が楽だし、俺にとっては朝の運動みたいなものだから気にするなって」

 どうやら二人はイルアの水汲みを手伝おうとしていたらしい。
 確かに幼い子には大変だろうが、イルアからすれば客に手伝わせるのは不味いから困っているのだろう。
 カレンとほとんど同じ年齢らしいが、中々賢い子のようだ。

「イルア。水汲みの調子はー……どうしたんだい?」
「あ、パパ。あのね……」

 すると娘の様子を見に来たのだろう、宿の経営者であるイルアの父親がやってきて娘から事情を聞いていた。
 その会話により、イルアは自主的に宿の手伝いをしている事も判明した。

「申し訳ありません。気持ちはありがたいのですが、いつもやっている事ですから大丈夫ですよ」
「レウスお兄ちゃんは力持ちだからすぐ終わるよ?」
「任せとけ。水瓶ごと持ってきてやるぜ!」
「ですがお客様に手伝ってもらう訳には……」

 旅に出て初めて出会った子供だからなのか、カレンはイルアに興味を持っているようである。
 俺たちから教わるだけでなく、同年代の子と触れ合うのもやはり大切だと思うので、少し手助けするとしよう。

「なら、その子の仕事を俺たちがやる代わりに、うちのカレンと遊んであげてくれませんか?」

 カレンの故郷では子供が少なく、彼女も翼の劣等感があったのか、同年代の子と遊んでいる姿をほとんど見なかったのだ。
 なので有翼人という点を隠してこっそりと伝えてみれば、子を持つ親として共感してくれたのか宿の主人は快く頷いてくれた。

「それならば喜んで。娘が手伝ってくれるのは嬉しいのですが、この村には子供が少ないので遊び相手が中々いなくて……」
「どうしたの、パパ?」
「イルア。今日はお客様の相手をしてくれないかい?」
「でも水汲みが……」
「お客様の相手をするのも仕事の一つだよ。これはお前にしか出来ない事だから頼んだぞ」

 自分にしか出来ないと、父親から頼まれたイルアは嬉しそうに頷いていた。
 突然の流れにカレンは困惑していたが、俺は片膝を突いてカレンと視線を合わせてから頭を撫でた。

「これも旅での出会いだ。俺たちの事は気にせず一緒に遊んできなさい」
「……うん!」
「ねえねえ! カレンちゃんには凄い狼がいるってパパから聞いたけど、本当なの?」
「ホクトの事? ホクトならあそこの小屋で寝てるよ」
「私も見てみたいなぁ」

 幸いな事にイルアは積極的な性格で、少し気遅れしているカレンを上手く引っ張ってくれているようだ。
 そんな二人の少女が近くの小屋へ向かうのを見届けたところで、レウスがバケツを手にしながら井戸から水を汲み始めていた。

「水汲みなら俺だけで十分だからさ、兄貴はカレンと一緒にいろよ」
「いえ、先程はああ言いましたが、やはりお客様に手伝わせるわけにはいきません。水汲みなら後で私がー……」
「いいから気にするなって。どうせすぐに終わると思うし、兄貴も気にせず行っていろよ」

 カレンが気になるのは事実だし、ここはレウスの言葉に甘える事にしよう。
 宿の主人と一緒に歩き去っていくレウスを見送り、素早く顔を洗ってからカレンの後を追いかければ、二人はホクトがいる小屋の前で入口の閂を外している最中だった。
 ちなみにいつものホクトであれば自主的に小屋を出てくるが、獣人が少ないこの村で勝手に歩き回れば大騒ぎになりそうなので、非常時以外は出て来ないように頼んである。

「ねえ、カレンちゃん。中から変な音が聞こえるけど、これってホクトなの?」
「何だっけ? どこかで聞いた音かも……」

 二人が聞いている不思議な音だが、おそらく俺が接近しているのに気づいたホクトが小屋の中で尻尾を振っている音に違いあるまい。体が大きい上に力が強いから尻尾の音も並ではないのだ。
 そして首を傾げるイルアが閂を外して扉を開いてみれば……。

