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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

二章 出会い

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貴方達は選ばれました

「えーと……大丈夫? 運が良かったわねクズ!」
「っ!?」

 おいおい、目覚めた直後にその台詞はどうよ? おそらくノエル自身も混乱していて、最初が肝心だと緊張して言葉にならなかったと思われる。
 しかしクズという単語はどこから出てきた?

「……何を言っているんだお前は」
「違います違います! 今のはその混乱したと言いますか慌てて色々混ざっちゃって!」
「―っ!?」
「いいから落ち着いてあの子を見なさい」

 お前が慌てているとその子も落ち着かないだろうが。俺とディーは下がり、ノエルに早く話しかけろとジェスチャーする。

「あ、う……ごほん。えーと……大丈夫かな?」
「ぁーっ!?」

 話しかけられてビックリしているが、周囲を必死になって見渡している女の子。そして隣に寝ている男の子を確認して、少しだけ表情が和らいでいた。

「うん、弟さん? も無事だよ。貴方は大丈夫? 何か欲しい物はないかな?」
「ぁー……ぅー」

 ノエルは一つ一つ確認させるように話しかけて女の子を落ち着かせている。良い調子だ。最初からそれをやらんかい。

「あの子は喋れないのですか?」
「俺が助けた直後からだったよ。炎症を起こしてるだけだから治る見込みはある」

 二人はライオルの家で『スキャン』を実行済みだ。身体中に炎症と傷の化膿が幾つかあり、栄養失調に水分不足で正直やばいレベルではあった。しかし致命的な病気は無く、女の子の喉だって俺が活性化させれば治るだろう。だが今は手を出すタイミングじゃない。
 緊張を解し、警戒を解かせるまでノエルに任せるとしよう。

「ほら見て、私には首輪ついてないでしょ? ここの人達は貴方達に危害を加える人は絶対いないから、ね?」
「……ぁ!?」

 女の子は首を触って驚き、弟の首を見て混乱していた。おそらく首輪が無いのに気付いたのだろう。

「あ、気付いた? 首輪は外したから安心してね」
「ぁ……ぅ?」
「気にしちゃ駄目駄目、外れたからそれで良いじゃない。そうだ、お腹空いてない? 暖かいスープあるんだけど、とっても美味しいスープなんだよ」
「っ!?……ぅぅ」

 首輪が外れたことに涙していた女の子はスープという単語に反応する。だが、横で眠っている男の子に視線を向けて首を振った。ノエルはそれだけで察したらしい。

「そっか、弟さんと一緒じゃないと嫌なんだね。じゃあ私とお話しようか」

 持っていたハンカチで涙を拭うと、ゆっくりとだが女の子は頷いてくれた。ノエルの裏表無い性格は子供受けが良くて助かる。

「私の名前はノエルって言うの。よければ貴方のお名前教えてくれないかな?」
「……ぃぁ」
「ごめんね、声がちょっと無理っぽいよね。文字は? 書けない? えーと……」

 ノエルがこちらを向いて助けを求める。ギブアップ早いなー。せっかく見直したのに。

「はぁ、ディーはエリナを呼んできてくれ。そしてノエルは俺を紹介して」
「わかりました」
「はい。えーと、あそこにいる御方が私達のご主人様であるシリウス様だよ。助けられたの覚えてない?」
「……ん」

 まだまだ警戒心は強いようだが、俺の事は覚えていてくれたらしく頷いてくれた。ディーは刺激しないよう静かに退室し、俺もまた静かにノエルの隣に向かう。

「改めて紹介するよ。俺はシリウス。ノエルの主人で君達を保護した者だ」
「……?」
「俺は君達の事が知りたい。でも、君は今喋れないだろう? まずはその喉を治してあげたいのだけど、どうかな?」
「シリウス様は心優しい御方ですから大丈夫だよ。ほら、こんな事したって怒らないんだから」

 そう言って俺の頭をわしゃわしゃと掻き乱すこの小娘。安心させるためのポーズってのはわかるが、後で覚えてろよ。ノエルの暴走をポーカーフェイスで受け入れていると女の子は頷いてくれた。

「ありがとう、それじゃあ君の喉に触るよ。軽く熱は感じるだろうけど、痛くはないから安心して」
「ぁ……ぁぃ」

 少し不審げであるが、女の子は顔を上げて首を晒してくれた。お陰でよく見えるが、首輪が擦れて出来た傷痕が痛々しいな。これもついでに治してしまうか。
 首に手を当て、魔力を流し込もうと集中した瞬間にそれは起こった。

