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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

二章 出会い

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悶々とする教育者

「はぁ……何てデタラメな爺さんだ」

 想像していた強さより、一つどころか二つも上回っていた。何だあの同時に八つも放つ斬撃は? 漫画の世界かよと本気で突っ込みたくなった。それを避けた俺も俺だが、正直『ブースト』に慣れていなければあれで終ってただろう。
 しかも爺さんは老いと怠慢でかなり性能が下がっていたのだ。これが全盛期ならばどうなっていたやら。

 爺さんに勝てたのは武器にある。木剣は確かに丈夫で折れにくかったが、同じ箇所で受け流し続ければそこは当然脆くなる。後はその部分を狙って全力でぶつかれば砕けるってわけだ。前世で弾丸を避ける為に鍛えた視力に『ブースト』の底上げもあって出来た芸当だろう。最悪、俺のだけ折れても負けだと宣言すれば済む話だしな。それに爺さんの性格が戦闘狂なのはよくわかった。戦闘中に大声で笑ってるし、心底楽しそうに剣を振っていた。ああいう手合いは感極まれば読みやすいので、武器破壊後の隙を突いて顎を蹴り飛ばしてやったわけだ。
 手加減抜きで放った蹴りは脳味噌を激しく揺らし、しばらくは起き上がれないだろう。常人だったら確実にヤっちゃうレベルだったし。

 それにしても流石は最強と呼ばれる爺さんだ。満足気に寝ている爺さん程ではないが、久しぶりに出せた全力に俺も満足している。出来ればまたお相手を願いたいものだが、年齢的に厳しいだろうな。とにかく爺さんを介抱しよう。汗まみれで外に放置するのも忍びない。

「ぬ……う。ふ……はは……はっはっは!」

 何か急に大声で笑い出したぞ。強く蹴りすぎたか?

「楽しかったぞ! これ程の戦闘、真に久しぶりであった。蘇った気分じゃ」

 言葉通り、何事も無かったように跳ね起きたのだ。いやいや、嘘だろ? 脳味噌揺らしても即回復ですか。

「すまぬがもう一度名を教えてほしい」
「小僧としか呼ばないと思ったら、覚えてなかったんですね。シリウスです」
「敬語など不要じゃ。シリウスもわしを好きに呼ぶがいい。お主はわしに勝ったのじゃからな」

 笑うのを一向に止めない爺さん。これは認められたという事だろうか。

「奇襲だぞ? 正攻法だったら確実に負けていたさ」
「あれはわしの油断以外の何でもないわい。これで負けじゃないと言ったら末代までの恥じゃ」
「わかった。じゃあ俺の勝ちでいいや」
「うむ、お主の勝ちじゃ。いやー楽しかったのう。わしの技が全く通じないとは」
「興奮してるところ悪いが、まずは体の手入れを済まそうぜ。お互いにボロボロだろ」

 爺さんは言わずもがなだが、直撃を受けていない俺だって汗まみれだし、服のあちこちが裂けている。木剣でも掠っただけで服が切れる斬撃の中で戦い続けたのだ。体力と精神も消耗している。

「そうじゃな。とりあえず中に戻って休むとー……ぬわぁ!」

 家に入る手前でずっこけ、ドアをぶち抜きながら転んでいた。
 ダメージがしっかり足に来ている証拠だな。ちゃんと人間の様で安心したよ。


 家に戻った俺達は体の手入れを済ませ、机で向かい合ってお茶を飲んでいた。

「「はー……美味い」」

 中身は爺さんとほぼ同じ年齢の俺だ。一仕事終えた後の一杯に同じセリフが出てもおかしくあるまい。

「ふぅ、心地よい疲労感じゃのう。さてシリウスよ、まずは礼を言わせてほしい」

 爺さんは土下座しかねない程の勢いで頭を下げてきた。何となく理由はわかっているが、そこまでしなくてもいいと思う。

「顔を上げてくれよ。こっちこそ貴重な体験をさせてもらって礼を言いたいんだ」
「それでも、わしはお主のような強者を待ち続けておったのじゃ。お主が来なければ、わしは腐ったまま静かに消えていくだけじゃった。じゃから礼を言う。ありがとう!」