「オン!」
「「うきゃあ!?」」

 扉の前で待機していたホクトの顔が間近にあったので、二人は悲鳴を上げながら飛び跳ね、背後にいた俺の背中に隠れてしまった。
 まあ、いきなり狼が顔が目の前に現れれば驚くのも無理はあるまい。仲間であるカレンも驚いているのは、おそらくイルアの悲鳴に反応したと思われる。
 少女たちを刺激しないよう、その場から動けずにいるホクトが寂しそうに鳴く中、俺は二人の頭に手を置いて落ち着かせた。

「クゥーン……」
「ほら。ホクトは大人しいから大丈夫だよ。近づいて触ってごらん」
「か、噛まないよね?」
「平気だよ! ほら、イルアちゃんも早く!」

 一足早く立ち直ったカレンが遠慮なく触っている御蔭か、イルアも恐る恐るだがホクトに触る事が出来た。
 このまま触り続けていればすぐに慣れるだろう。そう思いながら俺もホクトの頭を撫でていると、さっきまで首周りを触っていたカレンがホクトの尻尾にぶら下がってはしゃいでいた。

「見て見て! ホクトならこんな事をしても平気なんだよ!」
「あ、私もやる!」
「クゥーン……」
「頑張れ、ホクト」

 尻尾を玩具にされて、困ったように鳴くホクトを俺は慰めるのだった。



 それから一頻りホクトと触れ合い、朝食の時間になったところでイルアと別れた俺たちは、宿の食堂で朝食を食べながら今日の予定を話し合っていた。
 サンドールで開かれる大陸間会合レジェンディアの日までまだ時間はあるが、寄り道が出来る程の余裕はない状況だ。
 なので今日中にここを出発しても良かったのだが、この村に到着した時間帯が遅かったので、まだ物資の補給が済んでいないのである。

「出発は明日にして、今日はこの村で休みながら必要な物を揃えるとしよう」
「わかりました。馬車に残っている物資は確か……」
「そうね。保存食はまだ十分だけど、新しい物も幾つか買い足しておいた方が良いわね」
「新鮮な食材も欲しいよね。他に足りない物は何かあったかな?」
「俺は新しいタオルと動き易い服が欲しいな。そろそろ破れそうなんだ」
「蜂蜜があと十個しかないよ?」
「「「「「十分ある」」」」」
「えーっ!?」

 一部から不満が出ながらも話し合いは終わり、役割分担が決まったところで解散となった。
 俺の担当はエミリアと買い出しだが、それもすぐに終わりそうなので、実質的に今日は自由時間のようなものである。
 だから買い出しが終わればカレンの訓練でもしようと考えたが、今朝の状況から考えるに……。

「カレン。せっかく友達が出来たんだから、また一緒に遊んできたらどうだ?」
「イルアちゃんの事? お友達……なのかな?」
「お互いの名前を知って、一緒に遊んだんだ。もし違うなら、今から友達になろうって言えばいい。カレンが嫌じゃなければの話だけどな」
「ううん……友達になりたい! でも今日の訓練は?」
「それは今すぐじゃなくても出来る事だろう? 訓練は後でしっかりと考えているから、気にせずに行ってくるといい」

 子供は何でも吸収しながら成長していくものなので、同じ目線である同年代の子と遊ぶ経験も大切だろう。
 それは今の俺たちには出来ない事なのだから、機会がある限りは経験させてやりたい。
 これ以上仲良くなれば別れが寂しくなるだろうが、それもまたカレンを精神的に成長させる筈だ。
 というわけで宿の亭主に話を伺ったところ、イルアはまだ子供なだけあって大した事は任されていないので、先程と同じように説明すれば理解してくれた。

 それから朝食が終わって一度解散し、エミリアと一緒に村の雑貨店へ向かおうとしたところで俺は気付いた。

「ふむ……少し手持ちが心許ないな。行く前に馬車から少し持ってくるか」
「私の分もありますから、馬車に戻る必要はないかと」
「大した手間じゃないし、ついでにカレンとホクトの様子も見てみようと思ってな」
「そういう事ですか。仲良く遊んでいるといいのですが」