「がぁあああっ!」
「っ!」

 突如男の子が起き上がり腕に噛み付いてきたのだ。

「シリウス様!?」
「待て!」

 飛び出しそうなノエルを反対の手で押さえつつ、魔力を散らさないよう集中は乱さない。衰弱しているから顎の力は弱いが、犬歯が発達しているせいでちょっと痛い。

「ぃ――ぁ!」
「君も喋るな、治療が遅れる」

 女の子は弟を止めようとするが、声を出されちゃ治療箇所が安定しない。この男の子も必死なのだ。手負いの獣ってのは性質が悪いから好きにさせておこう。

「うぅぅぅ!」
「少しタイミングが悪いな」
「わわ、シリウス様、血が……」

 犬歯が刺さったせいで血が少し流れている。我慢できる痛みだけど不味いな。

「君、手なら動かしていいから、弟君を撫でてやるといい」
「……?」
「そうだ。俺は大丈夫だから、早く安心させてやれ」

 何が不味いって、こんな状態をエリナが目撃したらこの子は間違いなくぶっ飛ばされるぞ。俺の敵には容赦ないからあの人。
 女の子は男の子の背中をゆっくりと撫でて落ち着かせ、数分後にようやく口を離してくれた。

「姉ちゃん、何で止めるんだ!」
「ん……――」
「嫌だ! 信じられない。おい、姉ちゃんから手を離せ!」

 再び襲い掛かろうとするが、姉の手によって止めさせられる。姉と違い弟は反骨精神が逞しいようだが、奴隷の経歴を考えると弟の行動の方が正しいんだろう。
 弟を宥めつつ数分、治療が完了したので手を放した。

「……よし。そろそろいいだろう。何か話してごらん」
「やめろ、姉ちゃんにこれ以上無理をさせるな! あいつらのせいで姉ちゃんは喋れなくなったんだからな!」
「君の喉はもう治ってる筈だ。声を出してみるといい」

 男の子は喚き散らしているが、構わず促してやる。女の子は困惑しつつも息を吸い。

「……れ、うす?」
「姉ちゃん!?」
「れうす……レウス。私の声わかる?」
「わかる! わかるよ姉ちゃん!」
「ぐすっ、良かったですねぇ」

 涙を流しつつ抱き合う姉弟にノエルがハンカチで目を覆っていた。待て待て、泣く前にやる事あるだろうが。

「スープは?」
「そうでした! すぐに用意します」

 冷めないように細工はしてあるが、せっかく作ったんだから早めに食べてほしい。底の厚い器にスープを入れ、ノエルは二人の前に笑顔で差し出した。

「弟君も目を覚ましたし、もう大丈夫だよね? はい、暖かいスープを召し上がれ」
「んっ……だ、騙されるもんか! そうやってすごく不味いのを食べさせて僕らを笑うつもりなんだろ!」
「そんな事はないよ。ほら……うん、美味しい」

 言い掛かりをつけてくる男の子、改めレウスだが、心外とばかりに目の前で食べてみせた。その光景にレウスは何も言えなくなり、ノエルは少し真面目な顔で器を二人の手に持たせた。

「二人は沢山酷い目にあったんだと思う。でもね、これはシリウス様が二人の為に一生懸命作ってくれたんだよ?」
「あの……どうして私達を?」
「もしかして助けた理由? それはシリウス様に聞いてほしいけど、今は食べてほしいな」
「そうだ、気にせずそれを食べなさい。冷めるぞ」

 俺の後押しもあってようやく女の子はスープを口にした。

「……美味しい」
「ほ、本当か姉ちゃん? 毒とか入ってないよね?」
「とても美味しいわ。暖かくて、こんなの初めて……」

 レウスも恐る恐る口にし、器から顔を上げると大粒の涙を流しながら悔しげにしていた。

「ちくしょう……うめぇ。何だよ……ひっく、ちくしょう!」
「美味しい……本当に……う、ううぅぅっ!」

 完全に枷が外れたのだろう。恥も外見も捨てて二人は大声で泣いていた。思い切り泣いて落ち着けば、こちらが無害だと理解してくれるだろう。今は遠慮なく泣けばいいさ。

「後は頼んだよ」
「はい、お任せください」

 二人を頼み、俺は静かに部屋を出た。

 部屋を出るとエリナが迎えてくれた。穏やかな笑みを浮かべ俺の手を取る。

「お疲れ様でした。ですが無茶をし過ぎです、もしあの子の力が強ければ大怪我でした」
「見てたのか。心配かけて悪かった」
「全くです。さあ、早く怪我の治療を済ませましょう。あまり言いたくはありませんが、衛生面を考えますと病気の心配が」
「大丈夫さ、悪そうな部分は魔力を使って血で押し流しといた。止血も済んでるから治療も必要ない」
「流石ですね。ですが包帯だけでも巻かせていただきます」