 出会った直後の辛気臭い顔から一転、実に晴れやかな笑顔である。十年は若くなった気がするな。感謝されて悪い気はしない。俺だって爺さんと戦うつもりだったし、纏めれば互いに良かったという話しだ。

「礼をしてすぐになんじゃが、頼みがある。わしとまた戦ってくれないかのう?」
「それは今すぐって話?」
「その通りじゃ……と言いたいが体が限界じゃな。それにこんな鈍った体ではお主に失礼じゃろう」
「年齢的にきついだろ、大丈夫なのか?」
「問題無い! この充実感の為なら全盛期に戻すのも苦にならぬ。それに、お主もそうして欲しいのではないか?」
「……わかる?」
「わかるとも。お主の戦いは異質であるが、奇襲や隙を突く戦法が多い。じゃのにわしと正面から切り結ぶという事は鍛えたいと思っている証拠じゃ」

 本能に任せて戦ってた割にしっかり見ているようだ。
 爺さんの言葉通り、俺の戦い方は奇襲や乱戦向きである。前世の仕事上、単身で敵陣に潜入して暗殺したり、暴れて内部を崩す事が多かったからだ。本当に何でもありだったなら、近距離で『マグナム』放ったりすればいい。だが、奇襲が出来ず、魔法が使えない状況があるかもしれない。正面から堂々と戦える技術も鍛えておかねばならないのだ。
 それに爺さん程ではないが鍛える楽しみを知っている。以上が正面から爺さんと戦った理由である。

「お主は鍛える為に、わしはお主と戦う為にじゃ。ほれ、誰も損せぬ話じゃ。どうじゃ?」
「そこまで言わなくてもわかってるだろ? こちらこそお願いするよ」
「うむ! 交渉成立じゃな」

 がっしりと握手を交わした。俺は子供でこれから成長するからいいが、爺さんの方は下がる一方だ。それに加えて衰えた体力を戻すのだから想像を絶する苦行になるだろう。

「この年になって背中を追う楽しみが出来るとはのう。どれだけ追っても追いつけなさそうで楽しみじゃ」

 案外この爺さんならあっさりやってしまいそうだ。下手したら全盛期より強くなりそうな気がするよ。こういう戦闘狂って目標があるととんでもないスペックを発揮するからなぁ。俺もうかうかしてられないな。フィアに続いて新たな友人と、対等に戦えるライバルが出来た。


 それから体力が回復するまで爺さん……ライオルと話をした。
 俺の身辺状況を説明したり、ライオルの過去話を聞いたりして実に有意義だった。途中で魔法を幾つか見せたが、やはり俺の魔法は特殊過ぎて初老のライオルでも見た事の無い魔法が大半らしい。

「いつか全ての魔法有りのお主と戦ってみたいのう。どう戦えばいいか考えるだけでも滾るわ!」
「もはや病気だな」
「一生治らぬわい。はっはっは!」

 帰る際にはお茶の葉を分けてもらった。ライオルが新たに発見した物で名前が無かったので、日本茶と名づけておいた。これからもちょくちょく訪れるつもりだし、手製の地図にしっかり場所を書き込んでおく。ここから家まで直帰すれば一時間くらいかな?

「次に来る時には、愛剣を振れる程度には戻しておくわい」
「年なんだから無理すんなよ」
「ぬかせ、わしはまだ現役じゃ」

 ライオルの愛剣は本人の身長はある巨大な大剣で、軽く見ても百キロはあると思う。
 それを振り回すと宣言する爺さんに戦慄を覚えつつ、俺はライオルと別れて家へと帰った。




「あ、お帰りなさーい、シリウス様ー!」

 家に戻ると、窓を拭いていたノエルが手を振って迎えてくれた。ちなみにこの世界にガラスはあるが、前世のような透明度はないので窓は透明な魔物の素材で出来ている。

「ただいまノエル。何か変わった事はあったかい?」
「特にありませんね。あ、そういえばディーさんが報告したい事があるって言ってましたよ」
「わかった。この時間なら倉庫だろうし呼んできてくれる?」
「はーい」