 少しだけ心配しているエミリアと一緒に馬車を停めてある小屋へと向かえば、カレンとイルアの姿を見つけた。
 なるべくホクトの近くで遊んでいなさいと伝えた通り、二人はホクトに見守られながら小屋の前に広がる原っぱに座っており、目の前に置いた小さい木の板に野草を乗せていた。

「やっぱりお肉がないと寂しいよね」
「うん、頑張って狩って来てね」
「……オン!」

 どうやらままごと遊びをしているらしく、カレンとイルアが奥さん役で、ホクトが夫役のようだ。
 ホクトならペット役だろう……とか、何故奥さん役が二人なのか……と、色々疑問は尽きないが、ホクトは狩りに出かける体で二人から離れ、小屋の陰から様子を伺っていた俺たちの下へやってきた。

「お疲れさん。お前に任せてばかりですまないな」
「オン!」
「子供は嫌いじゃありませんし、これも予行練習ー……え!? まあ……そこまで考えていたのですね」

 ホクトの返事を聞くなり、エミリアが頬に手を当てながら悶え始めたので、言葉がわからずとも何となく想像がつく。
 いずれ俺と妻たちの間に産まれるであろう、子供たちを相手にする練習……と、言ったに違いあるまい。

「シリウス様は子沢山になりそうですから、ホクトさんも大変ですね。いえ、もちろん私もシリウス様の子たちを産み、立派に育て上げて見せますからー……」
「あれは放っておくとして、ホクトが嫌じゃないならいいんだ。もうしばらく頼んだぞ」
「オン!」

 前世では飼い犬が子供の面倒を見る話を聞くが、ホクトもそれに当てはまるようだ。
 将来を夢想して張り切っているエミリアを放置し、獲物代わりに適当な木を咥えたホクトが二人の下へ戻ろうとしたところでそれは起こった。

「や、止めてください、お客さん!」
「おい、そっちの餓鬼じゃなくて金髪の方だぞ?」
「そうだったか? けど騒がれると面倒だし、ちょっと黙ってろ」
「むぐっ!」

 少し目を離した隙に柄の悪そうな三人の冒険者が現れ、イルアを捕まえて口を塞いでいたのである。そのまま粉のようなものをイルアに嗅がせれば動かなくなったので、何か薬のようなものを使われたようだ。
 非常事態にすぐさまエミリアとホクトが飛び出そうとするが、俺は二人の前に手を出して止めていた。

「イルアちゃん!」
「へえ、逃げないのか。優しいお嬢ちゃんな事だ」
「放してほしいか? だったらお前が俺たちと一緒に来るなら、こいつを放してやってもいいぜ?」
「……何で?」
「ほら、嬢ちゃんにはエルフの仲間がいるだろ? 俺たちはそのエルフに用があるんだよ」

 連中の狙いはフィアで、カレンを人質にして捕まえようとしているわけか。現時点でカレンが有翼人だとばれてはいないようだが、掴まってしまえば時間の問題かもしれない。
 そして未だに待機を命じている俺に、エミリアは真剣な表情を向けていた。

「何か……お考えがあるのですね?」
「ああ、少しだけ様子を見よう。この状況でカレンがどう動くのか知りたい」

 昨夜は人の良い冒険者に出会えたが、世界には欲に塗れた冒険者が大勢いるものだ。
 そして俺たちと初めて出会った時と違い、今のカレンは己を守る術を知っている。
 落ち着いて自分が出来る事を思い出せば、あの程度の大人が三人いようと撃退は難しくはあるまい。
 まだ幼いカレンには酷な事だろうが、追い込まれる状況を経験しているとしないとでは大きく違うものだからな。

「大丈夫でしょうか?」
「確かに危険な状況だが、教えた『インパクト』を使えばこの場を切り抜ける事も可能な筈だ」

 今まで魔法を使う姿を何度も見たが、カレンは狙った箇所に魔法を……『インパクト』を当てる技術が非常に優れているので、イルアを避けて魔法を当てるのは難しくない筈だ。
 だが、今の状況でいつも通りの動きが出来るとは思えないので、失敗に備えていつでも飛び出せるように準備をしておく。
 俺の合図と同時に、ホクトが冒険者たちの反対側に回り込んで気を惹き、それと同時に俺とエミリアが踏み込んで一気に制圧する流れである。
 さあ、後始末の準備は整った。
 大切な人が狙われていると知ったお前はどう動く?