 慣れた手つきで手早く包帯を巻いてくれる。相変わらずの過保護だけど嬉しいものだ。

「ごめんなエリナ。勝手に二人も拾ってきてさ」
「謝ることはありません。むしろ嬉しいくらいです。シリウス様は本当にアリア様のお子様なのだと」
「母さんと?」
「そうですよ。状況は違いますがアリア様もノエルを拾ったのです。あの気まずそうな顔もそっくりでした」

 エリナは楽しげに笑う。知らぬとはいえ母親と一緒の行動をとっていたとは。嬉しいと言うべきなのだろうが、何だかむず痒い感覚だ。

「シリウス様、二人はどうなさるおつもりですか?」
「どうする……か。今の家に二人を養う余裕はあるー……」
「シリウス様」

 言葉を遮り、エリナは真剣な顔で俺の両肩に手を置いた。

「家や我々の事は気にせず、貴方の正直な気持ちをお聞かせください。我々は従者ですから、シリウス様の意向に従うだけです」
「それがたとえ無理難題だとしても?」
「それでもです。ですが、無理難題でしたら意見ぐらい言わせてもらいますよ」

 まいったな、この人は本当に俺を理解してくれている。エリナの言葉で、俺の中にあった後ろめたさはほとんど消えていた。

「このまま保護してやりたい。ついでに鍛えてやって、後は本人の自主性に任せようと思う」
「二人はお金もなく体も未熟です。正直に申せば我々が苦労を背負うだけでしょう。それでもですか?」
「それでもだ。これは人助けじゃなくて俺の自己満足なんだよ」

 悪く言うなら教育者としての練習ってところだな。前世と違い魔法があるから多少の無茶は押し通せそうだし、種族の違いによる成長差もわかるだろう。

「では二人を選んだ理由はあるのですか? たまたま助けたからだと?」
「誰でも良かったわけじゃないと思う。助けた直後は面倒事になりそうだと思ってたくらいだし」

 俺が二人を保護しようと思ったのは、女の子の目を見た瞬間だ。己がどれだけ傷つこうと、守るべき者を守ろうとする決意の眼差し。同じ目をした前世の弟子を思い出してしまったからだ。
 我ながら感傷的だと思うが、それでいいじゃないか。今の俺は六十過ぎのおっさんじゃなくて六歳の子供だし、若者らしく本能に従って生きてやろうと思う。

「互いを守ろうと必死だったからね。そんな二人なら信頼できると思ったんだ」
「シリウス様がそう仰るなら私も信頼しましょう。それで私の要望ですが、二人に従者教育を施してもよろしいでしょうか?」
「従者教育? 俺は別に二人を従者にしたくて拾ったわけじゃないんだが」
「ですが二人を何もせず食べさせるわけにはいきません。住処と食事には対価を、つまり我々の仕事を手伝ってもらうのが一番でしょう」
「ふむ、確かにそうだ」

 体を鍛えるだけじゃなくて教養も身に着けないといけないし、従者教育も経験になるか。

「恥ずかしながら、最近力仕事が辛い時が多くて人手が欲しいと思っておりました。教育の合間でも構いませんから許可をいただきたいのです」
「エリナがそうしたいなら構わないさ。まずは本人達に確認を取らないとな」
「命の恩人ですから強制しても問題ないと思いますが」
「生きる術を教えるのは強制だけど、それ以外は当人に任せるべきだろう」
「ふふふ、お優しいですね。本当にアリア様そっくりです」

 だからそう言われると恥ずかしいと言うとるのに。気恥ずかしさもあって、俺は話題を変える事にした。

「晩御飯の用意をするよ。俺達が食べ終わる頃には落ち着いてるだろうしな。今日は新鮮なロースが手に入ったからカツを作るとしよう」
「新しい料理ですか? ディーがまた喜びますね」
「だろうね。ノエルの分も片手間に食べられる物を作ってやらなきゃな」