 倉庫とは中庭の端っこに立てられた建物の事だ。そこで色んな実験を繰り返しているので、ディーもそこに居るだろう。ノエルを見送り玄関へ向かうと、俺が手を出す前に扉が開いてエリナが迎えてくれる。

「お帰りなさいませシリウス様」
「ただいまエリナ」

 優雅な一礼をしつつ、俺が怪我とかしてないかチェックしている。あ、やばい。俺の服ライオルとの戦いでボロボロだったの忘れてた。ノエルも言えよと思ったが、彼女は俺の奇行に慣れてるからスルーしたっぽい。冷や汗を流す俺にエリナの目が鋭くなり肩を掴まれた。

「こんなにボロボロに! お怪我はありませんか!」
「だ、大丈夫だ。服が切れてるだけで俺は無傷だから」
「本当ですね? 着替えの時に確認しますよ」
「いや、だから大丈夫だと」
「確認します!」
「……はい」

 母親の様な人とは言え、ジロジロ見られながらの着替えは苦行だ。服じゃなく、純粋に俺を心配しての行動だから断りづらい。結局止められず、エリナに見られながらの着替えとなった。途中「ご立派になられましたね」と呟いたのは筋肉の事だと思いたい。
 着替え終わって居間に戻ると、ディーが木の容器を抱えて待っていた。

「お帰りなさいシリウス様」
「ただいまディー。何か話があるって聞いたけど?」
「はい、これをご覧ください」
「お、遂に出来たのか」

 ディーに差し出された容器には水がなみなみと注がれていて、中に白い物体が沈んでいる。軽く味見してみたが間違いないようだ。

「……どうですか?」
「うん、完成だ。これこそ俺の想像通りの物だよ」
「……良かった」

 ディーに作らせたのは豆腐だ。この世界には大豆と似たような豆があり、俺なりに調べた結果、前世とほぼ変わらない物とわかった。豆には何か長ったらしい名前が付いていたが、俺が大豆と言ったら皆そう呼び始めたので大豆と呼ぶことにしている。
 これを使って色々作ってみようと思い、倉庫でディーと試行錯誤を繰り返していたのだ。その内の一つがこの豆腐であり、俺の説明を受けて彼はついに作り上げたのだ。知識と素材の用意は俺がやるが、実際に作るのはディーにほとんど任せてしまって申し訳ないと思う。豆腐は豆を長時間水に浸けたり、沸騰の際に手を加えたり、絞ったりとかで地味で面倒な作業多いからな。

「すまんな、面倒な作業をいつもやらせて」
「そんな事ありません。勉強になりますし、楽しんでます」
「そっか、今度はまた別なのを考えるからよろしくな」
「お任せください」
「これがトウフですか? すごく柔らかい物なんですねー」

 窓拭きを終えたノエルが豆腐を突きつつ感想を述べている。硬かった豆がこんな風になるとは思わないだろう。俺が料理や豆腐の作り方まで詳しいのは、前世での趣味の一つが料理だったからだ。
 世界中の戦争を巡り、糧食続きや食糧不足でそこらの物を無理矢理食べる内に、どんなに不味い物でも毒でなければ食えるようになっていた。だが、それ以外では美味い物が食べたいと料理を作るうちに、気付けば趣味となり色々知識を身につけていたのである。

「どんな味がするんでしょうね?」
「それが……あまり味がなかった」
「ふえ? シリウス様、それで完成なのですか?」
「そうだよ。これは単体より他のと組み合わせて使う方が多い。食感が独特だけどこれも料理の一つさ」
「へー、料理って美味しい物だけじゃないんですね。奥が深いです」
「それにしても丁度良かった。今日作る予定だったあれが完成に近づくぞ」
「はっ!? と言う事はシリウス様」
「新しい料理……ですね」
「ああ。海に行ってこいつを取ってきたからな」

 新しい料理と聞いて二人のテンションが上がる。俺がこの世界に無い料理を開発する度に味見させるからな。多少の好き嫌いはあるが作った物は概ね気に入られ、二人の胃袋をガッチリ掴んでいた。
 ちなみにノエルはマヨネーズとプリンがお気に入りで、ディーは天ぷらと唐揚げである。エリナはフレンチトーストで、俺に救われた時に食べさせてもらったのが忘れられないとか。ちょっと照れる。
 二人揃って万歳しているが、俺が取り出した物を見て固まった。突然乾いた海草を出せば不思議に思うよな。