「フィアお姉ちゃんに何をするの?」
「別に大した事じゃないさ。ちょっと俺たちと遊んでほしんだよ」
「何ならお前さんも一緒に連れて行ってやってもいいぜ?」
「……おじさんのような人、カレン知ってる! 皆に酷い事をする人だよ!」
「ち、面倒だな」
「いいからさっさと来い! こいつがどうなっても知らんぞ?」
「……させない」

 冒険者たちの恫喝に怯えながらも、フィアやイルアの事で怒りが勝っているのだろう。魔力を高めている様子からしてカレンは戦う事を選んだようである。
 しかし、確実を求めるのならばホクトを呼ぶべきだ。
 幼いカレンなら頼る事は恥ではないし、イルアの安全を考えればそれが最善だからだ。
 なので助けを呼べばすぐさまホクトを向かわせる事を考えていたが……お前はそれを選んだか。
 怒りで周りが見えていないのかもしれないが、怯えて何も出来ないより遥かにマシだな。
 後で色々と指摘する必要はあるが、確実に成長が見られるカレンに少しだけ口元が緩んだその時……俺は違和感を覚えていた。

「……何だ?」

 感覚の赴くまま『サーチ』でカレンの魔力の動きを調べてみれば、魔力の集束が『インパクト』とは若干違うようなのだ。
 それは小さく、まるで一発の弾丸のように……。

「まさか!?」
「シリウス様!?」

「イルアちゃんを……放せ!」

 即座に小屋の陰から飛び出した俺は冒険者たちの前に立ち塞がると同時に、カレンの放った魔法を左手で握るように受け止めていた。

「……お父……さん?」
「な、何だ!?」
「こいつ、どこから!?」
「見られたのならー……ぐはっ!?」」

 突如目の前に現れた俺に冒険者たちは隙だらけだったので、俺はイルアを捕まえていた男へ肉薄し、少女を確保しながら地面に投げて叩きつけた。
 続いて残った二人が殴りかかってきたが、片方を足払いで転ばせてから、残った男の喉を握り潰す勢いで掴んだ。

「消えろ」
「がっ!? て、てめえ……何を言ってー……」
「もう一度言う。今すぐ俺たちの前から消えろ」
「ガルルルっ!」

 冒険者たちが俺の殺気に呑まれる中、その背後からホクトが唸り声を上げて近づいてきた。
 そんな俺とホクトに睨まれ、完全に臆している冒険者たちに俺は告げる。

「そして俺たちの……俺の妻と娘の前に二度と現れるな。さもなくば、俺とお前たちの匂いを覚えたこの狼が地の果てまで追いかけ……」

 掴んでいた男を放り投げ、倒れたまま見上げてくる冒険者たちに俺は二本の剣を見せていた。
 それは冒険者たちの腰から拝借した鉄製の剣だが、片方は俺が素手でへし折り、もう片方はホクトの牙によって容易く噛み砕かれた。

「お、俺の剣が!?」
「ひいっ!?」
「お前たちの頭がこうなる。理解したのなら、さっさと村を出て行くんだな」
「「「は、はい!」」」

 そして逃げ出した冒険者たちが村の外へ向かうのを見送ったところで、イルアを介抱していたエミリアとカレンへ振り返った。

「イルアちゃんは大丈夫?」
「使われたのはスリープフライの粉ですから眠っているだけです。直に目覚めますよ」
「……良かった」
「ああ、皆無事で良かったよ」

 安堵の息を吐きつつ、魔法を受け止めた左手に視線を向けてみれば、掌の肉が抉れて血塗れになっていた。少々痛いが、傷はそれ程深くはないので止血しておけば問題はあるまい。
 少し遅れて傷に気付いたエミリアが止血用の布を取り出す中、カレンだけは信じられないとばかりに目を見開いていた。