 二人を相手する一番の功労者だろうし、褒美もかねて好きな物を混ぜて作ってやるとするか。



 そして食事を終え、客間には住民全員が集まっていた。落ち着いたところで二人の面接を済ませようと思ったのだが。

「何ですかこれ!? サクサクして肉厚たっぷり! 更にマヨネーズも入って最高ですよ!」
「うるさいぞ」

 二人を見ていたノエルに食事を差し出したらこの騒ぎようである。
 ちなみに渡したのは、切ったパンにカツを挟んだカツサンドだ。大好物のマヨネーズもあってノエルは恍惚としてるのだが、ここで渡したのは失敗だった。美味しそうな匂いにベットの二人が羨ましそうに見ているし、レウスに至っては涎が垂れている。

「悪いが、君達は食べない方がいい」
「何でだよ! そこの姉ちゃんは食べてるじゃないか」
「こ、こらレウス! ごめんなさい、弟が失礼な事を」
「気にするな。ところで君達の最近の食事はどうなっていたのかな?」
「その……肉は食べれず野草を食べては吐いたりと碌に食べてないです。さっきのスープが久しぶりの御飯です」
「やはりそうか。君達は碌に食べられず内臓がとても弱っている。今あれを食べたら体が受け付けず吐き出すだろう」
「僕は吐き出さないぞ!」
「ごめんなさいごめんなさい!」

 レウスは立場を理解していない生意気な発言を連発である。こんな態度でよく奴隷として生きていたものだ。

「まあ何だ、元気になったら食べさせてあげるから我慢してくれ」
「はい! あ……ご、ごめんなさい」

 女の子も食べたかったようで、思わず応えて恥ずかしそうにしている。正直でよろしい。

「先ほど軽く紹介はしたが、改めて自己紹介しようか。新しい人もいるしね」
「そうだそうだ、一体あんた達は何者なんだよ」
「レウス!」
「元気だな、ではこちらから紹介しようか。俺はシリウス、この家の主だ」

 続いてエリナ、ディー、ノエルと簡単に紹介を終える。途中、ノエルが慌てて飲み込み喉を詰らすアクシデントはあったが、概ねいつも通りだ。

「あの、シリウス様は貴族様なんですか?」
「一応貴族かな? だけど気にせず普通に話してくれていいよ」
「そういうわけには。と、とにかく私はエミリアと言います。遅れましたが、私達を助けてくれてありがとうございました。ほら、貴方も」
「……レウスだ……です」

 エミリアとレウスね。にしてもレウスの声が急に小さくなったが、貴族相手とわかって萎縮したのか?

「声が急に小さくなったな。さっきまでの威勢はどうしたんだ?」
「う、うるさい! 僕の名前はレウスだ! 凄く強くて誇り高いフェリオスの息子なんだぞ!」
「その凄く強くて誇り高いフェリオスの息子が助けてもらって礼も言えないのか?」
「うっ!?」

 別にいじめたいわけじゃなく、これも教育の一つだ。子供だろうが何だろうが恩人に礼の一つも言えないなんて碌な奴に育たんぞ。俺の意図がわかっているのか従者達は何も言わず待機している。

「あ、ありが……とう」
「ふむ、まあいいか。これで自己紹介は終ったが何か質問はあるかい?」
「あ、えと……私達はこれからどうなるのですか?」

 それは一番気になるよな。こちらとしてはあまり気は進まないが、選ぶ余地の無い選択肢を出す予定である。

「私はもうレウス以外何も無い。親も、家も、お金すら無いんです。だから何をすればいいのかさえわからない」
「その辺は置いといて、エミリアとレウス。君達二人は怪我が治るまではここに居なさい」
「え? でも私達は奴隷で何も」
「首輪が無いから奴隷じゃないだろ? そして治った後は二つ道がある。一つは町まで連れて行くからその後は二人の好きにするといい。そしてもう一つは俺から生きる術を学ぶ事だ」
「学ぶ……ですか?」
「そうだ、世界で生き残る為に必要な体力と知識を与えてやる。勿論その間の食事も支給してやる」
「嘘だよ姉ちゃん! ああやって話す大人は酷いことばっかしてきたぞ!」
「レウス……でも……」
「お前達は悔しくないのか?」
「な、何がだよ」
「互いに守りたいのに、何も出来ず魔物に襲われるだけで悔しいと思わないのか? 大人に騙されるだけでいいのか?」