「何ですかその黒いのは? うねうねしてちょっと気持ち悪いですね」
「これは海の中に生える草の一種さ。昆布って名前だ」

 大陸に渡る前に拾って海岸で干し、帰り際に回収してきた。干す時間は半日くらいなので丁度良い塩梅だろう。

「食べられるのですか?」
「俺の想像通りの物ならね。でも今回は食べるより出汁を取る為に使う」

 早速調理しようと台所へ向かおうとしたが、エリナが紅茶を用意して俺にストップをかけた。

「シリウス様、お帰りになられたばかりですから少し休憩なされてはどうですか?」
「む、それもそうか」
「ほら貴方達も一緒に休みなさい。シリウス様、服がボロボロになった理由をお聞きしたいですね」

 笑顔だけど、有無を言わさん迫力である。ちゃんと話すからその顔は止めてほしい、怖いっす。

 というわけで、ライオルに会った事を簡単に説明した。

「ええっ! あの剛剣に会ったんですか?」
「そんなに驚くことか?」

 あの強さは凄まじかったが、見た目はただの隠居爺さんにしか見えなかったぞ。

「いえいえ、私は会ったことはありませんが凄い人なんですよ。物語の主人公として本が出てる程ですし」
「生ける伝説とも呼ばれてます」
「私も聞いたことがあります。何でも敵陣に一人で突撃し、たった一日で降伏させたとか。武勇伝は数え切れないほどあるそうです」
「もしかして挑まれた……なーんて、そんなわけありませんよねー」
「よくわかったな。本当に強かったよあの人は。正直ギリギリの勝利だったな」
「は……あはは。冗談としか思えないですけど、シリウス様ならって納得しておきます」

 そうそう、俺の行動に一々驚いてたらきりがないぞ。ノエルもそうだが、エリナも納得した顔で頷いていた。

「剛剣なる御方と戦えば服もボロボロになるわけですね。ですがシリウス様、無理はなさらないでください」
「だけど無理をしないと強くなれない」
「それでもです。ある程度は見過ごしますが、私は何度でも言わせていただきます。決して無理はなさらないでくださいね」
「……わかったよ」

 鬱陶しいぐらいだが純粋に俺を心配しての言葉だ。こちらがごねても絶対に撤回するつもりはないだろうし、素直に頷いておくのが一番だ。しかし行動を黙認してくれるのはいいが、毎度毎度エリナを心配させるのもあれだな。無事であるとわかればいいんだし、何か考えておこう。

「それにしても希少なエルフに出会ってすぐに伝説の剛剣に会うなんて凄い話ですよね」
「そう言われても出会ったのは偶然だしな」
「私も会ってみたいです。剛剣さんは想像つかないけど、エルフは美形と聞きますしね。シリウス様、その人は美人だったんですよね? 実は惚れちゃったとかありません?」
「それはいけませんね。美人でもエルフでもしっかりと挨拶をしてもらって、私の目に適う人じゃないと許しませんよ」

 あかん、エリナの目が完璧に姑だ。あのフィアが手抜きの掃除を咎められて怒られてる姿とか想像できん。向こうから惚れてきました……とは言えんな。お礼だけどキスされたとか知られたら確実にエリナは切れそう。

「少なくとも十年は会えないって話はしたろ? エルフはもういいから、以上が今日の出来事だ」
「はい、本当に気をつけてくださいね」
「了解だ。さて、そろそろ作るとするか。ディー、後で倉庫から豆腐を二つ出しといて。料理に使うから」
「わかりました」

 さて、俺が作ろうとしているのは寄せ鍋である。
 この世界は調味料の数が少なく、野菜や肉類と相性の良い出汁がなかったのだ。そこで海を見つけて昆布の存在を思い出した。形と雰囲気は似ているし、毒も調べたが無いようなので、実験も兼ねた料理である。