「さっきの剣で……斬ったの?」
「違う。カレンならわかるだろう?」
「でも、お父さんなら……」
「カレン。俺は別に怒っているわけじゃない。正直に言えばお前の成長を嬉しくも思っているんだが、まず聞かせてほしい事があるんだ」

 小さい岩なら軽く砕ける『インパクト』であるが、今のカレンでは肉を裂く程の威力は出せない。
 更に俺は魔力で肉体を強化していたので、普通なら赤く腫れる程度で済む筈なのだが、見ての通り掌の肉が見事に抉れてしまっている。
 だが、こうなるのも当然かもしれない。
 イルアを助ける為に放ったカレンの魔法は……。

「俺は教えた覚えがないんだが、今の魔法はいつから使えるようになったんだ?」

 威力も速度も大分劣ってはいるが、あれは間違いなく『マグナム』だったからだ。



 おまけ ままごとの真実


 シリウスに言われ、ホクトの近くでイルアと一緒に遊ぶ事となったカレン。
 しかし、困った事にカレンは同年代の子と遊ぶ事に慣れておらず、何をして遊べばいいかわからなかった。

「じゃあ、おままごとをしよう!」
「おままごと?」

 意味がわからず首を傾げるカレンだが、イルアから説明してもらったので実際にやってみる事にした。

「カレンちゃんはパパとママ、どっちの役をやる?」
「じゃあ……お母さん」
「うーん、それじゃあ私がパパかぁ。でも……ママもやりたいかも」
「イルアちゃんもやったら?」
「でも、ママは一人だよ?」
「だって私のお父さんは三人いるよ?」
「そうなんだ!?」

 妙な説得力によってママ役が二人になるのは構わなくなったが、パパ役がいなければままごとが成立しない。
 悩む二人が周囲を見渡していると、近くで少女たちを見守っていたホクトの存在に気付いた。

「じゃあ、ホクトがお父さんね」
「オン!?」
「えー? ホクトはペットじゃないの?」
「だってホクトって凄く強いし、大きいから」
「そっか……じゃあホクトがパパね。おかえり、パパ」
「おかえり」
「…………オン」

 こうして、許可もなく唐突に始まるままごとにホクトは巻き込まれたのだった。



※ 異世界の子供って何の遊びをしているんだろう……と、考えていた時に浮かんだ小ネタです。






 おまけその二(本当は没ネタだけど、思いついたので書いたみた)

 ホクトの観察日記


 今日お父さんから何も書いていない本を貰った。
 将来、本を書きたいのなら色んな事を書いてみるのがいいって言われたから、ホクトの事を書く事にした。


 一日目……ホクトは『オン』と吠えた。

 二日目……ホクトは今日も『オン』と吠えながら、お父さんとフリスビーで遊んでいた。

 三日目……ホクトは今日も『クゥーン』と鳴きながら、お父さんのブラッシングで気持ち良さそうにしていた。

 四日目……。



「なあ、カレン。四日目から白紙なんだが?」
「だってホクトは『オン』って吠えているか、お父さんとフリスビーして遊んでいるか、お父さんのブラッシングで気持ち良さそうにしてるのばかりだもん」
「クゥーン……」
「ほら! 今も気持ち良さそうにしてるし!」
「…………」

 シリウスは何も言い返せなかったそうな。



※没理由
 カレンは観察力が高いキャラなのに、これだと低過ぎる……という事で。






 まずは……申し訳ありませんでした。
 前話で二週間以内とか書いておきながら、全力で締め切り破ってしまいました。

 本来ならこの更新で村でのイベントを終わらせる予定でしたが、リアルでの予定外の事や、話の配分を完璧に間違ってしまったので一旦ここで切りたいと思います。
 というわけで、次回の話はあまり長くならず、近日には更新……という流れになると思います。
 何事もなければ……たぶん。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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