 俺の言葉に二人は悔しそうに顔を伏せていた。こりゃあ相当苦い経験してるなぁ。その方がやりやすくていいんだけどさ。

「弟以外、何も無いと君は言ったな。失う物がないんだったら俺について来い」
「何故……私達をここまで?」
「理由は無い。しいて言うなら俺の都合と我侭だ。運が良かったと思って受け入れろ」
「……はい、私達はついて行きます」
「姉ちゃん!?」

 ちょっと拍子抜けだ。本当なら一日くらい様子をみてもう一度決断を迫ろうと思ったんだが、予想以上に積極的な娘だったようだ。

「私達には他に道が無いし、あの人は強くしてくれるって言ってるのよ? 私はレウスを守る為に強くなりたい」
「ぼ、僕だって姉ちゃんを守るんだ!」
「じゃあレウスも良いわね。それにあの雰囲気、お父さんに似てると思わない?」
「ほんとー……って違うよ! 父ちゃんはもっと大きくて強かったよ。あいつは僕たちと変わらないじゃないか!」

 おいおい、俺を父親と比べるなよ。見た目は六歳だからレウスの感覚が正しいんだろうが、エミリアは少し感覚が違うようだな。謝ってばかりの娘で頼りないと思ったが、意外に良い拾い物だったかもしれん。

「あいつじゃなくてシリウス様よ。ついていくと決めたんだからちゃんと呼ばないと駄目」
「わ、わかったよ姉ちゃん。し、シリウス……様」
「駄目な弟ですけど、よろしくお願いしますシリウス様」

 弟は無理矢理だが二人は深々と礼を垂れた。何はともあれ結果オーライだな。
半ば強制的に弟子にしだが、俺は教育者としての勉強が出来て、二人は強くなれて保護してもらえるWIN―WINの関係だ。文句はあるまい。

「こちらこそ色々あると思うがよろしく頼む。生半可な覚悟じゃついてこれないからな」
「頑張ります!」
「簡単ー……が、頑張ります!」

 相変わらずボロボロであるが、拾った直後より表情は柔らかくなった。子供は笑ってるのが一番だと思う。二人はまだ笑えないが、いつか過去を乗り越えて笑ってくれるといいが。

「話が一段落したようですので、この家における説明は私達に任せてもらってよろしいですか?」
「そうだね、頼んだよ」

 家のルールは近い立場になるエリナ達に教わるのがいいだろう。

「まずは身形からね。治療薬を飲んだら体を拭きなさい」
「薬だ」
「はい、お湯とタオルですよ!」
「「えっ? えっ?」」
「次は服、採寸をした後に貴方達のお下がりを着せておきなさい」
「はい、採寸完了です!」
「服だ」
「「ええっ!? ええっ!?」」

 三人揃った抜群のコンビネーションで、二人はあれよあれよという間に身形が整えられていく。怪我の完治と心の整理を考えて、五日くらいあればいいかな? 無論、俺の治療促進を加えての計算だ。

 揉みくちゃにされる二人から話を聞きながら、俺は訓練スケジュールを脳内で立てていた。


 エミリア。
 年齢は七歳で、銀色に輝く髪を肩まで伸ばしたボブカットの女の子。少し切れ長の目であるが、将来は美人になりそうな女の子だ。
 アドロード大陸に幾つかある銀狼族の長、フェリオスの娘である。村では家事手伝いをしていて、面倒見が良く子供達のリーダー的存在だったとか。
 魔法は使った事がないため属性は不明。


 レウス。
 年齢は五歳で、エミリアの弟。
 姉に負けず劣らずの銀髪は天を突くような短髪で、やんちゃな子供の男の子。
 狼耳の先端に小さな割れ目があるのが特徴。猫の去勢済みの目印である、みみ先カットのようなものだ。生意気な発言が多いので、鍛える前にしっかり教養を教えてやらないとな。
 姉と同じく属性は不明。



 うむ、やはり弟子の教育は燃えてくるな。
 この二人がどんな風に成長していくか、本当に楽しみだ。


 私ことシリウス。
 六歳にして、弟子が二人出来ました。


弟子登場。
これで二章の終わりです。

さて、早くもストックが無くなりました。
構想は浮かんでいるので書くだけなのですが、鈍亀速度なので遅いです。
最悪一週間に一度は更新する予定なので、のんびりとお待ちください。
それでは、お付き合いありがとうございました。
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