 まずは絞った布巾で表面の汚れを拭き取り、鍋に水と一緒に入れて中火くらいで一煮立ち。沸騰直前で昆布を取り出しこれで出汁が完成だ。そしてディーが用意した野菜や肉類を適度なサイズに切り、火が通り難い素材から出汁に入れて一緒に煮込んでいく。醤油が無いので塩と砂糖で味の調節をしておく。後はじっくり煮込めば、素材の味が染み出した寄せ鍋の完成だ。

「簡単な調理法ですが、とても美味しそうですね。しかし一人当たりの量が判り辛いのでは?」
「これは取り分けるんじゃなくて皆で突いて食べる料理なんだ。全員集めた時に説明するから夕御飯にしよう」

 隣でメモを取っていたディーに小さなテーブルを用意させ、皆で一つの鍋を囲んだ。ちなみにガスコンロがないから、弱設定にした火の魔法陣を下に敷いておく。出来上がった鍋を覗き込んでエリナとノエルは首を傾げていた。

「これがナベ? あの黒い草はどこへいったのです?」
「先ほどの豆腐も入ってますね。これは食べ方に何か作法があるのでしょうか?」
「昆布は最後に入れて底の方に沈めておいたが、ノエルには向かない味かも。作法は特に無いよ。お玉で掬って小皿で食べるなり、直接取って食べるとか好きにするといい」
「直接ですか? それは……」

 エリナの顔が渋い。おそらく従者が主と同じ鍋を突くのが失礼ではないかと思っているのだろう。だけど俺には関係ない。

「鍋は家族団欒で食べる身も心も温まる料理だ。俺達にはピッタリの料理でしょ?」

 にやりと笑って直接鍋から野菜を取って食べる。ふむ、前世と違い薄味で物足りない味だが、これはこれで美味い。

「家族……家族団欒ですか。家族でしたら仕方ないですね」
「そうです、シリウス様の言葉通り私達の為にある料理です。というわけで早速……熱っ!」

 一応スプーンは用意したが、数日前に俺が箸を作って使い始めてから全員箸を使うようになった。エリナとディーはすぐ慣れたが、ノエルはまだ不慣れで素材を掴み損ねて跳ねた汁の逆襲を受けている。

「慣れてないんだ、小皿に掬っておこう」
「うう、ありがとうございますディーさん」

 すかさずフォローに入るディー。お前ら早く付き合っちまえよ。全力で祝福してやるから。

「出汁と豆腐の相性がとても良いですね。いくらでも食べれそうです」
「豆腐は体にも良いしダイエットにも効果あるぞ」
「本当ですか! ディーさん、豆腐たっぷりでお願いします」
「わかった」
「鍋は逃げないから落ち着きなさい。それにとても熱いですから気をつけて食べるんですよ」
「もちろんです。これだけ冷ましたら問題ないかと……熱いです!」

 ノエルって猫の獣人だからなのか猫舌なんだよな。しかも豆腐って表面が冷めても内部が熱いから相性悪い。いつまで経っても期待を裏切らない娘だねぇ。

 心身共に満足した食事が終り、その後はディーとノエルの訓練を手伝う。訓練といってもディーは料理の新たなレシピ作りで、ノエルは俺が教えた魔法をイメージする練習だ。それらを見守りつつ稀に助言するだけだが、二人はそれで十分らしい。必要以上に手を出さないのは楽で良いが、元教育者としては寂しいものがある。この二人は助言程度だから、俺の弟子と言えない。
 今日の昼にライオルの話を聞いた時は、悲しくもあったが昔の自分を思い出して疼いてもいた。

 ああ……弟子を育てたい。

 もやもやした気分のまま俺は寝ることになった。
 気になるが、ライオルと全力を出し合ったお陰もあってあっさりと眠気はきたが。


 それから俺の日課はこんな感じになった。

 体力と魔力の鍛錬。
 世界の知識を勉強。
 隣の大陸の探索。
 学校に入る為の金策。
 そして新たに追加された、ライオルとの模擬戦。

 これらをこなしつつ日々は過ぎていき、俺は大きく成長を続ける。



 そして一年後。

 運命を変える出会いはすぐそこに迫っていた。

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